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不滅のダンジョンマスター  作者: やみあるい
第一章 迷宮転生の章

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24/204

24.ダンジョン拡張

あらすじ


一年が過ぎて、男も配下たちも大きく成長した。

それは戦いの強さだけではない。

ゴブ太の相方として召喚したゴブ子は料理や調合といったスキルを覚え、ついにポーションを造り出すことに成功する。

さらにゴブ太が遠征の度に仲間を増やしたことで、ダンジョンの手前にはもはや集落と呼ぶにふさわしい場所が形成されていた。

男は拡大する集落に、戸惑いを覚えるのだった。

 いよいよ待ちに待ったダンジョンの拡張だ。

 とはいえ、焦ってはいけない。ここまで大切に貯めてきたDPを使うのだ。万が一にも間違ってしまえば取り返しがつかない。まずは現状の確認からだ。

 現在のDPは20780DP。最小の小部屋一つが、10000DP。

 DPを最大まで使えば二部屋まで増やせるが、それだと他に使うDPが無くなってしまう。部屋を造るにはまず、その部屋に繋がる通路を造らなければならないようなのだ。なので今回は一部屋だけ増やすことにした。


 それにしても、ようやくこれでダンジョンコアをダンジョンの奥へと移すことができる。ずっとダンジョンに入るとすぐにダンジョンコアがあるという状況で、未だ侵入者が現れていないとはいえ、気が気でなかった。

 移せるよな? ダンジョン拡張にはまだ、何一つ手を出していないので、出来ることと出来ないことが曖昧だ。全ては私の勘頼り。

 ただしこれに関しては、例えば先ほどの部屋同士は通路で繋げなければいけないという条件のように、何となく分かるような気がするのだ。そう、それはまるで人が呼吸の方法を当たり前に知っているかのように、ダンジョンコアとしての本能とでも言うのだろうか。

 だから多分、ダンジョンコアの移動も出来る。まあそもそもそうでなければ、さすがにダンジョンとしておかしいだろうからな。

 ダンジョンコアは私の心臓部であり、唯一の生身? の部分である。

 私は『不老』であっても、不死ではないのだ。私自身たるダンジョンコアが傷つけられるような可能性は、少しでも減らしておきたい。



 私はメニューからダンジョン拡張を開いた。


 ▽メニュー

  ▽ダンジョン拡張

   ○部屋追加

   ○通路追加

   ○設備追加


 まずは部屋と部屋を繋ぐ通路を造ろう。

 それほど長くは無くてもいいが、しっかりとした通路が良い。

 通路はその長さや広さに応じて、消費するDPが変わるらしい。私はまず1000DPを消費して、ダンジョンの入り口とは反対の壁に通路を追加する。

 通路追加を選択するとダンジョンマップが現れて、平行な二本の点線が表示された。この点線を動かして通路の位置を決めるのだろう。

 通路の位置を設定すると、今度は通路の広さと長さの設定になった。通路の仮想位置を示す点線を広げたり狭くしたり、あるいは長くしたり短くしたりと、かなり感覚的に設定が出来るようだ。

 広さも長さもそれほど必要ではない。広さはゴブ太たちが問題なく通れる程度で、長さは今いる部屋一つ分より少し長い程度。

 私が全てを決め終わると、ダンジョンマップ内で壁がガリガリと削られていき、あっという間に通路が完成した。

 なるほど、こうなるのか。


 さて、次こそは本当に部屋を追加しよう。私はダンジョン拡張のメニューの中から、一番安い10000DPの小部屋を選んで、通路の先にそれを追加した。すると通路の奥で壁がガリガリと削られていき、私が今いる場所と同じくらいの小部屋がそこに造られた。

 ダンジョンの外と違ってダンジョン内部では、何処であろうとも『魔力感知』がしっかりとその形を捉えてくれる。

 それは今、出来つつある場所も例外では無いようだ。だからダンジョンが拡張されていく際の壁の魔力の様子も正確に観察出来る。ひとりでに出来ていく通路を観察するのはなかなかに面白かった。

 ここまでで11000DPの消費。これまでで一番のDP消費だ。まるで高い家電を一気に購入したかのような爽快感を感じる。きっと、ずっと我慢していたのも関係しているのだろう。

