26.襲撃
前日投稿の25.信仰の内容だけ、次の話でした。
更新しましたので、新しい内容になっています。
こちら、前日投稿した内容と同じものです。
ちょっと混乱したかもしれません。ごめんなさい。
あらすじ
感謝の気持ちは祈りへと変わり、祈りはやがて信仰へとつながる。
気が付けば男はゴブリンたちから神として祀られていた。
ちょっとした感謝の気持ちだったのに、思う以上にゴブリンたちから慕われてしまった。
それに今更ながらに気づいた男は、少し自重しようと心に決める。
男は己の弱い心を自覚している。それゆえに、深い関りというものを忌避していた。
これ以上、ゴブリンたちとの関係が、ゴブリンたちを想う心が深まることの無いように。
男は久方ぶりに、その意識を深く己の内に閉ざした。
この身体に生まれ変わったことで眠るということを忘れてしまった私にとって、何も考えず、何もしない時間というのは眠っているのにもっとも近い状態だ。
眠ることをせずとも身体も心も特に疲れを感じることは無いが、前生の記憶がそう思わせるのか、私は無意識のうちに睡眠を欲していたようだ。
穏やかで静かな私だけの世界の中で、『気配察知』から流れてくるゴブリンたちの喧騒が私に心地よい安らぎを与えてくれる。
何かを気にすることは無く、何かに焦ることも無い。時間に追われて終わりに怯えて、ただひたすら逃げ続けた前生では考えられないような充実した瞬間。静かに流れる時間を、私は満ち足りた心で満喫していた。
しかし、寿命という制限がなくなったとはいえ、危険と隣り合わせな世界に存在する以上、そんな安寧にもいつか終わりはやってくる。
争いの気配がする。
『気配察知』を通して伝わってくるそれは、私の意識を強く刺激した。平和なはずのこの周辺で感じたそれは、命が消えていく感覚。
どうやらダンジョンの外で、何かが争っているようである。状況からして片側は、ゴブ太を筆頭とした集落のゴブリンたちだろう。だが、もう一方はなんだ?
私はダンジョン内にいた黒牙に、『伝心』を通して状況を確認した。
ふむふむ。どうやら、集落のゴブリンたちとは違うゴブリンが徒党を組んで、ここに襲撃をしかけてきたらしい。
意味が理解出来ず、一瞬言葉に詰まってしまった。いつの間にか私の中には、ゴブリンは私の味方という意識が出来つつあったようだ。
しかしよくよく考えてみれば、初めて出会った時にゴブ太は同種であるゴブリンに集落を襲われて逃げてきたと言っていた。
つまり今の状況は、ゴブ太が集落を追われたのと同じ状況ということか。
発展しつつある集落を見た上で尚襲ってきたということは、相手側はそれなりの戦力を有しているのだろう。好戦的な彼らにダンジョンの内まで攻められれば、ダンジョンコアたる私にまで危害を加えられかねない。
【ゴブリンの神】という称号があるとはいえ、私を崇めているのは集落のゴブリンたちであって、それ以外のゴブリンたちにとっては、私などただの……ただの……ただのなんだろう?
私はダンジョンコアである。私自身はステータスを見てそれを知っているし、私が召喚した黒牙やゴブ子は何となくそれがわかっているようだった。そしてゴブ太は私が名乗ったイメージ通りにこの辺りの主だと思っていて、集落のゴブリンたちは神だと思っている?
では、何も知らないゴブリンたちにとって、外の魔物たちにとって私はなんなのだろう?
ただの無機物? 敵? 食料? それとも便利なアイテム?
