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不滅のダンジョンマスター  作者: やみあるい
第二章 迷宮覚醒の章

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48.冒険者?

探索部隊よりダンジョンを目指す冒険者の報告を受け、“私”は現状の戦力を再確認する。

あらすじ


先日の冒険者たちを観察して、“私”は侵入者たちへの対処方法を改めることにした。

そのコンセプトを基に第一階層へ、記録した魔物の複製体を配置し、罠を設置し直している。

ただし第一階層の最後に待つ守護者には、鍛えた配下の中から一番強い者を置いた。

とはいえ、置いた魔物のランクは機能による強化を含めてもDランク相当。

そこを突破する者のことも考え、探索部隊以外の部隊と黒牙も第二階層へ待機済み。

揃えた戦力を再確認した“私”は、大丈夫と自分に言い聞かせながら侵入者を待つ。

「新発見のダンジョンというのはここか? 私の目にはただの洞窟に見えるが」

「冒険者ギルドから提供された情報と照らし合わせると、場所はここで良いはずです」

「本当にこれがダンジョンなのか? 報告をしてきた者たちは平民の下級冒険者なのだろう。魔物の巣をダンジョンと見間違えたのではないのか?」

「野生のダンジョンは大抵こんな形をしているもんです。確かにダンジョンじゃ無い可能性は捨てきれませんが、さすがにこれより先を平民や流れ者の冒険者に任せてはおけません。今回の事は勇王国の未来をも左右する可能性があるんですから。そのための我々です」

「はっ。だからと言ってこんな暗く汚らしい場所にこの私を派遣するなど。こんなものは第二騎士団の平民騎士共に任せておけばよいのだ。そもそもあの勇者殿がこのような場所で死ぬわけもあるまい」

「……あのフロイグ様、あの噂はやはり本当なんですか? 勇者様が病魔の森の探索中にお亡くなりになられたってのは」

「ああ。今のところ国民には伏せているが、領域教会から伝えられた神託ではそのように言っていたそうだ。普通ならば信じがたい事ではあるが、聖女神リクシル様からの神託だというからな。事実、なのだろう」

「まさか、あの勇者様が……。病魔の森、災厄の魔王の力が消えても、未だ恐ろしいところなんですね」

「とはいえ、さすがにこんな貧相なダンジョンが原因ということはあるまい。病魔の森では他にも危険な魔物の姿が確認されていると聞く。恐らくはそちらが本命であろう。その中に災厄の魔王の血を継ぐ魔物がいるのやもしれん」

「恐ろしい事です」

「まあ、あの勇者殿のことだ。たとえ死すとも、その魔物には確実に致命の傷を与えていることだろう。もしくは、相打ちとなった可能性もある。どちらにせよその魔物とて無事ではあるまい。ははっ、もしそ奴が現れたとしても、私が勇者殿の意志を継ぎ、その傷が癒える前に滅ぼしてやろうぞ」

「傷付いた魔物程度であればフロイグ様が相手取る必要も無いでしょう。その時は是非に我々へお任せください」

「そ、そうですよ。そんなことでフロイグ様の手を煩わせる訳にはいかねえですから」

「なんだなんだ、お前ら。そんなに手柄を立てたいのか? ふっ、まあいいだろう。配下たちの頼みを聞くのも、高貴なる者の務めというものだ。偉大なる勇王国カツラギ建国時より続く古参貴族家、ベルセード伯爵家に連なる者として、第一騎士団期待の星として、そしてギルドにもその力を認められたBランクの冒険者として、お前たちの活躍を後ろで見守っていてやろう。安心しろ、もしお前たちが危険に陥るような時は、私がこの剣で助けてやる」

「はい。そのようにお願いいたします」

「露払いは我々に任せてくださいよ」

「さあ行くぞ。面倒ではあるが、国王様から授かった使命を果たしにな」



 やってきた者たちは三人。暫くダンジョンの手前で繰り広げられる会話を聞いていたが、一応冒険者ではあるようだ。しかし、同時に勇王国の手の者でもある、と。

 勇王国カツラギ。その言葉を聞いた瞬間、私の心にドロドロとした熱い何かが蠢いた。先日やってきた冒険者たちには感じなかったというのに、どうやら私の内に宿る怒りは消えていなかったらしい。記憶に浮かぶのは、私が死にかけた事と、ゴブ太たちの……。

 いや、違う。違うだろ。ゴブ太たちのことはゴブ太たちの問題であり、ゴブ太たちの生き方はゴブ太たちが決めたものだ。私がそれで怒るのは筋が通らない。

 私が怒ってよいのは、私が死にかけた事に対してだけだ。

 それに、今は怒りに身を任せる時ではない。まあ、任せる身などそもそも無いわけだが。

 それはともかくとして。

 私が怒りの在り方へ思考を向けている間に、ようやく彼らはダンジョンへ入ることを決めたようだ。彼らの会話から得た情報を総合すると、彼らの中には何とBランクの冒険者がいるらしい。冒険者のランクがどのようなものなのか、いまいちピンと来てはいないのだけど、魔物にも同じ形式のランクがあるということは、その意味も近いと考えていいのではないだろうか。少なくともあの勇者や先日の冒険者たちが持つランクは、その戦力に準じていたように思う。

