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不滅のダンジョンマスター  作者: やみあるい
第二章 迷宮覚醒の章

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59.迫る危機と対策

あらすじ


ダンジョンに恐ろしい魔力を纏う化け物がやってきた。

竜の素材で作られた装備を身に纏う人間、【孤高の炎剣】イグニス。

そのステータスもまた【Aランク冒険者】の称号に相応しいものだった。

イグニスは複製体のゴブリンたちを瞬殺していく。

その行為はイグニスの強さ故か、通常よりも多くのDPを生み出した。

“私”は少しでも多くのDPを得るために、第一階層へ複製体を配置し直していく。

 【Aランク冒険者】イグニスは、第一階層の終着点である守護者の部屋に入った瞬間、ゴブリンリーダーたちに向けて斬撃を放った。最初の一撃は何とか避けることに成功したゴブリンリーダーたちだったが、避けることを予測して放たれていた次の斬撃は避け切れず、半数の部下たちが切り裂かれる。それに驚く暇もなく、イグニスはゴブリンリーダーたちとの距離を詰めると、長剣を一閃。それにより残るゴブリンリーダーやその部下たちも一掃されてしまった。

 あっという間の出来事であったが、さすがに複製体たちよりは善戦したほうか。それでもまだ、戦いと呼べるかは難しい所だが。


 前にやってきた【Bランク冒険者】の騎士たちは、ゴブリンリーダーと複製体の組み合わせに多少は苦戦したというのに。この【Aランク冒険者】は複製体を優秀な部下たちへと置き換えた今の状態ですら、一瞬にして戦闘を終わらせた。あの【Bランク冒険者】たちの実力が怪しかったというのを抜きにしても、イグニスの強さは尋常ではない。

 そもそも単独で動く冒険者というのがまず珍しい。少なくとも今までダンジョンに侵入してきた者たちの中では初めてのことだ。己の腕に相当の自信があるということなのだろう。



 とはいえ、第一階層の守護者たちが倒れたことで、18,800DPものDPが入ってきた。

 これで現在のDPは31,550DPだ。あっという間にDPが増えていくのは嬉しいけれど、その分だけ侵入者は着実に近づいてくる。

 次の階層にいる複製体は、レッサーウルフとファングウルフ。

 こちらも当初より数が減って、残っているのはレッサーウルフが8匹と、ファングウルフが5匹だけ。これらはそのまま向かわせるとして。

 レッサーウルフの通常召喚に必要なDPは100DP。一方でファングウルフの方は500DP。こちらも魔力供給率から言えばレッサーウルフの方が、より多くの複製体を用意できる。だが、最終的な効率で考えてみると、こちらはファングウルフの方が、良さそうか?

 ああ、ダメだ。効率をゆっくりと暗算している時間はない。侵入者は今もなお、ダンジョンの奥を目指して進んでいる最中なのだから。

 時間が足りない。時間が足りない。時間が足りない。

 こんな所でも私は時間というものに苦しめられるのか。

 私は少し迷った末に、ファングウルフの複製体を記録複製から生み出していった。

 複製体として生み出されたファングウルフはダンジョンの中を一直線に走り、侵入者の元へ向かい、そこであっさりと切り伏せられていく。それが正しいのかは分からないが、今は反省に時間を使う余裕は無い。割り切って、思考から外してしまおう。


 続く第三階層は、複製召喚したレイスが、まだ多めに残っていた。どうやら第一階層から始まった複製体の実体化は、ダンジョン内に蓄えられていたDPが枯渇した影響か、第三階層のレイスを半ばほど実体化させた所で終わったようだ。

 実体化した分のレイスは黒牙が『闇魔法』で倒してしまったが、他の階層よりはまだ無事な複製体が残っている。これなら少し複製召喚を行えば、すぐに許容量まで埋まるだろう。

 こちらのレイスの複製体たちにも侵入者が第三階層へ踏み込んで来たら、順次襲いに向かうよう命令した。


 こういう時に『並列思考』のスキルを持っていれば、考えながら作業も出来たのだろうに。今、考えても仕方がないことだけど。

 なんにせよ、これで少しだけ私にも考える時間が出来た。



 このまま順調にいけば、DPはある程度貯まるだろう。

 ならば次の問題は、このDPをどう使うかだ。

 最初に思いつくのは戦力となる魔物の召喚。だが、現状までに貯まったDPから考えて、限界ギリギリまで貯めたとしてもあまり強い魔物を召喚することは出来ないだろう。

 そもそも通常の方法で召喚した魔物は、例外なくレベル1の状態で召喚され、最初は種族の持つ基本的なスキルしか使えない。あの侵入者を相手にするのなら、足止め程度であろうとも最低Bランクは欲しい所だ。だが、この貯まり方ではどう頑張ってもBランクを一匹呼ぶDPすら貯まりそうにない。

 ならば、装備はどうだろう?

