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不滅のダンジョンマスター  作者: やみあるい
第二章 迷宮覚醒の章

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62.ダンジョンの強化

あらすじ


黒牙による必殺の一撃は、イグニスの左腕を奪うだけに留まった。

そしてイグニスは、一度目の魔術を越える魔術で、部屋内を焼き尽くす。

炎が晴れた時、“私”の配下たちは致命傷を負った黒牙を残して全滅していた。

その隙に逃げるイグニス。このままでは隠していた情報が、イグニスにより明かされる。

その可能性に気づきつつも、配下のいない“私”には何も出来ない。

“私”は戦いで得たDPでゴブリンを召喚し、黒牙の治療を行う。

そして、これから行うべきことについて考える。

間近に迫る危機を乗り越えるために、全ての危険な可能性を度外視にして。

 死の恐怖から逃れるため、やるべき作業で思考を満たす。とはいっても、我武者羅に何でもやればいい訳では無い。時間があまり残されていない今、出来る限り効率的に作業は進めていくべきだろう。そこで私は、まず行うべき作業内容を確認し、手を付ける順番を決めていった。その後、作業を開始する。



 まず手始めは、魔鼠系の魔物の大量召喚から。

 これの肝は小さな魔物たちを病魔の森へ大量に放つことで、膨大な量の情報を一気に集められる事にある。そのため戦闘の発生はあえて想定せず、DPの節約という観点からも召喚する魔鼠系の魔物は低ランクのものから選んでいく。

 一先ず最低ランクであるGランクの魔鼠、ベビーラットを一匹召喚してみた。



 種族:ベビーラット ランク:G スキル:『幼体』

 魔獣族魔鼠系の幼体種ベビーラット。生まれたばかりの魔鼠系魔物。『幼体』の特性により、全ての能力が低下する代わりに、成長と共に経験値を得て、急速にレベルを上げていく。二十日ほどでレベルの上限に到達、進化可能となる。生育環境などによって、様々な魔鼠系の魔物へ進化する可能性を持つ。



 召喚に必要なDPは10DP。DP的には最適な魔物だ。問題は『幼体』スキルのデメリット。魔物図鑑には全ての能力が低下するとあるが、果たしてどの程度まで影響があるのか。

 私はまず、『伝心』と『読心』のスキルを使い、召喚したベビーラットと会話を試みてみることにした。その結果分かったのは、ベビーラットは本当にベビーだったということだ。一応こちらのいうことは分かるようだが、あちらからの情報は殆ど要領を得ない。それに、動きも非常に緩慢だ。これでは幾らDP消費が少なくとも、役には立ちそうにない。

 放っておいても二十日ほどで進化するとはいえ、時間がある時ならばともかく、今は二十日程度でも無駄には出来ない状況だ。これは無しだな。

 続いて、ベビーラットよりは一つランクが上のケーブラットを召喚してみる。



 種族:ケーブラット ランク:F スキル:『早熟』『繁殖』『夜目』

 魔獣族魔鼠系の環境種ケーブラット。洞窟という環境に適応する進化を果たした魔鼠系魔物。『早熟』の特性により、全ての能力が少し低下する代わりに、戦闘で得られる経験値が増加する。魔鼠系魔物の特徴として繁殖能力が高く、また暗い洞窟内で生活しやすいように暗い場所でもある程度遠くまで見通す力を持つ。



 ケーブラットの召喚に必要なDPは100DP。ベビーラットの十倍だが、ゴブリンと比べれば五分の一だ。今、手元にあるDPの量ならば百匹召喚したところで、全DPの三分の一程度。

 大量放流の第一弾としては悪くない。

 こちらもまずは一匹だけ召喚して、受け答えの確認をする。

『読心』で読み取ったケーブラットの意思は、他の魔物たちに比べると片言気味なイメージだが、落ち着いて情報を読み取れば十分に実用可能なレベルだ。動きに関しても、さすがに黒牙程では無いけれど、森の中を隠れつつ進むのであれば問題は無さそう。

 よし。病魔の森全体へ放つ魔鼠系の斥候たちは、ケーブラットに決定だ。

 それでは召喚を、とその前に、考えておかなければならないことがあった。

 大量に召喚したケーブラット達を病魔の森全体へ放つのは良いが、このままではケーブラット間で連携が取れない。何せ百匹のケーブラットたちだ。戦いは無いとしても連絡系統くらいは整えておかないと、情報の報告に支障が出る。

 そんなわけで病魔の森を幾つかの領域に分け、その周辺のケーブラットたちをまとめ上げるリーダーを置こうと考えた。では、リーダーをどう決めるか。単純に適当なケーブラットを指名して、『伝心』でリーダーとして周りに認知させるという手段もある。だが、ここはひとつ、リーダーには周りより一回り強くなってもらおう。

