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不滅のダンジョンマスター  作者: やみあるい
第二章 迷宮覚醒の章

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44.仮定冒険者

あらすじ


人間の痕跡が発見されたという報告が、ゴブリン部隊よりもたらされた。

その報告を受けて、“私”はゴブリン部隊の運用方法を見直すことにする。

情報を集める部隊と、戦闘を行う部隊に分けて運用するのだ。

これにより人間たちの情報が、より多く入ってくるようになる。

森に侵入してくる人間たちは、前に旅の魔物から聞いた冒険者の特徴に酷似していた。

そして何故か失踪したはずの勇者を探している様子は見られない。

“私”は旅の魔物たちから聞いた冒険者と仮定した人間たちの動向に注意を向ける。

 人間たちの病魔の森での動向についての情報収集に、戦闘部隊のレベル上げと魔石の回収。

 ゴブリン部隊の運用方法を見直してから、五十日ほどが経過してゴブリンたちも大分新しい方式に慣れてきた。

 特にゴブリン部隊の一部を戦闘部隊として戦いに専念させてから、そこに属するゴブリンたちのレベルがぐんぐんと上がっていく。その結果、戦闘部隊に属するゴブリン全員が進化を果たした。

 その中には、今までとは違う種族へ進化を果たしたゴブリンたちもいる。

 各部隊のゴブリンリーダーたちだ。尤も一部隊だけゴブリンリーダーでは無く、『指揮』を覚えたゴブリンソルジャーがその種族に進化した部隊もあった。ゴブリンリーダーがゴブリンアサルトに進化した例の部隊だ。

 そこから考えるに、この進化にはどうやら種族やレベルの上限だけでなく、『指揮』のスキルレベルが密接に関わっているのかもしれない。

 さて、彼らが進化した先はDランクのゴブリンコマンダー。これは部隊をまとめ上げ、『指揮』することに特化した種族のようだ。そのためかこの種族に進化したことで習得したスキルは、幾つもの思考を同時に処理できるスキル『並列思考』。

 図らずもそれは、私の目指しているスキルだった。出来ることなら習得の仕方を教えて貰いたい所だが、ゴブ太の時と違って進化による習得の場合は当人にもその習得方法が分からない。ここでゴブリンコマンダーたちに習得の仕方を聞いても、困惑させるだけだろう。『並列思考』の習得に関しては、これからも『空想空間』を使った特訓を続けていくしかない。


 私の特訓事情はともかくとして、戦闘部隊の全員がDランクの魔物に変わったことで、戦闘部隊の戦力は大幅に向上した。戦闘部隊はEランク時代でも部隊のゴブリンたちが連携することで、格上であるDランクの魔物に勝利した事もある。

 部隊全体がDランクに上がった今、五匹の連携と相手との相性の良さという前提さえそろえれば、Cランクの魔物までをその射程に収めることが出来るだろう。

 Cランクと言えば、今の黒牙の種族アサシンラットがCランクだ。そして以前のゴブ太の種族であるゴブリンナイトもまたCランク。この辺りがぱっと浮かぶ強さの指標だ。

 病魔の森の一部にはさらに格上の魔物がいる場所もあるようだが、そんな特殊な地帯を除けば、病魔の森内でCランクは高位の強さとして知られている。その高位ランクを狩れるようになったのだ。確実に強くはなっている。

 ……だが、まだ不安は消えない。


 仮定冒険者たちは、少しずつ病魔の森深くへとその探索範囲を広げている。まだ探索部隊との直接接触の報告はされていないが、それは探索部隊が隠れ潜むことを得意としているからだ。もしこのまま彼らがダンジョン近くまでやってきたら、いずれは他の部隊ともかち合う可能性が出てくる。特に戦闘部隊などは戦いにこそ優れてはいるけれど、反面隠れるのは苦手なものたちが多い。その上、鈍重な者たちが多い特性を持つ部隊であれば、逃げることにも苦労する。そうなればかち合った時、戦闘になる可能性は高いだろう。

 そうならないためにも、暫くしたら戦闘部隊の行動範囲を制限していかなければならない。

 そもそも仮定冒険者たちがダンジョンにまでやってきてしまえば、極力接触を避けるなんてことは言っていられなくなる。大体にして私自身が身動きできぬダンジョンそのものであり、逃げることも隠れることも出来ないのだから。

 逃げる、隠れる、という手段が取れないのであれば、必然的に選択肢は限られる。いや、勇者たちの反応を考えるに、選択肢はたった一つと言ってもいいだろう。

 即ち、生死を分ける戦い。そう、この世界は弱肉強食。強くなければ生き残れない。

 ならば問題となるのは、その戦い方だ。こちらから攻めるか、迎え撃つか。

 こちらから攻める利点はあまりない。森の中での戦闘は得意だが、あちらもこの森に深くまで踏み込んできた者たちだ。完全なる有利になるかと言われれば、疑問が残る。それよりは迎え撃つべきだろう。