 上等な装備を召喚してゴブリン部隊に与えるのだ。本調子では無いとはいえ、ダンジョンに人間が攻め込んできた今、さすがに配下たちも戦う意思を見せている。そんな彼らを強化するのだ。少なくとも召喚したばかりの魔物よりは頼もしい。それに、彼らなら黒牙との連携も慣れている。

 だが、それで劇的に戦力の差が縮まるという訳では無い。

 果たしてEランクとDランクの集まりであるゴブリン部隊の者たちが、どれだけあの侵入者の強さに迫れるのだろうか?

 装備による強化を行うのであれば、最低でもあのイグニスが装備しているレベルの武具は揃えたいところ。そうでなければ、劇的な変化は見られないだろう。

 確認した武具を宝図鑑で調べたところ、一応召喚することならば可能らしい。アイテムを吸収せずともダンジョン内に持ち込まれた時点で、宝図鑑に登録されるこの新しい宝図鑑の機能は本当に便利だ。

 まあそれでも、問題はある。召喚するためのDPがとんでもなく高いのだ。あれ一式を揃えようとしたら、Bランク魔物を召喚する方が安いくらいのDP消費が必要である。

 具体的に数字を上げると、火竜の長剣が1,000,000DP、火竜の盾が700,000DPで、火竜の軽鎧が1,500,000DP。これでは、このうちの一つを召喚することすら難しい。結局、今のDPではダメなんじゃないか。

 他に出来ることは……、部屋や通路を追加して階層を増やすか? いや、これも今更だ。稼いだDPで増やせる距離などたかが知れているだろうし、ダンジョンの格を上げるにしてもDPが足りなさすぎる。



 元々、ダンジョンコアの機能はダンジョンを構築するという性質からか、事前に防御を固める為の機能が多く、強者が侵入してきた時、即座に対応出来る様な機能はほぼ無い。

 ダンジョンコアの機能では、この事態に対応できない。第二階層を侵入者が突破する時間を消費して私が辿り着いたのは、そんな絶望的な答えだった。

 やはり、あれに手を出さねばならないのか。

 絶望的な答え。だがそれは、逆に私が危険な選択肢へ新たに手を伸ばす為の後押しとなる。

 ただでさえ死と隣り合わせの状況下で、命を懸けた博打など打ちたくはない。だが、それ以外に方法が無いというのであれば、覚悟を決めるしかないだろう。

 私が選択肢から除外していた危険な選択、それはダンジョンコアの機能に無い力を使うことだ。この追い詰められた状況に至った根本的な原因の一つである、あのスタンピートを引き起こした特殊なダンジョン拡張のように。だが、あの時よりは多少の安全性がある。なにせこれには、似たような前例が既にあるのだ。

 私がやろうとしていることは、神による信者への祝福。いや、今回の場合は魔王による配下の一時的な強化の方が近いだろうか。どちらでもいい、やることは多分変わらない。

 神のものはともかく、魔王の持つこの力は、本来ならばダンジョンコアにも備わっている力のはずである。実際に機能としても端々に似たような特性の片鱗は見られた。なのに、それを直接行うような機能は存在していない。

 恐らくダンジョンマスターがそれを扱うには、某かの欠点があるのだろう。私がダンジョンの目印を弄った結果、スタンピートを引き起こしてしまったように。

 ダンジョンコアの機能とは基本的に永続することを目的に作られている。それは例えるなら、ダンジョンの階段部屋に配置できる守護者への強化のように。あれは恐らく使える領域を制限することで力をスムーズに送り、かつ力の上昇段階を抑えることでダンジョンへ流れる魔力のみで全てを成立させている。

 だが、祝福による強化の力は場所を選ばず、酷く瞬間的なものだった。あれは膨大な力を一瞬にして消費し尽くしてしまうような、そんな力の使い方なのだ。それに、消費するのは恐らく魔力では無くDP。これではダンジョンコアの在り方とは対極だ。

 だが、今の私にとっては、これ以上ない程に最適な力の使い方といえる。たとえ全てのDPをこの一瞬の強化に費やしてしまったとしても、この状況を打破できるとするならば悪くは無い。


 この力の使い方は、まだ完全に分かった訳では無いけれど、ある程度の推測は付いている。

 これを行う上で重要となるのは、強化に使う力と絆の存在だ。

 強化に使う力に関しては、DPで問題無いだろう。問題は絆の存在。

 分かっているのは、神は信仰で絆を作り、魔王は支配により絆を作るということ。私は召喚により始めから絆が存在しているので、あとはこの絆をどれだけ強められるか。

 絆を強めるという事で思いつくのは、名付けという行為だ。あれはかなり強く、絆を強めることが出来ていた。その代わりに対象が死んでしまうと、絆で繋がっていたこちらにも深い痛みや苦しみが伝わってくる。それが嫌でゴブ太たちが死んでからは、名前を付けずに配下たちを使っていたのだが。あの侵入者を相手にするのであれば、そんなことに臆してなどいられない。出来ることは全てやっておくべきだ。

