表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不滅のダンジョンマスター  作者: やみあるい
第三章 勇王国進軍の章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

110/204

99.同盟者の選択

あらすじ


魔王レティシアは私の破壊に百年の猶予を与えた。

私は与えられた百年という月日の長さに困惑しつつも、去った魔王の残した被害状況を確認していく

そうして全てに一段落が付いた後、私は『加速思考』を切って、思考を休める。




 病魔の森から戻ってきた二匹のゴブリンの手によって、黒牙の身体は回復の泉に投げ入れられた。すると黒牙から感じる気配が、見る見るうちに強まっていく。

 絆から感じる黒牙の命も、万全な状態に戻っている。少し元気は無さそうだけど、それは精神的な問題だろう。少なくともこれで、黒牙の命の危機は過ぎ去った。


 そんな黒牙に私がまず頼んだのは、ダンジョンの手前に捨て置かれたガルセコルトの亡骸をダンジョン内へ回収することだ。黒牙はガルセコルトの大きな亡骸を『闇魔法』で包み込むと、そのまま小さな体で背負い、ダンジョン内へと運び込んでくれた。

 ダンジョン内の床に置かれたガルセコルトの亡骸を即座に吸収してDPへと変換する。

 それで得られたDPは、1,201,053DP。

 さすがはBランクの特殊個体といった所だろうか。それに加えて、ガルセコルトのステータスはレベルもスキルも上等だった。

 それを加味してみれば、こうして得られたDPの量も当然の結果だったのかもしれない。

 贅沢な使い方をしなければ、このDPで暫くの間は持つだろう。



 それからまた数日が経ち、森中に放っていたケーブラットたちから、次第に情報が集まり始めた。

 どうやら病魔の森は現在、去り際の魔王が放っていた魔力の影響で、魔物たちがかなり殺気立っている状態らしい。ただでさえ、病魔の森では感じた事のない程の強力な魔力だ。森の魔物たちに掛かる重圧は、一瞬であっても十分過ぎるものだったことだろう。

 森の中がまた荒れそうだ。

 念のため、暫くの間は近場であってもゴブリンたちを森へ向かわせるのは止めておこう。元よりこのゴブリンたちは繁殖目的に召喚したのだ。それが大した成果も無い森での活動で、万が一があってもつまらない。

 それから魔鼠情報網を構築するケーブラットたちにも、暫くの間はいつも以上に身を隠すことに尽力するよう命令を送っておく。


 さて、森の中はまだまだ物騒な状況が続いているようだけど、魔鹿たちは少し落ち着きを取り戻してきたようだ。そろそろ、魔鹿たちと今後について話し合っても良い頃合いだろう。

『伝心』にて魔鹿たちへ語り掛けてみると、クリスタルホーンディアーがそれに応えた。私はそのまま、クリスタルホーンディアーに魔鹿たちの現状を聞いてみた。

 すると、どうやら頑丈な岩石要塞の中に籠っていた事もあり、魔鹿たちの間では森の魔物たちほどの混乱は発生しなかったようだ。ただ、それでも暫くの間は、恐怖と興奮でかなり厄介な状況だったらしい。心なしか、『読心』で読み取れるクリスタルホーンディアーの発するイメージからも、恐怖と共に疲れのようなものが感じられた。

 もう少し時期を待つことも考えたが、どうせすぐに答えを貰おうとは思っていない。ならば、一先ずは早めに尋ねておく方が良いだろう。


 そんなわけで魔鹿たちの今後について聞いておく事にした訳なのだが、その前に私には魔鹿たちへ伝えておかなければならない事がある。

 それは今回、魔王がやってきた事により、私が知りうることの出来た情報についてだ。

 特に魔鹿たちとも関係の深いこと。人間たちの拠点がその魔王に壊された件については、しっかりと伝えておく。その後、ついでに私の噂が魔王を呼び寄せた事、魔王が私を復讐の相手として狙っている事、百年後に私を破壊するためにやってくる事も伝えておいた。

 その全てが魔鹿たちの縄張りを他へ移すことに繋がる情報だったが、だからと言って私は別に魔鹿たちをあえてここから遠ざけたいわけではない。

 元より魔鹿たちに縄張りを移す理由が増えていたことだし、こちらとしても魔鹿たちに留まってもらう理由は無くなったところだ。丁度良い機会なので、その辺りの事情を聞いてもらってから答えを出してもらおうと考えたのである。

