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不滅のダンジョンマスター  作者: やみあるい
第二章 迷宮覚醒の章

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58.Aランク冒険者

あらすじ


一時的に魔力の供給が切れたことにより、ダンジョン内にスタンピートが発生した。

その衝撃により配下たちとの絆が弱まり、複製体が実体を持って暴走している。

黒牙の力を借りてなんとか暴走は抑えられたが、幾匹かの暴走体を逃がしてしまった。

残る課題は魔力供給の弱体化と、配下からの不信、そしてDPがゼロになったこと。

何もできない“私”は、時が全ての課題を解決してくれるのをただ待つ。

 スタンピートの影響で各部隊を病魔の森へ派遣出来なくなってしまった訳だが、まだダンジョン内でダイアウルフにダンジョンへ近づく者を報告させるくらいのことは出来る。

 ダイアウルフの探索範囲は私の探索範囲よりも広く、またその探索技能も精密だ。

 だからこそ、最初に気が付いたのは、ダイアウルフであった。

 突然、気配を強めて臨戦態勢へと移行したダイアウルフ。私がその理由を訊ねると、ダイアウルフはただ、恐ろしいものが近づいてくるとだけ伝えてくる。ダイアウルフをダンジョンの奥へと下げて暫くした頃、ようやく私にもその気配と魔力が伝わってきた。

 猛々しき灼熱の劫火を連れて、それは病魔の森を突き進んでくる。私が逃げられぬ身である事を忘れ、逃げ出すことを考えてしまう程に、その魔力は常軌を逸していた。人間のような、魔物のような何かが一直線にダンジョンへと近づいてくる。

 怖い。怖すぎる。何なんだ、あれは。

 その強さを感じて思い浮かべるのは、祝福された状態の見習い勇者、ライガス・グラストフィアの姿。少なくともアレに近い化け物が、私に向かって進んできている。万全の状態であろうとも、アレを相手にするならば決死の覚悟が必要なのに。今の私はといえば、魔力供給は未だ元に戻っておらず、DPもまだ全く貯まっていない。

 そんな私に出来ることはせいぜい、配下たちに命令を送ることぐらいだ。だがその配下も、複製体の数は元の半分以下で、ゴブリン部隊、ウルフ部隊は本調子では無く、本格的に使えるのは黒牙のみというのが現状である。

 今回こそはもう、天の助けならぬ魔王の残滓による助けも期待出来ない。

 正真正銘、ここにある戦力だけで何とかしなければいけないのだ。

 いや、まだあの化け物がこのダンジョンにやってくると決まった訳では無い。考えてみれば、真っすぐ進んできているとはいえ、近くの強力な魔物を狩りに来ているだけという可能性もあるにはある。まあダンジョン付近で強力な魔物の縄張りを見つけたという報告は無いので、限りなく少ない可能性ではあるけれど。

 そんな楽観に逃げてしまいたくなるくらい、現状は最悪ということだ。

 とりあえず、落ち着こう。落ち着け。

 私のダンジョンにある戦力で、アレを打倒出来る可能性があるとすれば黒牙だけだ。頼もしい事に、見習い勇者と魔王の残滓が戦った時の記憶は、黒牙の中にも残っているらしい。

 問題は、その黒牙ですらも倒せるか分からないという点である。



 私はあの見習い勇者が襲ってきた時から、切り札である黒牙をずっと側に置き続けた。本当なら第二、第三の見習い勇者が来る可能性を見越して、黒牙という牙を研ぎ続けるべきだったのだ。病魔の森へ狩りに送り出して、その牙を研ぎ続けるべきだった。

 でも、私は怖かったのだ。黒牙を病魔の森へ送り出した隙に、侵入者がやってきてダンジョンコアを破壊する可能性が。とても、とても、怖かったのだ。

 それはダイアウルフが精密な索敵を担当し始めても、変わらなかった。

 その選択の結果が今、私に降りかかっている。

 何もかもが、裏目に出ていた。何もかもが、うまくいかない。

 ああ、こんな気分は久しぶりだ。まるで、人間だったころのよう。

 益体も無い事を考えてしまう。選択しなかった選択の結果など、今更考えた所で何の意味も無いというのに。

 そうこう考えている間にも、化け物の気配はダンジョンへと近づいてくる。もはや、ここを目指していることは明白だった。

 覚悟を決める時が来たのだ。



 人間の形をした化け物がはっきりと認識出来る距離にまで近づいた時、私は炎を纏った赤い竜を幻視した。すぐに私はその正体を、人間が纏う魔力であると理解する。ここまではっきりとしたイメージを促す魔力を感じたのは初めてのことだ。

