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不滅のダンジョンマスター  作者: やみあるい
第一章 迷宮転生の章

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29.王を目指す者

あらすじ


遂に恐れていた襲撃ゴブリンたちの大進撃が始まった。

対するゴブ太率いる集落ゴブリンたちも万全の守りでそれに抗う。

恐ろしい程の数をそろえ、進軍してくる襲撃ゴブリンたち。

しかし、ゴブ太の采配と黒牙の助力により、相手をうまく抑え込むことに成功する。

ゴブ太はゴブリンたちの先頭に立ち、指揮を取りながらも主力として戦っていた。

少しでも犠牲を減らすため、強大な敵に立ち向かうゴブ太。

争いの中で成長していくその姿は、男に英雄物語の主人公を想起させた。

 戦いはまさに熾烈を極めていた。

 無限に続くのではと思ってしまう程の襲撃ゴブリンたちの強襲に対して、集落ゴブリンたちは回復の泉を利用した撤退と再出撃の繰り返しで対応している。

 ゴブ太の鋭く研ぎ澄まされた采配は多くの集落ゴブリンたちを助け、また自ら動けぬ傷を負った者たちは私を通して伝えられた非戦闘員たちが、戦場を縫ってその身の回収に向かう。

 黒牙も影ながら活躍をしていた。私の指示した通り集団に紛れた頭一つ抜けた強さを持つゴブリンを狙い、各個撃破しているのだ。戦線は常に拮抗していた。もし、強者がその中に一匹でも混ざれば、そこから瓦解する可能性は十分にある。

 全員が一丸となって、敵の進軍を抑えていた。

 しかし。

 いつ終わるとも知れない敵の戦列。さらに少しずつ減っていく味方。回復の泉であろうとも、すでにこと切れている者を癒すほどの力はさすがにない。致命傷ならばともかく、即死してしまった戦士団のゴブリンたちは、どうすることも出来ない。

 その穴を埋めているのはゴブ太だった。

 抜けた味方の穴を埋めるように、ゴブ太は加速度的な成長を遂げている。ダンジョン外なためステータスを確認することは出来ないが、その動きは開戦時と比べて明らかに洗練されていた。これまであまり使っていなかった盾も活用し、時には味方への攻撃を防ぎ、時には数匹の襲撃ゴブリンを一気に押し戻す。

 その姿はまさに味方を守護する騎士そのもの。そしてゴブ太の動きが洗練されればされるほどに、ゴブ太の周りの味方もその動きを良くしていった。レベルが上がっているのもあるのだろうが、一番の要因はゴブ太という強大な守護者が味方にいるからだろう。

 ゴブ太が成長すればするほどに、味方の士気は高まっていった。

 そして。


 遂に、襲撃ゴブリンたちの戦列が目に見えて減り始めた。まだ途切れるまではいっていないが、明らかにその密度は下がっている。

 ただ、だからといって油断はできない。私の知覚ギリギリの森の中に、圧倒的な力を放つ個体が数匹、未だ動かぬままこちらを観察していた。その力は戦いの中で成長を続けるゴブ太をも凌ぐほど。明らかに他の者たちとは格が違う。

 黒牙もそれを察知しているのか、彼らには手を出していなかった。手を出せばやられると、魔物としての直感が告げているのだろう。

 そいつらが恐らく、この襲撃ゴブリンたちを率いる者。

 なぜ、彼らは動かないのか。趨勢はすでに集落ゴブリンたちに傾きかけている。しかし彼らが参戦してこれば、戦いの流れは一気にあちらに傾き、ゴブ太たちは窮地に陥るだろう。

 勝利を望んでいるのであれば、ここで動かぬ理由はない。

 一体何を考えているのか。

 その姿はただただ不気味だった。



 ゴブ太の活躍や集落ゴブリンたちの頑張りもあって、戦いは掃討戦の様相を呈しつつある。いつの間にかゴブ太は後衛へと回り指揮に専念し、代わって戦士団のゴブリンたちが三匹一組で有利な状況を作り襲撃ゴブリンを打ち倒していく。

 余裕をもって襲撃ゴブリンの相手が出来るようになったことで、怪我をしたゴブリンが送られてくる事も少なくなり、緊急病棟さながらの慌ただしさだったダンジョン内も少し落ち着きを取り戻してきた。

 このまま終わってくれるなら、それが一番良いのだが。

 襲撃ゴブリンを率いる者たちは動くことなく、それに反して襲い掛かってきた襲撃ゴブリンたちは我武者羅に集落へと突き進んでくる。

 その姿はまるで何かを恐れ、急き立てられているかのようだった。むしろそうでなければ、負けを確信した時点で逃げ出す者たちがいたはずだ。

 そして最後の一匹をゴブ太が叩き潰すことで、ようやく襲撃ゴブリンたちの進軍は終わりを迎えた。

 集落にはきっと夥しい量の血が海を形作っていることだろう。地獄絵図も斯くやというようなその光景を想像して、私は複雑な気持ちになった。その中の一部は集落ゴブリンの血で出来ているだろう事もそうだが、単純に膨大な数の命があっさりと消え去った事が衝撃的だったのだ。

