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不滅のダンジョンマスター  作者: やみあるい
第一章 迷宮転生の章

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27/204

27.森の事情

あらすじ


争いの気配を感じて男は意識を覚醒させた。

外敵に襲われたゴブリンの集落は、しかしさらなる進化を遂げたゴブ太に守られていた。

程なくして戦いは終わり、男は敵が同じゴブリンであったことを知る。

どうやら男が意識を閉じている間に、様々な変化があったらしい。

配下たちのステータスからそれを知った男は、配下に話を聞いてみることにした。

 私が仮眠をとっている間に、半年ほどが過ぎていたようだ。

 その間に森では、様々な変化があったらしい。

 まあそれは置いといて、私はゴブ子に早速覚えた『神聖魔法』を実演してもらうことにした。


 ………………。


 うん、まあわからんな。

 しいて言うならば、その魔力は回復の泉から溢れ出ている魔力に似ている気がする。

 聞いてみるとやはり、『神聖魔法』では他者の傷を癒したり、生命力の回復ができるらしい。他にも『神聖魔法』で出来ることはあるようだが、今は練度が足りずこれだけしか使えないらしい。きっと使い続ければ、習熟度が貯まってレベルも上がり、様々なことが出来るようになっていくのだろう。

 ただここには回復の泉があるので、あまり使う機会は無いようだ。

 だからスキルレベルが育っていなかったのか。

 確かに回復の泉がある以上、魔法による回復は今のところ必要無いが、他の魔法は使えるものがあるかもしれない。それに回復だって緊急時に必要となる可能性もある。私はそう説得して、ゴブ子に少しずつでも機会を作って『神聖魔法』を使ってもらうことにした。

 実際は、その先が気になるという完全なる私情なのだが。言い訳だって間違いではないのだから、まあ問題は無いだろう。

 ああ、私の前に新しい魔法が現れるたびに思うのは、この目で魔法を見てみたかったということだ。『空想空間』で想像を再生することは出来るが、これは私の空想100%であって、この世界の本物ではない。こればかりは本当に、残念に思う。


 さて、魔法の事はこれくらいにして、いよいよ森の変化について聞こうか。現状を見る限り、それは私にも関係のあることであろうから。

 早速と尋ねた私にゴブ太たちが伝えてきた森の変化は主に三つ。


 一つはこれまでダンジョン付近には近づいてこなかった魔物たちが、次第にその生息域をこちらへ近づけているということ。それは魔物が近づいてこなかった原因である強者の魔力の残滓がとうとう薄れ始めた為のようだ。すでにゴブリンたちが遠征に行く事はほとんどなくなり、レベル上げや食料確保の為の狩りは近くの森で行っているらしい。


 もう一つは先ほどの襲撃とも関係していて、森の中でこの集落以外のゴブリンが勢力を広め始めているということ。

 それは先ほど襲撃してきたゴブリンたちであり、彼らはダンジョン前の集落に住むゴブリンたちと違って話し合いなどに一切応じず、出会えば即戦闘を仕掛けてくるというかなり好戦的な性格をしているそうだ。

 最近では狩りに出かける度に戦うこととなり、それがついに襲撃にまで発展したというのが先ほどのこと。襲撃までされたのは今回が初めてのようだが、聞いた限りではこれが最初で最後ということにはならないだろう。

 この集落は明らかに奴らに目をつけられている。縄張りを拡大しているということは、それだけ数も増えているのだろう。ならば、彼らは戦力を整え次第、また仕掛けてくる。

 今回は撃退できたが、逃げ帰った奴らはこの集落の戦力を他のゴブリンたちに伝えるだろう。そうなれば、次はもっと強い者たちが、もっと数を揃えてやってくるはず。

 それはゴブ太も分かっているようで、対策として集落の守りを固めることを考えているようだ。アドバイスを求められたので、とりあえず前生の記憶の中から木造と石造りの砦のイメージを引っ張り出してきて、色々と『伝心』で送っておいた。別に建築は私の得意分野という訳でも無いので、それらは外観と記憶に残っていた知識程度。ゴブ太のお眼鏡に適えば多少は採用されるだろう。