 迎え撃つポイントは、ダンジョンの外よりはダンジョンの中の方が良い。ダンジョンの中であれば地の利はこちら側にある。相手のステータスを確認してより多くの情報を得ることも出来るし、もし戦闘で傷付いても回復の泉を使えばいい。それに、新しくダンジョンに増えた例の機能もある。

 以前であれば、小さなダンジョンの中で戦えば、必然的にダンジョンコアの近くで戦うことになっていた。そのため、ダンジョン内での戦闘自体に忌避感があったけれど、今は第一階層であればそこまでの不安はない。

 それにダンジョン内であれば、最悪切り札を切ることも出来る。ダンジョンの守りの要であり、ダンジョンの闇に潜むアサシンラット、黒牙という名の切り札を。


 方針は決まった。後は探索部隊の報告を聞き、段階的に戦闘部隊の行動範囲へ規制をかけつつ、私自身はスキル習得の為に特訓を続けていくだけだ。





「この洞窟、結構奥が深そうだ」

「もしかして、魔物の巣かしら?」

「入って見りゃ分かんだろ」

「ほ、本当に大丈夫かな?」

「…………」

「よし。せっかくここまで来れたんだ、ここで引き返す手は無い。入ってみよう」


 ダンジョンの手前でそんな会話を繰り広げるのは、五人の武装した人間たちだ。彼らは冒険者集団と仮定したグループの一つ。探索部隊からの報告によると戦闘能力こそあまり無いが、森の奥へと踏み込む速度は仮定冒険者たちの中でもダントツの者たちである。

 そこから考えて恐らく、功を焦って先走った若者たちといった所なのだろう。それが運よくここまでやってきてしまった、と。

 病魔の森はロールプレイングゲームのように、歩いていればいつか必ず魔物と出会うというような場所ではない。運悪く強い魔物の縄張りに踏み込めば強敵と出会ってしまう可能性もあるだろうけれど、それ以外で出てくる魔物の強さは正直なところまちまちだ。運良く弱い魔物とばかり出会ったり、そもそも魔物と出会わなければ、聞いていた彼らの実力でもここまで来られる可能性が無いわけでは無い。


 とまあ、そんなことを想像してみたりもしたが、実の所これは偶然というわけでは無い。

 私が探索部隊の者たちに命じて、戦闘能力は低いけれど人一倍開拓に熱心な者たちを選び出し、ここまで誘導してきたのだ。

 誘導を任せた探索部隊の者たちは完璧な仕事をしてくれたようで、この五人組はそこに疑問を持ってはいないようである。きっとここまで誘導されてきた彼らは、それが誘導などとは思いもせずに、私の想像した通り自分たちの運の良さに感謝していることだろう。


 さて、彼らを倒してしまうのは簡単だが、それでは彼らを選んでここまで誘導してきた意味がなくなる。そもそもなぜ私が彼らをここまで誘導させたのかと言えば、それは彼らから安全に情報を得るためだ。

 私はこれまで得た情報から彼らを冒険者と仮定したが、本当に彼らは冒険者なのか? 勇者の件もあるから、ステータスの称号を見ればきっとそれは確定するだろう。

 本当に冒険者なのだとしたら、冒険者とはどんな奴らなのか?

 魔物側からの情報や、前生からのファンタジー知識でなら冒険者という職業を知っているけれど、それらだけでは彼らの事を理解するにはまだまだ情報が足りていない。相手が天敵だというのなら、尚更私はこの世界の冒険者についてもっとよく知っておくべきだろう。

 冒険者がダンジョンを発見したら、どのような行動をとるのか。ダンジョンに対して、どのようなスタンスを持つのか。冒険者の生態とでも言うべきものを研究する。彼らはその為のサンプルだ。

 もし彼らも勇者と同じようにコアの破壊を目指すのであれば、全力をもって彼らをダンジョンの闇のうちに消し去ろう。彼ら程度の実力であれば、それも簡単だ。どうせここは危険な病魔の森の中心。彼らのような先走った者たちが戻らなくとも、そこまで問題にはならないだろう。

 だが、もし彼らがそれ以外の動きをみせるのなら、方針を少し考え直す必要もある。勿論、勇者とのことがあるので、人間と対話による交渉が出来るなどとは思っていないけれど。

 今はまだ、全面戦争というような状況は極力避けたいのだ。


 それに彼らの会話からも情報を得ておきたい。

 ゴブリンたちにはどうやら、人間の言語が理解できないようで、会話や或いは文字などから情報を得ることが未だ出来ていないのだ。時として風に乗って人間たちの会話が聞こえてくることもあるらしいのだが、そこからもうまく情報を得られずにいる。

