Aの巻(その九①)
葵も高校3年生。
成績優秀だけど進学ではなく就職を選ぶ。
翔太は勿体ないと進学の際は援助を惜しまないと言ったが、葵のきちんとした考えを聞き納得する。
それとは別にどんどんと綺麗になっていく葵に、翔太は結婚を意識するようになるが。
ますますコミカルにバカップル化している葵と翔太の最終章の始まりです。
立秋なのにまだまだ暑い日が続く。
エアコンのきいた翔太の部屋で葵はベッドの上に仰向けで寝そべり、目元までタオルケット覆い、目だけ出して翔太を見つめる。
「翔太さん…今日もするんですか?」
「え?」
パジャマに着替えベッドに入ろうとした翔太は動きを止める。
「いやなのか?」
「ううん。
そうじゃないの」
その逆なんだけど。
葵は毎晩のように自分を求めてくる翔太に嬉しい反面、飽きられたらどうしようかという心配が頭をよぎっていた。
私、胸は小さいし、ガリガリだし、子供体形…(ため息)
大人の女性のような色気もないし、顔だってお姉ちゃんは可愛いと言ってくれるけど普通。
翔太さんが好きな女優さんとは似ても似つかないちんちくりんだし…。
髪もロングじゃないしな。
なにひとつ翔太さんの好みじゃない気がする。
葵は翔太が見ているテレビやネットを傍で見て好みのタイプをチェックしていた。
だいたい30歳前後で胸が大きく色気があって美人の女性か…はぁ…
「どうした?
今晩は止めておくか?」
翔太はため息をついている葵を見て怪訝そうな顔をする。
調子に乗ってここのところ毎晩だったもんな。
ちょっとやり過ぎかな。
毎晩葵を抱いて翔太は満足だが、さすがに高校生の葵は嫌なんだろうなと翔太は今夜は自粛しようと思う。
「そうじゃないって!!
違うの。
本当だって」
葵は慌てふためき泣きそうな声を出す。
あながち嫌じゃないって言うのは嘘じゃないか。
やっぱり女子高生の考えはわからん。
本能に勝るパジャマ姿の翔太はベッドに上がると葵は体を捻じり翔太の場所を空ける。
「何か心配事でもあるの?」
葵の横に寝そべり髪を撫でる。
「え?」
ひぇ~!
どうしよう。
無意識にいろいろな顔を見せる葵に翔太は笑いを堪えながらタオルケットから出ている額にキスをする。
「翔太さん?」
「いいのかな?」
「うん!」
掛けていたタオルケットをどけると明るい可愛らしい花柄のパジャマ姿の葵がはにかみながら両手を翔太の方に差し伸べる。
可愛いなぁ。
いつ見ても可愛い子だ。
優しく葵に覆いかぶさり脇から手を回して抱きしめる。
葵の華奢な体は力を入れると折れそうだった。
腕の中の葵は心地いいくらいに温かくいい匂いがする。
まるで陽だまりの中にいる洗い立ての子犬?子猫?
それを確かめるように翔太は葵の首筋に顔を埋めて匂いを嗅ぐ。
あっ!
私、汗くさくないかしら…
だ、大丈夫。
ちゃんとお風呂で洗ってきたから。
葵は自分を言い聞かせる。
う…
翔太の右手がパジャマの上から葵の左胸を優しく触る。
しばらく葵の感触を楽しんだ後に顔を上げると葵は気配を察したのか閉じていた目を開け、翔太が顔を近づけるとまた閉じ、二人はそっと唇を重ねる。
「葵ちゃん、今日も可愛いね」
翔太の一言で心配事が嘘のように吹き飛び、葵は目を開け嬉しそうに微笑む。
「では」
翔太は起き上がり薫のパジャマのボタンを外しにかかる。
「きゃあ」
可愛い声を出した葵は小さく万歳するようにしてボタンを外しかつ脱がしやすい格好で笑っている。
「むむ?
