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不滅のダンジョンマスター  作者: やみあるい
第三章 勇王国進軍の章

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111/204

100.地脈を流れる情報

本日、二話同時更新



あらすじ


ガルセコルトの亡骸はかなりのDPに変換することが出来た。

そこから数日後、魔鼠情報網からは、魔王の去り際に放っていた魔力が原因で、病魔の森が荒れているという報告が入る。

最後に魔鹿たちへ今回分かった情報を伝えた上で、今後の身の振り方を聞いてみた所。

まだ暫く縄張りは移動しない、という答えが返ってきた。

これで、魔王襲来により起きた出来事の後始末は終わり。

続いて私は今後を見据えて、なんだかんだと放置してきた地脈について、一度しっかりと調べてみようと考えた。

そうして悪戦苦闘しながらも、地脈から情報を読み取る方法が見えてきたことで、私は支配領域の新たな可能性を知る。




 支配領域の扱い方に関する情報は、『並列思考』による副思考の一つで引き続き探し続けるとして、次は近隣に関する情報を探してみよう。


 まずは手始めとして身近な病魔の森のことについて。病魔の森の中のことで、一番知りたいことと言えば、未だ森に生き残っている高位の魔物の事だろう。

 病魔の森にはまだ、強力な力を持つ魔物が生き残っている。少なくとも私が知る限りでは、魔鹿たち以外で魔樹エルダートレントと死霊ファントムレギオンが生き残っていたはずだ。

 だが、広い病魔の森では他にもまだ生き残っている強力な魔物たちがいるのではないか。

 さすがに魔王レティシアと並ぶほどの強者が潜んでいるとは思わないが、今の私にはBランクの魔物だって脅威に違いない。味方とするにせよ、敵に回るにせよ、身近にある危険のことはしっかりと把握しておくべきだろう。


 病魔の森に住まう魔物たちのことについて様々な角度から地脈の情報を探っていたら、病魔の森にここ最近まで生息していた高位魔物たちの情報を知ることが出来た。

 それは病魔の森に住まう高位の魔物とその死の記録だ。その中には私の知っている魔物の事も記されていた。

 魔狼ガルセコルト、魔鹿クリスタルホーンディアー、魔鹿ブラッディーホーンディアー、魔鹿ジャイアントディアー、魔蜂マザービー、魔樹エルダートレント、死霊ファントムレギオン。そして、邪妖ゴブリンロード。

 ちなみに地脈に情報のあったゴブリンロードはゴブ太の事ではなく、ゴブ太の集落を襲ったゴブリンロードのことだ。どうやらゴブ太は私の配下となった時点で、ダンジョン所属となったらしく、病魔の森に生きる魔物という枠組みからは外れてしまったらしい。そのため、病魔の森に住まう高位の魔物という枠組みには入っていなかった。

 ここまでは私も知っている魔物たちだ。


 地脈から得た情報にはさらにその後にも、魔蟷螂ゼノマンティス、魔蜘蛛カオスポイズンスパイダー、魔蝶レインボーバタフライ、魔熊オーガベアー、魔猪ソニックボア、魔草マーダープラントエリアと知らぬ名が続いていく。

 どうやら病魔の森にはかなり多くのBランク魔物が住んでいたようだ。しかし、地脈から探し出した情報を信じるならば、新たに知った魔物たちは既に死に絶えているらしい。

 元々持っていた情報と地脈から得られた情報を照らし合わせてみれば、どのような原因でその魔物たちが死んでいったのかも分かってくる。


 最初の原因は邪妖ゴブリンロードによる侵略。最後の最後には多大なる被害とゴブ太や黒牙の活躍により打ち倒されたゴブリンロードだったが、その間にはかなりの魔物がその手に掛かっていたようだ。

 時期的に考えて、ゴブリンロードに潰されたBランクの魔物は、魔蟷螂ゼノマンティス、魔蜘蛛カオスポイズンスパイダー、魔猪ソニックボアの三匹。

 よくもまあ、これだけ高位の魔物たちを狩ったゴブリンロードを相手に、あれだけの被害で返り討ちに出来たものだ。いま改めて思い返してみると、恐ろしい程の綱渡りだった。

 その後に殺された魔物たち、魔蝶レインボーバタフライ、魔熊オーガベアー、魔草マーダープラントエリアは、恐らく病魔の森に踏み入ってきた冒険者たちによって狩られた魔物たちだろう。

 そうして残る最後、魔狼ガルセコルトが魔王レティシアの手によって葬られた、と。


 勿論のこと、そのずっと前から病魔の森では、高位の魔物が生まれては衰退している。それはさながら、この世界の法則の如く。私が地脈から得た情報は、あくまでもここ最近の魔物たちの情報だった。

 けれど、過去を含めてもこれ程の短期間で高位魔物が倒されていったのはかなり珍しい事だったようだ。

 そんな中で今も病魔の森に残る強者は、魔鹿クリスタルホーンディアー、魔鹿ブラッディーホーンディアー、魔鹿ジャイアントディアーの三匹と、魔樹エルダートレント、死霊ファントムレギオン、そして。


 悪魔ノウェム。


 ん?

