23.集落
あらすじ
配下たちは狩りを繰り返し、レベルを上げ、ついにレベル上限に達して進化をした。
ゴブ太はただのゴブリンからゴブリンファイターへと。
そして、ブラックラットの黒牙は進化してシャドーラットという種族へ。
さらに遠征途中にゴブ太が出会った昔の村の仲間たちなども加わって、
少しずつ男のダンジョンは大所帯になっていく。
多彩なスキルを持つゴブリンのおかげで採取や狩猟、工芸品と様々なものが宝図鑑や魔物図鑑に記録された。
さらに進化した黒牙は男の憧れた魔法を使えるようになった。
配下の成長によって、男の世界も少しずつ、確実に広がりを見せていた。
あれからあっという間に一年が過ぎた。
この一年で私は『魔力感知』『気配察知』『伝心』『読心』、そして『信仰』のスキルレベルを7にまで上げた。現状で7は私が持つスキルのレベルとしては最高値である。恐らくまだ先はあるのだろうが、ここはある種の到達点ではないかと思っている。
その証拠に、一足先に7へと至った『空想空間』はこの一年間ずっと使い続けていても、レベルが上がる気配は無い。きっとここから先は更なる鍛錬や、才能、もしくは何か条件が必要なのだろうと思っている。
つまり、現状で私のスキルは『地脈親和性』を除くと、私が上げられる上限まで辿り着いてしまったのだ。一応これからも特訓は続けていくが、先の見えない道のりに私が一体どれだけ耐えられるのか、少々不安である。
名前:――――
種族:ダンジョンコア
年齢:12
カルマ:+6
ダンジョンLV:1
DP:20780
マスター:無し
ダンジョン名:名も無き洞窟
スキル:『不老』『精神的苦痛耐性LV7』『空想空間LV7』『信仰LV7』『地脈親和性LV3』『気配察知LV7』『魔力感知LV7』『伝心LV7』『読心LV7』
称号:【異世界転生者】【□□□□神の加護】【時の呪縛より逃れしモノ】【聖邪の核】【鼠の楽園】【惨劇の跡地】【G級ダンジョン】
ゴブリンたちからのお裾分けも含めて、ちまちまと貯め続けたDPはなんと2万DPを超えた。これの使い道に関してはまた後にするとして。
私以外の変化についても確認していこう。
まずは配下たちのステータスだ。
名前:黒牙
種族:シャドーラット ランク:D
年齢:2
カルマ:±0
LV:31/45
スキル:『夜目LV7』『隠伏LV7』『気配察知LV7』『爪牙術LV7』『影魔法LV6』『魔力感知LV5』『魔力操作LV5』『追尾術LV5』『暗殺術LV3』
称号:【――――の眷属】【影に潜む者】【暗殺者】
名前:ゴブ太
種族:ゴブリンリーダー ランク:E
年齢:6
カルマ:-2
LV:8/30
スキル:『繁殖LV5』『夜目LV5』『解体LV5』『森歩きLV7』『採取LV5』『鈍器術LV5』『気配察知LV6』『指揮LV3』
称号:【生残者】【――――の配下】【集落の長】
名前:ゴブ子
種族:ゴブリン ランク:F
年齢:1
カルマ:-4
LV:1/15
スキル:『繁殖LV5』『採取LV7』『森歩きLV7』『料理LV2』『調薬LV1』
称号:【――――の眷属】【集落の母】
それぞれに成長を遂げていることがわかるだろう。
まず黒牙。『影魔法』を使い続けたことにより、『魔力感知』と『魔力操作』のスキルが新たに追加された。これにより『影魔法』を操りやすくなったそうだ。
他にも遠征を繰り返す事で獲物の痕跡を探し出し、その跡を追う『追尾術』なるスキルを獲得した。これにより遠征での探索効率は格段に向上したという。
さらに『不意打ち』のスキルが消え、代わりに『暗殺術』なるスキルを獲得していた。これは称号【暗殺者】を手に入れたのと同時期だったため、この称号が関係しているのだと思われる。
次はゴブ太。ゴブ太に関して特筆すべき点は、種族がゴブリンリーダーに進化したことだろう。これによりランクもEへと昇格している。
スキルも全体的に成長して格段に強くなった。さらに新たなスキルとして『指揮』というのを獲得している。これは称号【集落の長】を獲得したのと同時期だったので、黒牙の時と同じく称号によりスキルを獲得したのではないかと思っている。
またこの称号を獲得した後、暫くしてレベルが上限に達して進化を果たし、ゴブリンリーダーに進化したことから、そこにもこの称号が関与しているのではないかと疑っている。まあ確証のようなものは無いので、ただの勘なんだが。
【集落の長】とリーダー、立場的に何となく似ているような気がしないだろうか?