よいではないか、よいではないか」
「あ~れ~、お殿様~」
ふざけながら背中を持ち上げるようにしてパジャマの上を脱がすのを手伝う。
パジャマを脱がすと小粒だが形のいい胸が現れる。
それを見ながらパジャマの下を脱がすと魅惑的な下半身があらわになる。
翔太とよく運動をするせいか引き締まった体で細身だが女性らしい丸みを帯び、ガリガリで子供体形というのは本人の取り越し苦労だった。
見れば見るほど手足が長く均整の取れた体つきだこと。
それに胸や腰回りも成長して女性っぽくなってきてるし。
翔太は眩しそうに葵の裸体を見ながら自分もパジャマを脱いでいく。
やっぱり翔太さんは素敵だな。
毎回翔太のその引き締まった均整の取れた体を葵はうっとりと眺める。
「綺麗な体だ」
「少しは女っぽくなりましたか?」
「ああ、惚れ惚れするくらいだ」
嬉しそうに微笑む葵の上に覆いかぶさっていき軽く、そして深くキスをする。
片手で胸を触ると興奮してか可愛い乳首は固く立っていた。
そのまま乳房を撫でまわしながら、首筋、脇、そして胸と口や手を使って愛撫をする。
葵の感じるところは全て頭の中にインプットしている翔太のテクニックの餌食になり、葵は体を震えさせる。
「くぅ…」
たまに息を止め小さく漏らす。
下半身に移っていくころには葵は目をつぶり、手で口を塞いだり、横を向いたり必死で耐えていた。
あ!
また、そんなところ…
やっ、だめ、おかしくなっちゃう。
翔太の愛撫が太腿の内側から秘部に移ると頭の中は真っ白になり体が勝手に反応する。
可愛いな。
こんなに感じちゃって。
嘘っぽい声を出さないところがまたいい。
翔太は葵を愛撫するのが好きでたまらなかった。
そして葵の両脚を広げさせ挿入する。
「うっ…」
葵はくぐもった声を漏らす。
狭く押し広げるような感触だったがすんなりと根元まで挿入できると翔太は感触を確かめるように動きを止める。
狭いな。
それに締め付けられるようだが抵抗ないし、それに温かく気持ちがいい。
最初は処女で男を知らない体だから狭いのかと思ったが回数をこなしても変わらなかった。
今までの女性にないタイプだ。
中には初めての子もいたが葵ちゃんみたいではなかったなぁ。
葵ちゃん、もしかして…。
葵も動きを止めている翔太を感じていた。
温かいのがこんな奥まで…。
それに最近擦られるとすごく気持ち良くなっちゃう。
翔太さんの…テクニックなのかしら。
気持ちいい…。
ゆっくりと翔太のモノが動き出す。
上下に動くたびに擦られ葵は気持ちよくなってくる。
い、いやだ。
また、訳わかんなくなっちゃう。
波に抗うように葵は目を閉じ必死に我慢する。
可愛いな。
一生懸命我慢して眉間に皺まで寄せちゃって。
この切なそうな顔も魅力的だな。
翔太は上下運動しながら愛撫を加える。
だ、だめ、だめ。
そんなことまでされたら訳わかんなくなっちゃうー。
無意識に体を動かし悶える葵。
翔太のテクニックの前に葵はなすすべなく乱されていく。
おー、感じてる!!
葵の動きを見ながら翔太は満足する。
いい気持だ。
この子とは、体の相性も完璧だ。
手放せないな。
…
俺もそろそろ…。
「葵ちゃん」
「うん、来て…」
翔太の声に反応してしがみ付いてくる葵の中で翔太は果てる。
あ、翔太さん、ぴくぴくしてる…。
嬉しいな。
二人は息を切らしながらもしばらく満足そうに抱き合っていた。
「明日、たまには水族館に行こうか」
「え?!
本当?」
寝る支度を整え、いつものように翔太の腕を抱き枕の様に抱きついていた葵が顔を上げ嬉しそうな顔をする。
「ほら、いつもよく行くあの水族館。。
改修工事をしていたんだけど、それが終わりリニューアル・オープンしたんだって。
行ってみたいと思っていたんだ」
「やったー!!
嬉しい、嬉しい」
翔太の腕を抱きしめながら揺らす。
パジャマを通してだが葵の胸の感触が心地よい。
それだけではなく葵の体温で温かくいい匂いで包まれるようだった。
葵の顔は目がつぶれるくらい可愛い笑顔で本当に嬉しそうだった。
いい子だ。
この子があんな変貌するのなんて想像できないな。
部員の食事の世話をすることになったテニス部の夏合宿。
顧問の女教師が翔太に近づいた際、翔太を取られると思った葵は態度を豹変させる。
いつもの可愛らしい葵が身震いするほど不気味で無表情になり平気で人を傷つける魔女に変貌し、女教師に怪我を負わせようとしたところを翔太によって未遂に終わる。
その時の葵の顔、体からにじみ出る禍々しいオーラを思い出したと屈強の翔太でも顔をしかめるほどだった。
でも、あれ以来、一切ないな。
落ち着いたかな。
本当のところは今葵にとって一番大切なものは翔太で、その翔太が常に葵の方を向いているので落ち着いているということを薄々は気づいていた。
でも、その時のことを覚えていないからな。
本人が覚えていないものを何を聞こうとしても葵の頭の上に“?”マークの団体さんが浮かび上がって来るのでお手上げだった。
夜中、翔太は寝返りを打って葵に背中を向ける格好になると、すぐさま葵の声が聞こえる。
「お願い、私に背中を向けないで」
翔太は葵を見ると暗がりの中に葵の目が爛々と光っているように見えた。
「いや、いつも同じ態勢だと体幹が狂うかなと思って」
その答えで葵の目は普通の色に戻った気がする。
「うーん。
じゃあ、寝る位置を交換しましょうか。
1日くらいずつ、私が翔太さんの右に行ったり左に行ったり。
そうすれば均等になるのでは?」
「いや、右手が使えないと葵に触れることが出来なくなる」
「左手は?」
「右手程上手じゃない」
「え?