 最後に地脈の情報を再確認すると、いきなり全く知らぬ名前が出てきた。

 ダンジョン機能の魔物図鑑でも調べてみたが、同じ名前の魔物は存在していない。病魔の森に住んでいる魔物なら、ここに記されているハズなのに。地脈の情報を改めて調べ直してみると、どうやら悪魔ノウェムは魔物では無いようだ。さりとて、地脈に情報があるということは、人間という訳でもないのだろう。

 人間でも、魔物でも無い、存在。

 地脈にあるのは、その名だけ。他に情報は一切無い。

 種族も、強さも、正確な居場所も分からない、何か。

 魔鼠情報網からも、それらしい目撃報告は来ていない。

 かなり気にはなるけれど、それ以上の情報が無い以上、今は放っておく以外に無さそうだ。

 一応、注意だけは払っておこう。


 最後に謎の名前が出てきたけれど、それ以外では既に捕捉している魔物の名前しか出てこなかった。だが、油断してはいけない。

 魔物たちには、進化という急激に力を得る方法がある。地脈を調べても、わかるのはその魔物の種族とランクだけ。現在のレベルや覚えているスキルは分からないのだ。

 もしかしたら今も病魔の森の何処かで力を求めて、戦い続けている魔物がいるかもしれない。その魔物がいつか唐突に、その意志に見合った強さを手に入れるかもしれないのだ。こちらも『並列思考』により分けた副思考の一つで、絶えず地脈を確認しておいた方が良いだろう。


 さて、病魔の森についてはこんな所にしておいて、さらに外の世界の事についてもこの調子で着手していこうか。



 森の外のことについて、私が知っていることはあまり多くない。その中でも特に調べるべきことは、やっぱり敵となりうる存在について。それは言い換えれば、病魔の森の周辺にある魔王の支配領域や高位の魔物の縄張りについての情報だ。

 魔王レティシアが齎した情報から考えて、勇神が滅び去った今、病魔の森は人間たちが言う所の魔の領域に浸食されていくこととなるだろう。

 恐らく元勇王国のあった地は、勇神を滅ぼした者であり、同時に勇王国のあった地に強い思い入れのあるレティシアが自らの領域とするはずだ。だが、勇神の支配領域を全て手に入れようとするかは分からない。勇王国の者たちは妙にこの地へ思い入れが強かったようだが、レティシアも同様かは不明である。

 さすがにあんなことを告げて去った後で、レティシアの手勢がダンジョンへ攻めてくることは無いだろう。けれど、病魔の森に関しては油断できない。

 それに病魔の森でも度々あったことだが、高位の魔物の縄張りが大きく変動するとき、それに乗じて周囲の勢力が動き出す可能性は十分にありうるだろう。

 そもそも、私にはレティシアの持つ強さが外の世界でどの程度の位置にあるのかが分からない。

 レティシアは確かに強かった。この病魔の森の中では、レティシアに対抗できる魔物は皆無だろう。だが、そんなレティシアも危険視している相手はいるようだった。

 外の世界には、この病魔の森の中とは比べ物にならない程に強大な力を持つ敵が大勢いる可能性があるのだ。

 ならばこそ、これに関しては出来る限り迅速に調べておきたかった。


 だが、これがなかなかに難しい。

 どうも支配した領域に関することは地脈で調べやすくなるようで、一部とはいえ、私の支配する領域が存在する病魔の森の中の事であれば、ある程度は無理が効くようだけど、そこから外に出ると途端に難易度が上がってしまう。

