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不滅のダンジョンマスター  作者: やみあるい
第三章 勇王国進軍の章

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幕間.孤高の炎剣イグニス2

 竜族。

 それはこの世界に数多くある魔物の種族の中でも、特に高位の魔物とされる種族である。

 成竜となった竜族の強さは、最低でもBランク。

 国を滅ぼす厄災とされる魔王の一つ下のランクと言えば、その強さへの理解も深まるだろう。

 それが成竜となった竜族の最低ランクなのだ。

 人間たちにとって、竜とは絶望の象徴。

 竜族は個体数が少なく、人間の領域にまでやってくるのは稀というのが、人間たちにとってのせめてもの幸いだろうか。

 しかし、それ故にその討伐は魔王討伐に迫るほどの功績となる。だからこそ、血気盛んな若き冒険者たちにとって、それがきっと一攫千金の宝に見えるのだろう。

 それほどに竜の強さ、危険性は誰もが知るところだというのに、それに挑んで消えていく若き冒険者たちはいつの時代もいなくならない。


 だが、果たしてそれは間違いと言えるのだろうか?

 それを乗り越えた者たちだけが、最高の栄誉を得ることが出来るのもまた事実。


 結局のところ、それもまた冒険者の生き様なのだ。



 閑話休題。



「Aランク冒険者、孤高の炎剣イグニス様ですね? 本日は貴方様を王宮へ招待致したく、参上した次第です」


 イグニスの泊る宿に尋ねてきたのは、勇王国王宮の使いであった。

 彼が告げた言葉を要約すると、イグニスに暫くの間、王宮へ滞在してもらいたいということらしい。

 どんな理由で、などと聞くつもりは無い。イグニスにはその理由に心当たりがあったからだ。



 勇王国が病魔の森を重要視しているのは有名な話である。また、勇王国王都の冒険者ギルドでは病魔の森について、緘口令が敷かれていた。病魔の森が通行可能となったという情報が、他国へと洩れぬように。

 一か所へ留まらぬ者の多い冒険者たちに、いつまでもそのような方法がうまくいくわけもない。それは緘口令を敷いた者たちも分かっていることだろう。

 つまり、これは短期的なこと。


 現在、病魔の森には何かがあるのだ。そしてそれは、きっとあのダンジョンに関係がある。勇王国が目の仇にするという魔鼠がいた、あのダンジョンに。

 依頼の報酬として渡された破格の金額が、その可能性を裏付けている。やはりあれは、口止め料だったのだ。

 彼らが尋ねてきたことで、イグニスはそれらのことに確信を持った。それと同時に、この招待が断れない類の招待であることにも。


 部屋に直接、尋ねてきた王宮の使いはたった一人。恐らく文官であろう、鍛錬のたの字も知らない痩せた男だ。

 しかし、イグニスの『気配察知』は、外で部屋を囲む者たちの気配を読み取っていた。そこから感じる強さからして、恐らく待機しているのはこの国の騎士たちだろう。

 今までの状況から考えて、ここで彼らの招待を受けたとしても、さすがにイグニスが命を奪われることは無いはずだ。けれど、イグニスが暫く自由を制限されることになるのは明白。

 片腕と愛盾を失ったとはいえ、Aランク冒険者であるイグニスなら、彼らを打ち倒すことも出来なくはないだろう。

 しかし、ここで暴れてしまえば、さらに不味い事態になることは想像に難くない。相手は国家なのだから。

 勿論、相手が国家であろうとも、こちらの命を奪おうとするのであれば、手段を選んではいられないのだが、今回はそんな雰囲気でも無い。

 一瞬、悩んだ末に、イグニスは彼らの招待という名の軟禁を受け入れることに決めた。



 王宮での軟禁生活は、そこまで悪いものでは無い。勿論、軟禁であるからして、王宮の一角から出ることは出来なくなってしまったが、代わりに王宮はイグニスの腕の治療に力を貸してくれている。二つ名持ちのAランク冒険者を軟禁するせめてもの詫びらしい。


 さすがは国家の力だ。権力でも財力でも、Aランク冒険者とは比較にならない。高位の神官が力を貸してくれたこともあり、『再生』のスキルと併用することでイグニスの腕の再生は順調に進んでいた。この分ならば、最初に予想した一ヶ月を大幅に短縮することが出来るだろう。


 だが、王宮での軟禁生活でイグニスが一番喜んだのは、もっと別のことだ。

 それはたとえば、食事。さすがは王宮と言うべきか、毎食出てくる料理はどれも一級品ばかり。部屋に置かれた家具も一流の品ばかりが揃っており、使い心地も非常に良い。

 イグニスの実家はそこまで貧乏な家でも無かったし、高ランクの冒険者になってからは、各国の貴族家へ招かれる機会もあったが、それでもここまでの品々と出会ったのは今回が初めてだった。


 そんなわけで、イグニスは王宮でのこの軟禁生活を存分に満喫していた、のだが……。



 そんなイグニスの生活は、またも、すぐに終わりを迎えることになる。









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