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不滅のダンジョンマスター  作者: やみあるい
第一章 迷宮転生の章

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28/204

28.開戦

あらすじ


森は動乱の時代を迎えていた。

襲撃してきたゴブリンたちの縄張り拡大と、これまで秘匿されていたダンジョン周辺の土地の解放。

そしてそれらに端を発した魔物たちの縄張り争い。

男はその話を聞いて危機感の持った。

それはゴブ太も同様であったようで、男とゴブ太はそれぞれに己に出来ることを模索していく。

 集落は定期的に魔物たちに襲われるようになった。

 魔物は一匹の時もあれば、徒党を組んで現れる時もある。傾向としては強力な魔物ほど、一匹で攻めてくることが多いようだ。

 その度にゴブ太は、部下の戦士団を率いて集落の防衛を行っている。この集落で一番強いゴブリンはゴブ太であり、またゴブ太がスキル『指揮』を活用することで戦士団の戦力がある程度上がるらしく、集落の防衛にゴブ太は必須であった。

 それ故に最近のゴブ太は、集落を空けて遠征に出かけるということが出来なくなっている。

 まあ獲物はあちらからやってきているので、問題が無いと言えば無いのだが。

 気になるのは襲ってくる魔物たちの中に、未だゴブリンが一匹もいないということである。襲撃ゴブリンたちは最初の襲撃後、ぱったりとその姿が消え、以後一度も集落に近づいてきてはいない。ゴブ太たちが遠征に出掛けられなくなったため、集落の外で出会うということも無くなっている。

 少し危険な状況だ。遠征に出られないということは、森の中が今どんな状況なのか分からないということである。

 黒牙に行ってもらうという手も考えたが、最近では黒牙も私の言うことを聞いて、ゴブ太たちだけでは危険な時に助太刀を行っている。

 強力な魔物が現れた場合、ゴブ太たちだけでは甚大な被害が出かねない場面も多々あったから、黒牙もこの場を安易には離れられない。

 ただ集落の防衛だけを続けていく窮屈な日々。

 集落のゴブリンたちも同様に感じているらしく、陽気で楽観的なゴブリンたちも、最近ではその調子を落としてきている。それほどの頻度で魔物たちは襲ってくるのだ。今まで耐えてこられたのは、集落ゴブリンたちの頑張りと黒牙の助太刀、そして回復の泉のおかげだろう。

 危険な状態は未だ続いている。

 けれど、終わりがないわけではない。この状況はあくまでも、激化した魔物たちの縄張り争いが招いた事態であり、各魔物たちの縄張りが安定すれば魔物たちの襲撃も止むはずである。

 ただそこにも問題はある。

 以前ゴブ太たちから聞いた動乱の理由。その一つである襲撃ゴブリンたちの台頭。彼らはきっと中途半端では止まらないだろう。行き着くところまで行かなければ、縄張りの安定化はありえない。

 だとすれば動乱が落ち着くということは、好戦的で野心的な襲撃ゴブリンたちがこの森からいなくなるか、あるいはこの森を支配しきった証。

 前者ならばよい。しかしもし後者であった場合、この集落は最大の危機に陥るであろう。今の今まで襲撃ゴブリンたちを見かけないということも、その可能性を示唆している。

 いっそのこと、動乱が収まる前にさらなる襲撃を仕掛けてくれる方が、まだマシなのではないか。それならば最善ではなくとも及第点には届くかもしれない。

 だがそのようなことは起こらず、相変わらず続く魔物の襲撃の間、襲撃ゴブリンたちが姿を現すことは結局一度も無かった。

 彼らは確実にこの集落に目をつけている。それでいながら、一度も襲ってこないということは、蓄えているのだろう。この集落を蹂躙できるほどの戦力を。

 そして、魔物たちの襲撃は次第に減っていき、遂には三日間の静寂が訪れた。けれどそれは以前の安全な静寂ではなく、不気味な嵐の前の静けさ。

 私は配下である黒牙、ゴブ太、ゴブ子に気を引き締めるように伝えた。



 私の『魔力感知』に強力な反応があった。『気配察知』は無数の魔物が森の奥から近づいてくることを示している。その数は信じられないほどに多い。少なくとも十や二十の数ではない、百を超える数の魔物たちが集落を、そしてダンジョンを包囲しながら少しずつ近づいてきているのだ。その全てが魔力の性質からしてゴブリンであろう。

 遂に恐れていた日がやってきたのだ。

 しかし、こちらも準備は出来ている。集落の周りはゴブ太の号令の下、『建築』スキルを持つゴブリンたちにより作り出された杭を敷き詰めた堀と丸太を重ねた防壁で囲んだ。さらにゴブリンたちは魔物の素材や木材、石などで作られた武器や防具で武装し、訓練を重ねて戦闘スキルのレベルも上げた。最初の襲撃時から、戦えるゴブリンの数も増やしている。