 果たして閉じられた洞窟の中で身内同士食い殺しあったラットたちと、どちらがより悍ましいだろう。無意味な考えが思考を過ぎった。

 考えても仕方がない。

 それに、まだ終わっていない。


 そんな惨劇の場に、これまで動かなかった者たちがようやく足を踏み入れたのだ。

 圧倒的な力をその身から放ちながらも、これまで静観を決め込んでいた襲撃ゴブリンたちを率いているであろう者たち。

 悠々とした足取りには危機感や罪悪感は感じられず、まるで味方の全滅など取るに足らないことであるというかのようだ。

 残っているのは三匹。一匹はゴブ太と似た性質の魔力を感じるので、恐らくゴブリンナイトだろう。もう一匹はゴブリンナイトよりも洗練された魔力を持つ。恐らくゴブ太と同格か、上を行く種族。

 ここまででもこちらの不利は確実だ。

 ゴブリンナイトの強さはゴブ太がこれまでの戦いで十分に証明している。同じ種族であるゴブ太ならばまだ対抗できるだろうが、他の集落ゴブリンたちでは難しいだろう。

 ましてや今、こちら側の戦力は襲撃ゴブリンの大群を捌いたばかりで、万全の状態とは言い難い。

 だが、まだそれだけではない。何よりの問題は最後の一匹。

 他二匹を従えて悠々と惨劇の地を歩むそいつは、まさに格が違った。

 この場にいる全てのゴブリンたちを圧倒する存在感。気配、魔力ともに段違いだ。

 確実にゴブ太よりも上位の存在。それも隔絶した上位者だ。

 そいつは、ゴブ太の前までやってくると立ち止まり、口を開けたようだった。

 何かを話しているらしきそいつの言葉を、ゴブ太を通した『読心』で聞く。


「強き同胞よ、貴様の強さを認めてやろう。我が軍門に下るがよい」


 それは尊大な態度で、ゴブ太へとそう語ったようだ。ゴブ太の主観を通しているので、若干の違いはあるかもしれないが、大よそは間違っていまい。

 少なくともゴブ太には、そのように聞こえたということだ。

 強い自尊心と己の力への絶対なる確信。その姿はまさに支配者と呼ぶに相応しい。

 森を制した覇王という名の支配者に。

 こいつが襲撃ゴブリンたちの親玉か。こいつの言葉を借りるなら、沢山の”同胞たち”が死んでいったというのに、こいつはそれを何とも思っていないのだろうか?

 ゴブ太も同様の事を思っていたようで、襲撃ゴブリンの親玉へ問いかけた。


「グギャギャ。あのような弱き者共を同胞だと思ったことは無い。あれはただの雑兵どもだ。放っておけば幾らでも産まれてくる。それよりもお前だ。雑兵どもをなぎ倒すその強さ、我が配下となるに相応しい。お前のようなものを見つけられただけでも、奴らが死んだ甲斐があるというものよ。さあ、我と共に覇道を行こうぞ」


 まさしく覇王といった感じの事を言っているようだ。言葉だけでは何の意味もないが、こいつには実際にそれを成し遂げる力があり、成し遂げてもいる。この三日間の森の静寂こそが、それを証明していた。

 私もあまり好きになれるタイプではないが、仲間たちを大切にするゴブ太にとってはそれ以上に許せない相手のようだ。ゴブ太の怒りが『読心』を通して伝ってくる。

 その時だった。


「もうすぐなのだ。あとはお前の縄張りと、ここにある核を手に入れれば我は王と成れる」


 無いはずの私の背筋がゾクリとする。核と言った時、あいつは確かに私へと意識を向けた。

 私の存在を知っている? 私を手に入れることが目的? 私を手に入れれば王と成れる?

 私を手に入れることで成れるのは、たぶんダンジョンマスターだ。あいつの言う王とはダンジョンマスターの事なのだろうか?

