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不滅のダンジョンマスター  作者: やみあるい
第四章 迷宮再始動の章

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108.心言葉

あらすじ


森に放った魔鼠情報網のケーブラットたちに関して、三つの問題が発生していた。

まずはトレントの種を運ばせる途中で襲われる個体が増えたこと。その為、少し遅くても慎重に運ぶよう伝えておく。

次は森に放ったケーブラットたちが知らぬ間に離反していたこと。ダンジョンから離れて暮らす魔物は、離反しやすくなるらしい。その為、今後は定期的にダンジョンへ帰還するよう決めた。

最後の問題は、名付けた配下が増えたことで、ケーブラットたちの意思が、絆を通して私の精神に影響を与え始めたこと。私は名付けを一時的に止め、今度に向けて名付けという行為に関して、副思考を使い、地脈を通じて調べることにした。




 この世界で魔物たちは、基本的に同種族以外を敵として認識している。群れを作るにしても、集落を作るにしても、そこに集まるのはあくまで同種族の者たちのみ。そして、進化という特殊な変化のある魔物たちが種族を同じとする証こそ、意思の疎通が行えるかどうかだ。

 正直、私は同種族の魔物たちがどうやって意思疎通を行っているのか、またそこにはどのような違いがあるのか全く知らない。五感という外界との繋がりを失った私にとって、それらはもはや、はるか遠い世界の概念だ。

 そんな中にあって、幸いなことに私は『伝心』や『読心』といったスキルによって、こちらの伝えたいことをイメージとして相手に伝えたり、相手の伝えたいことをイメージとして捉えたりすることで、多様な種族と意思疎通を可能としている。ただ、これらのスキルはかなり珍しいスキルらしく、今のところ、同じスキルを持った存在と出会ったことは無い。

 では、この世界では同種族以外で意思の疎通を行うことは絶対に不可能なのかというと、そういうわけでも無かった。この世界には魔王という他種族の魔物たちをまとめて支配する強者たちが存在する。彼らはその配下や民たちへ、ある力を授けることで、他種族同士でも意思疎通を可能とさせるそうだ。

 その力の名を、心言葉、というらしい。魔王レティシア曰く、心言葉とは私のスキル『伝心』や『読心』と似た効力を有しながら、スキルとは違う力だという。

 それを聞いた時から気になっていた為、副思考の一つで地脈から情報を集めていたら、それに関する知識を発見した。どうやらこれは、魔王が魔王へと進化するために破壊、吸収したダンジョンコアの有する力の一つであり、ダンジョンコアの機能でいうところの命令に使われている力と根源を同じくする力のようだ。

 元々は魔王のみが使える原始的な力だったようだが、それをある魔王が調整、改良し、別の魔物へと一時的に授ける術を編み出したらしい。それが現在、心言葉という名で呼ばれているようだ。

 地脈にはその魔王が編み出したという心言葉の扱い方がしっかりと記されていた。かなりの情報量だが、今の私の『記憶』スキルであれば、すべてを完全に覚えることが出来る。これなら私でも扱うことくらいは出来そうだ。便利そうなので、試してみようか。


 それにしても、心言葉を編み出した魔王というのは、かなり優秀な魔王だったようだ。正直、地脈から情報を得た今になっても、私にはそれがどういう原理になっているのかさっぱりわからない。きっと、これを扱っている魔王たちだって、魔王となったときに地脈からその身へ刻まれた機能の一つとして、中身なんぞ知らずに扱っていることだろう。俗にいうブラックボックスというやつだ。私も同じ、使い方が分かっただけ。

 ダンジョンコアそのものである私の方が、ダンジョンコアの力の一部を取り込んだ魔王より、力の根源には近いところにいるはずだろうに。

 全く、これが才能の差か。と、思わずにはいられない。

 まあ精々、私はこれを有効に活用していくとしよう。


 地脈から取り出した情報は『記憶』で完全に記録し、そのままの手順をなぞるように形としていく。幸いなことに、これと似たことをした経験があるため、そこまで難しい事では無い。

 大まかに行う手順を言葉にすると、まずは図形を用意し、それに力を注いで形とした後、配下たちの意識へと刻んでいく。それで終了。

 この図形が、ダンジョンの部屋や通路を示す目印に似ているのだ。それを端的に表すとしたら、かなり複雑な構成の魔法陣みたいな何か。比べてみると一応、部屋や通路を示す目印の方がより複雑な構成のように感じるが、だったら心言葉の図形は簡単なのかと言えばそんなことは無い。むしろ、比べるための似た図形が無いという意味で言えば、心言葉の図形の方が私には難しいと思えるくらいだ。