 ここに留まってもらってもいいけれど、留まるならちょっと危ないかもよ、という感じに。

 その結果、魔鹿たちがここを離れる選択をしたとしても私は別に困らないし、魔鹿たちが万が一ここに残る選択をしたとしても同様に私は構わない。

 ただ、巻き込んでしまった手前、最低限の誠意は持っておきたかっただけだ。言ってしまえば、ただの私情だな。

 まあ、ここまで話した以上は、もう魔鹿たちにここへ留まる理由なんて無いとは思うが。


 全てを話し終えた後、私はクリスタルホーンディアーに今後の事を尋ねた。魔鹿たちはこれからどうするのか、と。続けて、答えはすぐでなくていいとも伝えておく。

 それを聞いたクリスタルホーンディアーは早速、仲間たちと話し合いを始めたようだ。

 これで一先ず、魔鹿たちに伝えたいことは伝え終わった。

 あとは、魔鹿たちの出す結果次第。どれくらい話し合いに時間が掛かるかは分からないが、こちらから何かをする事はもうない。

 そう考えていたのだが、思った以上に早くクリスタルホーンディアーから連絡があった。

 答えは意外とあっさり決まったらしい。


 魔鹿たちを代表してクリスタルホーンディアーが伝えてきた答えは、この地に残るという私にとって意外なものだった。

 どうやら魔鹿たちの間で、この地に残った場合の危険と利を天秤にかけて、利が勝ったらしい。

 まあ、今の森はちょっとばかし荒々しい状況だし、そんな中で新たな場所に縄張りを移すのも大変だ。ならば、この選択肢も有りなのかもしれない。

 ただし、人間たちという直近の脅威が無くなったので、同盟関係は解消。かといって、いきなり敵対するという訳でもない。

 一先ず基本的に互いの生活には不干渉ということで手を打った。

 こういう表現をするとかなり冷たい関係にも思えるが、実際のところは顔見知りのお隣さんといった所だろうか。

 何かしら困ったことがあったら、相談してみてもいいかもしれない。



 これで魔王がやってきた事により起きた出来事への後始末は終わりだ。

 さて、そろそろこれからのことについて考えるとしようか。

 現状で一番の難題は、魔王レティシアが宣言した魔王襲来。

 ただしこれは、百年後。今の私にとっては、忘れてしまいそうになるほど長い年月だ。

 まあ実際は、『記憶』のスキルがあるから、その心配は無いだろうけれど。

 良いんだか、悪いんだか。


 それにしても、長い時間だ。しかも今の私は人間であった頃と違い、睡眠をとる必要が無い。自由に出来る肉体こそ失ってしまったが、時間はあり余りほど存在している。

 考える時間はいくらでもあるのだ。

 とはいえ、使えるスキルを使わない手は無いだろう。

 私は『加速思考』と『並列思考』を全開にして、思考を始めた。


 最後の最後で私の未来に脅威を残していった魔王だったが、教えてくれた情報に嘘はないと思う。私は今回、魔王からたくさんの情報を教えてもらうことが出来たが、同時に自身の無知さも思い知った。

 私には『記憶』という有用なスキルがある。これを活用しない手は無いだろう。新しい情報を知れば知るほど、『記憶』のスキルは輝いていく。そうして扱える知識が増えていけば、その分だけ思考の幅も広がっていくはずだ。それは『加速思考』と『並列思考』の欠点であった思考能力を鍛える事にも繋がる。

 だからこそ、私は今、もっと広い範囲での情報が欲しい。より多く、よりはっきりと、より具体的な情報が。

 勇王国という身近な危機が滅び去り、魔王の脅威も一時的に去った今、私には若干の時間的余裕が生まれた。そこで私はこの機会に、何だかんだと後回しにしてきた地脈について、一度しっかりと調べてみようと思う。


 地脈から情報を探し出すには、少し特殊なやり方が必要になる。表層辺りから情報を浚うだけであれば、そこまで難しくはないのだけれど、もっと深い場所から詳細な情報を掘り返すのはなかなかに難しい。

 なにせ深い場所に行けば行くほど、雑多な情報が散乱しているのだ。さながらそれは、情報の海。前生で世界を覆うネットワークがそんな風に呼ばれていたけれど、こちらは完全に情報がバラバラで検索という便利な機能も付いていない。

