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不滅のダンジョンマスター  作者: やみあるい
第三章 勇王国進軍の章

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96.魔王の過去

あらすじ


魔王レティシアの知識から勇者の剣は、領域教会が勇者へと授ける聖剣であるということが分かった。

領域教会と繋がりのある武器を手にしておくのは出来れば避けたい。

それが、次元を超えた何かの力を宿す武器であればなおさらに。

私はレティシアに聖剣の処分を頼もうとしたが、私がそれを告げる前に、レティシアからはすげなく断られてしまった。

仕方なしに聖剣はこのままダンジョンの最深部に死蔵することとして、そのまま話は続けられる。

人間の領域と魔の領域の違いについて、レティシアが治める王国のこと。

話は続いていき、私は話の流れでレティシアの過去の話を聞くことになった。


冒険王国エルロンド。レティシアはその国の王家に産まれた第二王女だという。

 過去を語る魔王レティシアは、非常に生き生きとしていた。度々、本人も語っているように、本当に祖国の事を誇りとしているのだろう。

 だが、だからこそ余計に、真なる神と出会った時の状況や、レティシアのステータスに記されたこれから起こるであろう悲劇を暗示する数々の称号の事が気になってくる。

 一体、レティシアの身に何が起こったというのだろう?



「数多の魔王が率いる魔物の軍勢や、我が国に集まる富を狙った他国の侵略も払い除け、幾度もの危機を乗り越えてきた強国こそが、我が祖国エルロンド。だが、そんな偉大なる冒険王国は、たった一匹の特殊な力を持った魔王によって、滅びることとなる」


 そこで唐突に、これまで栄光に輝いていたレティシアの言葉から、光が失われた。


「最初の頃、我らはまだその異変の片鱗にすら気付いてはいなかった。だが、異変は着実に我々の目の届かぬ場所から始まっていたのだ。魔王の力は貧民街の片隅から忍び寄り、特に子供や老人などの体力が少ない者たちを中心として、水面下で次第にその勢力を広げていった。そうして気が付けば、それは国中に広がっていたのだ」


「見た目はただの風邪のような症状。だが、一度発症してしまえば、風邪への対処法では決して治らぬ。その正体は、魔王が持つユニークスキルによるもの」


「あとから知ったその力の正体は、病魔」


「病と言う形を以て生み出された目に見えぬ魔王の配下たちは、人々の身体の内側に潜伏し、宿主の体力を奪うことで増えていき、少しずつその命を蝕んでいった。恐ろしきはその繁殖力だ。だが、個々の病魔が持つ力はそれほどでもない。宿主が健康であれば、病魔は宿主から体力を奪うことが出来ず、大して増えることも出来なかったからな。だが、人間は常に万全の状態を保っていられるわけではない。時には疲れや怪我により、体力を減少させている事だってあるだろう。病魔はその隙をついて攻撃を始める。そうして、その餌食としてしまうのだ」


「人々が病に倒れ、働ける者が減ってしまえば、そのしわ寄せはまだ健康な者たちが背負うことになる。そうなれば、健康な者たちも常日頃より体力の減りは激しくなり、いずれは病魔の餌食となってしまう。そうした悪循環によって冒険王国は少しずつ、けれど着実に滅びへと向かっていった」


「だが、それでもまだ我々は楽観視していたのだ。原因の究明こそ難航していたが、減った体力が戻ってしまえば、風邪に似た症状は一時的に治ったように見えたからな。実際は一度でも病に罹ったものは、体力の減り方が通常時よりも激しくなっており、すぐにまた同じ症状が発症してしまっていたそうだ。そうして我々がそれを悪意ある攻撃だと認識した頃には、既に病魔は冒険王国全土に広がっており、程なくして我らは敵へ抗う力すら奪われてしまっていた」


