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不滅のダンジョンマスター  作者: やみあるい
第二章 迷宮覚醒の章

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65.支配領域

あらすじ


魔王の力を模倣した配下たちの力を一時的に強化する力。

これを切り札とするために、“私”はDPブーストと名付けたこの力の検証を行っていく。

その作業の途中で、病魔の森に縄張りを持つ強力な魔物たちの下へ送った使者が帰ってきた。

接触できたのは魔鹿の群れと、魔狼の群れ。交渉が出来たのは魔鹿の群れだけだった。

しかし、魔狼の群れでも接触を断られた訳では無く、またある程度の情報も持ち帰っている。

それに交渉の余地が無いわけではない。力を示せ。彼らは使者に向けてそう言ったのだ。

 帰還した使者たちの報告を聞いた後、私はその情報を参考にして今後の方針を改めていく。


 魔鹿たちの群れとはこのまま繋がりを保持しつつ、折を見てダンジョン近くへ縄張りを移動してもらうよう交渉する。移動後はそこで相互に戦力を出しつつ、人間たちの侵攻を抑えていくのだ。いずれは、ダンジョンの内部へ彼らの住まう環境を構築できれば最良である。第五階層の追加により増えた機能である環境変更をうまく使えば、DPを消費してダンジョン内に広大な森を構築することも可能だ。使者を間に挟んだ対話であるが、伝え聞くあちら側の感触はなかなか良い。となると、あとはDPの集まり次第だ。

 魔狼の群れに関しては、こちらもこのまま継続的に使者を送りつつ、その情報を更新し続けていく。交渉の場こそ設けられなかったが、接触そのものを禁止されている訳では無い。

 それにあちらの危機にこちらの戦力を送り、手助けすることが出来れば交渉の席へ一歩近づく可能性もある。まあ、あちらの性格次第では手助けした結果、逆に敵対する可能性もあるので、そこはこれからも使者に情報収集をさせつつ、機会をうかがっていこう。

 魔蜂の群れは、使者の数を増やして再度送り込む。今度は接触に慎重を期して、何が起こったのかを他の使者に確認させる。平和に済めばよいのだが、そうでなかった場合は交渉の仕方から考え直さなければならない。


 各群れへの対応は、大体こんな感じだ。

 そうして使者たちを再度送り出した所で、また別の作業に進展があった。



 進展があったのは、『並列思考』を使い、裏でずっと続けていた目印から不要な部分を削る作業だ。ずっと進展の見られなかった作業だが、ある所まで来た時点で唐突にそれは形となった。

『空想空間』に表示された新たな目印の情報群は、元の部屋を示す目印とも、不要な情報を削る途中の不安定な状態とも違っている。感覚的なものだけど、なんというかとても、整然としていて、綺麗だ。

 この感覚が何処から来ているのかは不明だが、一先ずこの感覚を信じて新たに作成した目印を使用してみよう。私が思い、願った通りに出来ていれば、これは部屋でも通路でもない、ダンジョンとしての私自身を示す目印となっているはずだ。


 頼むから成功してくれ。そう願いながら、出来た目印をダンジョンマップの入り口から一歩外へ出た場所にDPを消費して張り付けた。そこはダンジョンの領域外。ダンジョンマップには、表示されていない場所だ。

 ……DPの消費する感覚を感じる。これは、うまくいったのか?

 まず、ダンジョン内に感覚を向けた。特におかしな点は無い。いや、少し今までとは感覚が違う?

 今までは『魔力感知』や『気配察知』により感じていた、ダンジョンの外。それがダンジョンコアとしての知覚にも反映されていた。それはダンジョン内程に明確な知覚範囲では無いけれど、言うなればそう、それまでモニター越しに見ていた世界を、初めてその身で体感したかのようなそんな感覚。

『魔力感知』や『気配察知』に頼った知覚は、ダンジョンコアに本来備わっている感覚ではない。だからこそ、それらのスキルを通した知覚は、何処か現実感の薄い知覚だった。しかし、ダンジョンコアとして知覚できる範囲は、あくまでも己の支配領域であるダンジョンの内側のみ。それ故に、気付かなかったのだ。今まで知覚していたダンジョンが、真の意味で私自身であったということを。

 認知とは比べるものがあって初めて作用する。私の支配領域がダンジョンの外へ広がったことにより、ダンジョンコアとしての知覚範囲もまた合わせて広がった。

 視界が広がった、と言えばいいのか。今の私は目で見ている訳ではないので、それはあくまで比喩でしかないのだけれど。

 そうか。これが世界と私との関係性か。

 気が付けば今まで常時使用していた『魔力感知』も『気配察知』も閉ざし、『並列思考』も『加速思考』も停止させて、私はダンジョンコアによる知覚で外の世界をじっくりと観察していた。