 恐らくこの地脈というものは、そもそもこういう使い方を想定して作られていないのだろう。だからこそ私は、まず地脈という膨大な情報から、目当ての情報を探し出す方法を確立していく必要があるのだ。

 なかなかに厄介な問題だが、私には自由になる時間だけは目いっぱいある。ただひたすら時間が掛かるというだけであれば、それこそ『加速思考』や『並列思考』の出番だろう。

 私は悪戦苦闘しながらも、『加速思考』と『並列思考』を同時に使い、さらに『記憶』と『空想空間』も併用して、少しずつ深い層から情報を探し出す行程を確立していく。

 そうして暫く続けていると、少しずつ決まった行程が出来ていった。


 地脈を使う為に必要なのは、探す情報についてより詳しく認識していること。鍵となる情報が多ければ多い程、膨大な地脈の流れから探す情報の輪郭がはっきりと浮かび上がり、必要となる情報を引き寄せて手繰り上げるのも容易になる。

 だがそれは、言うは易く行うは難し。

 しっかりとした輪郭を形作るには、はっきりとした鍵となる情報が必要になってくる。それに鍵となる情報が揃ったからと言って、それにより輪郭が形作られた情報の数々から正しい情報を見つけ出すという作業もあった。これだけの行程を思考の中だけで完結させるのは非常に難しい。『記憶』と『空想空間』のスキルで物事を仮想的な視覚情報へと置き換えて、その都度整理出来ていなければ、地脈深くから情報を得る作業はもっと困難になっていた事だろう。

 まあその辺りの苦労話は置いといて、早速、これから特に重要となるであろう情報を優先して掘り出していこうか。



 まずは支配領域の扱い方から探っていく。

 魔王や神が扱う領域を支配する力。私はその力で相手の支配領域を上書きするくらいしか出来ていないが、この力にはまだ先がある。

 例えば魔の領域を支配する魔王たちが魔物たちの力を強化しているように、また例えば勇神が己の領域に入り込もうとする魔鼠を徹底的に除外していたように。

 使い方次第でもっと多くの事を出来るはずなのだ。

 さすがに百年後の脅威である魔王レティシアに対して明確な効果があるとまでは期待していないけれど、その途中で仕掛けてくるかもしれない人間たちに対しては、有用な可能性が高い。


 地脈から抽出した情報曰く、支配領域とはダンジョンコアに付与されていた空間に干渉する力の片鱗であり、魔王に吸収されたことでその魔王が持つ性質に染まった力の総称だという。

 ここで重要になってくるのは、魔王が持つ性質に染まった力という点だ。

 恐らくそこが、私の支配領域と魔王や神の持つ支配領域との違い。

 力の変質こそが、魔王や神の支配領域に宿る力の正体なのだろう。

 一方で私が扱っているのは、本来ダンジョンコアに宿っていた純粋な空間に干渉する力による支配領域だ。だからこそ私の扱う支配領域には、何の力も宿ってはいないのだろう。

 使い方が違うのではない。そもそも、根本的な部分で異なっているのだ。

 だが、これで原因は分かった。

 あとは私の支配領域を、私の性質で染める方法が分かれば、私も支配領域に新たな力を付与することが出来るということだ。

 イメージとしては何となく掴めた。

 あとの問題はどれだけ地脈を探しても、それを実際に行う方法が分からないということだ。

 魔王たちはそれを感覚的に行っていたのか、幾ら地脈の情報を探してもいまいちはっきりとしない。


 しかし、レティシアがしていた話によれば、勇神は自身の意思で支配領域に魔鼠の侵入を阻むように力を造り替えていたという。ならば、方法はあるはずだ。

 神の力が、魔王の力と同一のものであるという前提が正しいのであれば。

 あとは神がどのようにして、それを行っているのか調べるだけなのだが。神や人間に関する情報は相変わらず、幾ら地脈を探してもいまいちはっきりとしない。

 やはり地脈を使ってこちら側から情報を探るのは無理なようだ。


 ただ、地脈には魔王の支配領域に宿る力が、魔王の成長と共に強まっていくという情報もあった。ならば、私が成長していくことで私の支配領域が何かしらの性質に染まる可能性はあるかもしれない。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