これまで外の魔物というものがゴブ太や、集落のゴブリンくらいしか存在しなかったので、何とも言えない。あとでゴブ太にでも聞いてみようか。
などと、私が適当なことを考えていられるのは、この状況に私が危険を感じていないからだ。
集落を襲うゴブリンたちが私を殺す可能性はあるかもしれない。しかし、たとえその可能性を考慮したとしても、そもそもの話として集落を襲うゴブリンたちが外のゴブ太たちを突破できるとは思えないのだ。
『気配察知』で感じる外で戦うゴブリンたちの動きや、『魔力感知』から感じる魔力の強さ。今戦っている数で言えば、襲ってきたゴブリンたちの方が多いかもしれない。だが、それはあくまでも十数匹の差であり、個の強さで圧倒している以上、敗北はありえない。
特にゴブ太の強さは集落のゴブリンたちを含めても群を抜いている。明らかにレベルだけの強さではない。きっと、私が意識を薄めている間にさらなる進化を果たしたのだろう。
それから暫くして、襲ってきたゴブリンが半分以下にまでなった頃、彼らはようやく不利を悟ったのか森の中へと逃げていった。集落のゴブリンの何匹かはその後を追おうとしたが、ゴブ太がそれを止めたようだ。深追いを危険と判断したのだろう。
そうしてゴブ太は集落のゴブリンたちに周囲の警戒を任せると、ダンジョンへと戻ってきた。ダンジョン内に避難していた非戦闘員のゴブリンたちに、戦闘の終わりを伝えるためだろう。
そう、ダンジョン内にはゴブ子を筆頭とした戦闘能力の無いゴブリンたちが避難をしていたのだ。とはいっても、ゴブリンたちがいるのは、私ことダンジョンコアのある奥の部屋では無く、回復の泉が設置されたダンジョン入り口近くの部屋である。
奥の部屋にいるのは黒牙だけで、そのため入り口近くの部屋はかなり窮屈そうだった。
ゴブリンたちが幾ら子供程の体積しか無いとはいえ、あくまでどちらも小部屋。八十三匹もいるのだから、多少通路にはみ出しているのは致し方ない範囲だろう。
その気遣いは大変に嬉しい。ゴブリンたちがダンジョン内に避難するのは別に構わないのだが、やはり味方とはいえダンジョンコアのある部屋には出来れば軽々しく立ち入って欲しくはない。そこは私の心臓部であり、弱点でもあるのだから。
さて、ゴブ太やゴブ子は色々と忙しそうだ。詳しい話を聞くのは後にして、一先ず私も含めたステータスの確認からしてみようか。
名前:――――
種族:ダンジョンコア
年齢:13
カルマ:+3
ダンジョンLV:1
DP:18301
マスター:無し
ダンジョン名:名も無き洞窟
スキル:『不老』『精神的苦痛耐性LV7』『空想空間LV7』『信仰LV7』『地脈親和性LV3』『気配察知LV7』『魔力感知LV7』『伝心LV7』『読心LV7』
称号:【異世界転生者】【□□□□神の加護】【時の呪縛より逃れしモノ】【聖邪の核】【鼠の楽園】【惨劇の跡地】【G級ダンジョン】【ゴブリンの神】
名前:黒牙
種族:シャドーラット ランク:D
年齢:3
カルマ:±0
LV:41/45
スキル:『夜目LV7』『隠伏LV7』『気配察知LV7』『爪牙術LV7』『影魔法LV7』『魔力感知LV7』『魔力操作LV7』『追尾術LV5』『暗殺術LV5』
称号:【――――の眷属】【影に潜む者】【暗殺者】
名前:ゴブ太
種族:ゴブリンナイト ランク:C
年齢:7
カルマ:-5
LV:6/55
スキル:『夜目LV6』『解体LV5』『森歩きLV7』『採取LV5』『鈍器術LV7』『気配察知LV7』『指揮LV6』『盾術LV1』
称号:【生残者】【――――の眷属】【村落の長】【神の騎士】
名前:ゴブ子
種族:ゴブリンプリースト ランク:D
年齢:2
カルマ:-10
LV:1/50
スキル:『採取LV7』『森歩きLV7』『料理LV5』『調薬LV5』『神聖魔法LV1』
称号:【――――の眷属】【集落の母】【神の巫女】
おおー、どうやら随分と時間が経っているようだ。私のステータスに関しては年齢とDPくらいしか変化は無いが、他の配下たちは色々と変化がある。
いつものように一つ一つ考察していこうか。
まずは毎度お決まりの黒牙から。
