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不滅のダンジョンマスター  作者: やみあるい
第四章 迷宮再始動の章

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109.『敵意感知』

あらすじ


何処かの魔王が編み出した異種族同士で意思疎通を行う方法を授ける力、心言葉。地脈からその使い方を学んだ私は、実際に使ってみることにした。最初の対象は『身体強化』を始めて身に着けた配下である魔狼ファングウルフ。ファングウルフとゴブリンとの対話は成功。そのまま、全ての配下たちへ心言葉を配っておく。

さらに自身へも心言葉を刻むことにより、私は心言葉という力について、より深く理解を進めた。

配下たちにはそれぞれの得意なスキルの教え合いを推奨しておく。配下たちの強化へ繋げると共に、異種族同士の交流のきっかけとなるように。




 そう言えば、大分今更な話ではあるが、私は以前、魔王レティシアによって極大の殺意を浴びさせられた時、一つのスキルを得た。

 それは『敵意感知』という名のスキルだ。

 あの時のことは、今でも深く心に刻まれている。今までで一番深く恐ろしい、死を感じた瞬間だった。スキルを習得したことにさえ、気が付かないほどに。

 私という個へと向けられた圧倒的な憎悪。前生も通じて、あそこまで強く他者から憎しみを向けられたのは、初めてのことだ。

 私はあの時、確かに魔王レティシアという圧倒的な力を持った存在から死を望まれていた。その事実が何よりも恐ろしい。それを思い浮かべるたびに、焦燥感が心の奥底から浮かび上がってくるほどだ。

 早く、早く、と。


 それはともかく、『敵意感知』というスキルを得てから、私は他者からの敵意を感じ取れるようになった。このスキルを得てから分かったことだが、敵意は何処にでも存在する。元より敵意を持つ者の中だけでなく、中立に位置する者たちの中にも、味方や配下の中にさえ、私への敵意は存在していた。


 それは、抱いた自身ですら気づかないような僅かな敵意だ。

 ふとした時に感じるその瞬間だけの敵意。

 日常的に感じるちょっとした敵意。

 たまの苛立ちと共に湧き上がってくる敵意。


 そう言った敵意をも『敵意感知』は敏感に感じ取る。しかも、スキルレベルが低い間は、全てを曖昧に、同じ敵意として感じ取っていたのだ。

 その為、最初はかなり怖かった。暫く、魔物不信に陥るくらいには。

 しかし、それもスキルのレベルが上がるにつれて、少しずつ変わってきた。『敵意感知』のスキルレベルが上がり、精密に敵意を推し量れるようになったことで、敵意には段階というものがあると分かったのだ。

 たとえ味方であろうとも、敵意が生まれることはある。しかし、敵意を抱かれたからと言って、それですぐさま味方が敵になるということはないのだ。

 それを理解したことでようやく、私は周りにある敵意を受け入れることが出来た。



 さて、この『敵意感知』というスキル。慣れてくれば、なかなかに使い勝手の良いスキルだった。何と言っても、感じ取れる敵意の強弱により、相手の精神的な立ち位置が何となくわかるのだ。

 例えばそれは、ダンジョンの裏手に住むお隣さんこと、魔鹿たちの群れ。

 その群れを率いる三体の高位魔鹿の中でもブラッディーホーンディアーは、私に対して程ほどに敵意を抱いており、逆にジャイアントディアーは、殆ど敵意を抱いていない。そうして、度々雑談を行う間柄であるクリスタルホーンディアーは、二体の間よりも少しだけブラッディーホーンディアー寄りといった感じだ。

 それを知った時、ちょっとだけ気持ちが沈んだ。クリスタルホーンディアーとは結構、親しくしていたつもりだったのだが、あちらは意外とそうでも無かったらしい。まあ、所詮は表面上の付き合いってことなのだろう。

 まあ、敵意があるといっても、一番敵意の強いブラッディーホーンですら、未だダンジョンマップには中立の黄色で示されているのだから、敵対という程の敵意では無いらしい。実際、同盟を解消した今でも、簡単な頼みであれば案外、聞いてくれている。