 だとすれば、かなり厄介な相手だ。勇者の時ほどの絶望感は無いけれど、もしもの際は主力の戦闘部隊だけでなく、残る探索部隊、総合部隊の力も結集して、さらに黒牙という切り札も切り、総力で対応しなければならないだろう。それでも死の可能性は消えない。ただ少し、彼の言葉には違和感があるような……それが何処からくるものか考えるよりも先に、彼らがダンジョンの中へと足を踏み入れてきた。私は即座に彼らのステータスを確認する。



 名前:フロイグ・ベルセード

 種族:人間 職業:騎士

 年齢:24

 カルマ:-7

 LV:27/99

 スキル:『礼儀作法LV5』『社交LV6』『信仰LV5』『剣術LV3』『盾術LV3』『体術LV3』『筆記LV3』『舞踏LV5』『演奏LV5』『魔力感知LV3』『魔力操作LV3』『生活魔法LV1』『魔術理論LV2』『威嚇LV2』『指揮LV2』『気配察知LV3』

 称号:【勇神ユウトの加護】【勇王国カツラギの民】【ベルセード伯爵家三男】【聖女神リクシルの信者】【勇神ユウトの信者】【勇王国第一騎士団団員】【Bランク冒険者】【Bランク冒険者パーティー:至高の騎士たち所属】


 名前:カライド・センチネル

 種族:人間 職業:聖騎士

 年齢:28

 カルマ:-11

 LV:36/99

 スキル:『信仰LV7』『演奏LV3』『魔力感知LV5』『体術LV5』『剣術LV5』『盾術LV6』『気配察知LV3』『魔力操作LV5』『生活魔法LV5』『神聖魔法LV1』『礼儀作法LV3』『筆記LV3』『威嚇LV2』『連携LV5』

 称号:【勇神ユウトの加護】【勇王国カツラギの民】【センチネル騎士家三男】【聖女神リクシルの信者】【勇神ユウトの信者】【勇王国第一騎士団団員】【Cランク冒険者】【Bランク冒険者パーティー:至高の騎士たち所属】


 名前:シルバス・ネイトロア

 種族:人間 職業:騎士

 年齢:25

 カルマ:-13

 LV:39/99

 スキル:『信仰LV3』『体術LV10』『剣術LV7』『見切りLV5』『闘気術LV2』『罠感知LV2』『地形把握LV3』『盾術LV2』『気配察知LV5』『威嚇LV3』『礼儀作法LV3』『連携LV4』

 称号:【勇神ユウトの加護】【勇王国カツラギの民】【ネイトロア騎士家五男】【聖女神リクシルの信者】【勇神ユウトの信者】【勇王国第一騎士団団員】【Cランク冒険者】【Bランク冒険者パーティー:至高の騎士たち所属】



 ステータス上だと人間の強さは、レベルやスキルによってしか測れないので確実なことは言えないけれど。Bランクの強さってこんなものだっただろうか?

 よくよく『魔力感知』や『気配察知』に意識を集中してみても、そこから感じる魔力や気配は、そこまで強いとは思えない。むしろ、【Cランク冒険者】と表示されている、他二人の方が強そうだ。確かに纏っている鎧や武器はそれなりの存在感を放っているけれど、あの程度の【Bランク冒険者】なら、正面から戦えば戦闘部隊一つでも容易に討ち取れそうだ。

 いや、しかし彼らは人間。素の能力で魔物たちに劣っていても、武具や戦術の差で勝負を決めるような戦い方を得意としている可能性も十分にありうる。前生の世でも人間とはそうして勢力を拡大していったのだ。何よりも私自身が人間として生きていたからわかる。

 それに実際、ステータスには確かに【Bランク冒険者】という肩書が表示されているのだ。あの勇者が持っていた【Aランク冒険者】という肩書には劣るのだろうが、油断してよい相手では決してない。そうして私は、己の緩んだ意識を引き締め直す。



 さて、あの会話からして彼らの目的は、勇者が死んだ原因を見つける事と、あわよくばその原因を排除する事だろう。

 彼らが勇者の死という情報を得た方法についても分かった。聖女神リクシルからの神託だ。聖女神リクシルといえば、恐らくあの時勇者に祝福を与えてその力を引き上げた神のことだろう。ならば、勇者が死んだという事実を理解している理由もわかる。恐らく聖女神リクシルと勇者の間には、私と配下の間にあるような絆の繋がりがあったのだ。絆の繋がりさえあれば、たとえ離れた場所であっても繋がった者の死は分かるものだから。