 その方法として目を付けたのが、名前を付けることだ。今までずっと忌避感を持ってきたし、イチ、ニイ、サン、シイの死には、やはりかなりの精神的苦痛を伴ったが、それでもこれは手っ取り早く配下たちを強くする順当な方法である。幾度死を感じることになろうとも、本当の死を回避出来るというのなら避けることなど出来ないだろう。

 名前は、連番の続きでいいか。どうせ膨大な数になる。

 召喚した側から順に名前を付けていく。

 ゴウ、ロク、ナナ、ハチ……と、そこで名前をつけられなくなった。前回も四匹まで名付けた所で、名前が付けられなくなったんだったか。そうそう、これについても調べておこうと思っていたんだ。

 地脈を介して情報を集めてみる。が、あまり有益な情報は見つからない。一応、一時的に名前を付けられなくなっても、暫く時間を置けばまた名前を付けられるようだ。ただ、あまり名前を多くつけすぎるのは良くないとも記されている。何のことだかわからないが、そこには分相応というような意味が見受けられた。なんにせよ、今後の名付け時には少し注意を払っておこう。


 とりあえず今は、あとの九十六匹を召喚していく。

 ゴウからハチの名前を与えたケーブラットたちは、病魔の森の四方へと向かわせ、他のケーブラットたちからの情報をまとめ上げて、私の元へ報告するよう伝えてある。他にも名前こそ付けてはいないが、一応幾匹かのケーブラットたちにも連絡の要としての役割を与えておいた。

 あとは名付けを試すために、少量のケーブラットたちをダンジョンに常駐させておく。定期的に名付けを試して、より詳しい名付けの法則を探っていくためだ。それ以外のケーブラットたちは早速、病魔の森全体へ解き放つ。さてこれでラットたちの大量召喚は、一段落。

 次へ行こう。


 〈スキルの習熟度が一定値に達しました。スキル『加速思考』のレベルが1から2へ上がりました〉



 次は今後の事を考えてDPの節約をしつつ、戦力の補充と増強を行う方法を確立しておく。そのために、特定の魔物たちが持つ『繁殖』のスキルを活用する。最初の数匹はDPを消費して召喚するが、その後は『繁殖』による自然な増加を目指すのだ。

 特にダンジョン内だと、『繁殖』を持つ魔物たちは外よりも高い頻度で子供を産む。ダンジョンからの魔力供給により、体調が常に万全の状態で保たれているためだ。その代わり、常に魔力供給率を気にして、溢れる前に『繁殖』を止めるか、多すぎる魔物を魔力供給から除外してダンジョンの外へ間引く必要がある。

 もし、スタンピートの影響が残る今、また過剰な魔力の供給によるスタンピートを引き起こせば、次は今よりさらに致命的な状態にもなりかねない。だからこそ、これも危険といえば危険な行為だ。だが、この後に残っているものに比べれば、まだ対策は出来る。

 まず召喚した『繁殖』スキル持ちの魔物たちには、子供を産んだ際に私へ報告するよう命じておく。勿論、産まれた子供はすぐに配下へと加えて、同様の命令を伝えるのも忘れない。毎回の報告を処理する大変さはあるけれど、その代わりに気が付いたら手遅れなんて事にはならないだろう。さらに、ある程度数が増えて来たら、順次増えた魔物たちを病魔の森での狩りに送り出していく。今の病魔の森で生き残るのは大変難しいだろうが、そこで生き残り帰ってきた魔物たちはダンジョンの強力な戦力となるだろう。


 召喚する魔物は、『繁殖』のスキルを持つ魔物を魔物図鑑から調べて選んでいく。とはいえ、最初は知っている魔物から試していこう。

 長い目で見た戦力の補充とはいえ、出来る限り掛ける時間は減らしておきたい。そのため、DP効率が最良であるベビー種、所謂ベビーラットやベビーゴブリンなどはここでも選ばず、既に成体の魔物を召喚していく。

 まずはケーブラットを十匹。続いてゴブリンを同じく十匹、召喚。

 この合計二十匹の魔物たちは、当分の間、ダンジョン内でのみ生活してもらう。住処として提供するのは、空白となった第四階層の広い部屋。

 もし子供が産まれた場合は、すぐに私へ報告するように。与える命令はそれだけだ。特段『繁殖』を行えだとか、子供を増やせなどという命令はしない。この二種は『繁殖』を命令で止めなければ、どうせすぐに子供が産まれると経験から知っている。

 これで『繁殖』を利用したダンジョン戦力の補充と増強はいったん終了。

 次だ。


 〈スキルの習熟度が一定値に達しました。スキル『加速思考』のレベルが2から3へ上がりました〉



 次は黒牙を病魔の森へ修行に向かわせる為の準備。黒牙が出かけている間、代わりにダンジョンを守る防衛力の確保と、病魔の森の何処かにいる黒牙へ緊急の連絡を伝える手段の確保だ。最低限、この二つは用意しておかなければ、差し迫った現状であっても黒牙をダンジョンの外へは送り出せない。

 このダンジョンの切り札である黒牙を育てるのが現状の最重要事項であるとはいえ、肝心な時に黒牙が間に合わなければ、それはそれで意味が無いのだ。

 まずはダンジョンを守る防衛力の確保。

 単純な戦力増強と考えると、強力な魔物を召喚するという方法がまず思い浮かぶ。ただそれだとDPの消費が激しい。どうにかしてDPの消費を抑えつつ、ダンジョンの防衛力を今以上に上げる方法は無いだろうか?