 その魔力の形からして恐らく、この人間が纏っている武具に使われているのが赤い竜の素材なのだろう。

 勿論、その人間が発する気配も尋常では無いけれど、私が化け物と認識し、ダイアウルフを臨戦態勢に移行させたのは、明らかにあの武具の発する魔力だ。

 人間が、ダンジョンへ一歩を踏み込んだ。私はすぐさま、人間のステータスを確認した。



 名前:イグニス

 種族:人間 職業:魔術剣士

 年齢:31

 カルマ:-8

 LV:57/99

 スキル:『観察LV7』『体術LV8』『記憶LV5』『筆記LV5』『速読LV5』『採取LV7』『魔力感知LV8』『気配察知LV8』『生活魔法LV8』『剣術LV10』『盾術LV9』『魔力操作LV8』『魔術理論LV7』『算術LV5』『高速詠唱LV5』『交渉LV5』『威圧LV3』『並列思考LV5』『解体LV5』『忍び足LV3』『夜目LV3』『閃剣術LV3』『罠感知LV5』『地形把握LV5』『再生』『魔剣術LV5』『火魔法LV3』『火耐性LV3』

 称号:【魔導王国スカラビの民】【賢者の塔所属】【Aランク冒険者】【魔術の探求者】【ダンジョン踏破者】【コア破壊者】【竜殺し】【生残者】【孤高の炎剣】



 続いて、魔物図鑑と同様に新しく宝図鑑へも追加された機能を使い、ダンジョンに持ち込まれたことで宝図鑑へと登録された人間の持っているアイテムの中から、特に注意すべきと思えるアイテムも合わせて調べていく。



 観測者のモノクル

『鑑定』スキルを魔術で再現したアナライズの術式を付与したモノクル。

 視界に収めることで対象の情報を引き出すことが出来る。


 火竜の長剣

 火竜の牙を加工して作られた長剣。

 魔力を通すと、火を自在に操る力を使い手へ与える。


 火竜の盾

 火竜の鱗を加工して作られた盾。

 火を弾き、相手へと返す力を持つ。


 火竜の軽鎧

 火竜の鱗を素材として作られた軽鎧。

 使い手に火への耐性を与える。



 ああ、呆れるほどに強い。当人の実力も勿論だが、その装備も十分に、あの見習い勇者と同じ【Aランク冒険者】に相応しいだろう。レベル57というの一つとっても十分な脅威だが、それ以外にしても侮れる部分は一つもない。だが、何とかしてこの相手に勝たなくては。そのためにも、今はこの侵入者の情報が必要だ。


 まず、スキルの中で気になるのは、『魔剣術』『閃剣術』『再生』辺りか。

『魔剣術』は、確か以前ゴブ太の集落を襲ったゴブリンロードが持っていたスキルだ。後でゴウグゥから聞いたところによれば、魔力を剣に纏わせて戦う為のスキルなのだとか。

『閃剣術』は知らないスキルだが、『剣術』のレベルが10になっていることを考えると、こちらも件のゴブリンロードが持っていた『重剣術』と同じ上位スキルだと思われる。『剣術』系のスキルは10にまで至ると、より専門的なスキルが新たに派生するらしい。

『再生』に関してだけは、完全に情報が無い。レベルの表記が無い事から、特殊なスキルであろうことだけは分かる。あとはまあ、字面から単純に考えて、自身の傷を再生するスキル、とかだろうか? だとすれば、この侵入者は持久戦もいけるわけだ。

 他にも『威嚇』の上位スキルである『威圧』や、私が欲して止まない『並列思考』等も優秀なスキルが揃っている。それに全体的なスキルのレベルも高い。


 一方、称号で気になるのは、何と言っても【コア破壊者】と【竜殺し】だろう。

【コア破壊者】は、すでに一度見ている。見習い勇者が持っていた称号と同じ。私の天敵である証だ。この称号がある時点で、この侵入者の目的も分かろうというもの。

 魔物なら魔王となるためにダンジョンコアを破壊するのだろうけれど、こいつらは一体何のためにダンジョンコアを壊すのだろう? 気にはなるが、今は一先ず置いておこう。

 問題はもう一つの称号【竜殺し】。正直、冗談だと思いたい。これが仮に正しい称号だというのであれば、このイグニスという【Aランク冒険者】は、その身に纏う装備に使用した火竜を、己で仕留めた可能性が高いということだ。

