20.三度目の召喚
あらすじ
住んでいた村を蹂躙され逃げてきたというゴブリン。
行き場が無いというゴブリンを男はダンジョンへ住まわせることにした。
するとゴブリンは自らに名前を付けてほしいという。
どうやらこの世界で名前を付けるという行為はとても重要なことらしい。
男がまずブラックラットと、次にゴブリンに名前をつけると、ゴブリンは男の配下となった。
男はゴブリン改め、ゴブ太に森の内情や特技などを聞く。
そして植物の採取が得意だというゴブ太に、それらを集めて持ってきてもらうよう伝えるのだった。
三ヵ月程が経った。
名前:――――
種族:ダンジョンコア
年齢:11
カルマ:+6
ダンジョンLV:1
DP:10123
マスター:無し
ダンジョン名:名も無き洞窟
スキル:『不老』『精神的苦痛耐性LV7』『空想空間LV6』『信仰LV6』『地脈親和性LV3』『気配察知LV6』『魔力感知LV6』『伝心LV4』『読心LV4』
称号:【異世界転生者】【□□□□神の加護】【時の呪縛より逃れしモノ】【聖邪の核】【鼠の楽園】【惨劇の跡地】【G級ダンジョン】
名前:黒牙
種族:ブラックラット ランク:E
年齢:1
カルマ:±0
LV:12/25
スキル:『夜目LV5』『隠伏LV5』『気配察知LV5』『不意打ちLV3』
称号:【――――の眷属】
名前:ゴブ太
種族:ゴブリン ランク:F
年齢:5
カルマ:+2
LV:2/15
スキル:『繁殖LV1』『夜目LV3』『解体LV1』『森歩きLV3』『採取LV3』『鈍器術LV1』『気配察知LV2』
称号:【生残者】【――――の配下】
黒牙はあれから幾度か遠征に向かい、自身のレベルと『不意打ち』のスキルレベルを上げた。
対してゴブ太は採取と見回りの日々で、『夜目』『森歩き』『採取』と『気配察知』のスキルレベルを上げた。
私は話し相手にゴブ太が増えたためか、『伝心』と『読心』のスキルレベルが1ずつ上がった。
そしてDPは遂に1万の大台を突破した。
これで遂にダンジョン拡張で一番小さな部屋の追加が可能となる。ただ、これを使ってしまうとDPが一気に無くなる。最近はDPの入手方法も増えて沢山貯まるようになったとはいえ、123DPしか残らないのはいささか不安だ。ダンジョン拡張で部屋を増やすのはもう少し余裕が出来てから行おうと思っている。
あと地味にカルマが1減っていた。カルマの関係しそうなことと言えば、ゴブ太を助けたことくらいなのでたぶんそれが原因だと思う。
最近、ゴブ太に元気がない。ここに来た経緯を考えればそうなるのも仕方がないのだろうが、このままでは採取作業にも支障が出てきそうだ。配下となった以上、ある程度の配慮はするべきなのだろう。関係構築の怠慢は裏切られるというリスクを抱える結果に繋がりかねない。これは上に立つ者としての重要なルールの内だろう。
はあ。貴重な情報を得られたし、採取にも助かってはいるが、こういう柵が出来るのは歓迎出来ない。だが、これも私の安全のためだ。
ゴブ太の為に何か出来ないかを考えていた私は、ダンジョンの機能の中に、あるものを見つけた。魔物図鑑の中に新たな魔物が増えていたのである。
ゴブリン 500DP
これはゴブ太が配下に加わったから追加されたのだろうか?
ゴブリンには『繁殖』のスキルがついているようだが、ゴブ太はラットたちよりも知性が高く、理性的だ。それにこのダンジョンは既に開かれている。前回のようなことにはならないだろうから、そこの心配は必要ないだろう。
住んでいた集落が壊滅し、たった一人で逃げ延びたゴブ太。もし、新たな仲間として同族を召喚したら、少しはゴブ太の気がまぎれるだろうか。でも、ゴブ太の集落を襲ったのも、別のゴブリンだったというし、逆効果という可能性も……。
本人に聞いてみるか。
――ゴブ太、ゴブリンを召喚してみようと思うのだが、ゴブ太はどう思う?
私に召喚の力があることはすでにゴブ太へ伝えてある。
ゴブ太からは即座に返事が来た。よっぽど寂しかったのか、嬉しいという想いがイメージとして伝わってくる。
拒絶反応は無いようだし、これなら召喚してみようか。
私はゴブリンの召喚を実行した。
〈ダンジョン内にゴブリンLV1を召喚しました〉
そうしてダンジョン内に、新たな名も無きゴブリンが召喚された。
名前:――――
種族:ゴブリン ランク:F
年齢:0
カルマ:±0
LV:1/15
スキル:『繁殖LV1』
称号:【――――の眷属】
ゴブ太は早速新しく召喚されたゴブリンに身振り手振りを交えて話しかけているようだ。
生憎と私に音は聞こえない為、ゴブリンたちが何を話しているのかは分からない。まあ聞こえた所で、ゴブリンの話している言語を私が理解できるのかという問題もあるのだが。
スキルで感じる限り、ゴブ太たちの会話は弾んでいるようだ。一先ず出会いは成功といったところだろうか。これからの経過にもよるだろうが、是非とも問題など起きぬように友情を育んでもらいたいものだ。
それからゴブ太には、新たに召喚したゴブリンの教育をお願いしておいた。
新ゴブリンのほうは召喚されたばかりで、スキルもゴブリンの初期スキルらしき『繁殖』だけしか無い。暫くはゴブ太について、『採取』などのスキルを学んでもらおう。
それから三日経って、ゴブ太から新ゴブリンと家族になったという報告を受けた。
子供は後、一月程で産まれるらしい。
色々と早すぎないか?
