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不滅のダンジョンマスター  作者: やみあるい
第二章 迷宮覚醒の章

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50.守護者戦

あらすじ


始まった戦闘は、一瞬で終わった。騎士シルバスによる瞬殺だ。

それからも戦闘は続き、“私”は侵入者たちの戦力の大体を把握した。

貴族のフロイグは無難で、聖騎士カライドは防御に秀で、騎士シルバスは攻撃に秀でている。

ただ彼らはダンジョンには慣れていないようで、罠に掛かったり、道に迷うことが多い。

その後もハプニングを起こしつつ、それでも三人組はダンジョンの探索を進めていく。

 それから侵入者たちはたまに迷ったり罠にかかったりしながらも、戦闘面だけは順調に先へ先へとダンジョンを進んでいく。そして、ついに第二階層へと繋がる階段のある部屋にまでやってきた。

 いよいよこの第一階層で侵入者たちが残すは、第一階層最後の関門、守護者との戦闘だけだ。道中では大した時間も掛けずに戦闘をこなしてきた彼らだが、さすがにこの先まで楽々とはいかないだろう。

 守護者のゴブリンリーダーはEランクの魔物ではあるけれど、守護者として配置した時点でダンジョンからの魔力供給により大幅にパワーアップし、今はDランク相当の実力となっている。それに加えて、Fランクながらスキルも豊富で、ゴブリンリーダーのスキル『指揮』により戦力を底上げされた複製ゴブリンファイターが四匹。道中とは違い、ゴブリンリーダーによる戦略を駆使して、襲い掛かってくるのだ。

 あのシルバスがいる時点で突破されるだろうとは分かっていても、その過程は非常に興味深い。ゴブリンリーダーによる守護者としての初陣は、一体どんな戦いとなるのだろうか。



「ちょっと待ってください。この先に今までよりも強いゴブリンが待ち構えています」

「強いゴブリン? それは、先ほどからゴブリンに混ざって現れていたゴブリンファイターとは違うのか?」

「はい。道中で戦ったゴブリンやゴブリンファイターとは別格の強さです。恐らく、この階層のボスですね」

「ボスですか。ならば万が一を考え、ここは全員で戦うべきでしょうね」

「全員で? ボスというのはそれほど強いのか?」

「そうですね。ボスの強さはダンジョンによっても変わるんですけど、基本的にその階層で出会う魔物よりも一ランク以上は上の強さを持っていると考えるべきですね。なので、その階層でどれだけ余裕があったとしても、気を付けるに越したことは無いです」

「一ランク上、か。だが、これまでの魔物たちはFランクだったぞ。その一ランク上だとしても、所詮はEランクだろう? その程度であれば、問題などあるまい」

「基本的には、ですよ。さっきも言ったんですが、魔の領域にあるダンジョンでは予測できない事態が起こりうるんです。中には二ランク、三ランク上の魔物が出るダンジョンもあるそうなんで、このダンジョンで言えばEランクからCランクまでと考えるべきかと。それにボスとなった魔物は通常のランクよりも、強力な力を持っていることが殆どですから。そうなったら危険度はさらに跳ね上がるんです」

「フロイグ様、このダンジョンへ来た目的を忘れてはなりません。ここはあの勇者様を亡き者にしたやもしれぬ場所なのですよ」

「分かった分かった、全員で行けばよいのだろう。このような貧相なダンジョンで、それほどに強力な魔物が出るとも思えぬがな」


 このフロイグとかいう奴は、先ほどから随分と失礼なことを言う。侮ってくれるのは作戦通りで良いのだが、そう何度も言われるとちょっとイラッとくる。そんなに私のダンジョンは貧相なのだろうか? あるいは洞窟だからいけないのか? こいつの知る他のダンジョンとやらが、少し気になってきた。まあここを動けぬ私に、それを知る機会など永遠に来ないのだろうけど。



「では、行くぞ。カライド、シルバス」


 話し合いを終えた彼らは、戦闘準備を整えた状態で慎重に守護者の部屋の扉を開けた。

 彼らが部屋に入った瞬間、部屋の入口と階段前に備え付けられた扉の鍵が閉まる。この扉は守護者設置に付属する機能の一つである。これにより守護者と戦う侵入者は、戦闘の途中で守護者から逃げることが出来なくなり、また守護者を避けて先へと進むことも出来なくなるのだ。



 先頭に立つのはシルバス、その後ろにカライドとフロイグが続く。対するは前方に二匹、左右に二匹のゴブリンファイターを従える第一階層の守護者、ゴブリンリーダー。

 両者は数メートルの距離を開けて対峙していた。

 そんな中でまず動いたのは、やはりシルバスだ。二匹並んだゴブリンファイターの間をうまくすり抜け、ゴブリンリーダーの懐へ一足飛びで近寄ると、手にした剣を一閃させた。

 今までならば、それで終わり。道中のゴブリンやゴブリンファイターは、その一撃で首を落とされてきた。けれど、このゴブリンリーダーは一味違う。ゴブリンリーダーは手にしていた盾で、シルバスの剣を弾き飛ばす。さらに体勢の崩れたシルバスへ、反撃の棍棒を振るった。シルバスは上体を逸らして棍棒を避けると、そのまま背後へと跳んだ。

