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不滅のダンジョンマスター  作者: やみあるい
第三章 勇王国進軍の章

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90.【大魔王の血統】

あらすじ


ソレがダンジョンの中に足を踏み入れたことにより、私はその正体をはっきりと理解した。

【原初の唯一種】トワイライトヴァンパイアクイーン。

その名は魔王レティシア・アルドア・エルロンド。

あまりにも桁違いのその力に私の『精神的苦痛耐性』が、新たな上位スキルを生み出そうとしていたほどだ。

私の精神にすら影響を及ぼしかねないそのスキルを本能で抑え込み、私はこの魔王を撃退する方法を探す。

だが、相手の強さが思考を支配し、何一つ良い案は思い浮かばない。

いっそ、魔力の供給路を強制的に切断し、ダンジョンを崩壊させてみようかとも思ったが、それをすればまずダンジョンコアが持たないと本能が警告を発した。

その方法はすでに、私の中で禁忌となっていたのだ。


そもそも、その程度の威力で、あの魔王を退けられるとも思えない。




 〈スキルの習熟度が一定値に達しました。スキル『加速思考』のレベルが6から7へ上がりました〉


 私が『加速思考』と『並列思考』を限界まで使い、ああでもない、こうでもないと考えている間にも、魔王レティシアは悠々とダンジョンの階層を降りていき、ついには第四階層までやってきてしまった。

 結局、現状に対する有用な対策は何も思いつけていないままだ。

 そんな私とは裏腹に、このダンジョンの切り札である黒牙は、私が何も言わずとも、前回の時と同じく既に第四階層の部屋で待機している。もし万全の状態で戦うとしたら、そこしかないと理解しているのだろう。確かにその通りではある。

 だが、無理だ。

 今の黒牙では、たとえ全力のDPブーストを使用したとしても、夜のガルセコルトを瞬殺したレティシアに勝てる要素は欠片も無い。あっさりと返り討ちにされるのがオチだろう。

 レティシアが第四階層に降りてきた時点で、知覚スキルにより黒牙にもその力の差が分かっている筈なのに。

 それでも、黒牙はその場を動かなかった。

 事ここに至ってしまえば、万に一つの勝ち目すら無かったとしても、もはや戦うことでしか私が生き延びる道はない。

 レティシアを迎え撃たんとする黒牙の姿から、私はそれを察した。

 打開策を何も思いつかない以上は、もうこれしかないのだ。

 ならば私も、そろそろ覚悟を決めるべきなのだろう。

 自身のステータスを改めて確認する。



 名前:――――

 種族:ダンジョンコア

 年齢:16

 カルマ:+9

 ダンジョンLV:5

 DP:125,165DP

 マスター:無し

 ダンジョン名:病魔の森のダンジョン

 スキル:『不老』『精神的苦痛耐性LV10』『空想空間LV8』『信仰LV7』『地脈親和性LV9』『気配察知LV8』『魔力感知LV8』『伝心LV7』『読心LV8』『記憶LV7』『土魔法LV1』『加速思考LV7』『並列思考LV6』

 称号:【異世界転生者】【□□□□神の加護】【時の呪縛より逃れしモノ】【聖邪の核】【鼠の楽園】【惨劇の跡地】【E級ダンジョン】



 元からあったDPに、レティシアが各階層で複製体を倒したことにより増加した分を加えると、残るDPは125,165DP。それは、高ランク冒険者たちを返り討ちにしたときに、黒牙へのDPブーストとして消費したDPよりも少ない。

 心許無いが、どうせレティシアを相手にして長期戦なんて不可能だろう。

 殺らなければ、次の瞬間に殺られるのはこちら。

 最初の一撃で、全てが決まる。そう考えておくべきだ。

 直前までDPは節約しておき、いざ戦いが始まったら、その瞬間に全力のDPブーストを発動させる。

 私が生き残るためには、もうこの方法に賭けるしかない。



 高ランク冒険者たちを待っていた時と違い、黒牙はレティシアの姿を視認する前から、既にガルセコルトの姿を模した闇の鎧を纏っていた。

 この相手に対して、力を隠すという行為に意味はない。なにせレティシアは『鑑定』のスキルを所持している。


 昔、【知者】の称号を持つゴブリンシャーマンであるゴウグゥもあのスキルを持っていた。だからこそ、私はあのスキルについてそれなりに知っている。あのスキルは、ダンジョンコアに付随する機能のように、他者のステータスやアイテムの名称、効果などを確認できるスキルだ。

 だが、『鑑定』というスキルで出来ることは、それだけではない。ゴウグゥはスキルの名称やレベルだけでなく、スキルの詳しい情報まで『鑑定』で確認していたのだ。それはダンジョンに付随した機能では不可能なことである。