恋愛や結婚についてとやかく言えるほど、私はその手の経験が豊富ではない。だから確かなことは言えないが、出会って三日で結婚し、子供まで作るというのは……いや、何も言うまい。双方が幸せであるのなら、別に問題は無いのだろう。
ただ年齢については少し気になる。魔物の年齢とはいったいどういうものなのだろう。
新ゴブリンの方は、まだ0歳だ。人間からしてみればまだ赤子というような年齢だが、ラットたちはその年齢で子を産んでいたし、亜人と呼ばれる作品もあるゴブリンであるが、魔物だからそういうものなのだろうか。
そう言えばラットにはベビーラットという種族があった。あれが赤子の形態だとすれば、もしかしたらゴブリンにもベビーゴブリンという赤子の形態があるのかもしれない。つまり、必然的にゴブリンとして召喚した時点で、最初から大人だったのか。これについてはゴブ太の子が産まれたら分かることだな。
そもそも召喚とは一体なんなのだろう? このダンジョンで産まれたかつてのベビーラットたちと何か違いがあるのだろうか。
召喚ということで、私は今までどこかから魔物を呼んでくるものと思っていたが、それだと年齢が常に0歳なのがよくわからない。なぜ召喚された魔物はみんな0歳なのだろうか?
黒牙に召喚前の事を聞いてみたが、よく分からないという答えが返ってきた。新ゴブリンの方も同様である。
そう言えば新ゴブリンのほうはメスだったのか。それとも私が勘違いしているだけで、ゴブ太がメス? それとも魔物には雄雌関係ないとか。
ふむふむ。私の推測通りゴブ太はオスで新ゴブリンはメスらしい。
きちんと魔物にも性別はある、と。偶然の産物なのか、もしくは私がそうなるように無意識下で望んでいたのか。キングとクイーンの件も考えると、後者の方がありそうな気がする。
ああ、本当にダンジョンの機能は不思議に満ちている。いや、不思議というのならこの世界の全てが、だな。せっかくファンタジーな世界にやってきたのだ。ファンタジーを愛する者として、早くこの世界の事をもっと知りたいものだ。
そのためにはまず大前提として安全対策が出来ていることが必須だけれど。
私はもう死にたくないからな。
子を宿したという祝いに、新ゴブリンにも名前を与えることにした。
私が新ゴブリン、新ゴブリンと言うのに面倒くささを感じたとかでは無いよ。
名前:ゴブ子
種族:ゴブリン ランク:F
年齢:0
カルマ:±0
LV:1/15
スキル:『繁殖LV2』
称号:【――――の眷属】
……うん。正直、これについてもやっぱりあんまり考えていない。最初は適当に考えたゴブ太の名前だったが、使っている内に何となく馴染んできたので、次もそんな感じでつけたのだ。住めば都と言う言葉もあるし、きっと慣れとは全てを解決してくれる魔法なのだろう。
ゴブ子のステータスには、他にあまり変動は無い。まだ召喚してから三日なのだから、当たり前か。『繁殖』のスキルレベルは上がっているが、それはまあいい。ラットたちの時も『繁殖』は異様に上がりやすかったし、たぶんこのスキルは少し特殊なんだろう。
子供も出来たらしいし、ゴブ子のスキルの成長に関しては長い目で見るか。
なぜこんなにも早く事が進んだのか、それとなくゴブ太に聞いてみると、それにはこの環境の影響もあるということが分かった。最近はあまり気にしていなかったのだが、魔力供給率に関係する話だ。
ゴブ太はここに来てからというもの食事をする必要が無くなったらしい。その上、洞窟内にいると体力は次第に回復していき、常に絶好調の状態が続くのだそうだ。黒牙にも聞いてみたが、確かに言われてみればそうだと伝えられた。最初からここにいた為に、それが常態として、特に違和感を感じなかったらしい。
魔力供給率を見ると、3%に増えていた。これの影響なのだろう。
食事の事はラットたちの全滅時に推測した事だったが、絶好調の状態が続くという事に関しては初耳だった。
なるほど、魔力供給率が安定している間のダンジョンというのは、魔物にとってとても住みよい環境らしい。
今のところ魔力供給率は大分空いている状態だが、これからは何だかんだで増えていくような気がするから、魔力供給率には少し注意しておこう。
〈スキルの習熟度が一定値に達しました。スキル『読心』のレベルが4から5へ上がりました〉
〈スキルの習熟度が一定値に達しました。スキル『伝心』のレベルが4から5へ上がりました〉
〈スキルの習熟度が一定値に達しました。スキル『空想空間』のレベルが6から7へ上がりました〉
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