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AとK  作者: 東久保 亜鈴
3/29

Aの巻(その二)

翔太の機転で不良(?)にならずに済んだ葵。

久々にお腹もいっぱいになり、また、たくさん話をし、ゲームで遊んで楽しい時間を過ごすとともに、落ち着きを取り戻す。

それとともに翔太に対し、ほのかな恋心を抱くようになる。

一方、翔太は大人の女性とアバンチュールを楽しむことが好きで、高校生や中学生には全く興味がない男。

ただ、テレワークや自粛生活で女っ気がない生活が続き、つい、葵に興味を持ったが、その日のみで特に気にすることはなかった。

葵は心のよりどころとして、再び、翔太のマンションを訪れる。


リビングに葵を通すと、翔太はその刺すような目線に気が付く。

「どうした?

 何かあったのか?」

「え?」

翔太に尋ねられ、葵は戸惑った声を出す。

「いや、何か思い詰めたような目をしているからさ」

顔の半分はマスクで隠れ、見えている目がきつい目つきをしていた。

「そんなぁ。

 遊びに来てもいいって言ってくれたから、来たんですよ」

(やっぱり、迷惑だったかしら)

リビングに通され、葵はマスクを外すと、マスクの下から笑顔が出てくる。

(そうだ。

 こいつは、目つきが悪かったんだ)

翔太は1週間前のことを思い出していた。


「やっぱり迷惑でしたか?」

「いや、大丈夫。

 でも、俺、5時まで仕事だから、ここで大人しく待っていてくれるかな?」

「はい。」

(でも、何をしていようかな…

 あ、そうだ!)

「あの、ここで宿題をやっていていいですか?」

葵の指は、目の前の広いテーブルを指さす。

「いいよ。

 手荒い、うがいは、そこの洗面所を使って。

 それと、トイレは廊下にあるから」

「はい、わかっています。

 じゃあ、洗面所をお借りします」

洗面所には殺菌効果のあるハンドソープと消毒液、うがい薬が置いてあった。

(すごい。

 大人って、感染症対策もしっかりしているんだ。

 我家うちなんて、石鹸だけ…

 私も気を付けなくっちゃ)

「じゃあ、俺は仕事場に戻るから。

 後は好きにしていいからな」

「はーい」


葵がリビングに戻ると、翔太はすでにパソコンのある部屋に戻っていなかったが、テーブルにはお茶の入った湯呑みと饅頭ののった皿が置いてあった。

「あ、テーブルの上のお茶と饅頭は好きに食べてな」

ガチャっとドアが開き、仕事部屋から翔太が顔を出して葵に話しかけると、直ぐに部屋の中に戻っていく。

「はい。

 ありがとうございます。

 あっ」

葵が返事をするときには、仕事部屋のドアは、すでに閉まっていた。

(お仕事の最中だったんだ。

 悪いことしちゃった。

 静かに宿題をやっていよう。

 でも、お腹空いたなぁ。

 お饅頭、美味しそうだし、一つだけ、いただいちゃおう)

椅子に座ると、テーブルの上の饅頭に手を伸ばし、一口、口にする。

(お、美味しい!!

 こんな美味しいお饅頭、食べたことない。

 この前の豆大福も美味しかったけれど、このお饅頭も同じくらい美味しい)

夢中になって、残りを食べる。

(う、う。

 ど、どうしよう。

 お腹が空いているし、美味しいし、食べちゃっていいかなぁ。

 …

 あとで、謝ろう!)

自分に言い聞かせると、皿の上に残ったもう一つのお饅頭に手を伸ばし、美味しそうに食べる。

(さて、宿題、宿題っと)

鞄から教科書とノートを取り出し、授業で出された宿題を片付け始める。


葵の母親は、葵の食事としてもやしや、豆腐、こんにゃくなどをアパートに戻った時に冷蔵庫に入れておく。

しかし、その量では2日でなくなっていた。

最初の頃は、週に3回ばかりアパートに戻り、食料の補給、その頃は菓子パンや牛乳などもあったが、今では週一回戻ってくるだけで、たまに姉がおにぎりやコロッケ、お弁当などを買って、葵に食べさせていた。

