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不滅のダンジョンマスター  作者: やみあるい
第一章 迷宮転生の章

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18/204

18.新たな出会い

あらすじ


男はあれから苦心の末に、魔物との意思疎通を可能とするスキルを獲得した。

そしていよいよ召喚した魔物、ブラックラットを外の偵察に向かわせる。

その結果、男のダンジョンは深い森の中にあることが分かった。

さらに日数を指定して、男はブラックラットを森の探索に向かわせる。

幾度かの探索でブラックラットは魔物を倒してレベルを上げ、さらに男へお土産まで持って帰ってきた。

そのお土産を男が意識するとお土産は消え、代わりにDPが加算された。

さらに今まで空白だったメニューの宝図鑑に消えたお土産の名前が追加されていた。

 ダンジョンの外の探索を始めて、一月ほどが経った。

 これが最近の私とブラックラットのステータスである。


 名前:――――

 種族:ダンジョンコア

 年齢:11

 カルマ:+7

 ダンジョンLV:1

 DP:8441

 マスター:無し

 ダンジョン名:名も無き洞窟

 スキル:『不老』『精神的苦痛耐性LV7』『空想空間LV6』『信仰LV6』『地脈親和性LV3』『気配察知LV6』『魔力感知LV6』『伝心LV3』『読心LV3』

 称号:【異世界転生者】【□□□□神の加護】【時の呪縛より逃れしモノ】【聖邪の核】【鼠の楽園】【惨劇の跡地】【G級ダンジョン】


 名前:――――

 種族:ブラックラット ランク:E

 年齢:1

 カルマ:±0

 LV:5/25

 スキル:『夜目LV5』『隠伏LV5』『気配察知LV5』『不意打ちLV1』

 称号:【――――の眷属】


 私は順調にDPを貯めて、スキルレベルも少し上がっている。毎日欠かさず行っていた祈りの為か『信仰』は遂に6へと上がり、『読心』も3になってブラックラットとの会話も、最低限ならそれほど時間をかけずに行うことが出来るようになった。

 ブラックラットもあれから四度の遠征を行い、レベル、スキル共に成長させている。『気配察知』は5となり、先に『気配察知』を覚えた私に迫る勢いである。きっと、危険な気配の多い場所に長く居た影響だろう。さらに直前の遠征では新しいスキル『不意打ち』を獲得した。

『夜目』、『隠伏』からの『不意打ち』。きっと遠征中はこのスキルの通りの戦い方をしているのだろう。まるで暗殺者のようだ。

 宵闇に潜む暗殺者か。少しカッコイイな。

 もしブラックラットに名前をつけるなら、そこから考えるか。

 ブラックラットには私の手足として色々と助けてもらっている。いい加減名前くらい与えるべきだろう。


 遠征以外の日は、ブラックラットにはダンジョン近辺を警戒してもらっている。

 とはいえ、ずっとダンジョンの外にいられては私の各スキルの特訓が進まない。特に『気配察知』『伝心』『読心』の特訓にはブラックラットが不可欠だからだ。そのため、見回りは朝、昼、夜の三度に分けて定期的に行うようにしている。

 なぜその三度に決めたのかと言えば、ブラックラットに回収させているビルタの実が、一日に三個しか手に入らないと分かったからだ。

 なぜかは分からないが、ビルタの実は必ず一日に三個の実を落とす。そしてブラックラットの大きさだとビルタの実を持ってくるのに、一つが限界らしい。それならばわざわざビルタの実を手に入れるためだけに三往復させるよりも、見回りの度に一つずつ持ってきてもらったほうが効率的だと考えたのだ。



 その夜もブラックラットは見回りの為に張り切って出掛けていき、私は『魔力感知』の特訓の為にダンジョンの外へ意識を向けていたのだが。その日私は、そこに今まで感じた事の無い魔力を見つけた。

 人型のようだが、少し小さい気がする。まさか、人間の子供だろうか?