 最近は『読心』のお蔭で言語に困ることが無かったから、そう言った部分をすっかり失念していた。だが逆に言うと、彼らの会話を直接聞ければゴブリンたちからの報告以上の新しい情報を得られる可能性があるということだ。

 そこで私は、仮定冒険者たちをダンジョンにまで誘導して、私のスキル『読心』やダンジョンコアの機能であるステータスで彼らの情報を得るという手段を思いついた。

 最近ではダンジョンの近くまでやってくる仮定冒険者たちも増えている。このままだとダンジョンが発見されるのも時間の問題だろう。ならば最初から強い人間たちに発見されるよりも、こちらから動いて対応可能な人間を導いたほうがずっといい。

 具体的に言うならば、洞窟を見つけて入ってみようと思うくらいには開拓精神旺盛で、けれど今のダンジョンの戦力でも十分に対応できる程には弱い者たち。

 そうして選ばれたのが彼らだった。



 彼らは初めての環境に警戒を抱きながらも、私の望む通りにダンジョンへと足を踏み込んだ。


「こ、この感覚……」

「もしかしてこれ、ダンジョンなの?」

「ああ? そんな感じあったか?」

「あ、ありましたよぅ」

「多分これが、ダンジョン特有の世界が区切られているような感覚ね。聞いていた通りだわ」

「…………」

「だとしたら、新発見のダンジョンかな?」

「でしょうね。ギルドで病魔の森にダンジョンが発見されたなんて報告は無かったはずよ」

「へえ、そりゃあいい! 新しいダンジョンの発見って、ギルドに報告すると結構な報奨が出るんだろ?」

「情報の質と量によってはね」

「いいじゃねえか。ついでにお宝も探そうぜ。ダンジョンといや、お宝がつきものだろ?」

「で、でも、強い魔物が出たりするかも……」

「…………危険だ」

「そりゃそうだけどよ。せっかくここまで来れたんだぜ? 無理した分、ここでガッツリ稼いどかなきゃ。お前の鍵開けスキルだって活躍するかもしれねえぜ?」

「…………」

「そ、それは、そうですけど……」

「どうするの? リーダーは貴方なんだから貴方が決めて」

「――行こう。慎重に進んでみて、ダメそうならすぐに引き返せばいい」

「おっしゃ! じゃ、早速行こうぜ」


 ダンジョン入り口付近で話し込んでいた彼らだったが、ようやく進む気になったようである。それにしてもダンジョンに入る感覚というものがあるのか。だとすると、洞窟に偽装したりは難しいな。だが、勇者の時はすぐには気が付いていなかった気がする。もしかしてダンジョンとして成長したことで、ダンジョンらしさが増したのか?

 五人全員がダンジョンに足を踏み入れたことで、ステータスの確認が出来るようになった。

 早速五人分のステータスを確認してみよう。



 名前:ハル

 種族:人間 職業:剣士

 年齢:15

 カルマ:0

 LV:13/99

 スキル:『森歩きLV3』『農耕LV2』『採取LV3』『体術LV1』『剣術LV2』『盾術LV2』『連携LV1』

 称号:【勇王国カツラギの民】【Eランク冒険者】【Eランク冒険者パーティー:ウルード村同盟所属】


 名前:ラトア

 種族:人間 職業:魔術師

 年齢:16

 カルマ:0

 LV:9/99

 スキル:『森歩きLV2』『採取LV2』『調合LV1』『魔力感知LV2』『魔力操作LV2』『筆記LV2』『魔術理論LV2』『錬金術LV1』

 称号:【勇王国カツラギの民】【賢者の塔所属】【Fランク冒険者】【Eランク冒険者パーティー:ウルード村同盟所属】


 名前:ガシュー

 種族:人間 職業:戦士

 年齢:15

 カルマ:1

 LV:15/99

 スキル:

 スキル:『解体LV3』『森歩きLV3』『弓術LV2』『採取LV1』『体術LV3』『斧術LV3』『盾術LV1』『連携LV1』

 称号:【勇王国カツラギの民】【Eランク冒険者】【Eランク冒険者パーティー:ウルード村同盟所属】


 名前:ルーミ

 種族:人間 職業:神官

 年齢:14

 カルマ:-6

 LV:7/99

 スキル:『森歩きLV3』『採取LV2』『信仰LV3』『魔力感知LV1』『魔力操作LV1』『神聖魔法LV1』『筆記LV1』

 称号:【勇王国カツラギの民】【聖女神リクシルの信者】【Fランク冒険者】【Eランク冒険者パーティー:ウルード村同盟所属】


 名前:レク

 種族:人間 職業:斥候

 年齢:13

 カルマ:3

 LV:9/99

 スキル:『窃盗LV1』『忍び足LV2』『気配察知LV2』『森歩きLV1』『採取LV1』『解錠LV1』

 称号:【勇王国カツラギの民】【Fランク冒険者】【Eランク冒険者パーティー:ウルード村同盟所属】



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