 ただ、無条件で信用するというのは、これからもやめておいた方が良さそうだ。


 この『敵意感知』というスキルの優れている所は他にもある。実はこの『敵意感知』で読み取れる敵意は、気配や魔力と違って、かなり遠方にあるものまで読み取ることが出来るのだ。まあ、あまりにも遠すぎると雑な敵意と大まかな位置くらいしか分からないのだけど、相手の抱く敵意が強い程、明確にその形を捉えることが出来る。

 森を歩く配下たちの話を聞いていると、病魔の森の魔物の中には好戦的なものたちが多いようだけど、常に周囲へ敵意をまき散らしているような魔物はそこまで多く無い。

 まあさすがに、常に周囲へ敵意を振りまいているような魔物がいたら、『敵意感知』を持っていない魔物でも、『気配察知』で容易にその位置を探ることが出来るだろうから、より強い魔物にあっさりと狩られてしまうのだろう。

 だからこそ、私の『敵意感知』に感じ取れる敵意の中で、それは非常に際立っていた。


 Bランクの不死族死霊系高位種ファントムレギオン。あれの形は、遠い場所であろうとも、はっきりと認識できる。何故なら、あれのまき散らす無差別な周囲への敵意は、離れた場所にある私にもザクザクと伝わってきていたから。


 ファントムレギオン。その魔物の縄張りは、病魔の森の中で頂点に位置するBランクの魔物の縄張りの中でも、最も小さい縄張りらしい。

 私が配下や魔物たちから聞いた話では、その縄張りの中心部には、この病魔の森で唯一の水場、小さな池があるという。ファントムレギオンは、その池の上に漂っているそうだ。

 何故か水の希少な病魔の森の中において、そこにある水は非常に価値のあるものだろう。しかし、病魔の森に住まう魔物で、その池に近づく者は非常に稀だ。何故なら、そこを縄張りとするファントムレギオンが、近づく魔物を問答無用で殺し尽くしてしまうから。強さも弱さも区別なく、一切の容赦も無く。

 その為、この小さな縄張りは、病魔の森に住まう者たちにとって、絶対に近づいてはならない禁断の地として、非常に有名なのだという。


 とはいえ、その辺りの事情は、この場から離れられない私にとってそれほど重要な事では無い。しいてこの情報を使う時があるなら、新しく魔物を召喚した時に、その配下へ教える時くらいだろうか。

 ファントムレギオンの縄張りにある小さな池に関しても、私のダンジョンには回復の泉という傷を癒す水が満ちた泉があるので、特に必要性は感じない。

 つまり、病魔の森の中では何かと有名なファントムレギオンではあるが、私には全く関係の無い存在だったのだ……以前までは。


 ファントムレギオンは何故か小さな池の上から動くことが無いため、その縄張りにさえ入らなければ、ファントムレギオンに襲われることは無い。病魔の森の魔物たちの中で、ファントムレギオンはそういう存在だ。しかし、私には少し違う。私にとってファントムレギオンは、それとは全く違う所で、厄介な存在だったのだ。

 事の起こりは、私が第三階層の守護者として設置する魔物を、育成しようと召喚した時のことだった。私が第三階層に配置していた複製体は、Fランクの不死族死霊系魔物レイス。守護者という機能で配置する魔物は、その階層に配置した魔物と同じ系統であれば、配置できる魔物のランク上限を上げることが出来る。その為、第三階層に設置する守護者は当然、不死族死霊系の魔物から選んだ。これで第三階層にはEランクまで配置が可能となる。

 そこを踏まえて私が魔物図鑑の中から選び、召喚した魔物は、不死族不死系のEランクの魔物、ゴーストだ。


 種族:ゴースト ランク:E スキル:『霊体』『生命感知』

 不死族死霊系の中位種ゴースト。死者の強い念を受けた魔力から生まれた魔物が、力を貯め込むことで進化した魔物。『霊体』の特性により、物理系統の攻撃は効かず、物体を透過することが出来る。暗い場所を好むが、太陽の光に殊更弱いわけではない。力を強めたことで、生前の姿や能力が僅かに蘇っており、生前に得意としたスキルを扱う個体もいる。その生まれ故か、生者への強い執着を持つ。


