134.リザルトーダンジョンに住む配下たち
あらすじ
順調なダンジョン運営によって得た豊富なDPを使い、私は新たなる四天王候補を召喚した。魔蟲族から三体、ブラッディーマンティス、トラッパースパイダー、ナイトビー。さらに魔植物族からイビルファンガスを召喚した。最後に森の外の偵察を任せるため、魔鼠アサシンラットを召喚し、黒影という名を与える。
私のダンジョンの第五階層にある中部屋には、私がダンジョンの機能で召喚した魔物以外の配下たちも住んでいる。それが繁殖目的に召喚したゴブリンたちの子供たちだ。実はこのゴブリンたちの中にも、四天王候補として目を付けている者たちが数体ほど存在していた。
ダンジョンの魔力供給と『繁殖』スキルの効果により次々と産まれるベビーゴブリンたちは、ゴブリンへと成長する過程である程度のスキルを学び終えた後、外へ興味を抱く者や戦いを好むものを厳選して、単独で病魔の森に挑ませていく。勿論、そんなことをすれば、殆どのゴブリンは帰ってこない。今の病魔の森はFランクのゴブリンが単独で動き回るには、なかなかに危険な場所なのだ。しかし、その一部は戦果を得て、無事に生還する。
繁殖から成長までの期間が短いゴブリンたちは、数を頼りにその方法を繰り返すことで、少しずつレベルを上昇させていき、最近ではごく一部がついにCランクまでの進化を果たした。
それこそが新たなる四天王候補として、私が最近、注目しているゴブリンたち。ゴブリンデストロイヤー、ゴブリンフォートレス、ゴブリンシューターの三体だ。
種族:ゴブリンデストロイヤー ランク:C スキル:『鈍器術』『体術』『身体強化』
邪妖族亜人系の狂戦士ゴブリンデストロイヤー。近接戦の攻撃に重きを置いた戦いを行うゴブリンが進化した個体。鈍器による荒々しい攻撃を得意とし、その力であらゆる敵をねじ伏せるように戦う。戦いそのものを好む戦闘狂であり、敵を倒すことだけでなく、自らが傷つくことすらも楽しむ。
種族:ゴブリンフォートレス ランク:C スキル:『盾術』『体術』『身体強化』
邪妖族亜人系の重盾士ゴブリンフォートレス。近接戦の防御に重きを置いた戦いを行うゴブリンが進化した個体。分厚い盾で身を守り、体勢を崩した相手を少しずつ削っていくように戦う。その肉体もまた非常に頑丈で、ちょっとやそっとの攻撃ではビクともしない。
種族:ゴブリンシューター ランク:C スキル:『弓術』『遠見』『隠伏』
邪妖族亜人系の弓術士ゴブリンシューター。遠方からの弓による攻撃を得意とするゴブリンが進化した個体。姿を隠し、遠方からの弓矢で敵の急所を狙い貫く。その矢は遠く離れた位置からでも、正確に狙い定めた獲物の一点を貫くことが出来るという。遠距離からの攻撃に優れる一方で、近接戦は苦手としており、見つかって接近されると格下であろうとも、苦戦することがある。
この者たちは、病魔の森の外縁にあった人間たちの元拠点から回収した武具を手に、病魔の森で実力を磨いていった。
私がこの三体に抱いている印象は、ゴブリンデストロイヤーが戦槌と呼ばれる武器で戦う戦闘狂で、ゴブリンフォートレスが短槍と塔盾と呼ばれる巨大な盾と重防具を身に着けた穏やかな鉄壁の戦士。そして、ゴブリンシューターは大弓と軽防具で遠方から敵を狙う静かなる弓の名手といった感じである。
この三体はそれぞれに性格も戦い方も異なるが、いずれも単独での戦いを得意とする猛者たちだ。そして、この三体もまた、私の目標である四天王候補に名乗りを上げていた。全くもって頼もしい限りである。彼らがCランクを越えて、高位の魔物たるBランクへと至る時が楽しみだ。
ところで、私は何もダンジョンで生まれた全てのゴブリンを、戦いに向かわせている訳ではない。ゴブリンたちは好奇心が強く、自分の興味を持ったことには全力で取り組むという特徴がある。そういったゴブリンたちの性格を有効に活用するためにも、私は出来る限りゴブリンたちの成長の方向性は、その自主性に任せていた。
だから当然、ダンジョンの外に興味を持たず、戦いを好まないゴブリンには、無理に病魔の森へ狩りに向かわせるようなことはせず、ダンジョン内で好きなことをやらせている。そういったゴブリンたちの中には、ものづくりに熱中して才能を開花させたり、スキルを磨いて後続の教育に意義を見出し、様々な方向から私の役に立ってくれるものたちもいた。