しかし、育ち盛りの葵には十分な量ではなく、給食がなければ栄養失調に陥るところだった。

それだけではなく、常に空腹に襲われ、集中力もなくなり、当然、勉強する気力も無くなり、成績も下がっていく悪循環に陥っていた

今、翔太に出されたおやつを食べ空腹感が無くなり、また、広く整理整頓されたリビングで、広いテーブルで教科書とノートを広げ、葵は久々に勉強に集中する。


しばらくして5時になり、翔太は仕事を切り上げる。

(やれやれ、中学生に懐かれたか。

 まだまだ子供だし、ロリコンの趣味もないし、恋愛やSEXの対象にもならんな。

 どうしたものか…。

 そう言えば、あの中学、ブレザーの下にベストを着ていたはずなのに、葵は何で着ていないんだ?

 それにブラウスも白じゃなくて、濃いクリーム色ぽかったな。

 いかん、いかん。

 何を考えてんだ、俺は。

 面倒になる前に、適当にあしらって、帰そう)

葵が来てから翔太は、はっきり言って、仕事に集中できていなかった。

リビングに入ると、葵は翔太のことを気が付かないほど一心不乱に勉強に打ち込んでいるのが見えた。

「お、頑張っているな」

翔太の声に葵は、びくっと体を震わす。

「翔太さん

 気が付かなかった。

 あっ。

 ごめんなさい。

 お饅頭、全部食べてしまって」

「え?」

見ると饅頭ののっていた皿が空になっている。

「いいよ、いいよ。

 葵ちゃんに食べてもらおうと出したものだから。

 どうだった?

 美味しかったか?」

「はい。

 とっても美味しかったです。」

葵は、嬉しそうに笑顔を見せる。

(可愛い笑顔を見せる子だな…

 いけない、いけない。

 何を考えているんだ、俺は。

 早いとこ帰さないと。

 それに、もう、来ないように言わないと)


「宿題は終わったのか?」

「ううん。

 あと少しです。

 でも、続きは家でやります」

「いいよ。

 あと少しなんだろ?

 集中して片づけちゃいな」

(え?

 俺、何言っているんだ?

 『早く帰れ』じゃないのか?)

「でも…

 数学が難しくって…」

「どれどれ。

 おっ、因数分解か?

 この問題はね…。」

翔太は葵の横に座り、まるで家庭教師のように教え始める。

「そうやって解くんですね。

 すごい。

 良くわかりました」


興奮したのか、葵は顔を上気させると良い匂いがして、翔太の鼻を擽る。

(へえ。

 この娘、こんないい香りがするんだ)

「葵ちゃんは勉強好きなの?」

「はい。

 好きなんですけど、中2に上がったころから集中できなくて、その内、わけわからなくなって、落ちこぼれちゃったんです」

「そうなんだ」

葵のノートに目を落とすと、綺麗な字でしっかりと纏めてあり、とても落ちこぼれとは見えなかった。

(謙遜だろうな)

葵の生活環境がわからない翔太は、そう思った。

「翔太さんて、ゲームだけじゃなくて、数学も得意なんですね」

「おいおい。

 ゲームだけとはなんだ」

「ごめんなさい」

葵はペロリと舌を出す。

「得意じゃないけど、好きなだけ。

 英語も好きだったよ」

「え?

 じゃあ、聞いてもいいですか?」

翔太が頷くと、葵は嬉しそうに英語の教科書を開いてわからないところを尋ねる。

「ああ、これ?

 BE動詞か。

 懐かしいな」

わかりやすく解説する翔太を、葵は羨望の眼差しで見つめる。

(翔太さんて、優しいな。

 親切だし、頭もいいし。

 素敵)

「でも、葵ちゃん、頭良さそうだから、本当は成績がいいんだろ?」


葵は、首を横に振る。

「お腹が空いて、何事にも集中できないんです。

 だから、成績も悪くって…」

消え入りそうな声で答える。

「お腹が空いて?」

「はい…。

 私の母は…」

葵は誰かに聞いて欲しかったのか、それとも、翔太のことを信頼しているのか、身の上話を始める。

「母曰く、『自分』母親のことですが『男運』が無いそうで、お付き合いをしていても、結婚する前に捨てられるそうです。

 私には4つ上の姉が一人いるのですが、姉も私も父親の顔も、父親が誰なのかも知りません。」

「え?