とはいっても黒牙の成長は、レベルを少し上げていることと、『影魔法』のスキルレベルが遂に7に到達したことくらいか。一応それに伴うように『魔力感知』『魔力操作』のスキルも7へと上がっている。
そんな黒牙のレベルも遂に40を突破した。レベルが上限に達した時、黒牙はどのような進化を見せてくれるのか、私はそれをとても楽しみにしている。
お次はゴブ太なんだが、大分変わっているな。
種族はゴブリンナイト。ランクはC。一気に黒牙のランクを越えてしまった。確か以前のゴブリンリーダーはEランクだったから、Dランク帯を飛ばして一気にそこまで行ったことになる。もしかしたらその間に別の進化があったのかもしれないが、黒牙のこれまでの頑張りとレベルの上がりにくさから考えるとさすがに無いかな。本当のところは当人に聞いてみないと分からないけれど。
さて、スキルだが成長したもの増えたものと色々あるが、一番気になるのは『繁殖』のスキルが消えていること。以前の黒牙が持っていた『不意打ち』のように別のスキルに変化したというような様子は見られないし、種族的なことなのか、もしくはそれ以外の要因なのか。ゴブ子のスキルからも、同じく消えているのもまた気になる。
『繁殖』のスキルは、そのスキルレベルが上がるほどに沢山の子供を産むようになっていった。それはラットたちの時も、ゴブリンたちを見ていても分かることだ。それが無くなったということは、環境が安定したことで種として繁栄するために沢山の子供を産む必要がなくなったのか。
もしくは、ゴブリンたちの種族、ナイトやプリーストに関係があるという可能性もある。どちらもそういった行為からは遠いイメージだからな。まあこれは、あくまで私の持つイメージなので、全く関係ないという可能性も十分にあるのだが。
とにかく、ゴブ太とゴブ子から『繁殖』のスキルが消えた。
ゴブ太のスキルの続きだが、『夜目』『鈍器術』『指揮』が一つずつ上がっている。そして、『盾術』の習得。何とも騎士らしいスキルである。覚えたのに使い込んでいる形跡がないということは、習熟度を上げて覚えたスキルでは無く、進化して得たスキルなのかもしれない。
最後に称号が【神の使徒】から【神の騎士】に変化している。多分これはそのまんま、ゴブリンナイトに進化したからそうなったのだろう。何が違うのかはよく分からないが。
では最後にゴブ子を見ていこう。
正直なところ、ゴブ子の変化が一番気になる。
ゴブ子は非戦闘員であり、今までレベルが上がった形跡は一度として無かった。なのに、いきなりDランクのゴブリンプリーストに進化している。これはレベル上限への到達による進化では無く、ベビー系統の進化と同じ条件による特殊な進化があったと考えるべきか。
その辺りの話は、前にゴブ太からちょこっと聞いていた。何でも戦う以外にも進化する方法があるらしいと。しかしその条件はゴブ太も知らないようだった。
称号の【神の巫女】が関わっているのではないかと思うのだが、【神の巫女】をゴブ子が得てから暫く私も観察していた期間があり、そこで進化していないのを鑑みるに他にも進化の条件があったのだろう。可能性としては、いつの間にか-10にまで下がっているカルマ辺りだろうか。
それはまあともかくとして、スキルの話だ。
ゴブ子のスキルの中で成長しているのは、『料理』と『調薬』。この二つはゴブ子の変わらぬ研鑽の証だろう。
そして、新たに追加されたスキル『神聖魔法』。
私の配下に二つ目の魔法スキルが追加された!
これはちょっと、いやかなり嬉しい。ゴブ子の時間がある時に、また見せてもらおう。いや、見るだけでは何が何だか分からないだろうから、聞き取りも必要だな。
プリーストが覚えた魔法だ。これは恐らく、私が密かに期待していたアレかもしれない。言葉の響きから行っても、その可能性は高いだろう。
うむ。聞くのが今から楽しみだ。
うん? そんな風に考察を続けていると、どうやら襲撃騒動の後始末も一段落ついたようで、ゴブ太とゴブ子がダンジョンに戻ってきた。
早速、二匹に色々と聞いてみよう。まずは……当然魔法からだな!