 それに、私が名前を与えることは、それ自体が配下たちの強化にも繋がる。ゴブ太たちに名前を与えた時よりも、私はずっと成長した。強い力を持つ者が名を与えれば、それだけその名には強い力が宿る。ゴブ太から以前聞いたことを思い出す。地脈にも似たような概念が記されていたから恐らく間違いはない。


 まずは一番戦力になりそうな戦闘部隊の配下たちから。

 戦闘部隊は現在4部隊20匹。名前を20も考えるのか。区切っても多いな。名前を考えるの苦手なんだけど。まあそんなことも言っていられない状況である。

 黒牙たちの時のように考える時間も無いし、数字を絡めた単純な奴でいいか。

 まず戦闘部隊の隊長格から順番につけていく。

 イチ、ニイ、サン、シイ。

 このまま部隊の者たちにも名前を割り振っていこう。次は、ゴウ……うん?

 名前を付けた感覚が無い。配下のステータスを確認してみるも、イチからシイまではしっかりと名前として認識されていたが、ゴウだけ名前が付いていない。

 他の奴はどうだろう? ゴウ、ゴウ、ゴウ。一匹一匹、配下に名前を付けようと念じながらステータスを確認していくが、名前はつかない。

 じゃあ、他の名前は? ご、五郎、後藤、豪。ダメだ。どんな名前をつけようとしても、名前がつかない。一人が名前を付けるのに上限でもあるのだろうか? それとも、一気に沢山の名前を付けられない?

 地脈を調べれば何か情報があるかもしれないが、それにはある程度の時間が掛かる。今は一先ず、この疑問は『記憶』に留めて置き、後で時間がある時にでも改めて調べよう。

 結果的に名前を付けることが出来たのは戦闘部隊の隊長たち四匹。絆を強められた配下たちは、黒牙を合わせても五匹だけ。大分少ないが、仕方ない。

 さて、あの侵入者はどうなっているだろうか?



 フォレストウルフ率いる第二階層の守護者たちは、その速度を駆使してイグニスを翻弄しようとしたようだが、あっという間に追いつかれ斬り捨てられてしまったようだ。

 そうして私が配下たちへ名前を付けている間にも、イグニスは第二階層を突破。第三階層へ歩を進めていた。第三階層は新たに配置したレイスの複製体が蠢く階層。

 物理攻撃の効かない奴らならもしかして、などと思ったりもしてみたが、そんな淡い希望は一瞬にして砕け散った。

 レイスを目にした瞬間、イグニスは手にした剣に炎を灯す。そして炎を纏った剣を振るうと、レイスは霧散し、その場に魔石を残して消えた。レイスとの戦闘により600DPが生成される。

 ああ、また一撃で終わってしまった。少しでも希望を持ってしまったせいであっさりと終わってしまったことが余計に辛い。

 そうしてまた、イグニスはダンジョン内を進んでいく。


 道に迷っている様子は無いし、罠も全て避けている。それでいて他の冒険者たちと違って宝箱にも興味は無し。それにしては時間が掛かっていると思ったら、イグニスは何度かダンジョンの途中で立ち止まっていたようだ。立ち止まる度に、イグニスの片目近くに魔力が集まる。どうやら観測者のモノクルを使っているようだが。

 何かを探している? もしくは何かを調べているのだろうか? 何か嫌な予感がする。

 何をしているのかは分からないが、どちらにせよ途中で戻る気は無さそうだ。



 第四階層に唯一残った部屋へ、ゴブリン部隊とウルフ部隊を集めている。第三階層にはまだ守護者を置いていないので、階層を突破されたらすぐにでもイグニスは第四階層へ上がってくるだろう。さて、こちらの準備は出来ているだろうか?

 最終的に集まったのは、53,150DP。配下たちの強化にどれだけのDPを消費するかわからないので、稼いだDPには一切手を付けていない。細かな部分で少しずつ消費するよりも、効率の良い強化に全てを賭けた方が良いという理由もある。

 強化方法についてはまだ確信がある訳では無いけれど、予想だけは出来ていた。名前を付けた全員に強化を送れるかは、実際に強化を発動した時にしかわからないので今は保留。最悪の場合は、黒牙一匹に強化を掛ける。

 作戦は単純だ。ゴブリン部隊とウルフ部隊の全てを囮として、黒牙の一撃に懸けるのみ。

 今まで黒牙に影から狙われた者たちは、確実に息の根を止めている。実績があるのだから、それが最も勝算が高い戦法だろう。とはいえ、相手もまた今まで見てきた者たちとは桁違いの実力者だ。実際にどうなるかは、やってみなくては分からない。

 どちらにせよ、死闘となることだけは確実だろう。



 もし、何もかもが裏目に出たら、私はここで死ぬかもしれない。

 それは嫌だ。何かもっと他に方法は無いのか。ああ、逃げたい。

 何処か遠くへ逃げ出してしまいたいのに。

 私にはそれが出来る身体が無い。

 来てほしくないと思いつつも、さっさと終わってほしいとも思っている。

 殺されてしまうのか、殺せるのか。

 その結果は私の思いとは関係無く、すぐ側までやって来ていた。




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