「スラムの浮浪者たちから始まり、町人、貴族、魔術士団、騎士団。そして、冒険者たち。病魔の餌食となった者たちは数知れず、残った僅かな者たちでは敵の居場所を探ることすら難しい。事ここに至って、もはや我が国のみでの解決は不可能と判断した父王は、領域教会に救援の要請を行った。国の守護神がおらず、冒険者たちとも関係の深い我が国と領域教会は少し複雑な関係だったが、それでも魔の領域との境界に位置し、そこから攻めてくる魔王の軍勢を一手に引き受ける我が国は、多くの国々にとって、延いては領域教会にとっても重要な国だ。実際、我が国が領域教会の為に、動いたことも一度や二度ではなかった。何よりも人間への博愛を掲げる領域教会が、助けを求めて伸ばされた手を振り払う筈がない。そう信じて我らは、ただひたすらに耐え続けた。残された数少ないポーションで体力を維持しつつ、病に侵された者たちの看病をしながらな」


「だが、どれだけ待っても一向に助けは現れず、領域教会からの返事も来なかった」


「そうこうしている間にも、さらに多くの民たちが病魔の餌食となっていく。保管されていたポーションの数も有限だ。一人、また一人と病魔に倒れる者は増えていき、そうしてようやく領域教会が勇者を魔王討伐に向かわせたという知らせが届いた時には、すでに冒険王国は崩壊してしまっていた。その後、勇者は魔王の討伐に成功したが、冒険王国に残ったのは我と少数の民だけ。もはや、何もかもが手遅れだった」



 人間の国を滅ぼす魔王と、それを討伐する勇者の関係。

 以前からそれとなく聞いていたことだが、まさか実際にその渦中にあった者から詳しく話を聞くことになるとは思ってもみなかった。

 しかもその相手は、魔王に滅ぼされた王国の姫であり、同時に今は魔王そのものでもある。

 …………考えてみれば、だいぶおかしな話だ。

 何故、魔王に滅ぼされた人間の国の姫が、魔王になっているのだろう?

 一体この後、レティシアの身に何が起こったというのだろうか。

 気にはなったが、それは大人しく続きを聞けばわかることだろう。

 そう考えた私は、静かにレティシアの語る過去の続きを聞くことにした。



「だが、その結果はまだ、最低ではあっても最悪では無かったのだ。国は完全に崩壊してしまったが、まだ最後の王族である我も、少数ではあるが国民たちも生き残っていた。まだ冒険王国が完全に滅びたわけではないのだ。一時はその状況に絶望した我だったが、残された国民たちの励ましもあり、我は冒険王国の再建という可能性を考え始めていた。丁度、そんな時だ。領域教会から、あの提案があったのは」


「領域教会からの提案とは、我と此度魔王を討伐した勇者との婚姻の勧めであった」


「どうやら領域教会は、勇者に魔王討伐の報酬として冒険王国の領土を与えてはどうか、と考えたらしい。だが、未だ王族である我が生き残っている状況で、領域教会が冒険王国の領土を勇者に与えることは出来ぬ。領域教会が勝手にその地の支配権を王族から奪うことは許されておらぬからな。そこで先の提案の話だ。冒険王国の王族最後の生き残りである我を娶れば、自然な流れで勇者に冒険王国の支配権を渡すことが出来る」


「我の立場では、その考え自体を否定することは出来ぬ。魔王を討伐した者が、魔王の支配領域に自らの国を築くのは正当なる権利だ。当時の魔王はたまたまその支配領域が冒険王国と被っていたために、そう出来なかっただけでな。その権利を否定してしまえば、それは冒険王国の初代国王である冒険王エルロンドを、延いては我らが一族の誇りを否定することに繋がる。だからこそ、我はそこを突かれてしまうと少し弱いのだ」


「しかし、それは我にとっても悪い話では無かった。如何に我と生き残った国民たちが冒険王国の再建を願っていても、それを行う為には現実的な問題として様々な物資や人手が足りていない。それらをどうにかするためには、他国に援助を求める必要があった。だが、当時の我には、それを成すための伝手が無かったのだ。そこで勇者の名声が重要になってくる。魔王を倒した勇者が王として国を治めるとなれば、領域教会はまず間違いなく動くし、そうなれば他国からの援助も取り付けやすい。当時の魔王の攻撃は他国にもそれなりの被害を与えていたそうだしな」