 新たに己の支配領域となった小さく区切られた世界と、そこに接して拮抗している誰かの支配領域。支配領域に滲む目印には、微かな覚えがある。あの見習い勇者に感じたものと同じ……いや、この感覚はむしろ今の私が前生に対して感じるもの。

 微かに懐かしく、この世界に住まう人間たちとは何処か違う雰囲気を漂わせる目印。

 目印はそれを使うものを表しているらしい。ならば、これを目印とするものは……。

 そうか、この病魔の森は勇神ユウトの支配領域だったのか。

 それを認識した瞬間、私は人間たちが神と呼ぶ者たちと、地脈に刻まれる魔王と呼ばれるモノたちが、同一の成り立ちをしていると直感的に理解した。

 少し性質が違うのは、そこに至った存在が、魔物か、人間かという違いからだろうか?

 根底となる力は同じ。それ故に、出来ることもまた、魔王と非常に似通っていた。

 この病魔の森にて、人間たちは勇神ユウトの後押しを得る。魔王の支配領域にて、その魔王に従う魔物たちが魔王より後押しを得るのと同じように。

 それでもなお、この病魔の森がこれまで人間たちの侵入を拒み続けてきたのは、それだけここで討伐された大魔王が残した力の残滓が強力だったからだろう。改めて我が親の偉大さを感じる。

 とはいえ、このままでは不味いな。


 支配領域を広げる方法はもう理解した。次はもう目印を一から作らずとも、意識してDPを使用するだけで支配領域を広げることが出来るだろう。もっともそれで簡単に支配領域を広げられるのは、この病魔の森が完全に勇神ユウトの支配下となっていないからだ。

 支配領域を広げられるようになったことで、その性質も少しずつ分かってきた。

 この支配領域を広げる力は、なかなかにシビアである。ダンジョンコアの機能はかなり洗練され、自動化されていたが、こちらはもっと原始的で扱いづらい。

 これはあくまでダンジョンコアである私流の扱い方だが、まず広げるためにはDPを必要とする。さらに広げた後には、意識的に支配領域を維持し続けなくてはならないようだ。まあこれは、『並列思考』によって増やした思考の一つをつけておけば問題は無い。『並列思考』のレベルが上がったことにより、分裂出来る思考の数も増えたからな。

 ただそれだけだとまだ、支配領域はその力を完全に発揮しない。支配領域をしっかりと確立させるためには、支配領域とした場所へ自身に従う者たちを住まわせる必要がある。

 それは私の配下たちや、私へ信仰を捧げる者たち、私に庇護されている者たち、そして何かしらの契約で私と結ばれている者たちだ。そういったものたちを住まわせ、その地に馴染ませることで、そこは確実な私の支配領域へと変わっていく。そこまで行けば、意識から外しても支配領域を他の存在に奪われることは無くなるだろう。

 勇神ユウトの支配領域が完全で無かった理由はこの辺りにある。病魔の森が勇神ユウトの支配領域となったのは、恐らく以前ここで大魔王が討伐された時だろう。だがその後、ここは大魔王の残した力が人間たちを排除し続けていた。それ故に、勇神ユウト率いる勇王国は、この病魔の森にその版図を広げることが出来なかったのだ。

 また同時に勇王国がこの病魔の森に侵攻を続ける理由も、この支配領域を万全とするためだろう。魔王たちにこの地を奪われぬように、或いは他の人間たちの神に奪われぬように、か。その辺りは定かではないけれど。

 ならばこそ、私が今、進めている幾つかの作業は重要となってくる。

 病魔の森全体への支配領域の拡大と、そこに住まう魔物たちとの交流。さらに配下となる魔物たちの繁殖と拡散。これらが叶えば、きっとそれは勇王国の人間たちの力を削ぎ、逆に私の力を高めてくれる。

 今まで行ってきた作業は一部改め直しつつ、その方向性で新たに進めていこう。



 それはそうと、支配領域を広げられるようになった事で、早急に確認しておかなければならないことがある。

 それはこの支配領域を連絡手段として扱うことが出来るのか、だ。

 未解決となっている黒牙との緊急連絡手段の確保。これがもし可能となれば、黒牙の行動範囲は広げた支配領域の分だけ広がり、それだけ修行の効率も上がっていく。さらに黒牙の持ち帰る魔石の質も向上して、確保できるDPの量も増えていくだろう。それらの成果は新しい方向性にも合致する。


 連絡手段として分かりやすいのは、やはり『伝心』での直接連絡だろう。もし、支配領域内にいる配下へ『伝心』で私のイメージを直接送ることが出来るのなら、この問題は一挙に解決する。

