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不滅のダンジョンマスター  作者: やみあるい
第二章 迷宮覚醒の章

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57.氾濫と反乱

あらすじ


“私”は十全に使えるようになった自身の機能を使い、ダンジョンの整備を行っていく。

第三階層には複製召喚を用いて、レイスの複製体を配置する。

次に第四階層の整備へ移った“私”は、そこで機能には無い力を試してみることにした。

“私”は『空想空間』を使った思いつきにより、機能の制約をすり抜けることに成功する。

嬉々として第四階層を自由に改装した“私”は、さらにそこで魔法をも習得することに成功。

しかし、それが思いがけない事態を引き起こすことに、“私”はまだ気が付いていなかった。

 何だか、重苦しい感じがする。

 それは私がダンジョンコアとして覚醒していたからこそ、感じられた変化だろう。今の私はダンジョン内の変化を、まるで己の身体に起こった不調のようにはっきりと感じとれる。

 そのお陰で私は、ギリギリでそれに気が付くことが出来た。

 急いでダンジョン内に『魔力感知』を走らせると、ダンジョンコアから上階へ向かって流れているはずの魔力が、どういう訳か第一階層に届いていない。

 魔力の流れを辿ってみると、その原因はあっさりと判明した。ダンジョン内の魔力の流れが、部屋や通路という目印を外した第四階層で停滞してしまっていたのだ。

 そうなれば当然、第三階層より上に魔力が流れなくなる。

 では、魔力が流れ無くなればどうなるか。ダンジョンの内部にあるものは基本的にダンジョンの魔力を使って稼働しているのだ。本来は行き渡るはずの魔力が止まれば、それらはうまく働かなくなる。

 それだけではない。ダンジョンの壁や天井、地面に至るまで、魔力により強化されることで崩落しないように固められている。それらも魔力が無くなれば脆い土壁へと代わり、いずれは崩壊するだろう。

 ダンジョン内での魔力の停滞は、ダンジョンの全てに機能不全を引き起こすのだ。


 不味い。それを理解した瞬間、私は即座にひとまとまりになった部屋へ、部屋の目印を付与した。やり方は先ほど外したのと逆に、DPを消費する感覚を思い出しながら、『空想空間』を介して、残していた部屋の目印を付与するように念じるだけ。元の小部屋からはかなり大きさが変わってしまったけれど、部屋の目印はひとまとまりになった部屋へ問題なく付与された。それなりのDPを消費したようだが、それを言っていられる状況ではない。そうしてダンジョン内の魔力の流れはまた、正常な状態へと戻っていった。


 僅かな時間だったからそれほど被害は出ていない、と、思いたいが。

 何やら第一階層と第二階層が騒がしい。どうやら早速、影響が出ているようだ。

 そう思った矢先だった。


 〈ダンジョン内でスタンピートが発生しました〉


 そんな文字が、暗闇に表示される。

 スタンピート。その言葉は私の記憶を強く刺激して、あの日の事を明白に思い起こさせた。

 あれは十年ほど前の話だ。まだこの世界に転生したばかりの頃、このダンジョンがまだ、ダンジョンと呼ばれる前。私は神の施した封印により世界から独立したこの場所で、鼠の魔物を召喚した。召喚した魔物の名はベビーラット。それは時と共に成長し、ケーブラットへと進化を果たした。

 キングとクイーン。私がそう名付けた最初の二匹は、放っておいたらどんどん『繁殖』を繰り返し、閉鎖された空間はあっという間に魔鼠たちにより埋め尽くされた。

 そうして、あの当時はまだ知る術がなかったダンジョンの魔力供給率が破綻したのだ。

 魔鼠たち一匹一匹は、それほど魔力を消費しない。でも、鼠算式に増えたラットたちの数は、膨大だった。塵も積もれば山となる。そうして、スタンピートは起きたのだ。



 基礎知識にスタンピートの情報があった。それによればスタンピートとは、魔力供給率を越える魔力をダンジョンが使用した際に起こるダンジョンの暴走だ。

 それにより起こる現象は大まかに三つ。

 一つ目はダンジョン内の魔物の暴走。

 二つ目は魔力供給の停止による一時的な罠や施設の停止。

 そして三つ目がスタンピート後、ダンジョン内の魔力が暴走したことによる魔力供給の一時的な弱体化だ。

 これらすべては、ダンジョンの弱体化に繋がっている。

 早速私は、ダンジョンの第一階層、第二階層、第三階層に意識を向けていく。

 二つ目の罠や施設の停止も問題といえば問題だが、幸いなことに今回は魔力供給が百パーセントを越えた事で起こった訳では無く、一時的に断絶されたことで起こった事態なので、もう既に罠や施設は再稼働している。