カルマが地味に減っているのも、その辺りの理由と無関係では無いだろう。
最後にゴブ子。ゴブ子は遠征に出向いてはいないのでレベルはそのままだが、スキルに関してはかなり成長している。
まず『採取』と『森歩き』。採取とダンジョン周辺の見回りを毎日行うようになったゴブ子は順調にスキルを育て、ついにゴブ太に並ぶほどのレベルにまで成長した。『採取』に関してはゴブ太を超えている。集落の中であってもゴブ子の採取の腕前に並ぶ者はいないくらいだ。
さらに私が戯れに教えた料理の知識を試行錯誤することで、独自に『料理』のスキルを獲得した。それにより集落内の食事事情は大きく向上し、今では集落全体からお母さんと呼ばれるようになったらしい。その呼び名が定着した頃、称号に【集落の母】が人知れず追加された。カルマの下がり具合からも分かる通り、かなり同胞の助けとなっているようだ。
だが、ゴブ子の向上心はまだ終わらない。集落の者から知識を仕入れ、自分で採取した薬草などを使って実験を繰り返し、最近新たに『調薬』のスキルを獲得した。どうやら料理の技術や知識なども参考になったらしい。
初めて成功した薬を、ゴブ子は私にくれた。
今では私の宝図鑑にその名が記載されている。
初級回復ポーション
飲むと体力が回復して、軽度の傷などは瞬時に治るらしい。その薬効が示す通り、ビルタの実の他、数種類の薬草や朝露の雫を集めたものが素材として使われているようだ。
この辺りでビルタの実といえば私がいつも採取して貰っている木しか無いため、その素材は私から提供したものだ。その分のDP増加量は減るが、今は他のゴブリンたちも採取したものをくれるため、ビルタの実の一つや二つは誤差の範囲に収まる。その程度の損害ならば、未来への投資と割り切ってゴブ子に与えてみようと思ったのだ。
まあ偉そうに言ってるが、そもそもそれを採取して私のところへ持ってくるのはゴブ子なので、私はただ私の下に持ってくる分を特訓用に回すよう伝えただけなのだが。
それはともかく、実はゴブ子から傷を瞬時に回復する薬を作れるかもしれないと聞いたのも、ゴブ子に協力しようとした理由でもあった。
ゴブ子が話すその効果は、私にある薬を想起させたのだ。そして私の予想は見事に的中した。
ポーション。傷を癒す魔法の薬。それはファンタジーな世界観のゲームに度々登場する回復手段の一つだ。ぜひ一度、自分自身で使ってみたいと夢見たりもしたのだが、さすがに今の私にそれが効くとは思えない。そもそも傷を負うのかすら分からず、それを試す気も無いのだ。その夢は諦めることにする。
とはいえ、ゴブ子から貰うことで、宝図鑑の中にその名を記録することは出来た。これはもはや私がそれを持っていると言っても過言ではない。
最近は新しいものが宝図鑑に記録されるたびに、ワクワクしている自分がいる。収集癖というのだろうか、宝図鑑に並べられた名前を眺めていると何だか楽しくなってくるのだ。
あれから新たに様々なものが追加された。
活力の豆、黒木苺、ゴロゴロ芋、ホロルの実、キッコの根、鋭刃の直葉、朝露の小瓶、堅木の大槌、なべのフタ、鉄鉱石、銅鉱石。
ゴブリンたちは拾ったものや作り出したものを私の下へ持ってきては渡してくるので、色々なものが手に入る。中には宝図鑑に載らないようなものやDPにならないものもあったが、こうして様々なものが宝図鑑に記録された。中には用途も分からずに拾ってきたものまであるようだが、そんなところにも遊び心を感じる。
このように私とゴブリンたちは今のところ良好な関係を築けていた。
……うむ。
そろそろ、いい加減あのことに触れるべきか。
それは度々私の言葉に出てきた単語であり、ゴブ太やゴブ子が新たな称号を得た理由でもある。
そもそも、始まりは何処だったのだろうか?