 ゆらゆらとしたそれは、少しずつ私に近づいてきていた。

 たとえ子供だとしても、いやむしろ子供がこんな森の中に一人でいるという状況にきな臭いものを感じる。なんにせよ用心した方がいいだろう。

 ブラックラットは今、ダンジョンから少し離れている。『伝心』のレベルが上がったことで、多少ならダンジョンから離れていても通じるようにはなったが、今ブラックラットがいる場所はそれでも言葉は届かない距離だ。ビルタの実を採取しつつ帰ってくるので、きっとこの謎の魔力の持ち主のほうが先にダンジョンへ到着するだろう。

 今の私に出来ることと言えば、新たな魔物の召喚くらい。

 ここで新たに魔物を召喚して戦力を整えるか。それともここは様子を見るか。

 悩んだ末に私は様子見を選んだ。

 武装は威圧となる。もし相手に交戦意欲が無かったとしても、挑発と捉えられれば争いの引き金になりかねない。

 それに相手が近づいてこれば、私に出来ることも増える。

 今の私には『伝心』と『読心』がある。レベルも上がっていることだし、これなら絆が無くてもうまくいけば相手と交渉が出来るかもしれない。

 相手の姿が人型に近いということが、よりその考えを後押ししていた。

 対話を望むならば、対話から入るべきだろう。

 良くも悪くも私の心は未だ人間であり、私はルールに縛られている。

 死は怖い。私は消えたくない。大丈夫、ここはまだ死地からは程遠い。ホントウに?

 私の『気配察知』にも、相手の気配が感じられ始めた。

 うーん? 少しぎこちない、ような。怪我でもしているのだろうか。

 ゆっくり、ゆっくり近づいてくる。

 怪我をしている。弱っている。今にも倒れそうで、それでもまだ歩き続けている。当ても無く、ただひたすら前へ。

 スキル『読心』の効果で、相手の心が伝わってくる。

 痛い。苦しい。そして、死にたくない、と。


 ――助けは必要か?


 ダンジョンの手前まで来た相手に、私は『伝心』を使って問いかけた。

 助けてほしいという思いが伝わってくる。成功だ。

 相手はダンジョンの手前で立ち止まり、そのまま倒れ込んでしまった。

 相手の気配は時を経るごとに弱まっている。

 だが、私には何もできない。私には歩み寄る足も、伸ばす手も無いのだから。

 でも、ああ、帰ってきた。見慣れぬ相手に警戒を抱くブラックラットの心が、『読心』を通して感じられた。対して気配や魔力は感じない。異常を察知して『隠伏』を発動させているのだろう。相手の気配が弱っていても『隠伏』を解かない所に経験から来る慎重さを感じる。もしかしたら、ただ臆病なだけかもしれないが。


 ――ブラックラット、採ってきたビルタの実をこいつに食べさせてやってくれ


 私の伝えた言葉に応えて、ブラックラットが慎重に相手へと近づいていく。途中で『隠伏』を解いたブラックラットは、そのままビルタの実を相手の頭部に押し付けた。恐らく呑み込ませようとしているのだろう。

 暫くしてこの相手の気配が少し強くなったような気がした。無事にビルタの実を食べられたのだろう。だが、まだ弱い気がする。

 次にビルタの実が採れるのは、明日まで待たなければならない。

 だがこの相手の体力が明日まで持つかどうか。

 それ以外の方法はというと……宝図鑑か。DPを消費するのは痛いが、このまま放っておけば明日には冷たくなっているかもしれない。

 助ければ、少なくとも即座に敵にはならないだろう。この辺りの事を色々と聞けるかもしれない。傷のことも、ここに辿り着けた理由も聞いておきたい。

 敵となる危険と情報を天秤にかけて、私は情報をとることにした。


 〈ダンジョン内にビルタの実を召喚しました〉

 〈ダンジョン内にビルタの実を召喚しました〉

 〈ダンジョン内にビルタの実を召喚しました〉


 念を入れて三つのビルタの実を召喚した。

 足りなければ、さらに出す用意はある。もう選択した以上、出し惜しみをしても意味がないからな。


 ――ブラックラット、そのビルタの実もこいつに食べさせてやってくれ


 ブラックラットは了承を伝えてくると、ダンジョン内に現れたビルタの実を一つずつ運び、相手へ食べさせていった。

 そうして暫くすると、相手の気配が安定してきた。ブラックラットの話だと眠ってしまったようだ。ようやく一息つける。どうやらビルタの実は三つで足りたようだ。

 この相手がダンジョンの中に入ってこれば、ダンジョンの機能の一つ、ステータスの項目を使って、もう少しこの相手の詳細を知れるのだが。生憎とダンジョンの外で眠ってしまった。この相手は魔力や気配から見て、それほど大きくは無さそうだが、それでもブラックラットと比べればその差は何倍にもなる。ブラックラットに運び込んでもらうのは難しいだろう。