「それに王族が我一人となってしまった以上は、早急に伴侶となる者を迎え入れ、跡継ぎを残す必要もあった。国の再建に取り掛かるのも、早ければ早い方が良いだろう。まあ心情的な所でも、かなり遅れたとはいえ、我が国を滅ぼした魔王を討伐してくれた勇者に感謝の気持ちもあった。そんな勇者の偉業に報いるのは、冒険王国の姫である我の役目だろう。そういった様々な理由から我は領域教会の提案を受け入れ、勇者を我が伴侶として迎え入れることにした。その過程で色々とあり、冒険王国の名は消えてしまうこととなったが、大切なのは我が血を絶やさぬことと、あの絶望を生き延びた国民たちの安全だ」


「そうして我は勇者の妻となり、勇者は冒険王国の跡地に新たなる王国を築き上げた。全ては順調に進んでいる。そう思えていた。この時まではな」




「勇者には当時、我の他に六人の嫁がいた。そ奴らは勇者が魔王を倒す時に連れ立っていた仲間たちでな。皆が勇者に惚れており、勇者も憎からず思っていたそうだ。まあ我は冒険者たちの王国の姫だからな。英雄が色を好むという事は、知識として知っていた。それに後から出てきた我に、そこへ意見するような資格は無いだろう。だが、我は誇り高き冒険王国の姫。その場で潔く引いたとしても、そのまま現状に甘んじるつもりもない。冒険者たちがそうであるように、我も勇者の隣にあるため戦い続ける覚悟があった。だからこそ我は早速、勇者の正妻として他の妻たちに牽制を行ったのだ。勇者の妻たちの中で、その地位を確固たるものにする一手として。だが、その結果は惨憺たる有様だった」


「我の牽制に対して、六人の嫁たちは過剰なほどに反応したのだ。我は六人の嫁たちにつるし上げられた挙句、勇者まで巻き込んだ大騒動へと発展した。勇者にはアクヤクレイジョウだの何だのと訳の分からぬ名で呼ばれ、謂れの無い罪まで着せられた状態で、最後に我は国外追放の刑に処されることになったのだ」


「今思えば、あの時の状況はあまりにも順調に進み過ぎていた。恐らく、最初から邪魔な我を国から追い出すことまで計画されていたのだろう。そうでもなければ、あのような不条理がまかり通るはずがない。あのような戯けた言い分がっ!!」


 マグマのように湧き立つ灼熱の怒りが、周囲の大気を焦がしていく。

 私は怒りをさらけ出すレティシアに、そんな光景を幻視した。


「そうして勇者共は、まんまと我が国の乗っ取りに成功したという訳だ」





「国を追い出された我の内にあったのは、我をその状況へ追いやった全てに対する復讐心だけだった。それだけが、絶望的な状況の中で我を生かし続けたのだ。とはいえ、全てを失った当時の我は世間知らずの小娘であり、気力だけで生き抜くには限界があった。我が放り出されたのは、魔の領域にある荒野の中心。厳しい環境、満たされない飢えや渇き、そして凶悪な力を持った魔物たち。一国の姫であった我がそれらに抗う術など知るはずもなく、それでもひたすら逃げ続けた我はある日、あっさりと魔物に襲われて死にかけた」


「そこからの話は、先に話した通りだ。真なる神に救われ、我は魔物としての力を授けられた。与えられたのは圧倒的な力では無かったが、我はその力のお蔭でこうして生き延びることが出来たのだ。それからも我はただひたすらに力を求め、スキルを磨き、戦いを続けてレベルを上げ続けた。全ては復讐の為に」


「そうして今、我はこうして魔王となり、望んだ復讐の一つを果たすことが出来た」


 話を聞いている内に、私の中で非常に嫌な予感が生まれた。

 それは話が進むごとに、少しずつ形を確かにしていく。


 勇者の興した国。

 そして、果たされた復讐。


 繋がっていく情報の数々。

 では、果たして繋がった情報は何処へ向かうというのだろう?

 何処へ辿り着くというのだろうか。


 その結末が、レティシアの口から語られようとしている。


 私はその先を聞きたくなかった。


 だが、聞かずにはいられない。


 聞かなければ、いけないのだ。







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