ゴブ太が三匹の元集落の仲間を連れて来た時か、もしくはゴブ太とゴブ子の子供が生まれた時か。いっそゴブ太がここにやってきた時にはもう始まっていたのかもしれない。
何のことかと言えば、それは今私自身たるダンジョンの前に広がる光景の事である。
現在、ダンジョンの目の前には、沢山のゴブリンたちが住む集落が形成されていた。
この集落の始まりと限定するならば、やはりそれはゴブ太が遠征帰りに連れてきた元集落の仲間である三匹のゴブリンたちを受け入れたことだろう。
それからゴブ太は幾度も遠征に行ったのだが、時たま元集落の仲間や気の合うゴブリンを連れてきては、仲間として加えるようになった。さらにゴブ太とゴブ子はあの後幾度も子供を作り、その子供たちも一年でベビーゴブリンからゴブリンへと成長進化して、ゴブリンの数を増やしていったのだ。
その結果が、集落である。ダンジョンの前には小屋が幾つも建ち、多くのゴブリンたちが暮らすようになった。そしてゴブ太は彼らゴブリンの相談役的な立場となり、やがて集落のゴブリンの数が百に近くなった頃、称号にある通りゴブ太はこの集落の長となったのだ。
ちなみにゴブ太とゴブ子の二人は未だにダンジョンの中で暮らしているが、そのほかのゴブリンたちはダンジョンの外で生活している。今ではダンジョンの中よりもダンジョンの外の方が設備も整い暮らしやすいと思うのだが、ゴブ太とゴブ子は何故か未だにダンジョン暮らしを貫いているのだ。
またダンジョンからの魔力供給に関しても、最近ではゴブリンたちの中で、ゴブ太とゴブ子のみが受けるという形となっている。
最初の頃はやってきたゴブリンたち全てに供給していたのだが、ゴブリンたちの数が増えていくのを目の当たりにして、私の中にある危惧が生まれたのだ。ゴブリン一匹の魔力消費は微々たるもの。しかし、このままゴブリンたちの数が増えていけば、遠からず魔力供給率は100%を超えるだろう。そうなれば、魔力供給が行き渡らないゴブリンたちが必ず出てくるはずだ。そうなると、同じ集落の中で魔力供給を受けるゴブリンと受けないゴブリンの集団が出来て、差別や争いの基になる気がする。
状況はもう、【惨劇の跡地】となった頃とは大分変わっているが、それでもあの時の記憶が私にその危惧をもたらした。
ならばいっそのこと、ダンジョンからの魔力供給は最低限、私と絆という繋がりのあるゴブ太とゴブ子だけにしようと考えたのだ。そしてその他のゴブリンたちには、狩猟や採取をさせて、自分たちで生活をして貰おうと。
採取はともかく、狩猟はこの辺りでは獲物となる魔物が一切いないので、黒牙とゴブ太の遠征に幾匹かのゴブリンが同行して獲物を狩ってくる。
例外として弱っている者や、幼子などが危険な場合のみ、私から一時的に魔力供給をするというルールも追加した。どうやら魔力供給には肉体を健全な状態に回復させる作用があるらしいからだ。
結果としてゴブリンたちの食料に回す分が出来た為、私の下へ持ってきて貰う分はかなり減った。しかし、ゴブリンたちは恒常的な魔力供給を止めた私に、未だに森の恵みや制作物などのアイテムを持ってきてくれているのだ。最近では私を拝む者まで現れだして、何だかよく分からないことになっている。
ちなみに魔力供給の有無に関してだが、どうやら私の意思で与えたり、切ったりすることが出来るようだ。与えられるのはダンジョンにいる時限定らしいので、その時はダンジョンに入ってもらう必要があるけれど。
こうして改めて振り返ってみると、なかなか濃密な一年だった。
さてと、色々とあって少し遅れたがすでにDPは2万を超えている。これだけDPがあれば十分だろう。いよいよダンジョンの拡張に手を出してみようか。