 数の利はまだあちらにあるが地の利はこちらにあるし、一匹一匹の技量とて負けてはいない。

 黒牙にも予め救援を頼んでおく。影に潜み相手を一匹一匹確実に倒していく黒牙の力は、ゴブ太たちの助けとなるだろう。

 さあ、戦いの幕開けだ。


 襲撃ゴブリンたちは森から現れると、一直線に集落へ向けて襲い掛かってくる。そこには大よそ隊列などの概念は無く、バラバラにただひたすら前へ向かって走ってきていた。

 それに対してゴブ太たちは、防壁の上から投石や弓矢によって襲撃ゴブリンたちを狙い撃っていく。一つ一つ消えていく襲撃ゴブリンたちの気配。けれど、それでも途切れることなく、襲撃ゴブリンたちは森から溢れ続けている。

 百を超えると考えてはいたが、これはもしかしたら千まで届く数かもしれない。そう思えるほどに襲撃ゴブリンたちの数は多く、その群衆が途切れる様子は微塵も見られなかった。

 今のところ集落ゴブリンたちに被害はなく、襲撃ゴブリンたちの被害は甚大である。

 しかし、投石用の石や矢も無限にある訳ではない。それなりの量を用意していたようだが、それにも限界はあるのだ。

 私がDPを消費して矢を生み出すことも出来るが、あの数では焼け石に水となる可能性もあるし、何よりDPには他にも使い道がある。

 石や矢が尽きるのが先か、襲撃ゴブリンが滅ぶのが先か。

 そんな様相を呈してきた戦場だったが、どちらかに行き着くよりも先に戦況は一変した。

 何も考えずに襲い掛かってきていた襲撃ゴブリンたちの突撃が、唐突に止まったのだ。全滅したわけで無い事は、森の中から感じるゴブリンたちの気配から察せられる。

 では、何が起こったのか?

 その答えは次に森から現れた襲撃ゴブリンたちが示していた。先の襲撃ゴブリンたちよりも明らかに強い魔力を纏い、隊列を組んで近づいてくる襲撃ゴブリンたち。その強さからして、前に集落を襲ったゴブリンソルジャーたちだろう。

 再度ゴブ太たちが投石や弓矢を放つが、今度の進軍は止まらない。投石や弓矢が効いていないのだ。種族やレベルから考えるに、素の防御力では無いだろう。恐らく何かを盾にして飛び道具を防いでいるのだ。

 隊列も整然としているし、明らかに先ほどまでの襲撃ゴブリンたちとは違って知性を感じる。話し合う為の知性では無く、他者を蹂躙するための知性を。

 ゴブ太たちはその後も投石や弓矢での攻撃を続けたようだが、今度は襲撃ゴブリンたちを殆ど仕留めることは出来ず、ついに彼らは集落を囲む堀の手前までやってきた。

 堀を渡るための橋は丸太で出来た小さなもので、しかも襲撃ゴブリンたちの気配を感じた時に、その橋も集落側に仕舞ってある。

 相手がどんな手段を用いて堀を渡るのかは分からないが、ここで暫くは襲撃ゴブリンたちの足止めが出来るだろう、そう思っていたのだが。

 襲撃ゴブリンの隊列の中ほどから強い魔力が溢れ出し、その魔力が堀を埋め始めた。

 この感覚には覚えがある。黒牙の『影魔法』やゴブ子の『神聖魔法』と同じ、魔法が使われた感覚。地形が動いた感覚からして、恐らく土関係の魔法だろう。それが五つ。

 五方向から集う魔力によって、堀はあっという間に埋まってしまった。だがその魔法はそこまでのようで、防壁を超える程の山を築くことは出来なかったらしい。それともやらなかっただけなのか。


 遂に襲撃ゴブリンたちは防壁の前にまでやってきた。そして、防壁の閉ざされた扉部分を攻撃し始める。丸太を重ねた堅固な防壁と言えど、扉部分は開閉のために他と比べて多少脆い造りだ。破られるのは時間の問題だろう。

 一方でゴブ太たちは防壁の上に少数の集落ゴブリンを残して、冷静に迎撃の準備を始めている。戦えない者たちはダンジョンへと避難させ、戦える者たちは武器や防具を装備して破られる寸前の扉の前に集合していた。


 そしていよいよ扉が破られ、外から襲撃ゴブリンの大群が扉跡より襲い掛かってきた。その瞬間、ゴブ太の号令により防壁の上に残った集落ゴブリンたちが、石弓の仕掛けを発動させる。積み重ねられた大量の石が支えを失い、防壁の上から襲撃ゴブリンたちに向かって降り注ぐ。それは開いた扉へ意識を向けていた襲撃ゴブリンたちの意表を突いて、彼らの命を刈り取っていった。

