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不滅のダンジョンマスター  作者: やみあるい
聖女邂逅の章

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200/204

177.私の世界

あらすじ


私はそれまで待機させていたゴブリンデストロイヤーを、ゴーレムの壁へと突撃させる。数体のゴーレムを転ばせることに成功したゴブリンデストロイヤーだったが、そこで他のゴーレムたちから攻撃を受け、袋叩きとなった。だが、その瞬間、ミクスギガントゴーレムが障壁を割り、ゴブリンデストロイヤーが生み出した一瞬の通り道を通じて、障壁に閉じ込められた配下たちが脱出を成功させる。

ミクスギガントゴーレムは逃げた配下たちを追うことなく、ダンジョンの入口の障壁を割ると、ゴーレムたちを率いてダンジョンへと侵入していく。そこで表示されたステータスは、ミクスギガントゴーレムという存在の脅威を理解するに余りあるものだった。しかし、今の私には、先を行くクリスタルホーンディアーの方が脅威だ。それに、ミクスギガントゴーレムが侵入してきたのは必ずしも悪い事ではない。

なにせ、ここは私の世界なのだから。




 ダンジョンコアである私にとって、ダンジョン内という空間は真の意味で私の支配する世界だ。ダンジョンコアの性能を理解すればするほどに、私はそれを強く意識するようになっていった。

 魔王や神が扱う支配領域と呼ばれる力の使い方は、所詮、ダンジョンコアの空間を支配する力の模倣に過ぎない。私もそれを使ったことがあるからこそ、よくわかる。


 そもそも、自ら生み出した空間と、世界から借りてきた空間とでは、何もかもが違いすぎるのだ。


 故にダンジョンコアである私は、ダンジョン内へと侵入してきた者に対してのあらゆる干渉力が増加する。当然、侵入してきたミクスギガントゴーレムの意識への干渉力も増加していた。それにより、記憶の解析も先ほどより幾分かやりやすくなっている。

 これなら、もうすぐミクスギガントゴーレムの記憶の解析を終えられそうだ。


 私は思考の一部で配下たちにダンジョン内へ戻ってくるよう指示を出しつつ、今まで以上にミクスギガントゴーレムの記憶の解析に力を入れた。



 ミクスギガントゴーレムの記憶の解析は順調に進んでいる。実際、それを証明するように、ミクスギガントゴーレムの記憶を遡っていくことで、次第に核心へ近づくような情報がちらほらと現れ出していた。

 そうして、重要な情報が集まる度に、スキル『情報処理』の助けを借りて、私は情報を整理し直していき、その度に解析の精度は跳ね上がっていく。


 それにしても、『情報処理』で強化された『並列思考』の使用感は非常に良好だ。今の私の『並列思考』には、もはや主思考や副思考といった概念は存在しない。

 そもそも、これまで私が感じていたそれぞれの思考への意識の比重の違いは、『並列思考』本来の性質という訳では無かったようだ。『情報処理』の効果により、複数の思考の扱い方に慣れた今では、全ての思考を主思考と同等の意識で問題無く扱うことが出来ている。


 思うに、『並列思考』というスキルは、ただ単に複数の異なる思考を同時に走らせることが出来るスキルという訳では無いのだろう。『並列思考』の本質は、思考に柔軟性を持たせ、思考の形を自由に操れるようになるスキルなのではないか。

 私は今まで意識を、その都度、それぞれの思考へ切り替えて使っていた。だが、そもそも、そんな必要は無かったのだ。全ての思考はそれぞれに独立しているように思えて、実際は全てが一つのままなのである。つまり、『並列思考』を扱う際には、もっと大きな枠で思考を意識し、動かしていけばよかったのだ。一つ一つの思考があるのではない。あちこちに手を伸ばす不定形な形の思考が一つ、存在しているだけなのだ。

 まあ、それが分かっていたところで、きっと今までの私が持つ思考の幅では、不定形化した思考を一つの枠に収めるのは難しかったかもしれない。

 全ては、『情報処理』というスキルの効果と、それを最大限まで扱えるようにダンジョンコアの性能を使いこなせるようになったおかげだ。

 そのお陰で私は今、『並列思考』を完全に使いこなし、私の思考は新たなる段階へと進化の道筋を辿っている。


 実際、私はそんな考察を行いつつも、片やミクスギガントゴーレムの記憶の解析に集中し、同時に配下たちの動向にも同様に意識を割くことが出来ていた。



 現在、配下たちは私の指示の下、ミクスゴーレムで埋め尽くされつつあるダンジョン内へ、何とか戻ろうと試行錯誤を繰り返している。未だダンジョンの入り口は、ダンジョン内へ侵入し続けるミクスゴーレムたちによって塞がれていたが、その動きはとても規則的で等間隔に進むミクスゴーレムたちの間は、入り込むのに十分な隙だと思える。

 だが、ミクスゴーレムたちに近づきすぎてしまうと、配下たちは攻撃の対象にされてしまう。未だミクスゴーレムたちへ出された邪魔者の排除という命令は有効なのだ。


 ミクスゴーレムたちから受けた傷が癒えていない配下たちに、これ以上の無理をさせれば、更なる脱落者が出てしまうだろう。ダンジョン内に戦える配下を戻しておきたかったのだが、仕方がない。

 私は配下たちをダンジョンの入り口から離し、体力の回復に努めてもらうことにした。



 ダンジョン内を疾走するクリスタルホーンディアーは、出来る限り戦いを避けながら、先へ先へと進んでいる。その為、複製体を差し向けても、戦闘によるDPは殆ど得ることが出来なかった。