 その瞬間、ゴブリンリーダーが合図を送ると、二匹のゴブリンファイターがシルバスへ向けて棍棒を振り回した。ゴブリンリーダーの一撃に比べれば、それは鋭さの無い大振りの一撃だ。しかし、それを受けるシルバスは背後に跳んだ瞬間で、まだ地に足がついていない。結果、ゴブリンファイター二匹による攻撃は、シルバスを強かに打ち付けた。


「シルバス、無事かっ?」

「はい、かすり傷程度なんで。でも、あのボスゴブリンを基点とした連携は少し厄介かな」


『気配察知』で感じるシルバスの気配に、さほど変化は無い。残念ながらゴブリンファイターたちがシルバスに与えたダメージは、シルバスの言葉通り軽微だったようだ。一応ゴブリンリーダーの持つスキル『指揮』によって、ゴブリンファイターたちも強化されているはずなのだけど、それ以上にシルバスが強かったのだろう。

 シルバスはそのままカライドたちの下へ戻ると、改めて陣形を組み直す。ゴブリンファイターたちによる攻撃は、ダメージこそ殆ど与えられなかったようだが、シルバスに警戒心を抱かせるくらいの効果はあったようだ。今度は一人で飛び込んでくることなく、カライドやフロイグと共に少しずつ、ゴブリンリーダーたちとの距離を縮めていくシルバス。

 どうやらここからが、本当の戦いのようだ。



 両者は互いの動きに注意を払いつつ、その距離をじりじりと近づけていく。

 シルバスがあの一度の交差でゴブリンリーダーの実力へ警戒心を抱いたように、ゴブリンリーダーもあの一度の交差で侵入者たちの実力を理解したようだ。相手は自分よりも遥かに上の実力者だと。

 だがそれでも、ゴブリンリーダーは戦意を全く失っていない。限られた手札の中で、いかに相手の実力を抑え込み、自分の得意分野に持っていくか。ゴブリンリーダーの思考は、ただそれだけに占められている。実力的にはともかく、その意識はとても頼もしい。


「ファイアーアロー!」


 距離がある程度縮まった頃、先に攻撃を仕掛けたのはまたもや侵入者側だった。

 火の矢を敵に向けて放つ魔術。以前来た冒険者たちも使っていたそれを放ったのは、フロイグだ。距離を詰めている間に用意したであろうそれは、一直線にゴブリンリーダーの元へと向かっていく。

 火の矢にはそれほど強い魔力が籠っている訳では無いけれど、火というだけでも当たるのは悪手。ゴブリンリーダーも当然のこととして火の矢を避けるが、その隙をついてシルバスとカライドが手前二体のゴブリンファイターを仕留めにかかる。

 火の矢でゴブリンリーダーを牽制しつつ、周りの戦力から削っていく作戦か。

 だが、ゴブリンリーダーもただやられるだけではない。距離を詰めてくる相手に何かを予感したのか、事前に背後へ控える残り二匹のゴブリンファイターに指示を送っていたのだ。

 襲い来るシルバスとカライドの二人に対して、ゴブリンファイターは四匹で相対する。

 一人に対して二匹掛かりで迎え撃つゴブリンファイターたちだったが、その戦いは防戦一方。シルバス程ではないが、カライドもそれなりの実力は持っているようだ。

 持って数秒。だがその数秒を稼ぐのが重要だった。

 火の矢を避けたゴブリンリーダーは即座に体勢を立て直すと、ゴブリンファイターたちの援護に向かう。

 ゴブリンファイターの首を狙って一閃されたシルバスの攻撃。それはゴブリンファイターの首ギリギリの所で、ゴブリンリーダーの盾によって防がれる。さらにゴブリンリーダーは、同時にカライドへ棍棒の一撃を繰り出すことで牽制を行う。

 シルバスとカライドは復帰したゴブリンリーダーを警戒して、一歩後ろに下がった。

 間一髪。もう少しゴブリンリーダーの復帰が遅ければ、ゴブリンファイターの数は減らされ、そこから一気に戦況はゴブリンリーダーたちの敗北へ傾いたことだろう。

 だが、一難去ってまた一難。シルバスとカライドの背後では、またフロイグが何か魔術を使おうとしている。

 もう一度同じ戦法を使ってくる気だろうか?