 だが、それを試すためにはまず、支配領域を現状『伝心』が届く以上の距離まで広げなければならない。それを試すためにも一先ずは、支配領域をDPの許す範囲で広げていく。


 今ある手持ちのDPは、黒牙が近場で狩った魔物の魔石を吸収した分が殆どだ。決して多くは無いこのDPで、何処まで支配領域を伸ばせるか。

 まずはDPを消費して、ダンジョンの入り口部分から前方に支配領域を伸ばしていく。

 暫く支配領域を前方に伸ばし続けていると、ある地点から次第にその速度が低下してきた。送っているDPの量は一定なので、恐らく消費するDPの量が増えたということだろう。

 私はそこで一端、DPの消費を止める。

 支配領域はまだ、かつて村があった場所に触れた程度。そこはまだ『伝心』の範囲内だ。だが、このまま消費するDPが増えていくと、『伝心』の届く範囲を超える前にDPが尽きてしまうだろう。

 DPの消費量が増えたのは何が原因なのだろうか?

 もし私からの距離が原因であれば、どうしようもない。でも、他に原因があるとしたら?

 他の方向に広げるのであれば、DPの消費はまだ少ない。

 私は試しに別の方向へ支配領域を広げてみる。するとまた、一定の範囲まで広げた所でDPの消費量が増えた。

 だが、増えた量は前回よりも減っている気がする。試しにまた別の方向に支配領域を広げていくと、やはり一定まで広げた所でDPの消費量が増えたけれど、その増えた量は前二つよりは少なかった。

 私は思い切って、全ての方向に支配領域を広げていく。すると、前に止めた場所を越えても、DPの消費量が増えなかった。

 どうやら支配領域は、自身を中心として円形に広げていく方が効率よく広げられるようだ。

 そのままの調子で支配領域を広げていく。すると何とか、『伝心』の届く範囲の外まで支配領域を広げることが出来た。本当にギリギリだが、試すだけならこれで十分だ。


 早速、名前つけの為にダンジョンへ待機させているケーブラットを、ダンジョンの外へ向かわせる。一匹は『伝心』が届く範囲内に、もう一匹は『伝心』がギリギリ届かない支配領域の内側に。

 『伝心』を使用すると、片方には届いたようだが、もう片方には届いていない。届いていないのは勿論、『伝心』の範囲外に置いたケーブラットだ。

 ダメ、か。だがそれでも諦めきれず、私は何とか『伝心』を使える方法を考える。

 名前を付けてみたら、どうだろう? 絆を強めれば、届いたりしないだろうか。次の名前を付けられる時間を待って、もう一度『伝心』を試してみたが、結果は同じ。


 そもそも私は、『伝心』がどのようにイメージを他者に届けているのかもいまいちわかっていない。『読心』は何となく『魔力感知』に近い感じがあり、他者が発する魔力から心を読み取っているのだと思うのだけど。

 『伝心』も同じように魔力が関係しているのかとも思ったけれど、私は私自身の魔力を持たないし、魔力を扱うことも出来ない。地脈からDPを得る際に生み出た魔力をダンジョン内に流しているけれど、それは私の意思でどうにか出来る類いのものでは無いし。

 そう言えば『伝心』を習得した時は、どうやって習得したのだったか。

 それについて考えると、すぐに『記憶』のスキルが作用して、その時のことを思い出した。

 そうだ。ダンジョンコアの機能にある配下への命令を使っていたんだったか。

 あれはダンジョンコアの機能だから、さすがにダンジョンの外にある支配領域へは届かないだろうけど。

 ……一応、試してみようか。


 まず無いだろうと思いながら試してみたら、何故か成功してしまった。

 何故?

 『伝心』と命令機能の違いについては、これまであまり考えたことが無かった。気にはなるけれど、今はまだ、出来るのだから出来る、ということにしておこう。

 それから何度か命令機能と支配領域の関係を調べていった所、命令機能をダンジョンの外で受け取れるのは名前を付けて、絆を強化した配下たちだけだということが分かった。

 名前を付けていないケーブラットだと、ダンジョンの外に命令は届かないようだ。

 まあこの辺りは、特に問題ではない。一番連絡手段が必要なのは、現状で最も絆が強い黒牙だから。黒牙との連絡手段に関しては、これを使うということで決まりだ。あとは、この支配領域をどんどん広げていく為にも、DPを増やしていかなければ。

 本当は第一階層の部屋や通路を増やすのにDPを使っていきたかったのだけど、勇神ユウトの支配領域を削る意味も含めて、暫くはこちらにDPを全振りするべきだろう。



 ふう。これで一先ず、行おうとしていた全ての作業に進展があった。

 あとはその全てを並行して進めていき、来たるべき日、来たるべき時に備えるだけだ。

 まだ来るな、まだ来るなと願いながら。


 されど、終わりの訪れはもう間近に迫っていた。



明けましておめでとうございます

次の章もただいま鋭意執筆中!

今年もよろしくお願いします


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― 新着の感想 ―
[良い点] 3章も楽しみです。頑張って下さい。
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