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不滅のダンジョンマスター  作者: やみあるい
第四章 迷宮再始動の章

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111.『感覚共有』

あらすじ


ここ一年の間に、ダンジョン周辺では様々な変化が起きていた。まずダンジョン周辺に大量の常連魔物が住み着くようになり、その常連魔物は今も尚、増え続けている。その為、いよいよダンジョン内での死霊系魔物の育成を始めていた。

また、猪丸と熊吉もさらに成長している。そして、私もまた『罠設置』という新たなスキルを得た。子供だましの罠を使って、常連魔物相手に罠の練習を続けた成果だ。

さらにケーブラットたちの中には、同ランクのフォレストラットへ転化する個体が現れ始めていた。

最後にここ一年で最も大きな変化が、私の新たに習得したスキル『感覚共有』だ。





 それは私の持つ『読心』のスキルレベルが十に達してから、暫く経っての事だった。

 ちなみに、『読心』は様々な種族の配下たちと意思疎通をするため、以前から使い込んでいるので、なんだかんだでスキルレベルは高かったが、十に達した決定的な理由は、レイスやゴーストと意思疎通をするために必死で使い続けていたからだろう。あれは本当に大変だった。と、それはともかく。

 私がいつものように『読心』を使って、猪丸から情報を聞き出していた時のこと。


 〈スキルの習熟度が一定値に達しました。スキル『感覚共有LV1』を獲得しました〉


 そんなスキル習得を知らせる文字が私の意識内に表示され、私の中へある情報が流れ込んできた。

 私の『記憶』には無い。けれど、何処か知っている風景。

 猪丸から流れ込んできたその情報は、『読心』に近い感覚ではあったけど、少し違う。『読心』でも相手の視覚情報を得ることは出来たけど、それらはあくまで相手の思考を経て記録されたイメージを私の『記憶』に合わせて読み込んでいるに過ぎない。その為、情報自体は相手から受け取ったものであっても、それを視覚情報に組み直すためには私の前生の『記憶』を参考にしている。しかし、この情報にはその工程が一切無い。

 きっとこれは、ダンジョン内にいた猪丸の視覚情報だ。恐らく猪丸の目で見た情報が、リアルタイムで送られてきている。それは、『記憶』に残る前生の私が人間であった頃の視覚情報と比べると所々違うところもあるけれど、スキルに頼った知覚やダンジョンコアの知覚に比べれば、一番あの頃に近い情報だった。

 そのせいか、胸の内が熱くなるような感覚を覚える。きっと目があったなら、涙が止まらなくなっていた事だろう。こみ上げてくる懐かしさのせいで。

 まあ、今の私には胸も目を無いんだけど。


 それに気が付いた私は、この『感覚共有』を使って、猪丸の視界で病魔の森を視認してみた。そこにあったのは、私が想像したよりも少しだけ濃い緑に満ちた森の光景。

 なるほど、これが猪丸の視界。そこで、改めて思う。人間とは少し違うけれど、前生の頃に何処かで話に聞いた動物の視界とも違っている気がする。これは『感覚共有』によるものか、はたまた猪丸が魔物であるからか。色々な疑問が、思考を過ぎる。やってみたいことが、見てみたいものがたくさんあった。その全てが今なら可能だ。私ははやる気持ちを抑えつつ、熊吉や魔鼠情報網のケーブラットたちを呼び戻して、思いつく限りの試したいことをどんどん試してみることにしよう。手始めに、呼んだ配下たちがやってくるまで、猪丸の視界を借りて、ダンジョン内でも見て回ろうか。


 薄暗いと聞いてはいたけれど、ダンジョン内は思ったよりも視界が通る。光なんて一切存在していないはずなのだが、不思議な感覚だ。ダンジョン内を流れる魔力が何か関係しているのだろうか? まあそれでも、距離が離れるとその先は暗闇に包まれてしまう。『夜目』や『暗視』のスキルがあれば、この辺りも違ってくるのか。そこはケーブラットたちの視界で確かめたいな。

 周辺にあるのは、土壁や土床。なかなかがっしりとした床や壁だ。色は黒に近い。土で作られているはずなのだが、その質感は岩と呼ぶ方が正しいだろう。装飾などは無いけれど、なんだ、結構ダンジョンらしい造りじゃないか。

 守護者の待つ階段部屋の入り口には、重厚な両開きの扉が嵌っていた。質感からして、これも壁や床と同じ材質だろう。飾り気を一切省いた堅牢な造りだ。ただ、一目見て扉と分かるくらいには、扉の形を成している。

 深層へ続く階段も材質は同じ。そうして最後に待ち受けるダンジョンコア。

 なるほど、これが私。私が想像したものに近い。仄かな光を放つ水晶のようなもの。それが小部屋の中心にて、空中に浮いた状態で存在している。美しいけれど、非常に脆そうだ。それこそ、間違って寄りかかったらそのまま砕けてしまいそうなほどに。うん、そう考えたらちょっと怖くなってきた。

 それにしても、今までだって私は様々な知覚でダンジョンを認識してきたけれど、やっぱり視覚というのは一味違う。もう人間だったのは随分と昔のことになってしまうが、それでもこの感覚には特別な感情が芽生えてくる。このわずかな時間に、私が前生でどれだけこの感覚に頼ってきたのかを再認識させられた気分だ。



 それから暫くの時が過ぎ。

 やってきた配下たちとも色々と試してみた結果、『感覚共有』というスキルについての情報が集まってきたので、ちょっとまとめてみようと思う。


 まず、この『感覚共有』のスキルで視界を共有できる条件は、どうやら名前を付けた配下だけらしい。しかも、一度に一体の視界しか共有が出来ない。さらに、『感覚共有』を使って視界を共有する時は毎回、配下たちにはダンジョンまで近づいてもらう必要がある。