「ロックバインド!」


 フロイグが次に放ったのは、地面に染み込む魔力。それはゴブリンリーダーの足元まで来ると、突然地面から飛び出して、ゴブリンリーダーの足にまとわりついた。

 ゴブリンリーダーより『読心』を通して伝えられる状況からすると、地面が突然隆起してゴブリンリーダーの足を固めたようだ。それはまさに、岩による拘束。

 火の矢が当たらないと分かって、牽制重視に切り替えたのだろう。

 その隙をついて、再度シルバスとカライドがゴブリンファイターたちに襲い掛かる。しかも、今度は一人ずつで戦うのではなく、二人が連携して襲ってきた。

 カライドがゴブリンファイターたちによる攻撃を一手に引き受け、シルバスはその間にゴブリンファイターの一匹に的を絞って斬りかかる。

 防御を固めた状態のカライドには、ゴブリンファイターたちの攻撃は全く通らない。そしてシルバスは、道中にも行っていた早業でゴブリンファイターの首を一つ斬り飛ばした。シルバスならばそのまま追撃に移るかと思ったが、今回は慎重さを優先したらしく一度カライドの後ろに回り体勢を立て直す。そしてまた、次のゴブリンファイターに狙いを定める。

 自身の足を固めた岩へ幾度も棍棒を叩き込み、ゴブリンリーダーが何とか拘束から解放された時には、さらにもう一匹のゴブリンファイターが斬り殺されてしまっていた。

 そこでもう、趨勢は決してしまったようだ。

 ゴブリンリーダーはなおも勝機を探っているが、戦力であるゴブリンファイターが二匹も減ってしまっては、さすがにどうしようも無い。戦力差は絶望的になってしまった。

 そこからも侵入者たちは油断することなく、ゴブリンファイターを一匹ずつ殺していく。そして、最後に残ったゴブリンリーダーもシルバスの手によってあっさりと息絶えた。



「シルバス、ボスは強かったか?」


 戦闘を終えたフロイグは、シルバスに訊ねる。


「まあ、道中の魔物たちと比べれば、それなりに強かったと思います」

「奴に勇者殿を倒せる可能性はあるか?」

「それは、無い、と思いますが。でもまだっ、次の階層がありますから、結論は――」


 ああ、何となくフロイグの言いたいことが分かってきた。どうやらシルバスもそれを察したようで、フロイグの問いに応えた後、付け加えようとするが。


「もう良かろう。第一階層とはいえ、この程度のダンジョンに勇者殿がやられるはずもあるまい。先を確認するまでもないだろう。このダンジョンが何階層まで続くのかは分からんが、ここに勇者殿が死んだ原因は無い。そもそも勇者殿は病魔の森の探索の為に動いていたのだ。ダンジョンを発見したからといって、あまり深くまで潜るとも思えぬ」


 冷静なフロイグの考察を、残る二人は静かに聞いている。


「それともお前たちは、このダンジョンを隅から隅まで調べ尽くすべきだと言うのか?」

「それが王命であるなら、そうするべきかと」

「王命は勇者殿の足跡を追い、勇者殿が死んだ原因を突き止める事だ。ダンジョンを隅から隅まで探ることではない。このダンジョンに原因が無いと分かれば、そこで探索を止めるのは王命に背くことでは無いだろう。違うか、カライド」

「…………それは」

「どうだ、シルバス。このダンジョンは、勇者殿の身を亡ぼせるほどに異質か? 先ほどシルバスが並べた予測できない事態の数々にしても、勇者殿であれば乗り越えられるのではないか?」

「勇者様なら……確かに突破できる可能性は高いかもしれないです。勇者様には、優秀なパーティーメンバーも付いていたという話ですし」

「であれば、これ以上の探索は不要であろう。王への報告もこれまで集めた情報だけで十分に事足りる。どうだ、お前たち」

「…………」

「…………」


 カライド、シルバスは無言のまま。どうやらフロイグの言葉は、かなり彼らの心を揺らしているようだ。



「帰るぞ」


 結局、フロイグの言葉に説得されて、カライドとシルバスは踵を返した。

 ダンジョンを去る侵入者たちは、時折出会うゴブリンやゴブリンファイターをあっさりと片付けつつ、出口へと向かう。そしてそのまま、ダンジョンから出ていった。


 良かった。という思いがありつつも、拍子抜けした感が否めない。

 あまりの事態に実は私の存在に勘づいて一芝居打ったという線も考え、一応侵入者たちが病魔の森を抜けるまでは探索部隊に尾行させている。けれど連絡係からの報告では、今のところ侵入者たちは一直線に森の出口を目指しているという。

 芝居を打ってまで撤退を余儀なくさせるような情報も与えてはいないはずだし、一先ず何とかなったと考えて、良いってことだろうか。

 ただ、あの侵入者たちが話していた内容からして、このダンジョンが危険であると言う情報が広まれば、また勇王国の調査がやってくる可能性は十分にある。

 とはいえ、私は私を害そうとやってくる者たちに容赦をする気はない。ダンジョンコアに近づく者たちがいれば、私は躊躇なくその者の命を奪うつもりだ。その結果、このダンジョンが危険な場所であると広まっていくとしても。


 結局はこれからも油断はできない。




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― 新着の感想 ―
[良い点] 直ぐにイージーモードになる物語が多い中、ギリギリの展開が続くのは、ドキドキして良いです。
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