 ちなみに『鑑定』のスキルは、私も習得したくて色々と試してみたが、未だその試みは成功していない。

 まあ今ならば、地脈を通じてスキルの情報を探れば、少し時間はかかっても似たようなことは出来るかもしれないが。


 相手に『鑑定』がある以上は、ステータスに表示されるスキルに由来する技能は隠した所で意味がない。

 ならば、最初から全力で行く他に無いだろう。



 レティシアほどの力があれば、部屋の外からでも黒牙の気配は察しているはずだ。しかし、レティシアは何の躊躇もなく黒牙の待つ部屋へと入ってくる。そうして闇を纏う黒牙の姿を視認すると、愉快そうに嗤った。


「魔鼠――やはりあの下水鼠に由縁のあるダンジョンだったか。それにその称号は……。となれば、ダンジョンそのものか、それともダンジョンマスターか。どちらにせよ、この先に進めば答えは分かるな。それにしても、何というタイミング。まるで運命のようだ」


 そう語るレティシアは、黒牙を見ているようで見ていない。その先にある何かへと意識を向け続けている。目前の黒牙など、敵では無いというように。

 だがそんなレティシアの態度に、侮られたと憤る気は起きない。

 そこには、純然たる実力の差があると分かっているからだ。

 レティシアは黒牙を侮っているのではない。

 レティシアにとって黒牙程度の強さでは、気にする価値すらないのだ。

 それは、ある種の油断とも言えるのだろうが……。



 黒牙がその場に佇むレティシアへ向けて跳びかかった。同時に私も、黒牙と繋がる絆へ全てのDPを流し込む。全力を込めた応援の気持ちと共に。

 一筋の希望を信じて、私は願った。

 勝て。

 勝つんだ。

 勝ってくれ、黒牙。

 貯まったDPが一気に消えていくが、黒牙の力はその瞬間だけ、確かに全力のガルセコルトをも上回っていたように思う。


 次の瞬間、加速した黒牙の姿が私の知覚から消え去り、ほぼ同時に黒牙の気配と魔力までが消え去った。


 黒牙が意図して消した訳では無い。

 何故なら黒牙の身体は、いつの間にかレティシアの右手に握られた細剣に、貫かれていたからだ。


「力の流れを感じたぞ。だが、主からの後押しを得てもこの程度か」


 左手で黒牙の尻尾を持ちつつ、細剣を引き抜きながらも、その顔は地面をじっと見つめている。その先にあるのは第五階層。ダンジョンコアの置かれた部屋。

 だが、今の私は、それどころではなかった。


 意味が、分からない。分かりたくない。

 黒牙はどうなった?

 何故、動かない?

 何故、気配を感じられない?

 何故、魔力を感じられない?

 何故、絆から死の痛みが感じられるんだ。


 それは、分かり切った結果であるはずなのに、私にはそれが理解できない。

 それを認めることが出来なかった。


 ああ。黒牙との絆が、薄れていくのを感じる。

 その意味を、私は信じたくない。


「だが、そのお陰でこうして手加減がうまくいった」


 そう呟いたレティシアは、左手に『神聖魔法』の魔力を発した。魔力はゆっくりと黒牙の尻尾を通じて黒牙の全身を包んでいく。

 黒牙の身に微かな気配が戻ってくる。


 黒牙がまだ、生きている?

 感じる魔力は殆ど無く、気配も微かなものだ。

 それはまさに、あと一歩で死んでしまうというような状態。

 瀕死というべき状態だ。

 けれど、それでも生きている。

 黒牙との絆から流れ込んできていた死の感覚が消え去り、代わりにはっきりとその命を感じた。

『伝心』で語り掛けてみたが、返事はない。少し不安になったが、絆から感じる黒牙の命の脈動がその不安を否定してくれる。

 恐らく致命傷を受けた際に、意識を失ってしまったのだろう。

 よかった。本当に、よかった。

 配下を喪失したことでも、切り札を無くしてしまう事でも、絆を通して死の感覚を受けた事でも無く、私はただ純粋に黒牙が生きているというその事を喜んだ。

 私にとって、ただの手足であると割り切っていたはずの黒牙の生を。

 自らに定めたはずの線引きが、その瞬間は消えていた。

 それほどに衝撃的なことの連続だったともいえる。


 だからこそ、私は肝心なことを考え忘れていた。

 或いは無意識のうちに、考えまいとしていたのかもしれない。


「【大魔王の血統】か、よい素材が手に入った」


 何故、レティシアは黒牙を生かしたのか、という事を。









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