 小部屋が作成されると次の瞬間、私のいる位置がダンジョン入り口の小部屋から、今作った小部屋へと移動していた。

 なるほど、こうなるのか。不思議な感覚だ。

 ダンジョンの奥に移動した瞬間もそうだが、ダンジョンコアが入り口から移動した感覚は確かにあったのに、ダンジョンの外の光景は変わらず『魔力感知』で近くに感じられるし、『気配察知』にはダンジョン前に住むゴブリンたちの気配が変わらず感じられる。

 これは私がダンジョンコアであると共に、ダンジョンでもあるということの証左なのかもしれない。ダンジョンコアはあくまで私自身の核であって、そこから続くダンジョンもまた私の身体の一部なのだ。だからダンジョンコアの位置が変わっても、『魔力感知』や『気配察知』で感じられる範囲は変わらないのだろう。


 さて、これで小部屋の追加は終わったが、ダンジョン拡張でやりたいことはまだある。

 それは設備追加だ。

 この中にはダンジョン内部に追加できる設備が一覧となって表示されている。落とし穴や矢を射る仕掛けなどの罠もあれば、もっと大きな部屋全体を使うような施設といったものまで。

 その中でも今、私が気になっていたのはこれだ。


 回復の泉 5000DP


 実は以前ゴブリンたちとの会話の中で、この森の中には川や湖といった水源が無いということを聞いていた。では飲み水はどうしているのかと言えば、雨水や朝露を貯めたり、水分の多い木の実を食べたりして補っているらしい。

 この森の中では水は貴重品なのだ。当然のことながら、そんな貴重な水をほかの用途に使うことなど殆ど無い。つまりゴブリンたちには洗濯や水浴びといった文化が無いようなのだ。この話を聞いた時、私は思わずその光景を思い浮かべて、そのままそっと記憶の隅へと追いやった。それからその話についてはずっと忘れていたのだが。

 この設備の中にある回復の泉を見た時、その記憶を思い出したのだ。


 防衛という意味であれば、罠を追加するという選択肢も上げられるだろう。実際に、設備追加の中にはダンジョンにありがちな罠なども多くあった。

 小さなものでは先ほど挙げた落とし穴や矢を射る仕掛け。また大きなものでは槍の飛び出す壁や、転がる大岩、釣り天井のようなものに至るまで様々だ。

 しかし、今のところこれらの罠が有用に扱えるとは思えない。私のダンジョンは現在、二部屋と短い通路が一つしかない。罠を仕掛けたとしてもたかが知れているだろう。

 それよりはゴブ太や黒牙たちに頑張って戦って貰った方が良い。

 それに回復の泉というからには傷や体力を回復させる効果があるはずだ。ダンジョンに居れば傷は少しずつ癒えていくし、今はゴブ子の調合した薬もあるけれど、怪我への対処法は幾つあっても多すぎるということは無い。

 実際ゴブ太たちが集団で遠征に行くようになってから、傷付いて帰ってくるゴブリンたちも一定数いるのだ。そんなゴブリンたちには有難いものとなるだろう。

 まあ言ってしまえばこれは、配下という訳でも無いのにいつも私の下へ様々なアイテムを持ってきてくれるゴブリンたちへの感謝の印なのだ。

 なによりもこのDPの半分以上はゴブリンたちが稼いでくれたものなのだから。


 ということで、私は回復の泉をダンジョンへ設置することにした。

 私は回復の泉を選択し、設置場所を選ぶ。場所は入り口近くの小部屋でいいだろう。そして5000DPを消費して回復の泉を設置した。

 どうやらこの泉、かなり大きな施設のようだ。何か巨大なものがダンジョンに形作られるのを感じる。そこにダンジョンコアから魔力が流れていき、魔力はその設備に触れると変換されて清涼な魔力を持つ液体となって装置の中に溢れた。その流れ方を見るに噴水から噴き出した水が、部屋の中心に丸く掘られた浅い穴を満たしているようだ。