 もう一つ考えたのは、ダンジョンの階層を増やしていく方法だ。こちらは侵入者を阻むのではなく、到達を遅らせるという考えである。

 階層を増やしていけばそれだけ弱点であるダンジョンコアはダンジョンの入り口から遠ざかるし、安心感も増す。が、こちらにも少なくないDPを消費する。第五階層では短い通路を一つ作るだけでも5,000DP、小部屋の作成は一つ50,000DPも掛かってしまう。第六階層の追加でも600,000DPは消費するし、結局は強力な魔物の召喚と変わらないほどのDPが必要となる。


 いや、そもそも階層を増やすだけがダンジョンコアを入り口から遠ざける方法では無い。

 例えばそう、第一階層を広げてみるのはどうだろう?

 第一階層なら第五階層を拡張するよりも、五分の一のDPでダンジョンを広げることが出来る。階層の追加には繋がらないが、ダンジョンの防衛力という観点から見れば結果的には殆ど変わらない。そこに思い至ってみれば、むしろどうして今まで思いつかなかったのだろうと思えてしまう。どうやら私の中にはいつの間にか、ダンジョンを拡張するには階層を追加していくという固定観念があったみたいだ。いつからそんな固定観念があったのだろう?


 それはとにかく、まずは実践してみよう。もしかしたらこの固定観念もダンジョンコアの防衛本能に端を発したものだったら、行うことによりダンジョンに異常が起こるかもしれない。実際に行ってみたら階層による拡張できる広さ制限がある可能性もあるだろう。

 とりあえずは下の階層へ降りる階段までの距離を遠ざける感じに、通路と小部屋を配置していく。部屋を新たに一つ分と、通路を10,000DP分。よし、問題は無さそうだ。

 ダンジョンマップに表示された魔力供給率や、その他のステータスも確認しつつ暫く様子を見ていたが、特に変化は起きていない。大丈夫そうか?

 部屋を移動させるのにも少しDPを消費したので、これで殆どのDPが無くなってしまった。

 DPの少なさはやはり問題だ。黒牙には修行の合間に倒した魔物の魔石を回収してきてもらおう。黒牙のレベルを上げるために倒す魔物の魔石なら、一つ二つだってかなりのDPを回収できるはずだ。

 そのために一刻も早く、黒牙を修行に出せるようダンジョンの準備を整えなければ。

 防衛力にはまだ不安が残るが、DPが貯まれば第一階層をもっと広げていける。第一階層が広がれば、侵入者が第一階層を通過するための時間も長くなるし、ダンジョン内をより長く歩かせることで体力を消耗させることもできるだろう。その間に黒牙を呼び戻せばいいのだ。防衛力の強化という課題には、この方向性で進めていく事とする。


 次は、黒牙への緊急時の連絡手段の確保だ。これが意外と難しい。

 恐らく黒牙はこれから病魔の森中を走り回って、強敵との戦いを繰り広げていく。そして、黒牙の戦い方の基本は影に隠れて敵を狙う『暗殺術』を活用したものだ。

 黒牙の隠密性は非常に高い。なにせ、索敵に特化していたダイアウルフでさえ、ダンジョン内で黒牙を見失うことがあったほどなのだ。そんな黒牙を広い病魔の森の中から発見するのは至難の業である。

 それを加味した上で、確実に連絡を取れる方法となると、かなりの難題だ。

 今のところ候補として挙がっているのは、召喚した魔物に緊急事態を知らせてもらう方法。

 森中に散らしたケーブラットたちへ緊急事態を伝え、黒牙に伝えてもらう方法。

 音や煙を使って黒牙に緊急事態を知らせる方法の三つ。

 だが、どの方法を使っても、黒牙へ確実に緊急事態を知らせるには不安が残る。

 いざというとき連絡に不備があり、黒牙を呼び戻せないなんて可能性は、確実に排除しておかないと。


 限られた時間を『加速思考』で引き延ばし、暫く考えてみたけれどいいアイデアは思いつかない。下手な考え休むに似たり。結局のところ私がどれだけ知恵を絞ろうとも、何もかもを解決するアイデアなんて思い浮かばない。所詮は場当たり的に、その場しのぎを行っていくくらいが私の限界だ。

 一先ず思いついた方法を試しつつ、黒牙には近場で狩りを行って貰いつつ、他の方法が見つかるのを待とう。もしかしたら次の作業で、その方法が見つかるかもしれない。

 次はいよいよ、危険な大物に挑む予定だから。



 〈スキルの習熟度が一定値に達しました。スキル『加速思考』のレベルが3から4へ上がりました〉



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