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不滅のダンジョンマスター  作者: やみあるい
第四章 迷宮再始動の章

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135.さらなる成長

あらすじ



ダンジョン内に住まうゴブリンたちの中にも、四天王候補を目指す者が現れ始めた。多くの犠牲の上に過酷な環境を生き残った三体のゴブリン。ゴブリンデストロイヤー、ゴブリンフォートレス、ゴブリンシューターがそれだ。それぞれの方法で単独戦闘を身に着けた彼らは、召喚した配下たちと遜色ない強さを示してくれた。

勿論、戦う以外でもゴブリンたちはその才能を発揮している。ゴブリンたちはその好奇心の赴くままに、ものづくりや後進の教育などに力を注いでいく。中には役に立たないと思えることに注力する者もいたが、私はゴブリンたちの自主性に任せ、放任することを選んだ。それがいつか、思いもよらぬところで私の役にたつ可能性を信じて。





 第五階層を追加した際に、完全なるダンジョンコアとして覚醒したことでメニューの一角に追加された機能、環境変更。その名の通りダンジョンの階層を好きな環境に変更することが出来るというこの機能は、その範囲と強力な効果に比例して、消費するDPも大きい。その為、今まではなんだかんだで使うことなく放置してきた。しかし、そろそろこれに手を出す時がやってきたようだ。



 最近ではエルロンドの探索者たちだけに留まらず、病魔の森の常連たちもダンジョンの構造に慣れてきたらしく、次の階層へ進む魔物たちが増えてきた。そういった魔物たちは、第一階層で覚えたノウハウを使い、第二階層でも大して詰まることなく、先へ進んでいる。きっとそれは、第三階層でも同じだろう。

 私としても、迷路の形式や罠の種類に変化をつけて、出来る限り階層ごとの差別化を図ってはいるが、正直なところ、何処も最終的には似たような構造になってしまっている。まあ、配置している複製体は階層ごとに別の種族となっているので、ダンジョンの構造に慣れたとしても、それだけで全ての階層をあっさりと突破されるということは無いだろうが、決して良い事では無いだろう。

 それだけでは無い。今まで私のダンジョンは、ダンジョンの探索に慣れたものを相手にしたとき、あっさりと深層まで侵入されてしまっていた。これも改めて考えてみると、ダンジョンの構造が何処も似通っていたせい、という可能性はある。まあ、単純に相手が上手だったからというのもあるだろうけど。

 そこで、環境変更という機能の出番だ。これを使うことで、階層ごとの環境をガラリと変えてしまえば、侵入者たちがあっさりダンジョンの構造に慣れてしまうということは減るだろうし、もしかしたらダンジョンの探索に慣れた侵入者を相手にしても、少しは時間を稼げるかもしれない。

 そこで私は、自由に使えるDPが増えてきた今、いよいよ環境変更を試してみることにしたのだ。


 この機能を使うのは今回が初めてだが、この機能の使い方に関しては以前からずっと考えていた。だから、今更その使い方に迷うようなことは無い。

 メニューのダンジョン拡張から、環境変更を選択。指定する環境は、ダンジョン周辺に広がる環境と同じ、森。そして、環境を反映する階層は、第四階層を選んだ。

 消費するDPは百万DP。これは新たな階層を追加するために掛かる総消費DPと同じくらいだ。しかし、環境変更で選べる環境の中ではこれでも少ない方である。環境変更はダンジョン周辺の環境と指定した環境が近い程、消費するDPが減っていくからだ。

 初めての環境変更に森という環境を選んだ理由は色々とあるが、その中でも消費するDPが少ないから、というのは大きな理由の一つだったりする。

 さて、環境変更という機能が使えるようになった段階で、知識としては一応、これから何が起こるのかもある程度は理解してはいるのだけど、実際に試してみるのはこれが初めての事だ。そんなわけで、ちょっとワクワクしている。