 お姉さんも、父親の顔を知らない?」

「はい。

 私とお姉ちゃんの父親は違うそうです。」

(なんか複雑な家庭環境だな…)

「姉は中学を卒業して、直ぐに結婚して家を出たので、今は、お母さんと二人です。

 お母さんは、1年前位から新しい彼氏が出来て、その人のところに入浸って、ほとんど家に帰ってきません。」

(え?

 育児放棄か?)

「初めの頃は、家を空けるのは週末くらいでしたが、今では週1回、顔を見せに戻って来る程度です」

「じゃあ、ご飯は?」

「最初の頃は、お弁当など買って来たり、作ってくれたりしていたのですが、今では、もやしやキャベツ、お豆腐、食パンなどを買って、冷蔵庫に入れておいてくれるだけです。」

「それだけ?」

「はい。

 だから、大体1日2日で食べきってしまいます。

 お姉ちゃんが心配して、よくお弁当とか食べ物を買ってきてくれます。

 学校があるときは給食があるので、まだいいのですが、学校がない時はお腹が空くので、アパートでゴロゴロしています。

 その内、何もやる気が起きなくなって」

葵は寂しそうな笑顔を見せる。


「児童相談所行きだな。

 学校の先生とかに相談した?」

葵は首を横に振る。

「食べ物以外は、家賃やガス、水道、光熱費などは滞ることなくお母さんが払ってくれています」

「あ、当たり前だろ。

 母親なんだから」

翔太は何となく腹立たしくなってくる。

「そうですか?

 私がちょっと我慢すればいいだけなので」

「お母さんのこと、怒っていないのか?」

「え?

 なんで怒るんですか?

 お母さんは、少ない稼ぎの中、私とお姉ちゃんをここまで育ててくれたんですよ。

 私は、お母さんのこと好きです。

 お母さんには、幸せになってほしいんです。

 だから、何でも我慢できます」

葵は胸を張って答える。

(わからん。

この子の発想は、わからないけど、母娘とはそういうものなのか。

まあ、本人もいいと言っているし、お姉さんもいるならいいな。

首を突っ込むのは止めよう)

目の前で、葵は宿題を鞄にしまっていた。


よく見ると、制服もほころびを縫った後があり、ボロボロだった。

「あの中学って、確か、ブレザーの下にベストを着ていなかったか?」

「え?

 ええ。

 この制服、お姉ちゃんのお下がりです。

 お姉ちゃん、中学の時、かなりやんちゃで、ベストはいつの間にか無くなっていたんですって。

 ブラウスもお姉ちゃんので、その中から着れそうなものをもらったんですよ」

「そうなんだ…」

(やめ、やめ。

 俺は、何を気にしているんだ。

 適当にあしらって、終わりにしないと)

翔太は、1人で頭を振る。

「この前のゲームの続きでもやるかい?」

「はい!」

二人はゲーム機のあるソファに移動する。

(スカートもお古か)

学生服のスカートも、あちらこちらほころびを縫った跡があった。


それから、二人はゲームに夢中になる。

特に葵は楽しそうに「キャア、キャア」と翔太の横で燥いでいた。

翔太は、横で燥ぐ葵の存在が心地よかった。

声や笑顔、燥ぐ姿、それ以上に葵から香る葵の良い匂い、清楚な匂いが好きになっていた。

小2時間ほど経った7時ごろ、インターフォンが鳴る。

「誰か来ました?」

「ん?

 ああ、配達だよ。

 はい、はい」

翔太がインターフォンのスイッチを取ると、すぐに声が聞こえる。

「鶴舞寿司です」

「今開けます」

それから玄関先で品物を受け取り、翔太はリビングに戻って来る。

「さっき、夕飯に寿司を頼んでおいたんだ。

 葵ちゃんは、さび抜きでいいよね?」

「さび抜き?」

「わさび抜きってこと。」

「はい。

 でも…」

明らかに戸惑っている声を出す。

「寿司、大丈夫だろ?

 それとも、生ものはダメか?」

「ううん。

 大丈夫ですけど、なんで?