 聖女神リクシル、か。この名には注意を払っておくべきだな。


 ダンジョンへと侵入してきたフロイグ、カライド、シルバスの三人は、以前やってきた五人組の冒険者のように、早速ここがダンジョンであると気が付いたようだ。その身には先ほどまで以上の緊張感と、周囲への警戒が伺える。

 ここから第二階層まで、私は手を出さない。元々そのつもりではあったけど、彼らの目的が目的である以上、私の存在を匂わせるような事は極力しない方が良いだろう。

 一先ずは、彼らのお手並み拝見と行こうか。



「これが未発見のダンジョンか。随分と薄暗く汚らしい場所だな。栄光ある勇王国の管理するダンジョンとは、似ても似つかぬ卑小さだ」

「勇王国の管理するダンジョンは、勇神様の管理する領域ですからね。神の領域にあるダンジョンと魔の領域にあるダンジョンだと、違いがあるのは仕方のないことですよ」

「そのようなものか。シルバスは確か、魔の領域のダンジョンにも行った事があるのだったな?」

「はい。昔、冒険者仲間と臨時パーティーを組んだ時に、少し潜ったことがあります」

「そこもこのような場所だったのか?」

「そう、ですね……俺が訪れた場所はもう少し石レンガなんかで加工されていたんですが、この薄暗さと怪し気な気配はよく似てる気がします」

「ほう。そこではどのような魔物が出てきたのだ?」

「ダンジョンによって出現する魔物は違うので一概には言えねえんですが、俺の行ったダンジョンでは、第一階層からタウロスが出てきました」

「タウロスというと、牛頭の亜人種の魔物か。確かランクは……」

「Cランクですよ。あの頃は戦力が足りなくて、すぐ撤退することに。命からがら逃げきりました。いやあ、我ながら苦い思い出ですよ」

「Cランクか。なかなか狩りごたえがありそうな魔物ではないか。Bランクの冒険者にして騎士団期待の星である私に相応しい相手と言えよう」

「そ、そうですね。俺も当時からは実力を上げてますし、今はフロイグ様もカライドさんもいます。これならあのレベルの魔物が出てきても、対処は出来ると思いますよ」

「ふふっ。そう考えると、このダンジョンの探索も悪くはないのかもしれんな」

「フロイグ様、お話はそれくらいに。シルバス、魔物の気配はありますか?」

「遠くに幾つかありますけど、正確な位置は分からないです。カライドさんの方はどうですか?」

「『魔力感知』では、少し厳しいですね。ダンジョン内に満ちる魔力が邪魔をして、魔物の魔力をうまく感じ取れません。ここからはダンジョンでの経験が豊富なシルバスが頼りです。頼みましたよ」

「さすがに本職程では無いですが、期待に応えられるよう頑張ります(……カライドさんはフロイグ様の護りをお願いします)」

「(ええ。ここからは、常に戦闘態勢で行きます。いつものように索敵と攻撃は任せましたよ)」



 会話を聞いている内に、少しずつ彼らの関係性が見えてきた。カライドという聖騎士とシルバスという騎士はどうやら、フロイグという伯爵家三男の護衛のような役割らしい。会話やスキルから考えて、カライドが防御、シルバスが攻撃という感じだろうか。スキルレベルを見るに、それなりの技量は持っているようだ。

 問題はフロイグの役割なんだが、いまいち分からない。スキルの数だけで言えば一番多いけれど戦闘系のスキルはあまり育っておらず、その他のスキルは芸術や社交関係だ。一応『魔術理論』を持っているから後衛かなと思うけど、そのスキルレベルはお世辞にも高くはない。もしかして、おだてられた貴族のぼんぼんというやつだろうか?

 だが、彼らは国王から使命を授けられたと言っていた。そんな奴らに果たして、一国の王が重要な使命を授けるだろうか? 戦力に見合わぬ【Bランク冒険者】という称号のこともある。とはいえ、こちらが本命ではないというような事も話していたし。

 うーん。こういう状況下だと、何が情報の過信に繋がるか分からないから、全ての情報を疑ってしまいたくなる。魔力や気配、ステータスだけで、私は彼らの強さを何処まで理解できているのだろうか?

 ステータスが隠されていたり偽造されているという可能性も疑いたくなってきた。ステータスが見える世界ということは、きっとそういったスキルもあるのではないだろうか? あるいは今の私には認識できない隠しステータスがまだあるということもありうる。

 想像していた敵との落差が、際限のない不安を生み出す。ああ、いやだ。怖い。どうしようもなく苦しい。最悪を考えるのは悪い事では無いけれど、これ以上は私の弱い心が持たない。少し落ち着こう。

 お。丁度、侵入者がゴブリンたちと遭遇する。これで少しは、奴らの戦力が測れるだろうか。百聞は一見に如かず。私に一見するための目は存在しないが、それでもスキルを総動員すれば、何かしらの情報は得られると信じよう。



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