 最後の一つは前の二つに関連することであり、現在の森の総評でもある。

 ダンジョン周辺という未開領域の発見と、縄張りを荒らす好戦的なゴブリンの集団の台頭。この二つの事柄が重なった結果、今この森はかなりの危険区域となっているそうだ。

 好戦的なのはゴブリンたちだけでなく、今まで森にいた他の強力な魔物たちも自分たちの縄張りを守るため、あるいはこの機に縄張りを広げるために、あちこちで争いを巻き起こしている。世はまさに動乱の時代と言った所だろうか。

 話として聞く分には面白いが、今の状況で巻き込まれるのは勘弁してほしい。ゴブリンたちならば最悪ここから逃げ出すことも出来るが、私はここから動くことすら出来ないのだから。


 現在の手持ちDPは……18301DP。

 階層を増やすことは出来ないが、部屋をもう一つ増やすくらいならば可能か? いやむしろ、これを使って新しい魔物を召喚するべきか。

 そう言えば、先ほどの襲撃で倒された襲撃ゴブリンたちの亡骸はどうなっているのだろう。

 ゴブ太にそこを聞いてみる。

 ふむふむ。どうやらそのまま放置しているようだ。ただ、最近の集落周辺はかなり衛生関係に厳しくなってきたようで、この後で仲間たちと森の奥に捨ててこようかと考えているらしい。魔物から素材を取ったり、食材にしたりしているゴブ太たちだが、さすがに同種の亡骸をどうこうというのは憚られるようだ。

 それを聞いた私はゴブ太に、襲撃ゴブリンの亡骸をダンジョン内に持ってくるように伝えた。


 襲撃してきたゴブリンの数は全部で五十一匹。その内、七匹には逃げられたので、残った亡骸の数は全部で四十四匹だ。それらの亡骸はゴブ太の号令の下に、集落ゴブリンたちの手によってダンジョンへと運ばれてきた。

 おお。亡骸であっても多少の情報を確認できるようだ。以前は出来なかったと思うのだが、ダンジョンレベルが上がったときにでも変わったのだろうか?

 分かったのは襲撃してきたゴブリンたちの種族とレベルだけだが十分だろう。

 種族はゴブリンソルジャーでランクはE。レベルは大体、20前後だった。

 攻めてきた数も合わさって、かなり強いように思う。もしゴブ太がゴブリンナイトになっていなかったら、もしくは集落ゴブリンたちが遠征で鍛えてなかったら、あっさり蹂躙されていた可能性は高い。事態は思った以上に深刻なのかもしれない。

 私がそんなことを考えている間に、ダンジョンコアの前に並べられる亡骸たち。

 え、そこに並べるの? ま、まあ、並べる場所までは特に指定しなかったが……別にダンジョン内ならどこでもいいんだが。

 そして亡骸はその場から溶けるように消え去り、代わりに私へ2640DPが追加された。

 私の思った以上のDPが入ってきている。これは亡骸が強い魔物だったからなのか、それとも今回は亡骸を丸々一つ持ってきているからか。もしくは死んですぐというのも関係があるかもしれない。過去の経験と照らし合わせると、三つとも要因として考えられる。

 他の魔物たちがダンジョンの近くまでやってくるというのなら、これからは少し手間が掛かっても、強い魔物を倒したときはゴブリンたちに亡骸をダンジョンまで運んできてもらおうか。それもDPとして吸収すれば、DPをさらに増やすことが出来るだろう。

 そんなことを考えていたら、何やらゴブ太の様子がおかしい事に気が付いた。そのほかのゴブリンたちも同様におかしい。

 聞いてみると、目の前で襲撃ゴブリンたちの亡骸が消えたことに驚いたとのことだ。

 いつも捧げ物を同じように受け取っていたはずなのだが、自分と同類の魔物の亡骸が消えるのと、他の魔物の一部や森の恵み、制作物などが消えるのとでは感じ方が違うのだろうか?