 なんで、夕ご飯を?」

(さっき、お腹空いたなんて、変なこと言ったからかな。

 それに、お寿司なんて高価なものを)

寿司なんて滅多に食べたことのない葵は恐縮する。


「だって、遊びに来てくれたんだから、おもてなしだよ」

(これで、最後だから、豪華にね。

 帰るときに、もう来ないようにって言わないと)

翔太は、中学生が尋ねて来て、変な噂がたつのが嫌だった。

「でも、私…」

葵は明らかに戸惑い、遠慮する。

「いいって。

 一人で食べるのよりも、二人で食べたほうが美味しいから。

 さ、遠慮しないで食べて。」

(翔太さんも一人で食べるの、寂しいんだ)

葵も母親のいないアパートで一人で何かを食べるのは、寂しくて仕方なかった。

なので、翔太の一言を聞いて、一緒に食べてもいいと思い込む。

「じゃあ、遠慮なくいただきます」

「あ、お茶を持って来よう」

「私、手伝います」

葵はゲームで熱くなったのか、ブレザーを脱いで、椅子に掛けると、自分の飲んでいた湯飲み茶わんを持って、とことこと翔太の後を付いていき、キッチンで並んでお茶を入れる。


改めて葵を見ると、髪は黒よりも少し茶色っぽいウェーブの掛かった癖毛で肩の下まで伸びたのをポニーテールで結わいていた。

色白で、綺麗な肌。

きつい目つき以外は、可愛らしい鼻、薄い唇の形の良い口となかなかの顔立ち。

体つきは発育途中で、少し膨らんできた胸、くびれた腰回り、丸みを帯びたお尻、細い手足。

(へぇ、将来楽しみな体つきだな

 と、何を考えているんだ、俺は)

翔太は迂闊にも葵を見て思った。


デリバリーの寿司だが、味は良く、葵は感動しながら3人前を2人で平らげる。

「美味しかったです。

 ご馳走様でした」

食事をしながら、最初は翔太が一人で食べるのは寂しいだろうと思い何か話題をと思っていたが、途中からそれも忘れ翔太と楽しい話をして、葵は満ち足りていた。

少し食休みをしたあと、時間は8時を回り、葵は帰り支度を始める。

これから帰るとアパートに付くころは9時30分になり、帰ってもアパートには誰もいないのだが、遅くまで出歩いていると何だかいけない気がするのと、夜道は怖い気がしていた。

「送っていこうか?」

(やべぇ。

 そんなこと言ったら誤解され、余計、懐かれるぞ)

「いえ、大丈夫です。

 そんなに時間はかからないので」

(本当に翔太さんは優しいなあ。

 もしかして、私のことを…

 ううん、そんなことないよね)

「そうか…

じゃあ、今日の分」

翔太は、5千円札を葵に差し出すが、葵は手を出さなかった。


「翔太さん。

 その5千円入りません」

「ほら、話し相手になってくれた分だよ」

「それは、夕飯をいただいたので、それで十分です」

葵は迷いのない目をしていたので、翔太は5千円を引っ込めることにした。

「わかった。

 じゃあ、また来たときにね」

(え?

 俺、今なんて言った?

 『また来てね』だって?)

翔太の言ったことを聞いて、葵は目を輝かせる。

「また、来ていいんですか?

 よかった。

 嬉しい。

 もう、来るなって言われるかと思った」

そう言いながら、目を潤ます葵を見て、翔太の胸は高まる。

(やべえ、やべえ。

 そんな目で、俺を見るなって)

「そんなこと言わないよ。

 いつでも、来ていいからね。」

(あかん。

 俺、気ぃ狂った)


