119.外からの客
あらすじ
未だ支配が完了していない魔王と、そこで何かを探す人間の騎士たち。私は黒牙の視界を通して人間や魔物たちを観察し、その背後関係を考察していく。
それと同時に私自身の知覚に関しても思考を巡らせていた。いい加減、もう少し自身で知覚できる範囲を増やしたい、と。私は僅かに光明の見えたダンジョンの知覚の拡大化について、引き続き『並列思考』で様々な可能性を模索していくのだった。
ふと、ダンジョンの側に縄張りを持つ魔鹿たちから、森に向けた敵意を感じ取った。強い敵意という訳では無いが、警戒といった所だろうか? なんにせよ、これはちょっとした異常事態の予感がする。すぐ『伝心』でクリスタルホーンディアーに尋ねてみると、どうやら何か見知らぬ気配を感じたらしい。私もすぐにそちらへ『気配察知』を強めると、暫くして私にもその気配を察することが出来るようになった。
方角的に言えば、そこはダンジョンを中心として魔鹿たちの縄張り方面。つまり、以前に人間たちがやってきた方向とは正反対の方向だ。気配の感じからして、そこまで強い存在の気配ではない。それでも魔鹿たちが警戒しているのは、その気配が今まで病魔の森の中で感じた事のない気配だったからだろう。恐らく、魔物だとは思うが、どんな魔物なのかは分からない。しかもその気配は、真っすぐ魔鹿たちの縄張りを目指して向かってきていた。それは同時にダンジョンを目指しているとも言える。そのどちらを目指しているにしても、その気配の主たちの動きから、確かな目的を感じる事だけは確かだ。
怪しい。念のため、私は病魔の森で狩りを行っている猪丸と熊吉へ、ダンジョンに素早く戻るよう命令を送っておく。これで配下の二体はすぐにでもダンジョンへ帰って来てくれるだろう。
程なくして、猪丸が全速力で帰ってきた。ただ、熊吉の気配はまだ感じない。とりあえず、猪丸にはダンジョン内で待機していてもらう。ふむ。正体不明の魔物たちはゆっくりと森の中を移動していたが、もうそろそろダンジョンまで辿り着きそうだ。熊吉は、間に合いそうもないな。まあ、急だったから仕方がないか。
待っている間に一応、現状の私のステータスを再確認しておこう。
名前:――――
種族:ダンジョンコア
年齢:18
カルマ:+9
ダンジョンLV:5
DP:120,147DP
マスター:無し
ダンジョン名:病魔の森のダンジョン
スキル:『不老』『精神的苦痛耐性LV10』『空想空間LV8』『信仰LV7』『地脈親和性LV10』『気配察知LV9』『魔力感知LV10』『伝心LV9』『読心LV10』『記憶LV9』『土魔法LV3』『加速思考LV8』『並列思考LV8』『敵意感知LV5』『感覚共有LV3』
称号:【異世界転生者】【□□□□神の加護】【時の呪縛より逃れしモノ】【聖邪の核】【鼠の楽園】【惨劇の跡地】【E級ダンジョン】
今あるDPは十二万DP程か。続いて、猪丸のステータスも確認しておく。
名前:猪丸
種族:ジェットボア ランク:C
年齢:1
カルマ:±0
LV:41/60
スキル:『嗅覚LV5』『爪牙術LV6』『突進LV7』『森歩きLV5』『気配察知LV6』『体術LV6』『身体強化LV5』『魔力操作LV5』
称号:【――――の眷属】
レベルは四十を越え、スキルレベルの大台である七に至ったスキルが一つ。ステータスもなかなか様になってきた。正体不明の魔物たちに感じた強さからして、今の猪丸であれば十分に対処が可能だろう。万が一、厳しい状況になったとしても、DPブーストという切り札もある。
あとは、最高戦力である黒牙がいないことだけ少し気がかりだが、それを嘆いたところで現状が変わる訳では無い。今は新たな私の手足たる猪丸の力を信じよう。
やってきた魔物たちは、全部で五匹。全ての魔物たちが二足歩行の亜人系統でそれぞれに軽い武装をしているようだ。今まで病魔の森にいた魔物たちとは明らかに雰囲気が違う。むしろあれらからは、人間の冒険者たちに似たものを感じる。気配や魔力は、明らかに魔物のそれなのだが。
こういった魔物を、私はつい最近見たはずだ。そう。ダンジョンコアであるこの私が、見た、のだ。黒牙の視界を借りて、勇王国の廃都で。
この同一性、そして魔物たちがやってきた方向、単純に考えて同じ場所からやって来ていると考えるべきだろう。だが、だとしたら当然の疑問が残る。
何故、この魔物たちはここへやってきたのか? ダンジョンへ攻め込んでくるには戦力が明らかに足りないし、何より魔王レティシアは確かに、私を破壊するのは百年後だと告げていた。その日まではまだ、九十九年ほどの猶予があるはずだ。