 それでも領域教会やそこに所属する神々といった人間側に関する情報について調べた時のように、何一つ情報が引っかからないという程ではない。

 感覚的な話になるのだが、あと少しで指先が触れそうなのに、ギリギリまで伸ばした手が空を切っている感じ。まあ、今の私に手や指は存在していないのだが。

 あと少しで、情報に触れることが出来る。

 あと少しで、情報をつかみ取ることが出来そう。

 あと少しで。

 そんな感覚が無性に悔しくて、私は必死になってあらゆる方向性からその情報について調べ続けた。

 そうして暫く地脈を流れる情報の海にどっぷり浸かっていたら。


 〈スキルの習熟度が一定値に達しました。スキル『地脈親和性』のレベルが9から10へ上がりました〉


『地脈親和性』のスキルレベルの上昇と共に、いきなり欲しかった情報へと空想の手が届く。

 私は即座に輪郭を形成する情報を自身の『記憶』から選び取り、『空想空間』で形作った架空の輪郭に重なった情報を一つ一つ填め込んでいき、その内容の繋がりを精査して、地脈から掬い上げた。

 そうして地脈から探し出した情報によると、病魔の森の付近にあるのは、魔王の支配領域が一つと、高位の魔物の縄張りが二つらしい。

 さらにこの魔王はレティシアであることも分かった。恐らく魔王レティシアは勇神という仇のすぐ近くで虎視眈々と隙を伺いつつ、力を蓄え続けていたのだろう。

 魔王レティシアに関しては、百年待つと宣言している。あの状況で、嘘をつく理由など無いだろう。ということで、魔王の支配領域に関しては、一先ず置いておく。

 だから問題なのは、残る二つの高位の魔物の縄張りについて。


 魔鳥レミストネータと、魔鉱人形ミクスギガントゴーレム。


 地脈にあった情報は、二体の種族名のみ。

 これだけだとさすがに情報が少なすぎる。

 そう思っていたのだが、どうやら私が地脈から情報を得た時に、ダンジョンコアの機能の一つである魔物図鑑も、同時にその魔物に関する情報を収集したらしい。

 さすがはダンジョンコアの機能だ。手探りの私などよりも多くの情報を瞬時に集めている。

 私は早速、魔物図鑑で二匹の魔物に関する情報を確認した。



 種族:レミストネータ ランク:B スキル:『聴覚』『視覚』『疾風魔法』『飛行』『魔歌』

 魔獣族魔鳥系の特殊個体レミストネータ。新緑色の羽をもつ美しい姿をした魔鳥系統の高位魔物。『疾風魔法』を自在に操り、空を高速で飛び回る。その歌声もまた姿に並ぶほど美しいが、魔力を含んだ歌声は広範囲に大きな影響を呼び起こす。レミストネータが破滅を歌うとき、大いなる災厄がやってくるという。


 種族:ミクスギガントゴーレム ランク:A スキル:『魔力探査』『砂塵魔法』『鉱石生成』『鉱石吸収』『人形生成』『人形支配』『自己修復』

 魔鉱族人形系の超越種ミクスギガントゴーレム。数多の鉱石を内包する身体は、山の如き巨大さを誇る。肉体を構成する数多の鉱石は、中心核に近づけば近づく程に稀少で頑強な鉱石へと変わっていく。また傷を受けたとしても大地を吸収することで修復してしまう。その移動はさながら天災であり、通り過ぎた後には草木も生えぬ荒野のみが広がる。



 ワーオ。

 レミストネータはガルセコルトと同様のBランク特殊個体。そして、ミクスギガントゴーレムは魔王とは別の進化を果たしたAランクの魔物だ。

 魔物図鑑に記された説明文からしても、その危険性には並々ならぬものを感じる。

 どちらもかなり厄介な存在ではあるのだが、私がまず気になったのは、Bランク特殊個体であるレミストネータについてだ。


 魔物が魔王へと進化する条件は、レベル上限に達したBランクの魔物が【王を目指す者】の称号を得た状態で、ダンジョンコアを破壊すること。


 もし、レミストネータが【王を目指す者】の称号を持っていたとしたら、ダンジョンコアである私にとって天敵となることが決定する。

 あのガルセコルトが完全な状態でダンジョンコアの破壊を目指して来たら、DPブーストという制限付きの後押しでようやく同等となる黒牙一匹では、止められるかは正直怪しい。

 そうなると、気になるのはレミストネータの称号に【王を目指す者】があるかどうかだが、如何せん、魔物図鑑の情報では生存している特定の魔物のステータスを確認することは出来ないのだ。

 空を自在に飛ぶ魔物と地下に広がるダンジョンだと、相性的にはこちらに分がありそうだけど。相手はあのガルセコルトと同等の存在。

 レミストネータには、注意を払っておくべきだろう。


 次にもう一匹の縄張りを持つ魔物であるミクスギガントゴーレムについても考えてみる。

 ミクスギガントゴーレムは、魔王とは違う進化を辿ったAランクの魔物だ。正直、Aランクへと至った魔物に関しては、病魔の森に存在していなかったので、その実力は全くの未知数である。魔王と比べ、その強さが如何ほどのものなのか。