 あいつが私の主となる。それは――嫌だな。

 ゴブ太もあいつの誘いを断ったようだ。


「仕方がない。ならば、そこの雑兵共々ここで果てるがよい! やれ、我が配下よっ!」


 合図とともに、従えていた二匹が武器を構えて前へと出る。

 ゴブ太も集落ゴブリンたちと共に迎撃の態勢を取った。

 ゴブ太は二匹の戦士団のゴブリンと共にゴブリンナイトに向かう。そして、その他の戦士団のゴブリンが、もう一匹のゴブリンへと向かった。

 ゴブ太と二匹の戦士団のゴブリンの連携によってゴブリンナイトと戦い、その間は他の戦士団のゴブリンたちにもう一匹のゴブリンを抑えておいてもらう。そしてゴブリンナイトを倒したゴブ太たちが、もう一匹のゴブリンと戦う。

 それがゴブ太の導き出した結論だ。勝算はあるようだが果たしてどうなるのか。


 戦いが始まり、それぞれがぶつかり合う。

 細かな技や動きなどは分からないが、ゴブ太の方は善戦しているようだ。ゴブ太が盾を構えて攻撃を一身に受け、戦士団のゴブリン二匹が攻撃に回っている。そして、たまに出来る隙を突き、ゴブ太もカウンターを狙う。

 すぐさま倒せるというような事は無いが、このまま戦いが続けば押し切る可能性は十分にある。

 しかし。

 もう一方の襲撃ゴブリン対戦士団のゴブリンたちの方は、正直それまで持ちそうもない。

 もう一匹の襲撃ゴブリンはどうやら複数属性の魔法を操るようだ。性質を変えた魔力の波が、戦士団のゴブリンたちを襲っている。一匹、また一匹と魔力に呑まれて気配が消えていく。

 このままではダメだ。ゴブ太がゴブリンナイトを倒し切る前に、戦士団のゴブリンたちが全滅する。


 ――黒牙、ゴブ太の手助けを


 黒牙に手助けを命令するが、黒牙からは久しぶりの否定が返ってきた。今の黒牙はレベルこそゴブ太よりも高いが、種族のランクは一つ下。ゴブリンの親玉が言うような雑兵を倒すならばともかく、配下のあの二匹は厳しいようだ。

 今の黒牙はダンジョンの入り口付近で闇に紛れつつ、三匹の強力なゴブリンをじっと観察している。否定をしてはいるが、あの戦いに加われないことは悔しいのかもしれない。

 どちらにしてもこのままでは、あっという間に勝負はついてしまう。

 どうする。どうしよう。

 あいつのものにはなりたくない。私は殺生与奪の権限を誰にも託したくはない。

 DPの続く限り援軍を召喚するか。だが、私が現在召喚できる魔物で、あれらに対抗出来るとは思えない。

 せめてゴブリンナイトが召喚出来れば、戦況に干渉することも出来るのだが。

 現状ではDPが足りていない。

 いや、多少危険ではあるが、大量のDPを手に入れる方法ならある、か。

 そのために今は、多くの手足が必要だ。私の命令を聞く手足が。

 私はそこまで考えると、即座に大量のゴブリンを召喚し始めた。


 〈ダンジョン内にゴブリンLV1を召喚しました〉

 〈ダンジョン内にゴブリンLV1を召喚しました〉

 〈ダンジョン内にゴブリンLV1を召喚しました〉

 ・

 ・

 ・


 召喚したゴブリンたちへは片っ端から、外に落ちている襲撃ゴブリンの亡骸をダンジョン内に集めてくるよう命令を飛ばす。そして回収した亡骸を一気にDPへと変換していく。

 途中で襲撃ゴブリンの配下の魔法に巻き込まれたり、ゴブ太たちとゴブリンナイトの戦いに巻き込まれたり、襲撃ゴブリンの親玉に近づきすぎて消し飛ばされたりもしていたが、それでもゴブリンたちは私の命令に応えて亡骸を回収し続けている。

 千を越える亡骸の山であり、好戦的で強力な武闘派集団の亡骸だ。信じられないくらいの速度で、DPは貯まっていく。そしてその貯まったDPを使って、また新たにゴブリンを召喚していった。

 最初は二十数匹だった回収用ゴブリンたちだが、三歩進んで二歩下がるくらいのペースでその数を増やしていく。さらに比較的安全なルート情報を共有することで、途中で倒される数は減っていき、DPの回収は加速する。

 ついでに途中から、魔法使いゴブリンの方へ断続的にゴブリンを送り、そちらのフォローも忘れない。ただのゴブリンなので、大した力にはならないが、邪魔くらいにはなるだろう。

 DPはどんどん貯まっていくし、戦闘を長引かせることも出来ている。

 ただこの方法は、召喚したゴブリンを使い捨てにしているようなものだ。案の定、最近減ってきたカルマが、この方法を行い始めてから少し増えている。黒牙やゴブ子を見れば分かるように、召喚された魔物たちも自我を持つ生き物なのだ。こちらの命令に従順であろうとも、その命を使い潰す行為は悪業と言って差し支えないだろう。

 繋がりが生まれては消え、その度に心に負荷がかかっていくのを感じる。それは私の命令で盾として使い捨てにされる命の悲鳴のようだった。

 それでも今は、これしかない。


 そして遂にDPは目標の300,000DPに到達した。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 自分が生きる為に必要な行為なのにカルマが上がるのは何故? 罪悪感を持つと上がるのかな? ダンジョンとして当たり前の行為で上がるのはちょっと納得いかないな。 スラムの子供が生きる為に食…
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