 魔物図鑑の説明文からすると、純粋にレイスが強化されたような魔物だろう。レイスの強さを望んで選んだ私としては、嬉しい情報だ。

 そうして、数体のゴーストを召喚した私は早速、レベル上げに向かわせようと病魔の森へ放ったのだが、ゴーストたちはダンジョンから外へ出た瞬間、何かに引っ張られるかのように何処かへ飛んで行ってしまい、二度と帰ってくることは無かった。

 一体の召喚に五千DPも使ったのに。



 それから何度か、同じ種族であるFランクの不死族死霊系基本種レイスを召喚して調べてみた結果、病魔の森に出た死霊系の魔物は、全てがファントムレギオンに吸収されてしまっているということが分かった。この吸収はかなり強力で、ダンジョンの外へ一歩でも出ればすぐにでも捕捉される。結果、その後も召喚して森に放った死霊系の魔物たちは、軒並み帰ってはこなかった。

 病魔の森に出さなくては、魔物のレベルを上げることは出来ない。しかし、病魔の森に出せば、死霊系の魔物は問答無用でファントムレギオンに吸収される。

 そのせいで私は、未だ第三階層の守護者に設置するための魔物を、育てられずにいた。


 第三階層の守護者育成という事情を抜きにしても、死霊系の魔物が扱えないというのは厄介だ。なにせ死霊系の魔物は、出来ない事も多いけれど、死霊系の魔物にしか出来ないことも多い為、使い勝手が非常に良さそうなのだ。だからこそ、この事態は非常に厄介なのである。

 それでも一応、ダンジョン内だけであれば、ファントムレギオンの吸収の範囲外なようだ。しかし、ダンジョン内だけでは、スキルはともかく、レベルを上げるのは非常に難しいだろう。レベルが上がらなければ、基本的な能力が上がらず、強力なスキルを覚えていても、それを生かすことが出来ない。

 正直、倒してやりたいところだが、それをするにも厄介すぎる。なにせ、ファントムレギオンは不死族死霊系で『霊体』スキル持ち。物理的な攻撃は一切意味を成さないのだ。

 まあ一応、不死族の中でも死霊系以外の魔物であれば、吸収されることは無いようだった。魔物図鑑に記されている魔物の中では、不死族骸骨系の基本種スケルトンラットがそれだろうか。ただ、こいつは弱すぎてお話にならない。レベルを上げて、進化をすれば、使い道も出てくるのだろうが、今のところ、これをわざわざ使う利点は無い。

 ああ。本当に厄介な魔物だ、ファントムレギオン。



 ……いや、ゴーストを育てるだけであれば、今なら或いは何とかなるのではないか?

 今はダンジョンの外から自発的にやってくる魔物が次第に増え始めている。今のところ、その魔物たちは安全に返しているけれど、数がどんどん増えていけば、戻らない魔物が出たとしてもそこまで問題にはならないのではないか? 魔物たちが死なないのは、あくまで私が細心の注意を払っているからであり、実際は幾度も死にかける機会はあった。だから、ダンジョンが危険な場所であることは、魔物たちも理解しているだろう。

 それに魔物たちは基本、他の魔物との繋がりが薄い。強い魔物や賢い魔物がいれば、その魔物を中心として、群れや集落を作ることもあるけれど、基本的には単独や数匹で動く。実際、病魔の森にいる魔物の殆どは、そんな魔物たちだ。だからこそ、強い魔物が持つ縄張りにさえ気を付ければ、適当に魔物を狩っても報復のようなことは無いのである。

 私が魔物たちを生かして返しているのは、あくまでダンジョンに訪れる魔物を増やすためだ。このまま順調に増え続ければ、それを私が管理する必要は遠からずなくなるだろう。

 ダンジョンで倒れる魔物がいたとしても、新たにダンジョンへ訪れる魔物の数が上回るはずだ。そうなったら、ダンジョン内で召喚した魔物を育てることも可能になるだろう。


 とはいえ、まだまだやってくる魔物はそれほど多いわけではない。そんな希少な魔物たちを今から狩ってしまえば、せっかく増えたDPの収入源を減らすことになってしまう。

 それは不味い。

 この方法は、もう少しやってくる魔物が多くなるまで保留だな。

 しかし、希望があることは分かった。いずれは、ゴーストをダンジョン内で育てることが出来るようになる。


 そのためにも今は、とにかく魔物を呼び込むダンジョンづくりを進めていこう。










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