 そこまで考えた所で、疑問に思う。

 そう言えば、Aランクへと進化を遂げた魔物は、もう魔王にはなれないのだろうか、と。

 私が最初に魔王の事を調べた時は、条件にBランクの魔物という情報しかなかった。それをそのまま信じるならば、一度魔王とは違う進化をしてしまった魔物は、もう魔王を目指すことが出来ないということになる。

 それはそのまま、私がAランクの魔物に抱くべき危険度の度合にも影響してくるだろう。

 魔王レティシアのような例外はありうるものの、少なくとも魔王を目指すという目的で、私を破壊しようと攻めてくる可能性が無くなれば、私が敵対しなければならない強力な魔物が減ることになる。

 そう思い、念入りに調べてみた所、ダンジョンコアに付随する基礎知識の中に、それらしい情報があった。


 結論から言えば、Aランクに一度進化した魔物も、【王を目指す者】の称号を得た状態でダンジョンコアを破壊することにより、魔王へと至ることが可能なようだ。

 ただし、これは進化では無く、転化という。

 魔王レティシアが人間から魔物へと変わった時にも使われていた言葉だが、どうやらこれは魔物が同ランク帯の別種の魔物へと変わる時に使われる言葉らしい。

 ちなみにこの転化という現象は、魔王レティシアの例があるように、Aランクの魔物が魔王へと変わる以外でも起こりうる現象のようだ。


 つまり、もしミクスギガントゴーレムに【王を目指す者】の称号が付いていた場合、レミストネータと同様に、いやそれ以上に厄介な天敵となりうるかもしれない。

 と考えたのだが、そこでまた一つ疑問が生まれた。

 ミクスギガントゴーレムの説明文を読み解く限り、この魔物はかなり巨大な身体を持っているようだ。山の如くとか、過ぎ去った後は荒野となる、なんて表現されているくらいなのだから、その大きさは魔鹿ジャイアントディアーよりも、さらに大きいと考えるべきだろう。

 だとすると、ジャイアントディアーですら入り口が小さすぎて侵入することが出来なかった私のダンジョンに、果たしてミクスギガントゴーレムは侵入できるのだろうか?

 ダンジョンの大きさと魔物の大きさ。

 これはかなり重要な問題だろう。

 もし、その大きさによってダンジョンへ侵入できない魔物がいた場合、魔物には通常の条件とは別にもう一つ、大きさの制限という条件が課せられていることになる。

 その辺りはどうなっているのだろう?


 するとこちらも、ダンジョンコアの基礎知識から答えらしきものを得ることが出来た。

 どうやらダンジョンの基準となる大きさというのは、ダンジョンコアでダンジョンを構築したダンジョンマスターの大きさを基本としているようだ。

 私の場合は恐らく、前生の頃の感覚が基本となっているのだろう。今思えば私のダンジョンの大きさは、人間基準だったようだから。

 ただし、これは初期の頃の話だ。ダンジョンというのはダンジョンコアの成長と共に、少しずつその大きさも成長していくらしい。

 実際、私のダンジョンも入り口が解放された頃と比べて、入り口、通路、各部屋、そして階層を繋げる階段と、全てが少しずつ大きくなっている。以前は人間の子供くらいの大きさのゴブリンにとって少し大きいくらいの広さだったが、今は魔狼の中でも一際大きかったガルセコルトの身体がギリギリ入れる大きさになっているほどだから。

 まあそれでも、これまでの成長度合いを加味すると、山のような大きさの魔物が侵入して来れるまで成長するには、相当時間が掛かるだろう。

 そう考えてみると、当分はミクスギガントゴーレムに、そこまで注意を払う必要は無いのだろうか。

 いや、相手は鉱石の身体を持つゴーレムだ。もしかしたら身体を削って侵入してくるということも考えられる。そもそも、肉体を小さくするようなスキルがあるという可能性も考えられるし、小さな自身の分身を作ってきたりする可能性もありうる。

 やはり、大きさから相手の危険度を決めつけるのは、止めた方が賢明か。


 結局、どちらの魔物にも注意を払っておくということで結論が出た。



 最後に私以外のダンジョンに関する情報も、地脈から探ってみよう。

 病魔の森に他のダンジョンが無いということは、これまで集めてきた情報から察している。だが、これからはもっと外の世界にも意識を広げていかなければならない。

 外の世界にダンジョンはどの程度存在するのか、そしてそれはどの程度の強さを保持しているのか。この世界でダンジョンとして生き残るためにも、先達の情報は少しでも多く手に入れておきたい。