「でも、そうだ、出来たら来るときは電話が欲しいな」

「電話?」

「ああ。

 携帯、持っているだろ?」

「ごめんなさい。

 余裕がなくて、持っていません」

「お母さんとの連絡は?」

「普通の電話があるので、それで。

もっとも、お母さんは、連絡をしてくるなと連絡先を教えてくれません。

もっぱら、お姉ちゃんとの連絡に使っています」

「お友達は?」

「友達は…いません…」

葵は珍しく顔を曇らす。

「いない?」

「はい。

 この前話をしたかと思うのですが、中1の時、下校途中で学校の男の子に揶揄われている時に偶然通りがかったお姉ちゃんが、その子たちをとっちめてくれたんですが…。

 それで、私のお姉ちゃんが中学校で伝説になったヤンキーだということが知れ渡って、それから、みんな遠巻きで見るだけ。

 それでも話をしてくれる友達はいるのですが、そんなに仲良しじゃなくて」

「そうなんだ。

 わかった。

 ただ、俺もいない時があるので、その時はごめんな」

「はい。

 来ていいと言われたので、それで十分です。

 嬉しいな」


翔太はマンションのエントランスまで葵と一緒に出て来て、そこで葵を見送る。

葵は、幸せそうな顔をして翔太のマンションを後にするが、見えなくなるまで何度も振り返り、翔太が見えると小さく手を振った。

(翔太さん、また来ていいって言ってくれたな。

 嬉しいな。

 少しは、私のこと好きでいてくれるのかな。

 体を求められたらどうしよう。

 当然、許しちゃおうかな。

 わー、恥ずかしい)

葵は一人で顔を赤らめ、軽い足取りで家に帰った。

葵を見送り、リビングに戻った翔太は、頭を押さえて椅子に座り込む。

もともと翔太は、女性受けするタイプで、今までも何人もの女性と付き合って来ていたが、高校生や、ましては中学生と付き合ったことはなかった。

大学生も面倒で、もっぱら社会人の成熟した女性との男女関係を好んでいたが、テレワークの導入により、女性との出会いの場が、ほとんどなくなり、女日照りの状況だった。


(お、俺は一体どうしたんだ。

 あんなガキ相手に…。

 中三だろ?

 しかも、体つきだって、まだ、ガキじゃないか。

 俺、ロリコンでもなんでもねえよ。

 懐かれる前に、とっとと手を切ろうと思っていたのに、真逆じゃないか。

 きっと、テレワークばかりで、若い色気のある女性から遠ざかっているからいけないんだ。

 一昨年のクリスマスに、付き合っていたあいつと別れてから、出会いの場がないのがいけない。

 あいつの呪いか?

 ちょっとクリスマスのお店をケチったくらいで、ちょっと他所の女と腕を組んで歩いていたくらいで、あんなに怒ることなかったじゃないか

 それから、新歓もクリパも新年会もないし、飲み会だってありゃしない、

 週一で会社に出勤しても、テレワークで女性陣はいないし。

 あー、若いピチピチでもいいし、大人の色気むんむんでもいい。

 20代から30代の女性がいい!)


きっぱりと葵を跳ね除けなかった自責の念に駆られていると、ソファから仄かに葵の移り香が鼻を擽る。

(まあ、悪い娘じゃないな。

 手なずけて、成長するまで待つか…

 いや、いや、俺は何を考えているんだ。

 そこまで、欲求不満か?

 でも、確かに溜まっていることは溜まっているなぁ。

 うーん。

 ちょっと、寂しさを紛らわせるくらいに遊んだら、あとはポイするか。

 …

 でも、結構可愛いし、いい匂いがするしなぁ。

 いや、でも、目つきはきついぞ。

 うー…

 もう悩んでも仕方ない。

 今日は、酒でも飲んで寝よう)

翔太はキッチンに行き、酒を飲み始めた。


空腹のときの方が集中力が沸き、勉強や仕事が捗ると言います。

確かに食事をすると消化のために血の巡りが頭よりも胃に集まるので、集中力も散漫になります。

ただ、葵のように常態化した空腹の場合、逆に集中力がかけ、網力が低下していくそうです。

たまに、満足な食事が与えられず、体が弱り、学力も下がる子供がいると、痛ましいニュースをよく耳にします。

そのようなニュースがなくなることを心から祈っています。


テレワークや自粛生活が続くと、なかなか出会いの場も少なくなってくるかと思います。

リモート飲み会やリモートデートも当初よりは下火になってきているのではないでしょうか。

やはり、人間。

特に男女はお互いの温もりがあるとないとでは大違いですよね。

さて、翔太の葛藤はどうなっていくのでしょうか。


次回は、Kの巻(その二)です。


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