 直近での問題は一つ目、ダンジョン内の魔物たちの暴走だ。

 万が一を考えて、一時的に全ての配下たちを事前にダンジョンへ集めていたことが裏目に出てしまった。

【――――の眷属】を持つ者たちは、少し嫌な気分になっている程度で問題は無さそう。

【――――の配下】を持つ者たちは、魔力が断絶した際に痛みを感じたらしく、不満の感情が『伝心』を通して伝わってくる。

 今まで配下となった魔物たちが、そんなあからさまな感情を私に向けてくることは無かった。特に今いる魔物たちは、私が召喚した魔物たちだ。最初から私への忠誠心は非常に高い。それでもなお、そんな感情を表すということは、スタンピートがそれほどの苦痛をダンジョン内の魔物たちに与えるということなのだろう。それでも今すぐにどうなるという訳では無いようだが、これはちょっと後で何かしらの対処を考えるべきか。

 まあそちらは後でいい。それらとはまた別に暴れる魔物たちに対処しなければ。


 それらは、私の眷属でも配下でも無い魔物たち。

 だというのに、ダンジョン内に始めから存在した魔物たち。

 あまりの変わりように一瞬、私はそれらがどこから現れたのか分からなかった。

 第一階層には、ゴブリンとゴブリンファイター。第二階層には、レッサーウルフとファングウルフ。整備したばかりの第三階層には幸いなことに暴走している魔物はまだいないようだったけれど、これだけ暴れる魔物たちの種族が揃っていれば、出所の想像はつく。

 これらは、複製体だった魔物たちだ。

 正確に言うのであれば、だった、というべきか。暴れる魔物たちのステータスからは複製体の称号が消え、その魔物たちから感じる気配も、魔力も、これまでの数倍以上にまで膨れ上がっている。その中でも最大の問題点は、私に敵対しているということだ。暴れる魔物たちからは、私への強い敵意を感じる。

 そもそも魔力で形作られた複製体が、なぜ実体を持っているのか。その原因は自身のステータスを見たことで見当がついた。



 名前:――――

 種族:ダンジョンコア

 年齢:16

 カルマ:+5

 ダンジョンLV:5

 DP:0DP

 マスター:無し

 ダンジョン名:病魔の森のダンジョン

 スキル:『不老』『精神的苦痛耐性LV9』『空想空間LV8』『信仰LV7』『地脈親和性LV8』『気配察知LV7』『魔力感知LV8』『伝心LV7』『読心LV7』『記憶LV6』『土魔法LV1』

 称号:【異世界転生者】【□□□□神の加護】【時の呪縛より逃れしモノ】【聖邪の核】【鼠の楽園】【惨劇の跡地】【E級ダンジョン】



 かなり使ったとはいえ、まだ多少のDPは残っていたはずだ。それが、完全に0となっていた。どうやらこれを使って、奴らは複製体から実体を得たようだ。それに加えて、全体的な能力まで向上させている。

 厄介だ。感じる能力の向上は、ランク一つ分ほど。つまり、守護者クラスの強化を得ているということになる。それらの魔物が弱ったダンジョン内で暴れているのだ。

 さすがに暴れる魔物たちがすぐ、ダンジョンコアまで到達するということは無いだろうが、このまま放っておくわけにもいかない。

 だがだからといって、今の状態で【――――の配下】の称号を持つ、ゴブリン部隊やウルフ部隊を使うのは少し不味いだろう。無理をして最悪、彼らまで敵対したら大変なことになる。ここは切り札であり、私に残った唯一の眷属、黒牙に頼むか。


 ――黒牙、ダンジョン内で暴れている敵対する魔物たちを狩ってきてくれ


 私の命令を受けて、黒牙がダンジョンコアの置かれている部屋から飛び出していった。

 第二階層のレッサーウルフ、ファングウルフ。第一階層のゴブリン、ゴブリンファイターと、すごい勢いで気配が消失していく。

 奴らの強さは現在、およそDランク相当。一方の黒牙はCランク。その上、黒牙には魔王の残滓の力の片鱗が残っている。勝負にならないことは分かっていたが、それでもここまで素早く倒せるとは。

 とはいえ、幾匹かの魔物たちは、黒牙が動く前にダンジョンの外へ出ていってしまったようだ。出来ればダンジョン内で全てを倒しておきたかったのだが。仕方ない、か。

 ダンジョン周辺に奴らの気配はもはやなく、探すことは難しい。ウルフ部隊をすぐに動かせれば、匂いで後を追うことも出来るだろうが、そこまでする必要は無いだろう。

 あの強化はかなり歪なものだったので、そうそう長続きするとは思えない。ならばあのまま病魔の森を彷徨えば、どうせどこかで、他の魔物か、人間たちに狩られるはずだ。奇跡でも起きて生き残り、力をつけてダンジョンに攻めて来たら大変なことになりそうではあるけれど、どちらにしてもまだまだ先のことである。