勿論、全てのゴブリンが私にとって有用な技能を磨いている訳ではない。ゴブリン全体の好奇心が強いせいか、全く何もしないというゴブリンは今のところ出ていないが、中には何の役にも立たないような事に興味を持つゴブリンたちもいる。しかし、今は私と何の関係も無い技能だとしても、何時か何処かで役に立つ可能性はあるだろう。私はそれを期待して、今も好奇心の赴くままにゴブリンたちが育っていくのを容認している。
とはいえ、私にもゴブリンたちに待ち望んでいる技能はあった。それが、この世界の人間たちが扱う文字の解読である。
人間の冒険者たちが残していった数少ない書物に、病魔の森の外縁にあった元拠点で発見した沢山の書物が加わったことで、文字解読の為の資料はそれなりに集まったように思う。しかし、未だ解読作業は思うように進んでいない。一応、副思考でちょっとずつ行ってはいるのだが、なんというか、私には根本的に向いてないようだ。解読の糸口すら掴めない状況が続いている。
こんなことなら、前生の頃にもっとその辺りの方法を調べておくべきだった。なんて感想は、後の祭りか。
そんな理由から最近では、何とかゴブリンたちが人間の書いた書物に興味を持ち、その内容を解読してくれないかと、ダンジョンに住むゴブリンたちを定期的に書物へ触れさせているのだが、未だその成果は現れていない。
そもそも、人間たちが残した書物に興味を抱くゴブリンが少なく、僅かに興味を抱いたとしても、すぐに他へ興味が移ってしまう。然もありなん。一から未知の文字を解読する必要があるというのは、なかなかに厳しい条件のようだ。
やはり、これは私が行うべきなのか。しかし、これまで副思考に任せてみても、ろくな成果が表れていないことを鑑みるに、やるとしたら主思考で本腰をいれて取り組む必要があるだろう。きっと、時間も相応に掛かるはずだ。
ただ、これはあくまで、私の趣味という部分が大きいため、他の重要な問題を差し置いて始めるのは、ちょっと気が進まない。敵である人間の知識を得ると考えれば、重要なことだと言えなくもないけれど、やはり掛かる時間を考えると、ちょっと割に合わない。それならば、その時間を他のことに使った方がずっと有意義だ。そんな思考があるため、これに関しては、いつか時間が出来た時に、と後回しにしている。
それまでは、引き続きゴブリンたちへ淡い期待を抱いておくことにしよう。
少し思考が逸れたけど、ダンジョンの拡張と戦力の増強具合に関しては、大体こんな所か。
あとはこの機会に、細々とした変化についても、幾つか整理しておこう。
黒牙に変わる偵察の専門家として召喚した黒影には、病魔の森で少しそのレベルを上げさせた後、早速、『感覚共有』で感覚を繋ぎ、病魔の森の外へ、偵察に向かわせた。それにしても、さすがは隠密活動を得意とする稀少種のアサシンラットだ。色々と新たな情報を探り出してくれている。その結果、人間と魔王レティシアの間で起こっている争いの戦況が少し見えてきた。
結論から言うと、今は少し、魔王レティシア側が押している状況のようだ。最近の情報では、魔王レティシアがついに、勇王国の王都跡地へかなり大掛かりな陣地を構築したことまで確認している。黒影から送られてきた情報によると、どうやらあの地は魔王レティシアの支配領域に組み込まれたらしい。病魔の森に広げた私の支配領域が邪魔をして、勇王国にまで支配領域を広げられずにいたという私の予想は外れのようだ。
これで人間たちが警戒する魔の領域はさらに広がり、病魔の森へ人間がやってくる可能性は一層減った。今は人間の冒険者たちの代わりに、エルロンドの探索者というDP回収の当ても存在していることだし、ダンジョンとして敵対する可能性が高い人間とは出会わないに越したことは無い。
魔王レティシアには、このまま人間たちを人間の領域の奥へと押し込んでおいてもらいたいところだ。
それから、病魔の森に放った魔鼠たちによるトレントの植林も順調で、そろそろ病魔の森内に敷かれた道の半分ほどを埋め終える頃だろう。あとは、トレントたちが順調に育ってくれれば、道は自然と消えていくはずだ。
魔鼠たちと言えば、以前にあった名づけによる弊害は、魔鼠たちへの名付けを止めた事と、トレントの植林という危険な任務で名付けた魔鼠が病魔の森の魔物たちに狩られて減ったことにより、大分落ち着いてきた。これでまた、新たに魔鼠たちへ名付けを行えるだろう。減ったケーブラットと入れ違いで増えたフォレストラットにも、そろそろ名付けを行うことにしようか。
今度は、繋がった絆の数に注意して、無理にならない範囲の数で。
さて、過去を思い返すのはこのくらいにして、そろそろ新しい事への挑戦を始めようか。
ダンジョンのさらなる成長を目指して。