 竜の強さに関しては地脈にはっきりと刻まれていた。成竜となった竜の実力は、最低でもBランク。大抵はAランクで、高位になればSランクに至るものもいるという。

 Aランクとは魔王の領域。そしてSランクは、今も人間たちの記憶に刻まれているらしき大魔王、魔王の残滓の元となった魔物の領域だ。

 さすがにそこまでの竜では無いと思うが、最低であったとしてもBランククラスの魔物を倒せるという事実は覆らない。

 少し稀少な個体であるとはいえ、黒牙はまだCランク。黒牙の得意分野を加味せずとも、出来る限り正面からの戦いは避けるべきだろう。

 勇王国とは直接関係無さそうなことだけが、唯一の救いといった所か。



 イグニスという名の冒険者は、ダンジョンの入り口付近で立ち止まると、その場で周囲を観察し始めた。片目付近に魔力が集中している。恐らくイグニスのつけている観測者のモノクルというアイテムを使用しているのだろう。簡易な説明文では、いまいち何処まで情報が引き出せるのか分かりづらい。

 初めてダンジョンに侵入してくる者たちが、ダンジョン入り口でダンジョン内を警戒することはままあることだ。しかし、ここまで深くダンジョンを観察していることは珍しい。

 スキルや称号から見ても、今回のダンジョン探索が初めてという訳でもなさそうなのに。

 一体何をしているのだろうか?

 何か喋ってくれれば状況も掴めそうな所なのだが、たった一人で来ているのもあってか、イグニスはずっと黙ったままだ。いっそこのまま帰ってくれれば有難いのだけれど。


 ダンジョンの壁面をじっと観察していたイグニスは、暫くして納得したのか立ち上がると、ダンジョンの奥へと足を進めだした。

 やはり、来るか。

 とりあえずゴブリンの複製体を二匹ほど向かわせる。

 向かったゴブリンの複製体二匹は、イグニスの視界に入った瞬間に気配が消えた。

 イグニスは剣を抜くと、軽く振るう。それだけでゴブリンの複製体は二匹とも切り裂かれていた。斬撃を飛ばしてきたのだ。いつかのゴブリンロードや見習い勇者も斬撃を飛ばしていたので、一定以上の技量があればそういうことが出来るのだろう。

 このレベルの侵入者だとゴブリンの複製体程度では、足止めにもならない。

 だが、一つ嬉しい誤算があった。DPがつい先ほど確認した時より1,000DPも増えている。


 強い侵入者がダンジョン内で戦闘を行えば行う程、DPは増えていく。それは分かっていたけれど、【Aランク冒険者】級の侵入者が、これほどのDPを生み出すとは。それもあのような戦闘ともいえぬ一瞬の出来事で。

 ゴブリンの複製体一匹につき、500DPということは、もしかして通常召喚時の必要DPが上限なのだろうか? 相変わらず、どのような方法でDPが算出されているのかもわからないし、どの程度のDPが生み出されるのかといった細かな情報はダンジョンコアの基礎知識にも記されていないので、経験から調べていくしかない。

 とりあえず今度はゴブリンと合わせてゴブリンファイターも向かわせてみると、同じように一瞬で倒されてしまったが、その瞬間に1,300DPが入ってきた。

 ゴブリンファイターの通常召喚に必要なDPが800DPなので、通常召喚に必要なDPが上限である可能性は高い。

 とりあえず一匹につき、これだけ増えていくというのなら、ダンジョン内にいる全ての複製体を向かわせて少しでもDPを稼いでおこう。ついでに魔力供給率が許す限りの複製体を記録から複製し、向かわせる。

 DPが増えれば私に出来ることも増えていく。今更少量のDPを稼いだところでどうなるものでも無いかもしれないが、何もしないよりは幾分かマシだ。


 スタンピートを乗り越えてダンジョンに残っていた複製体のゴブリンは五匹。ゴブリンファイターに至っては元々の数が少なかったこともあって、たったの一匹だ。

 先ほど侵入者にゴブリン三匹とゴブリンファイター一匹が倒されてしまったので、残る複製体はゴブリン二匹だけである。

 ゴブリンファイターの方が一匹の生み出すDPは多いけれど、その分、魔力の消費も多い。今はまだ魔力供給率に不安もあることだし、ゴブリンの複製体に絞って記録複製していこう。


 ニ十匹のゴブリンを記録複製で生み出した所で、私は第一階層での複製体の生成を止めた。魔力供給率の変動を考えるとこれ以上は危険だ。

 これで増えたDPは12,300DP。元のDPも合わせると、12,750DPである。



 そして侵入者は第一階層の守護者の部屋の扉に手をかけた。

 果たして第一階層の守護者たるゴブリンリーダーたちはどのくらい持ってくれるだろうか。




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