 ただ、一度共有してしまえば、距離がかなり離れたとしても、その繋がりが切れることは無かった。実験では、『魔力感知』の届く範囲の外まで離れても、『感覚共有』による視覚の共有は維持され続けている。どうやらこのスキルでは絆を通して視界を共有しているようで、物理的にかなり離れた状態であっても、繋がりが途切れることは無かった。

 これは、かなり便利だ。一度に一体という制限はあるにせよ、繋ぎさえすれば配下の視界を借りて、遠方の情報を直接知ることが出来る。

 共有できるのが視覚情報だけなので、場合によっては視覚を共有している配下が何処にいるのか分からなくなることもあるだろうが、そこは配下に自身の視界を通じて教えて貰えばよいだろう。魔物たちに文字という文化が存在しなくても、視界を通じて教え合う方法は、幾らでも考え付く。それにそこが支配領域の内側であれば、命令を使ってこちらから意思を伝えることは可能だ。

 配下たちの視界を借りて、という制約はあれど、これで私は支配領域内をリアルタイムで私の知覚に納めることが可能となった。しかも、念願の視覚という感覚を使って。いや、それだけではない。『感覚共有』の効果範囲次第では、病魔の森の外を視界に収める事すら、可能なのではないか? だとしたら、ずっと気になっていた病魔の森の外にあるという幾つかの場所を、確認することも可能となる。

 ダンジョンコアという種族の特性上、この地を動くことが出来ない私にとって、このスキルはまさに、革新だ。

 それからも私はスキルの検証を進めるとともに、同時並行で副思考により地脈から『感覚共有』というスキルの情報を集め始めた。

 その結果として分かったのは、『感覚共有』というスキルは、一度でも発動してしまえば、こちらからスキルを止めない限り、距離による制約は特にないということ。さらに、スキルのレベルを上げていくことで、いずれは共有できる感覚の数や、同時に感覚を共有できる相手の数も増えていくらしいということだ。

 調べれば調べる程に、私の求めていた要素が増えていく。

『感覚共有』はまさに、私にとって理想的なスキルだったのだ。



 そうして本日、私はある任務を与えるために、命令を使ってダンジョンへ黒牙を呼び戻していた。それは、病魔の森を出て、勇王国の跡地を偵察してくるように、という任務だ。

 実は勇王国の現状は、魔王レティシアにその滅亡を聞いた時から、ずっと気になっていたのだ。魔王レティシアは勇王国を確かに滅ぼしたと言っていた。けれど、それがどの程度のものなのか、一時でも命を狙われる立場にあった私としては、やはり自分の目で確かめてみたい。しかし、この場を動けぬ私には、それを成す術が無かった為、これまでは考えぬようにしてきた。この『感覚共有』というスキルを手に入れるまでは。

 この任務の為に、わざわざ命令で呼び戻してまで黒牙を選んだのは、もしもの時を考えてのことだった。病魔の森の外は、私にとって全くの未知の世界である。どんな危険と遭遇するかわからないし、何か厄介ごとに巻き込まれる危険だってあるだろう。

 私がこの任務に望むのは、確実に欲しい情報を手に入れて、無事に帰還することだ。

 猪丸と熊吉という新たな戦力が増えたとはいえ、未だに私の配下で最強と言えるのは黒牙である。それに黒牙にはこれまでも様々な死地を生き抜いてきた経験があった。だからこそ、信頼がおける。故に、どんな状況に陥ったとしても、一番生還を果たせそうな黒牙をこの偵察に抜擢したのだ。

 それに黒牙は、進化をしたことでアサシンラットとしての種族的な特性を失ったとはいえ、覚えた隠密系のスキルは未だに所持している。隠れ潜むことが出来なくなったわけではないのだ。そういう意味でも、今回の指令に最も適した配下と言えるだろう。

 まあ、ここまで色々と理由を並べ立てた所で、一番の理由は結局、私が黒牙を信用しているから、なのだけど。



 魔王レティシアが襲来してから暫くして、黒牙は独り、病魔の森での狩りに出掛けてしまった。それっきり、黒牙は一度もダンジョンへ帰ってきてはいない。つまり、黒牙と対面するのは、ほぼ一年ぶりの事となる。

 帰ってきた黒牙はダンジョンの手前で立ち止まり、こちらに意思を送ってきた。


「ナニカヨウ?」


 以前よりも心なしか、明確な言語を意識した意思が送られてきた。それだけに素っ気なく、何処か冷たいイメージがはっきりと私に伝わってくる。久しぶりだからだろうか、そんな黒牙の意思に私の心はざわざわとしていた。まるで、反抗期の息子と対面したような感覚。いや、私に息子がいたことは無いんだが。

 それでもまだ私が黒牙を信じていられるのは、絆という繋がりがあるからだろう。繋がりがある以上、未だ黒牙は私の味方だって信じられる。特に黒牙との絆には、常に一定の意識が向いていた。だからこそ、無名のケーブラットたちと違って、もしも黒牙との繋がりがある日突然消えてしまえば、私はそれが分かるはずだから。

 だからきっと、大丈夫だろう。多分これは、一時的なことだ。黒牙の中で心の整理がついたなら、またいつもの黒牙に戻るだろう。心の内で自身にそれを言い聞かせる。

 そうして私は、黒牙に今回の任務の概要を説明し、黒牙はそれに従い、旅立っていった。


 やっぱり私の言葉は普通に聞いてくれているし、大丈夫、だよな?








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― 新着の感想 ―
[一言] もしかして黒牙はレティシアに操られてるんじゃないんですか?確か血を吸った相手を操るスキル持ってましたし、レティシア自身いい素材が手に入ったって言ってましたし。
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