 何のためにあるのか分からない部分が多いうえに、何処が重要なのかもわからないので、とりあえず、全てを全て、丸々写し取っていく。ほんの少しの欠損も無いように、細心の注意を向けて。

 それを『空想空間』のスキルで、私の意識上に浮かべると、DPを意識してそこに注いでいく。

 ……よし、問題は無さそうだ。

 心言葉が完成した。完全に地脈から得た情報通りにしたから、これで完成のはず。ならば早速、このまま配下たちの意識へと刻み込んでみよう。とはいえ、いきなり全員に刻むのは、ちょっと怖い。

 とりあえず、お試しとして誰に刻もうかと迷った末に、まずは第二階層の守護者として配置したファングウルフの一体へ刻むことにした。こいつは私の配下の中で最初に『身体強化』のスキルを覚えた魔物だ。他の魔狼たちの学習速度から考えても、こいつが他の配下たちと自由に意思疎通できるようになれば、さらに配下たちが『身体強化』を覚える速度が上がるはず。


 そうして、守護者の一体であるファングウルフの意識に心言葉を刻んだ後、私はダンジョン内にいた一体のゴブリンをファングウルフの元へと向かわせた。このゴブリンは、まだ成長したばかりで、どんなスキルも覚えていない個体だ。一方で、ファングウルフにはやってきたゴブリンへ、話しかけるように伝えておく。ゴブリンに話しかけるということで、少し戸惑っているようだったけれど、まあそれはいい。今のところ、ファングウルフのステータスに変わったところは無いけれど、私のやり方が間違っていなければ、これであとはファングウルフがゴブリンと話せば、心言葉が使えるはずだ。

 やってきたゴブリンに対して、ファングウルフが恐る恐る話しかける。私はその様子を緊張しながら、観察していた。すると、話しかけてきたファングウルフに対して、ゴブリンが応える。それから二体の他愛のない会話が始まった。私はそれを『読心』で読み解く。なるほど、しっかりと意味も通っているし、どうやら会話は成立しているようだ。

 続いて私は、ファングウルフにゴブリンへ、『身体強化』の使い方を教えるように伝えてみた。以前、『身体強化』を伝授させた時は、『身体強化』を習得出来ない私が間に立って伝えていたせいで、異種族間でのスキルの伝授にはかなり苦戦していたが、今回はどうだろう?

 暫くの間、身振り手振りといった動作も交えて話し合っていた両者だったが、やがてゴブリンがファングウルフに教えられたとおりの特訓を始める。これは自らの魔力を操る練習、だろうか? 自在に操れる魔力を持たない私には、いまいち理解が難しい感覚だ。例えて言うなら、尻尾を持たぬ者が、尻尾を持つ者に尻尾の使い方を教えるようなものだろうか。想像なら出来るので、それを交えて伝えるのだが、微妙な違いがあるのか、はっきりと伝わっている気がせずもどかしい思いだったことを覚えている。ファングウルフは時折、ゴブリンのやり方に口出しをして、その都度やり方を修正している。肉体の魔力を解して? 細い枝葉のような柔軟さ? 水を一か所に集める? 満遍なく巡らす? ダメだ。想像は出来るが、やっぱりあっているような気はしない。ただ、私が教えるよりも順調に進んでいるような気はする。

 とはいえ、さすがにすぐ覚えるということは無さそうだ。まあ、同種族であっても、『身体強化』スキルの習得には数日を要したのだから、そこは仕方がない。とにかくこれで、当初の予定であった授けた心言葉の確認はうまくいった。

 ちなみにこの心言葉。どうやら絆の繋がっている友好的な相手であれば、誰にでも授けることが出来るらしい。という訳で、とりあえず絆を通してダンジョンに住まう配下と、病魔の森に散る配下たちへ、心言葉を授けておく。

 これで今まで異種族間に起こっていた細かい色々な問題も解決することだろう。


 ところで、心言葉について地脈の情報を探っている際に、魔王についての新しい情報を得ることが出来た。それは魔王が進化の際に取り込むダンジョンコアの力を、どうやってうまく操っているのか、という情報だ。

 どうやら、魔王へと進化を果たした者は、その時点で魔王としての力の使い方を知るらしい。そしてそこには、この世界で他の魔王が確立した力の使い方、支配領域の広げ方や、配下たちへ心言葉を授ける方法なども含まれているという。だからこそ、魔王は最初から自身も調整された心言葉を使うことが出来るのだとか。では、魔王は何処からそんな力の使い方を知るのか? どうも、進化の際に魔王は、どうやってか地脈から情報を得ているらしいということまでは分かったのだが、これより詳しい情報までは得ることが出来なかった。ダンジョンコアに最初から備わっている基礎知識と似たようなものだろうか?