 そもそも、先に出てきた二種の魔物が、もしも以前から魔王への進化資格を有していたとしたら、既に別のダンジョンを探して、挑んでいるのではないだろうか。

 だというのに、未だ魔王となっていないということは、元より魔王への進化を望んでいないか、外の世界でもダンジョンというのはあまり存在していないか、外にあるダンジョンの難易度が非常に高いかのどれかだろう。

 魔王を目指す気が無いのであれば、私としては嬉しい限り。だがもし、それ以外の理由であった場合、私というダンジョンはこの魔物たちにとって恰好の獲物となるだろう。

 それを確かめる意味でも、森の外のダンジョンの情報はしっかりと集めておきたい。

 地脈で情報を探す時は、情報を限定して狭めた方が輪郭を作りやすいため、一先ず調べるのは病魔の森の近場にあるダンジョンについてとしよう。


 探し物が自身と近しいものだからか、地脈の中で情報の輪郭が定めやすい。そのため、病魔の森の近場にあるダンジョンについての情報は、意外と早く探し出すことが出来た。

 地脈から引き出した情報によると、病魔の森の近場にあるダンジョンは一つだけらしい。場所は恐らく、人間たちが魔の領域と呼ぶ方面。多分だけど、人間の領域方面には近場でダンジョンは無いようだ。多分なのは、そちらの情報が不自然なほどに無いからだ。これもまた、人間たちに関わる情報だからなのだろう。ただそれでも、もしダンジョンがあったとしたら、何となくわかるような気はするのだ。だからこそ、多分、なのである。


 そこまでは分かったのだが、肝心のそこから先の情報が探れない。

 こちらに関しては、人間に関係する情報のように、全く情報が無いという訳では無いようだ。さりとて、あと少しで届きそうという雰囲気でもない。

 私が確認できたダンジョンについて、さらなる情報を探ろうとしたとき、私は明確な何かによってそれを遮られた。そのせいでそれ以上の情報を探ることが出来なかったのである。

 それは何となく、機能的な雰囲気を感じる動きだった。恐らくダンジョンコアに付随する機能と同じもの。それと私が探している情報と合わせて考えてみれば、情報を遮断したのは私が探ろうとしていたダンジョンのダンジョンコアだろう。

 ダンジョンコアの機能ならば、ダンジョンコアの基礎知識に何か情報が無いだろうかと思い、そちらを調べてみたのだが、それらしき情報は無いようだ。

 ダンジョンマスターが扱う手動の機能では無く、ダンジョンコアが自ら行う自動的な機能なのだろうか? だとすれば、ダンジョンマスター向けに存在するダンジョンコアの基礎知識に情報が無かったとしても頷ける。

 試しに地脈からもそれらしき機能について情報を探ってみたのだが、ちょっと元となる情報が少なすぎて、うまく輪郭を築くことが出来なかった。

 それからも様々な方向からその機能について考察したり、近場のダンジョンに関する情報を探ったりしてみたのだが、最終的に分かったのはただ一つ。

 そのダンジョンが私よりも格上のダンジョンであるということだけだった。

 とすれば、このダンジョンのダンジョンコアが二種の魔物に破壊されていない理由は二つに一つ。二種の魔物に魔王となるつもりが無いか、もしくはこの二種の魔物でも突破できぬほどに難易度の高いダンジョンか、だ。


 ダンジョンのことは気になるけれど、二種の魔物ほど重要な問題ではない。相手がダンジョンである以上、私の敵となることは無いだろうから。

 こちらの問題については、一先ず今回は気にしないでおくことにしよう。

 ただ、今回の件は情報を遮断されこそしたが、敵意のようなものを向けられたわけではないし、反撃を受けたわけでも無い。害が無いのであれば、またダンジョンとして成長出来た頃に、ちょくちょく試してみるとしよう。



 まだまだ他にも調べることは色々とあるけれど、少し方向性は掴めてきた。


 勇王国が滅びたことによる人間たちの動向。

 近まった高位の魔物たちの縄張り。

 そして、百年後に現れる災厄との戦い。


 まだまだ厄介なことは目白押しだが、他にも時間が出来た今の私に出来ることは色々と思いついている。

 だが、まずは休憩から始めよう。

 あちこちから這い寄ってくる死へと抗い続け、何とか手にすることが出来たこの束の間の平穏をしっかりと噛みしめるために。








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