 ダンジョン内に残った最後の一匹を黒牙が倒し、それでダンジョン内から敵対する魔物たちの気配は無くなった。

 魔物の暴走はこれで一応の決着だ。

 だが、スタンピートの影響は、ここからが本番である。



 スタンピートにより引き起こされる三つ目の現象。

 スタンピート後、ダンジョン内の魔力が暴走したことによる魔力供給の一時的な弱体化。

 魔力の供給が下がったことにより、ダンジョン内の魔力供給率が軒並み上昇している。

 前のスタンピートの際には気付かなかったが、ダンジョンとして魔力供給を潤沢に使用している現在では大問題だ。

 幸か不幸か実体化した複製体は、もはや蘇生することは無い様子。そのためその分が大幅に減ったせいで、魔力供給率が百パーセントを越えることは無かったけれど、このままではダンジョンの防衛力が低下したままになる。とりあえず、現在の魔力供給率で賄える程度に複製体の補充をしていきたいところだけれど。

 私の持つDPは未だに0。これではゴブリンの記録複製すら出来ない。

 ダンジョン内で敵対者と戦闘が起こったはずなのだが、DPは増えなかったようだ。元が複製体だったからだろうか。


 スタンピートの影響で、ダンジョンはかなりの被害を受けた。

 今起きている何もかもは、私が安易な考えで機能に無い部分を弄ろうとしたせいである。その結果として夢だった『土魔法』を覚えることは出来たが、それで私が危険にさらされては本末転倒もいい所だ。

 魔力供給率の問題は時間を置くことでしか回復しない。どうやらダンジョンの部屋や通路には魔力の供給経路としての役割があったようだ。

 部屋や通路の目印は、部屋や通路をダンジョンの一部として認識させるとともに、それらを魔力の通り道として機能させていた。だから目印を外したことで、部屋と通路がダンジョンという括りから外れ、魔力供給がそこで止まったのだ。

 機能というのはダンジョンマスターがダンジョンを構築しやすくするようにまとめられている。そこは間違いないだろう。だが同時に機能として触れる部分を制限することにより、本来なら触れては危険な部分を操作できないようにもしていたのだ。つまり機能には、安全装置という側面もあったのだろう。それを知らずに、私は触れてしまったのだ。部屋や通路の条件を無視した移動は便利そうではあるけれど、さすがにこれ以上は止めておこう。


 さて、差し迫った課題は、DPの枯渇だ。一日に地脈から得られるDPは90DPにまで上昇していたけれど、必要とするDPを考えるとそれだけに頼るのは焼け石に水だろう。

 ゴブリン部隊やウルフ部隊を病魔の森に派遣するのも、今は少し危うい。彼らから私に対する少々の不満を感じるのだ。さすがにダンジョンにその身を縛られている守護者たちが仕事を放棄する事は無いだろうが、部隊の魔物たちが探索に出たまま帰ってこないという事態は十分起こりうる。絆の強度が戻るまで、彼らにはあまり命令を与えない方が良いかもしれない。全ては感覚による認識なので、何処から絆が戻ったと判断するかは難しい所なのだが。


 今、自信をもって使える手札は黒牙のみ。でも、黒牙をダンジョン外へ出すのは、さすがに危険すぎる。黒牙は何かあったときの切り札だ。ほんの一時であったとしても、万が一を考えたら手元から離してしまうのは怖い。

 では、どうすればいいのか。

 思いつくのはただ一つ。何もしないということ。全ては時間が解決してくれる。

 魔力供給低下の問題も、配下たちからの不満も、DPの枯渇だって日にちをかければ少しずつでも貯まっていく。

 幸いなことに現状ではこのダンジョンにそれほど危険な侵入者はやってこない。普段通りの侵入者であれば、弱体化した今のダンジョンでも問題なく機能してくれるだろう。

 第三階層には、新戦力であるレイスも配置したことだし。

 今は何もせず、静かに時が過ぎるのを待つべきだ。


 まったく、【時の呪縛より逃れしモノ】なんて大層な称号を得たというのに、時の流れに頼らねばならぬとは、なかなかに複雑な思いである。



 そうして、ダンジョンが今まで通りの形に戻るまで、何事もなく過ぎ去った。

 と、なれば良かったのだが。

 事はそう、うまくは運ばないようだ。


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