 さらにその隙をついて、ゴブ太たちが集落内に入り込んだ襲撃ゴブリンに襲い掛かる。見事にゴブ太の策が功を奏して、白兵戦はゴブ太たちの優勢で始まった。

 ちなみに石弓の仕掛けは私の発案だが、使うタイミングはゴブ太が考えたものだ。

 私の拙い記憶が役に立ったようで何よりである。

 さて、私も出来ることをしようか。


 ――黒牙よ、無理せぬ範囲で襲ってきたゴブリンたちを迎え撃て

 ――とくに魔法を使うゴブリン、ゴブリンたちを指揮するゴブリンを見つけたら優先的に倒せ


 私はそのようにダンジョンで待機していた黒牙に命令を飛ばす。すると黒牙はダンジョンから飛び出して、ゴブリンたちが争う戦場の中へと突っ込んでいった。


 魔法を使うゴブリンたちが土魔法を扱う者たちだけとは限らないし、土魔法を扱うゴブリンもまだ魔力を温存している可能性がある。魔法の規模を見るだけでも彼らは危険だ。それにこれだけの数の集団が隊列を組んで進んでいるのである。彼らにもゴブ太のような指揮官がいるはず。ならば、そいつを倒せば集落ゴブリンの戦力を大いに減らせるはずだ。

 そんな理由から黒牙への命令を決めた。これで少しでも戦況が有利に運ぶと良いのだが。



 現状は集落ゴブリンたちがうまく凌いでいる感じだ。ゴブ太の指揮の下、防壁に空いた穴から侵入してくる襲撃ゴブリンを順番に倒している。

 しかし、襲撃ゴブリン側とて倒されながらも着実に集落内へ侵攻していた。このままではダンジョンまで押し込まれてしまうのも時間の問題だろう。さらにその背後には今攻め込んできているゴブリンソルジャーよりも強い魔力を持つゴブリンたちが待ち構えている。奴らが攻めてこれば、戦況は大きく変わるだろう。我々にとって絶望的な方向へ向けて。

 黒牙の様子はどうだろうか?

 私は絆の繋がりと『気配察知』『魔力感知』で得た情報を総合し、黒牙の居場所を探してみる。すると黒牙は今、戦場となっている場所とは別の場所にいるようだということが分かった。『隠伏』のスキルを使っているようで正確な位置は分からないが、集落の扉側とは別の防壁の裏側にいるようだ。何をやっているのだろうか?

 あの辺りならばまだ『伝心』も届くはずだ。直接聞いてみるか。

 ふむふむ。どうやら襲撃ゴブリンたちには別動隊があったようで、気配を隠して別方向から集落に近づいていたらしい。黒牙はそれに気が付いて、独自にそいつらの妨害及び殲滅を行っていたようだ。別動隊の数はそれほど多くないようだが、黒牙の戦い方では集団を一度に相手するのは厳しい。このままでは時間がかかるはずだ。

 ゴブ太にこの情報を伝えて、黒牙の手助けをさせようか。そして黒牙には引き続き、強者を間引くのに集中して貰おう。

 私は『伝心』を使ってゴブ太にこの情報を送り、黒牙の救援を送ってもらう。そしてその事を黒牙にも伝えた。ついでにゴブ太には、襲撃ゴブリンたちの背後に控えている強い魔力を持つゴブリンたちの事も伝えておく。恐らくゴブ太自身も気づいていることと思うが、念のためだ。


 戦場がひっ迫してくると、必然として怪我をするゴブリンも増えてくる。動けるものは自力でダンジョンまで撤退してくるが、動けぬ者はゴブ太からの救援要請を受けて、私がゴブ子に状況を伝え、非戦闘員にダンジョン内へ連れてこさせた。非戦闘員のゴブリンたちもダンジョン内で震えているだけではなく、こうして怪我ゴブリンを連れてきては、回復の泉の水で怪我や体力を回復させるなどして働いているのだ。そうして怪我が治ったゴブリンたちは、またダンジョンの外へ飛び出していき戦線に加わっていく。

 運悪く致命傷を受けてダンジョン内に戻ってくることが出来ず倒れるゴブリンもいるが、まだ趨勢に影響がある程ではない。その辺りはゴブ太の采配のたまものであろう。

 終わりが見えぬ戦いの中で、ゴブ太は主力として最前線で戦うだけではなく、常に味方の動向から全体の戦況把握まで行っている。前々からその片鱗は見えていたが、追い詰められた極限状態の中で加速度的な成長を遂げているようだ。


 その姿はさながら、私の好きな英雄物語の主人公のような輝きを放っていた。


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