魔鹿たちに私が気づいた魔物たちの正体を伝えた所、さっそく縄張りにしている岩場の奥へと隠れてしまった。危険を呼び込みかねない存在とは、関わらないことにしたようだ。ただ、魔鹿たちの警戒だけは常に五匹の魔物たちへと向いている。何かあった時、すぐ動けるように。気が付けば、ダンジョン付近を住処とするダンジョン探索常連の魔物たちも、この病魔の森では普段感じない異物の登場で、警戒を露わに様子見を決め込んでいる。
まるで、人間の冒険者たちが森で暴れ回っていた時のような雰囲気だ。
五匹の魔物たちは唐突に森の中へ現れた岩場を警戒したようで、わざわざ岩場を回り込んで進むと、ダンジョンの入り口までやってきた所で立ち止まった。
『読心』で魔物たちの会話を探ったところ、どうやら魔物たちはその場で何かを確認しているようだ。手にした紙とダンジョンの入り口を比べた後に、装備の確認、所持アイテムの確認をしている。どうやら誰かからこの場所の事を聞いて、やってきたらしい。
その後、魔物たちはそれぞれに気合を入れ直すと、ダンジョンへと侵入してきた。
魔物たちが侵入してきた直後、私は五匹のステータスを確認する。侵入してきた魔物たちの種族はコボルト。犬耳と尻尾、そして毛皮に覆われた二足歩行の亜人たち。身長はだいたい、ゴブリンよりも少し大きいくらいか。
魔物としてのランクは全員がDランク。それぞれに詳細な種族は、コボルトコマンダー、コボルトスカウト、コボルトブレイダー、コボルトシールダー、コボルトアーチャー。魔物たちはそれぞれ、その名にふさわしい武具を装備している。
種族名の法則は、ゴブリンたちと同じか。配下だったゴブリンたちの事を思い出す。少し懐かしい。ただ、あの頃の配下たちとは明らかに装備の質が違う。人間の高ランク冒険者たちと比べてしまえば、さすがに劣るとはいえ、全員がそれなりに良質な装備を身につけている。
何よりもこのステータス。
名前:メルバ
種族:コボルトコマンダー ランク:D
年齢:23
カルマ:±0
LV:30/45
スキル:『嗅覚LV5』『筆記LV3』『計算LV3』『魔力感知LV1』『生活魔法LV1』『体術LV5』『爪牙術LV3』『剣術LV3』『盾術LV3』『交渉LV5』『連携LV6』『採取LV5』『気配察知LV5』『身体強化LV5』『解体LV5』『指揮LV3』
称号:【新生エルロンド王国の民】【Dランク探索者】【Cランク探索者パーティー:エムカトラムの猟犬所属】
名前:ニトレグ
種族:コボルトスカウト ランク:D
年齢:23
カルマ:±0
LV:28/45
スキル:『嗅覚LV5』『計算LV5』『体術LV5』『爪牙術LV5』『筆記LV2』『魔力感知LV3』『生活魔法LV2』『連携LV6』『気配察知LV5』『採取LV5』『忍び足LV6』『投擲術LV5』『身体強化LV5』『解錠LV5』『解体LV5』『地形把握LV5』『地図作製LV3』『罠感知LV3』
称号:【新生エルロンド王国の民】【Dランク探索者】【Cランク探索者パーティー:エムカトラムの猟犬所属】
名前:スフィア
種族:コボルトブレイダー ランク:D
年齢:23
カルマ:±0
LV:30/45
スキル:『嗅覚LV5』『体術LV6』『爪牙術LV3』『魔力感知LV3』『生活魔法LV1』『魔力操作LV3』『風魔法LV3』『筆記LV1』『計算LV1』『連携LV6』『剣術LV6』『気配察知LV5』『採取LV5』『身体強化LV6』『解体LV5』『魔剣術LV2』
称号:【新生エルロンド王国の民】【Dランク探索者】【Cランク探索者パーティー:エムカトラムの猟犬所属】
名前:フィーア
種族:コボルトシールダー ランク:D
年齢:23
カルマ:±0
LV:30/45
スキル:『嗅覚LV5』『筆記LV5』『体術LV6』『爪牙術LV2』『魔力感知LV1』『生活魔法LV1』『計算LV1』『連携LV6』『採取LV5』『盾術LV6』『身体強化LV6』『気配察知LV3』『解体LV5』『鈍器術LV3』
称号:【新生エルロンド王国の民】【Dランク探索者】【Cランク探索者パーティー:エムカトラムの猟犬所属】
名前:モウ
種族:コボルトアーチャー ランク:D
年齢:23
カルマ:±0
LV:30/45
スキル:『嗅覚LV5』『計算LV3』『体術LV3』『爪牙術LV1』『魔力感知LV3』『生活魔法LV2』『筆記LV2』『連携LV6』『採取LV5』『気配察知LV5』『弓術LV6』『身体強化LV3』『短剣術LV5』『遠目LV6』『解体LV5』
称号:【新生エルロンド王国の民】【Dランク探索者】【Cランク探索者パーティー:エムカトラムの猟犬所属】
【新生エルロンド王国の民】。
そして、【Dランク探索者】?