 同じように吸収したのだと伝えることも出来るが、もしかしたらそれだと少し心象が悪いかもしれない。

 動乱迫る今の状況で、ゴブリンたちからの心象が悪くなるのはいただけない。

 ここはひとつ、【ゴブリンの神】らしく神聖さを引っ張り出してみようか。


 ――守る者のため、勇ましく戦った者は等しく偉大なる戦士である。

 ――彼らは敵対者であったが、勇ましく戦い、倒されて君たちの力の糧となった。

 ――故に私の力でこの死した者たちに魂の安息を与えたのだ。

 ――この者たちの魂は偉大なる戦士の魂として、天上界に迎えられることだろう。

 ――これより先、もし強敵を打ち倒したときは、その相手の亡骸も私の元に持ってくるがよい。

 ――お前たちの糧となったその者たちにも、魂の安息を与えよう。


 必死で考えたそれっぽい文章をイメージに変えて、『伝心』でゴブ太とゴブ子に送った。

 色々な物語で見た死生観が入って、ごちゃごちゃしているが要点としては、頑張って私を守ってくださいねってことと、私は死者を弔っただけですよということ、そして強い魔物を倒したらその亡骸を持ってきてくださいねということ。

 神っぽさは出せただろうか。そもそも意味は正しく伝わっただろうか。等々不安はあるが、ゴブ太やゴブ子の反応を見るになんとかうまく伝わったようだ。


 さて、ゴブリンたちの事はこれでいいとして、もう一つ調べたいことがある。

 ゴブリンソルジャーたちを吸収した事で、魔物図鑑に変化はあったのかということだ。

 私はそれを確認するため、メニューから魔物図鑑を開いた。

 おお、変化は……かなりあるな。

 追加されている魔物は以下のとおりである。



 シャドーラット

 ゴブリンファイター

 ゴブリンリーダー

 ゴブリンソルジャー

 ゴブリンナイト

 ゴブリンプリースト

 フォレストウルフ

 ホーンディアー

 アルミラージ

 パワーボア

 グリーンスライム

 ポイズンスライム

 ビッグモス

 ソルジャービー

 レッサースパイダー

 ポイズンスパイダー

 マンドラゴラ

 ファンガス



 暫く見ていない間に、また随分と魔物が増えている。シャドーラットとゴブリン各種は黒牙とゴブ太やゴブ子の進化による情報だろうが、それ以外はゴブ太たちの狩りの成果だろう。

 どうやら私が意識せずとも、捧げられたものはきちんとDPに変換されていたようだ。

 相変わらずゴブ太たちの狩りの成果の方は召喚することが出来ないようだが、先ほど吸収したゴブリンソルジャーは召喚可能だった。やはり、素材のみよりも全身あった方が良いのだろうか。DPを増やす為にもゴブ太たちには、強い魔物の亡骸を期待したい。


 ちなみに戦力の増強に関してだが、今の状況ではあまり当てには出来無さそうである。今の私が召喚できる魔物の中で、最も強いのはゴブ太の種族であるゴブリンナイトのようだが、ゴブリンナイトの召喚に必要なDPは300,000DP。まず全く現状では足りていないし、あったとしてもこれならダンジョン内を拡張した方がよさそうだ。

 だが、一応これだけの選択肢が増えているということを覚えておこう。


 私が思考を巡らせていると、またゴブ太たちが亡骸をダンジョンコアの前に運んできた。心なしか今度は丁重に運んでいて、等間隔に三体の亡骸を並べていく。

 同じように吸収されて、DPに変換された者たちの種族はホブゴブリンとなっていた。

 ゴブリンソルジャーではない?