 起きるのを待つしかないか。



 相手が起きた気配がしたのは、朝方になってのことだった。一応、ブラックラットには見回りには行かず、ダンジョンに残ってもらうように言ってある。助けた相手とはいえ初対面の相手に、手足の無い状態で向かい合うのは無謀が過ぎると思ったからだ。

 代わりに私がダンジョンの外へ『魔力感知』を張り巡らせておく。もしこの相手の傷が、追われている相手につけられたのだとすれば、危険がやってくる可能性もあるからだ。

 次第に覚醒していく意識が気配から伝わってくる。


 ――起きたか、おはよう


 言葉は『伝心』を介して、イメージとなり相手へと伝わった。たとえ相手と違う言語であっても、意味は通じるはずだ。

 返事はあった。相手から伝わったのは、誰何のイメージ。

 それはそうだろうな、と思うのと同時に、どう答えるかに迷う。

 今のところ、私にある名前と言えるようなものは、名も無き洞窟だけだ。

 名も無き洞窟と名乗るべきか? 意味が解らんだろう。

 いや、だが相手には私のことがどう見えているんだ?

 ダンジョンコアと聞いて私は勝手に宙に浮くクリスタルの様なものを想像していたのだが、果たして本当にその通りなのだろうか?

 そしてそれは、この世界では珍しいものなのか、普通に存在しているものなのか。

 しまった、ブラックラットに聞いておくべきだったか。だが、聞いたところで鼠の魔物の感性で伝えられた情報にどれだけの価値があることか。

 うん? なんだか考えていたら面倒になってきた。

 今のところ相手から敵意の様なものは感じない。私にそれが感じられるのかは分からないが、そういった事に敏感そうなブラックラットが問題を感じていない以上、大丈夫なのだろう。改めて考えてみれば、それが一番の気がかりなのだ。

 それ以外なんて大したことではない。そう、だからこの長い沈黙も大したことではないのだ。


 ――私は……ここの主だ


 ダンジョンの主とかにしておこうと思ったのだが、一部屋しかない洞穴をダンジョンというのは、抵抗を感じてしまい曖昧な答えになってしまった。

 次に相手からきた質問は、助けてくれたのか? というものだ。

 私がそれに答えると、相手から感謝のイメージが返ってくる。

 そのまま私たちは、暫く話し合い情報の交換を行った。

 その過程で、どうやらこの相手はそれなりに信用が置けるということが分かった。あまり思慮深いタイプではないが、恩義を感じる心はある。時折子供の様な悪戯心の片鱗が覗いたりもするが、基本的には純粋な相手のようだ。

 最後にダンジョン内へ入ってみて欲しいという私の望みに応じて、この相手がダンジョンへ足を踏み入れたことにより、一番大切な情報を得るに至った。


 彼は仲間たちと森の奥で静かに暮らしていた所に、村を襲撃者たちに襲われて命からがら逃げてきたそうだ。仲間たちとは途中ではぐれ、傷のせいで意識も朦朧とし、ただひたすら森の中を前後不覚のまま歩き続けて、ここへ辿り着いたらしい。


 名前:――――

 種族:ゴブリン ランク:F

 年齢:5

 カルマ:+2

 LV:2/15

 スキル:『繁殖LV1』『夜目LV2』『解体LV1』『森歩きLV2』『採取LV2』『鈍器術LV1』『気配察知LV1』

 称号:


 彼の種族はゴブリン。

 ファンタジーでは有名な魔物であり、西洋では醜悪な顔つきの邪悪な精霊や、悪戯好きの妖精とも言われる存在である。

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