 まあ、ダンジョンコアの力を得たことで、同時に地脈との繋がりを得たというのは、分からない事でも無いのだが、それならばなぜ、魔王が進化の後も地脈と繋がったという情報は無いのか? そこが気になると言えば、気になる。まあ、本筋とは違う偶然入手できた情報だ。これに関しての考察は、またいつかとしよう。


 ここからはまた心言葉の話に戻るのだが、魔王の情報について考えていた時、一つ思いついたことがあった。それは私に心言葉を刻んだら、どうなるのだろうか、ということだ。

 魔王には進化の際に付与されるという話だが、元来、己を持たぬダンジョンコアには、当然のことながらそんな機能は付与されていない。しいて言うなら、命令がそれに当たるのだろうが、命令と心言葉では明らかにその目的が違う。命令はあくまで、こちらから行ってほしいことをイメージとして送るという一方向な機能であるのに対し、心言葉は相手からのイメージも読み取ることが出来る。命令のように、相手へその行動を強制させるような力は無いようだが、心言葉にしか出来ないことがあるというのも事実。まあ、その利点も、私にはスキル『伝心』と『読心』があるせいで、大した意味を持たないのだが、気にはなる。

 一応、調べてみた所、幸いなことに心言葉の付与には、特に危険は無いとのことなので、試しに自身へ付与してみようと思う。

 えー、『記憶』から心言葉の複雑な形を『空想空間』による意識上へ読み込んで、そこにDPを使い形を作り、私自身の意識へと刻む、と。


 次の瞬間、私は不思議な感覚を覚えた。それはそう、例えて言うなら機能が増えた時のような感覚。やはり、心言葉はダンジョンコアの機能とよく似ている。

 ふむふむ。やはり、命令の機能に使われている力と、根源は同じようだ。そこから心言葉に力が使われているのを感じる。自身で使えるようになると、それがより一層強く感じられた。

 しかし、ダンジョンコアの力を使うというのなら、何故、ダンジョンコアの力を持たぬ配下たちにも刻むことで、心言葉が使えるようになるのだろうか?

 ダンジョンコアの力を取り込んだ魔王ならともかく、その配下や民たちは別にダンジョンコアの力を直接持っている訳では無い。ならば、心言葉という機能を刻んだとしても、それを動かす力は何処から?

 気になった私がファングウルフへと刻んだ心言葉を慎重に辿ってみると、どうやら私からファングウルフと繋がる絆へと一定の力が常に流れていることを発見した。恐らくこれが、心言葉を使う為のダンジョンコアの根源たる力だろう。

 なるほど、心言葉を動かす力は、絆を通して与えた私から送られている、と。より正確に言うならば、実際に力を発動させているのは私自身だろうか? ファングウルフが心言葉を使うたびに、私と繋がる絆に絶えず情報が行き交っているように感じる。私が翻訳機となっているのか? 一応、これの発動にDPは消費していないようだが、うーむ、これ以上はよくわからん。


 それにしてもこの心言葉という力、大変便利な力に思えるが、不便な点もあるようだ。実際に使ってみて分かったのだが、この心言葉という力は、命令と同じ力を使っているハズなのに、使える範囲が酷く限定されている。

 より深く知るために、配下たちへ絆を通して心言葉を刻んだ後、名前を付けたケーブラットたちに手伝ってもらい、色々と検証をしてみた結果、どうやら心言葉は特殊な声のようなもので、意思疎通を可能としているらしい、と分かった。だからこそ、声の届かないほどに離れた相手とは意思疎通が出来ないようなのだ。

 ただし、声というのは、私の知っている声そのものではない。その性質が声に似通っているために、便宜上、声と呼んでいるだけで、実際に音を発している訳では無かった。だからこそ、音を認識できない魔物であっても、心言葉は通じる。

 しかし、それでもこの力の根本にある思想は、声で話すということだろう。その証拠に、この力は一般的に声の届くであろう範囲に限定されていて、それ以上に離れていると途端に通じなくなる。


 とりあえず、心言葉を刻んだ配下たちにはスキルの教え合いを推奨しておこう。こう伝えておけば、それぞれが自然と得意なスキルを教え合い、戦力が増強していくはずだ。

 また、その交流が種族の違う配下たちの間にある隔たりを埋める一助となれば、とも思っている。『伝心』や『読心』のスキルを持つ私はよく分かっていた。意思疎通が可能になったとはいえ、それを行使する意思が無ければ、隔たりは無くならないということを。

 きっと、それには長い時間が掛かることだろう。しかし、急いては事を仕損じるという言葉が、前生であったように、これに関しては急いではダメだ。

 意思の疎通は素晴らしい連携を配下たちへ齎してくれるだろうが、同時に新たな争いを生む可能性もある。そこへ対処していくためにも、ゆっくりと着実に進めていこう。









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