 だが、ミクスゴーレムたちは複製体を差し向ければ、その都度、戦闘を行ってくれる。そのお陰で、少しずつDPが手に入り始めていた。しかも、何故か戦ったミクスゴーレムがDランクのミクスロックゴーレムであっても、手に入ったDPは、倒された複製体の上限値だ。


 現状、複製体が戦闘をした際に手に入るDPの上限値は、その複製体の元となった魔物を召喚する際に必要とするDP量であり、手に入るDPの量は、戦った侵入者の強さによって変動することが分かっている。

 そして、今までの経験に当てはめると、相手がDランクだった場合、そこまでのDPは手に入らなかったはずだ。

 これはこのミクスロックゴーレムが強化された存在だからなのか、それとももっと別の理由があるからなのか。


 ふむ。少し調べてみると、どうやらこのミクスゴーレムたちはダンジョンにとって、ミクスギガントゴーレムの一部という判定になっているようだ。故にミクスゴーレムたちによる戦闘で生まれるDPは、ミクスギガントゴーレムの戦いとして換算されている。


 これはなかなかに朗報だ。

 常に上限値のDPが得られると言っても、第一階層にいる複製体のゴブリンたちでは、そこまで多くのDPを増やすことは出来ないが、それでも足しくらいにはなるだろう。

 しかも、わざわざこちらから複製体を差し向けなくても、ミクスゴーレムたちはダンジョン全体に広がっていき、出会った端から複製体を殲滅してくれている。

 私の意識の端で、最近は減る一方だったDPが少しずつ貯まっていた。



 そうこうしている間にも、クリスタルホーンディアーが第一階層の守護者部屋に到達し、あっさりと第一階層の守護者ゴブリンリーダーたちを倒して、次の階層へと進んでいく。


 そうして、ミクスゴーレムが第一階層の半分ほどを埋め尽くした頃、ミクスギガントゴーレムの記憶の探索をしていた私はついに、目的の情報に到達した。



 数多の鉱石を収集し、混ぜ合わせることでより強靭な肉体を生み出す。ミクスギガントゴーレムの力とは、集めた鉱石の数と質に依存する。

 そんなミクスギガントゴーレムだからこそ、次の段階へと到達するための条件にも、何か非常に希少な鉱石を取り込む必要があったらしい。


 Aランクであるミクスギガントゴーレムの次の段階。それはSランクというこの世界における実質的な頂点だ。そこを目指す思いは、恐らく魔物としての本能なのだろう。

 何処までも遠大な精神とは相反する強い強い渇望。それはこの短期間で私が旅したミクスギガントゴーレムの記憶の随所に刻まれていた。



 なるほど。だからクリスタルホーンディアーだったのか。


 クリスタルホーンディアーの角は、その名が示す通り水晶で出来ている。

 元々、この世界に存在する水晶という鉱石は、魔力との親和性が高い鉱石らしい。その上で、クリスタルホーンディアーの水晶角は、この世界でも非常に珍しい水晶なのだとか。

 曰く、魔力との親和性が非常に高く、土の属性魔力を増幅する力を持つ。

 実際、クリスタルホーンディアーは強力な魔法を操る際、常にあの角を起点としていた。あれは、水晶角を魔法の触媒としていたのだ。


 非常に希少で、強い特性を持つ水晶という鉱石の角。その水晶角によって増幅された魔力を感じた瞬間、ミクスギガントゴーレムは、それこそが自身の進化を後押しする核たる物の一つだと確信したようだ。

 だからこそ、今度は慣れ親しんだ縄張りを一時的に離れてまで、クリスタルホーンディアーを追ってきた。前回の反省を生かし、今度は何としてでも手に入れるべく、奥の手である自らの外殻を削りだして作ったミクスゴーレムたちまで使って。



 ミクスギガントゴーレムの狙いは、クリスタルホーンディアーの水晶角。これを手に入れることで、ミクスギガントゴーレムはSランクへの進化に向けて、また一歩進める。

 より明確になった理由と、それを支える根拠。さらにその周辺の情報まで補強した後、私はミクスギガントゴーレムの意識から離れた。


 だいぶ無茶をしてしまったが、成果としては十二分だ。しかも、手に入れた情報は最悪よりは幾分かマシと来ている。

 とはいえ、これで全てが解決という訳にも行かない。ミクスギガントゴーレムを止めるには、クリスタルホーンディアーに水晶角を差し出して貰うことが条件だ。

 命を失うことに比べたら、まだマシとはいえ、魔法主体の戦闘を得意とするクリスタルホーンディアーにとって、その力の源とも言える水晶角を差し出すということは、主要な戦力を捨てるという事に他ならない。

 それを何とか私が交渉して、クリスタルホーンディアーに認めてもらわなければならないのである。それも、信用が最低まで落ちている今の状況で、だ。



 なかなかに厄介な状況だが、それでも一応、か細くも解決まで向かう道筋は出来上がった。あとはもう、そこへ向けて進むしかない。

 それに一応、信用を得るための切り札は用意してある。出来れば使いたくは無かったが、いざとなったらそれも止む無しだ。


 そうして決意した私は『伝心』を使い、第二階層をひた走るクリスタルホーンディアーへ、交渉のイメージを送った。









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― 新着の感想 ―
200話おめでとうございます! 一度裏切った主人公がクリスタルホーンディアーの信用を獲得する方法ってなんなんだろ?楽しみにしてます!
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