あ…」
始め翔太が何を言っているのかわからなかった葵だが意味が分かり顔を赤らめたようだった。
暗がりでよく見えなかったが葵の体温や息遣いから翔太はそれを感じる。
可愛いこと。
明日は日曜日。
水族館にはお昼くらいから行けばいいか。
翔太は右手で葵を抱き寄せた。
翌日、二人は水族館の駐車場で車を降り建物に向かって歩いていた。
天気は快晴。
暦ではもう秋なのにまだまだ夏の暑さが続く。
葵はダークブラウンのカットソーの長袖にベージュのパンツ、翔太は白のカットソーの長袖にジーパンといういで立ち。
「だけど暑いな。
そろそろ涼しくなってきてもいい頃なのに地球温暖化のせいかな」
「う、うん…」
「ん?
どうかした?」
気のない返事をする葵に翔太は問いかける。
「は、なんか恥ずかしい…」
葵が気にしているのは自分の服装で、いつもはジーパンに白地にストライプの入ったブラウスや可愛らしいワンピースを着ていたが、たまには翔太と一緒に歩く時に同じような服装にしたいと買ったものだったが、いつもと違い大人っぽく感じなんとなく恥ずかしかった。
「その格好?
凄く良く似合っているよ」
「本当?!」
「ああ、本当だとも」
そう言って翔太は手を出すと葵は嬉しそうにその手をつなぐ。
まあ、服装選びに1時間かかったもんな。
流石に女子だけあるか。
でも、本当に何でもよく似合うな。
手足が長いせいかな
葵の服は一緒に買い物に出かけ翔太が葵のために選んで買った服だった。
朝の時点では今の服装は全く考えてなく、普通にジーパンとブラウスを選んでいた。
しかし、家を出る段になり翔太の服装を見て慌てて着替えたのだがなかなか外に出る勇気がわかず、鏡の前であれこれ時間を費やし翔太に笑われていた。
外へ出て改めて翔太に褒められ、手まで繋げて葵はご機嫌になる。
水族館の中は外と違いエアコンが効いていて快適だった。
葵は入場券を買う時以外は翔太の手を離さず、ぴたっと寄り添い各展示物を見ながらきゃあきゃあと子供の様にはしゃぐ。
ガキか。
やっぱり大人の女がいいな。
心の片隅で思うがが葵の笑顔に魅せられてつい葵の喜ぶことをしてしまう。
今でも大人で色気のある女性がいいと思わないことはないけれど成長し大人の顔もちらほらしてくる葵に翔太は無条件降伏の状態だった。
二人はリニューアルしたクラゲの水槽のある展示室に入って行く。
「うわー」
そこは葵が息をのむほど巨大な水槽に何百匹ものミズクラゲなどの種類のクラゲが様々な色のLEDに照らされ幻想的な空間を作り出していた。
「綺麗…。
みんな、ゆらゆら、ふわふわ…」
「すごいな…」
翔太も思わず魅入ってしまうほどの圧巻の景色だった。
トン…
葵の頭が翔太の腕に当たる。
葵は翔太に寄り掛かるようにして眺めている。
「みんなのんびり、のんびり。
一人じゃなくて大勢で仲良く集まって、ふわふわ。
喧嘩もしないで楽しそう」
「葵ちゃん…」
翔太は葵の心の一部を垣間見た気がした。
この子はずっと一人で寂しかったんだな。
ニコニコしているのは寂しさの裏腹。
父親も知らず、母親も留守がちで茜と二人っきり。
家庭環境のせいで友達も作れず大勢の中で一人っきり。
それに毎日お腹を空かせて、独りぼっちの不安の中、どんな思いで過ごしてきたんだろうか。
そう言えばあの怪物は合宿以来現れないな。
あれは何だったんだろう。
本人記憶がないみたいだし。
どちらにしても…
高校に入ってやっと友達もたくさん出来て。
でも、こんな俺との同棲生活でいいのだろうか。
葵ちゃんが心底幸せになれるところはどこなんだろう…
「ここ」
「え?」
「こんな素敵なところに連れてきてくれて、ありがとうございます。
凄く嬉しくて…」
薄暗い展示室だが照らされているLEⅮの明かりの中、涙をいっぱいに浮かべて笑顔を見せている葵が映し出される。
どわー!