 果たしてこれでダンジョン内はどの程度、環境を変えていくのか。



 機能を発動させた瞬間、私は私の持つあらゆる知覚を第四階層へ向けて集中した。何がどうやって、どのように改変されていくのかをしっかりと確認するために。

 なるほど、なるほど。

 機能が発動すると、第四階層に流れる魔力の質が一気に変わっていく。他の階層に流れる魔力と比べれば、その違いはよりはっきりと判る。変化した第四階層に流れる魔力をじっくり観察してみると、それが外に溢れる魔力と近い事が分かった。

 恐らく、第四階層に流れる魔力とそれ以外の階層に流れる魔力の違いとは、森に流れる魔力と洞窟に流れる魔力の違いなのだろう。

 しかし、森に流れる魔力、か。森に流れる魔力というのは、何もたった一つの魔力を表している訳ではない。木々や草花、それらが作り出す影や豊かな土など、その場にあるあらゆるものから発せられている魔力が混ざり合うことで、初めて形を成す魔力だ。

 それは何処か、環境に由来する匂いにも似ている。環境の匂いもまた、たくさんの様々な匂いが混ざり合うことで、一つの匂いというものを形作っていた。それは普段、気づかないような僅かな違いだが、確実にその環境を表している。そうして、ふとした瞬間に気が付くのだ。その違いに。

 ただ、今回はすぐその違いに気が付いた。それはその違いがあまりにも濃密だったからだ。外に満ちる魔力よりもなお、圧倒的な森を表す魔力。そうして、その魔力は一気に第一階層全体へ広がると、隅々の魔力までをも塗り替えていく。魔力だけで言えば、今、そこは確かに森だった。

 しかし、果たしてこれが、どんな効果を齎すというのだろうか?

 言うまでも無く、森の魔力は森が生み出す副産物だ。森にある森を形作る全てが、その魔力を形作っているに過ぎない。ならば、たとえ模倣したその魔力を空間に満たしたとしても、そこにどれだけの意味があるのだろう。それとも、それ以外の部分に更なる仕掛けがあるのか?

 そう考えた時だ。今度は、ダンジョンコアそのものの知覚が、第四階層に起こった変化を感じ取った。



 最初に感じ取った変化は、第四階層の地面だ。第四階層の地面を構成する硬い岩が、柔らかい土へと変化していく。さらにそこへ草花が生え、木が生えてきた。種なんて、植えた記憶も無いのに。

 お、おお。ものすごい変化量だ。あっという間に洞窟型のダンジョンが、深い森の中のような雰囲気へと変わっていく。心なしか、通路や部屋も少し広がったような気がする。そこへ木々や草花が増えた感じか。

 その場に流れている魔力の質が変わるだけで、まさかここまでの変化があるとは。魔力の濃さが、ここまでの変化を齎しているのか? そう言えば、高位の魔物たちが広げる縄張りにも同じような性質があったか。いや、むしろこの場合は、魔王の扱う支配領域が環境に与える影響の方に近い気がする。扱う力は結局のところ、同じだろうから。

 ふむ。一度、魔力が環境を変化させれば、あとは変化した環境が生み出す魔力がその環境を維持するため、最初程の濃い魔力は必要なくなるという訳か。

 今や、ダンジョンの第四階層には、立派な森が広がっている。しかし、太い木々や枝葉によって覆い隠されてはいるけれど、そこに壁や天井があることは変わらないし、ダンジョン特有の薄暗さも同じ。ここは未だ、ダンジョンの中なのだ。その事実までは、環境変更という機能でも変わらないらしい。

 ただ、このような中途半端な変化であっても、配置した複製体たちには想像以上の効果があったようだ。第四階層に配置していた魔茸の複製体たちが、先ほどまでよりも活発に動き回っている。周囲に植物が増えたことによる影響か、はたまた第四階層に満ちた魔力の影響か。そう言えば、魔茸たちも元々は病魔の森に住む魔物たちだった。ならば、森という環境への変化が魔茸たちにとって良い変化となったのも頷ける。