 魔力供給率を見ると、回復の泉は10%の魔力を常時使用している。なかなか消費が大きい施設のようだが、どうせ今のところダンジョンから魔力を供給しているのは黒牙、ゴブ太、ゴブ子の三匹のみ。他には何にも使っていないのだから問題は無いだろう。


 さて、これでダンジョン拡張は完了だ。あとはゴブ太やゴブ子に洗濯や水浴びの利点と行い方を伝えて、ゴブリンたちに広めさせればいいだろう。

 ああ、それにしても何だかとても安心する。ダンジョンコアが入り口から遠ざかったからだろうか。色々と対策はしてきたのだが、以前と比べて格段に安心感が違う。

 これもまた、ダンジョンコアという種族に宿る本能によるものなのだろうか。

 うむむ、本当のところは分からないが、まあ実害がある訳ではない。ダンジョンの奥に行くほど安全だというのは事実だし、気にする必要もないか。



 そして暫しの時が過ぎて。


 ダンジョン拡張から三日ほど経った所で、施設の使用状況を確認してみようと思う。

 ちょうど近くにいたゴブ子に聞いてみると、早速ゴブリンたちは回復の泉を利用しているという話だ。教えた洗濯や水浴びなども行っており、痒みが消えて快適になったと喜んでいる。

 変化はそれだけでなく、身体や服を洗うようになってからは、ゴブリンたちに衛生観念らしきものも芽生えてきたようだ。早速とばかりに集落の掃除や、小屋内の片付けなどを行うゴブリンも出てきたとか。

 たった三日しか経っていないというのに、本当に順応が早い。

 前から思っていたことでもあるが、ゴブリンたちは環境に適応する力がとても強い。

 それに新しい物に慣れるのも早い。

 どのような状況であろうとも生きていけるが、便利なものがあればすぐにそれを生活に取り入れて生活を向上させることができる。

 この柔軟さこそがゴブリンたちの武器なのだろう。あと繁殖力もそうだが。

 ゴブリンたちの覚えているスキルを見てもその柔軟さは分かる。集落のゴブリンがダンジョンに入ってくる時、たまにそのステータスを見ているがゴブリンたちは実に多岐に渡るスキル構成をしていた。

 戦闘だけをとっても、『鈍器術』『棒術』『弓術』『投擲術』『格闘術』『盾術』『罠設置』『威嚇』『気配察知』など。生活面では、『木工』『建築』『裁縫』『採取』『伐採』『狩猟』『解体』『革加工』『調薬』『料理』に、最近では『掃除』や『洗濯』というスキルが増えた。

 ただ、どのスキルレベルも今のところ3を越える者は少なく、5にまでなったのは一部の者のみ。7に至ったのは、ゴブリンの中ではゴブ太とゴブ子だけ。

 やはり前々から思っていた通り、スキルレベル7は一つの到達点なのだろう。


 それはともかく、回復の泉の評判は好評なようだ。

 洗濯や水浴び以外にもこの泉の水は使われていて、飲み水としては当然のこと、料理や調薬にも使用しているとのこと。ゴブ子曰く、味は美味しく料理を引き立て、綺麗故に調薬にも使いやすく薬の質も上がったのだとか。

 勿論、回復という効果も有効に活用している。なんとこの回復の泉は、どのような怪我でも数秒浸かるだけであっという間に塞がってしまうのだ。なんという即効性。

 その回復力はビルタの実はもとより、ゴブ子の造るポーションすら軽く凌駕する。

 ただこの回復の泉の水は、泉から離れてしまうとその回復効果は失ってしまうらしく、汲んだ水は他で使うとただの綺麗な水に変わってしまうらしい。

 まあ回復効果はあくまでオマケであり、この泉はそもそも水として使う為に作ったのだから、それはそれで構わないだろう。ゴブ子の薬の腕も少しずつ上がっているようだし、外での回復はそちらを頼ってもらうことにする。


 ダンジョン拡張はこうして大成功の内に終わった。

 大量のDPを消費してしまったから、これからはまたコツコツとDPを貯めていく日々に戻ることになるだろう。しかしゴブリンたちは満足しているようだし、私も勿論大満足である。

 さあ、また何事もない平和な日々を満喫するとしようか。


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