 ゴブ太に聞いてみるか。

 ふむふむ。このゴブリンたちはゴブ太の部下として、共に狩りを行っていた仲間たちらしい。狩りを繰り返してレベルを上げることで、進化を果たしたようだが、どうやら今回の襲撃の際に襲撃ゴブリンたちにやられて回復が間に合わず、息絶えたようだ。つまり集落のゴブリンたち、か。

 ゴブ太たちは私の伝えた魂の安息というイメージを信じて、同胞たちも同じく私に弔って貰おうと考えたようだ。

 うーむ。集落ゴブリンたちか。それを聞いてしまうと、何だか妙な気分になってくる。そうか、この襲撃でこちら側にも被害は出ているのか。進化を繰り返しているゴブ太はともかく、他の集落ゴブリンたちは狩りに出て強くなってはいるが、襲撃ゴブリンたちと比べてそこまで差がある訳ではない。

 今回運ばれてきた亡骸であるホブゴブリンはEランク。弱いわけでは無いが、ゴブリンソルジャーたちと比べて殊更強い訳でも無い。さらに襲撃してきたゴブリンは数も多かったし、被害が出るのも致し方ないことであろう。

 ゴブ太に聞いてみれば、ゴブリンたちには特に決まった弔い方法というのは無いようだ。ならば【ゴブリンの神】の手に委ねられるのが、彼らには一番いいのだろう。



 だが私は、良かったのだろうか?

 現状ではDPを増やせる機会があるのなら増やすべきだ。

 ゴブリンたちもこの弔いの方法に納得している。

 ならば、私の中にあるこの妙な気持ちは、鬱々とした引っかかるこの気持ちは何処から来るというのだろう。

 不意に私は、私の内で死んでいった沢山のラットたちの事を思い出した。随分昔の事のようでいて、今でも記憶の中にあるあの惨劇の光景。

 私は唐突に理解した。

 私はあの時の事を思い出して、それが引っかかっていたのだと。

 私の失敗が招いた惨劇。集落ゴブリンたちの亡骸を吸収したことを自覚した時、あの惨劇の時に吸収したラットたちと重ねてしまったのだ。

 だが、前回と今回では経緯が違う。前回は私の無知と過ちが引き起こした事態だったのに対して、今回の集落ゴブリンたちは自分たちの大切なものを守るために戦い死んだのだ。

 それを吸収したことに関しても、何かを想う必要は無い。吸収したのはあくまで集落ゴブリンの亡骸であって、生きている集落ゴブリンではない。言うなれば、普段から吸収している魔物の素材と同じなのだ。当人たちから文句を言われる訳でもないし、殊更に亡骸を冒涜している訳でも無いのだから気にする必要なんて無い。

 私が自身の気持ちに説明をつけると、幾分か妙な気持ちは収まった。

 うむ、これでよい。


 頭がすっきりしたら、考えがまとまってきた。どうやら私は思いのほか、混乱していたようだ。これからもダンジョンの拡張は続けていくつもりだが、それ以外に関しては私が自発的に何かをする必要は無い。ダンジョンの外の守りはゴブ太たちに任せておけばよいし、DPの収集に関してもそれは同様だ。

 ああ、でも一つだけ。

 しいて言うのであれば、もしもの時、黒牙にゴブリンたちの手助けをするように伝えることくらいだろうか。どうも黒牙は私が言わないと、ゴブリンたちとはあまり自分から関わろうとはしないようなのだ。今回の戦闘でも黒牙は一匹だけ、ダンジョンの内でずっと外を警戒しているようだった。もし黒牙が戦っていれば、被害はもう少し減ったかもしれない。

 まあ私の配下という意味では、黒牙の判断が一番正しいと言えなくも無いのだが。

 私がやるべきことなんてそのくらいなのだ。


 そもそも私に出来る事なんて、たかが知れているのだから。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 召喚可能な魔物が増える条件は、①眷属が進化した時②魔物を丸ごと(複数体?)吸収した時、って感じかな? どうも魔物の戦力増強は直接召喚以外の方法がメインになりそうですね なんかダンジョンとい…
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