 どちらにしても、これはダンジョンにとって良い影響だろう。それに、この植物に満ちた環境ならば、その場から動けない魔植物系統も活躍できる。

 予想以上の効果とはなったが、これもまた最初に使う環境変更に、森を選んだ大きな理由の一つだ。



 さて、環境変更で選ぶ環境を森とした理由は幾つか出てきたが、実は今回、環境変更を行った事にも少しばかり本筋とは異なる理由が存在していた。それが、第四階層に残った魔力供給路にある歪みの修正である。

 これに関しては、何かしら新しい情報を手に入れたとか、考察から導き出したとか、そういうことは一切無い。ただ単純に、ふと、思いついたのだ。

 正常な状態のダンジョンが、私の行動によって異常な状態になっている。ならば、ダンジョンの形を大幅に変えてしまえば、その影響で正常化するかもしれない、と。強いて発想の根底となっている記憶を上げるなら、前生の頃に使っていたパソコンだろうか? バグのあるシステムをアップデートすることで、正常な状態を上書きする感じ。

 我ながら、かなり無理やり感がある発想だけど、なんとなく成功するような気がした。それは恐らく、ここ最近の全ての物事がうまく回っている感覚に、後押しされた結果だろう。

 この状況で思いついたことならば、きっと成功するような気がする。

 何とも言えない不思議な感覚だ。いつもだったら、悪化することも考えて、わざわざ今手を出す必要は無いと止めていた事だろう。下手に手を出したせいで、今以上に悪くなる可能性だってあるのだから。


 こうして、環境変更は行われた。一先ず、ダンジョン内に異常は感じられない。続いて、第四階層の魔力供給路を確認してみると、歪みは……無くなってい、る?

 あの特徴的な歪みは、ダンジョンから完全に消え去っていた。



 まさかうまくいくとは、という思いと、ああやっぱりうまくいった、という思い。その二つが私の中で複雑に入り混じっている。非常に複雑な気分だ。

 まあ、うまくいってしまったものは仕方がない。いや、仕方がないなんて言うと、良くないことが起こったみたいだが、それを思いついた経緯が経緯だけに、どうしてもそう思えてしまう。

 もしこの世界のステータスに幸運という概念があるとしたら、今回はそれを大量に消費してしまったのかもしれない。まあ、私にはそれの総量なんてわからないし、それが何をきっかけとして発動するのかもわからないのだけれど。私は今回の事を、なんとなくそう感じていた。


 それでもまだ当分は、好循環が続いていくだろう。病魔の森の常連たちや、エルロンドの探索者たちはダンジョンを訪れ続けるだろうし、程よい探索で大量のDPを私に与えてくれる。そのDPを使って、ダンジョンを広げ、配下を増やして……それはいつまで続くのだろうか?

 探索者はいつまで程よい探索を続けるのか。外の戦況はどのように変化していくのか。人間たちが再びこの森に足を踏み入れることはあるのか。病魔の森の近辺に存在する魔王以外の高位の魔物たちは、どう動くのか。

 問題を数えたら切りがない程に浮かんでくる。

 さらに、先。魔王レティシアとの再戦。

 今は、うまく回っているからと慢心せず、きっと安全だと楽観もせず、地盤を固め続けよう。この状況を利用して、確固たる力を貯め続けるのだ。



 この危険に満ちた世界で、敵に満ちた世界で、私が生き続けるために。










第四章はここまで。

最後にこの章のエピローグですが、ちょっと遅れそうです。

たぶん、一週間後くらいには……投稿できるかな、と。


ここまでお読みくださいまして、ありがとうございます。

誤字報告、感想、レビューなど、いつも有難く確認させて頂いております。

また、第五章もこうしてお付き合いいただけると幸いです。

では。

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