いくら感激したからって、こんなところで泣かないでくれ
周りに人がいる中、泣き出されたら何を誤解されるかと一瞬焦ったがポケットからタオルハンカチを出し葵に渡す。
葵は照れ臭そうに受け取るとそれで涙をぬぐいニコッと笑う。
「お腹空きましたね」
「確かレストランがあったから、そこでパンケーキでも食べよう」
「パンケーキ?」
「ネットで出てたよ。
クリームとフルーツがのったパンケーキ。
美味しそうだからクラゲを見たら食べようと思って」
「わーい!
賛成。
パンケーキにレッツゴー!!」
葵に引っ張られるようにして二人は展示室を後にする。
クラゲたちは何もなかったかのように二人が出て行った後もゆらゆらと水槽の中に浮かんでいた。
葵の高校も2学期が始まった9月のある土曜日。
アルバイト帰りの葵と迎えに来た翔太の姿があった。
夕方、ヒグラシの鳴く声があちらこちらから聞こえる。
葵は半袖のブラウスにジーパン、肩にかかるくらいの髪を後ろで結わきポニーテールにしている。
そのちょこんとしたポニーテールが翔太は好きだった。
「この時期なのに今年はまだヒグラシの鳴く声が聞こえる。
でも、私、ヒグラシの鳴き声好きなんですよね」
「そうだね。
でも、夏休みが終わっちゃったっていつもヒグラシの声を聞くと悲しくなったな」
「小学生の頃?」
「いや、学生の時。
小学校から大学まで」
「大学生でもですか?」
葵は面白そうに笑う。
「そう言えば葵ちゃん、大学に行かないんだよな」
「うん」
「頭いいんだからその気になれば国公立も夢じゃないんだろ?
トップガン(成績が学年で10番以内のこと)なんだから。
それこそ奨学金で行けるんじゃないの?」
「先生にも言われたんですけど、私が成績いいのは翔太さんのおかげだし、それに大学は興味ないから」
雑学王で教え上手な翔太に毎日のように勉強を見てもらっていたので成績が良くなるのは当たり前と葵の言うことの半分は当たっているが半分はそれを理解し頭の中で整理ができる葵の天性の素質だった。
「勿体ないな」
「でも、だからといって大学行っていいことがあるかわからない。
就職が有利と言われてもやっぱり女子にとってはまだまだ狭き門ですよ。
一流企業には特に家庭環境が…。
普通の会社で普通に事務職で就職できればいいんです」
「そうか」
しっかり考えているんだな。
確かに女の子にとって就職はまだまだ狭き門。
理系なんて言ったら尚更か。
「まあ、その気になったら何でも言いなさい。
相談に乗るから」
「はい!
あ…」
「ん?
なんだ?」
急に口籠る葵。
就職したら自立しなきゃいけないかしら。
当たり前よね…
でも…
…
そうだ、今までの分。
1回五千円の約束。
それを家賃代わりに…
でも、翔太さんなら一括で払っちゃうわよね。
じゃあ、やっぱり下宿代を払うから今までどおり置いてくださいっていうかなぁ。
唐突にムズっと頭を掴まれる。
「きゃっ」
掴んだのは翔太の手。
「何をぶつぶつ言っている?」
「ひゃっ!
聞こえてました?
社会人になったら出て行かなくちゃいけないかってこと」
「?!」
「うわわわわ」
毎度素直過ぎる葵に翔太は吹き出しそうになる。
「就職先が家から通えるところなら今まで通りでいいだろ?
葵ちゃんには傍にいて欲しいし」
「も、もちろんです。
第一条件がここ(マンション)から通えるところです。
在宅でもいいし、あと、残業のない仕事。
そうでないと翔太さんとの時間が減っちゃう。
あ…」
また、真赤になる葵を見て翔太は笑いをかみ殺す。
葵ちゃんは隠し事なんかできない子なんだろうな
「い、いま、笑ったでしょ?」
「いや、なんでもないよ」
「ねぇ、笑ったぁ~」
「なんでもないって。
さ、早く帰って宴会の準備をしないと」
「そうだ!
お姉ちゃんたちが来るんだった」
「ピザと寿司は注文したし、あとは酒とつまみだな」
「すみません。
私の姉夫婦のために」
恐縮する葵。
「いいって、いいって。
あの二人ならいつでも歓迎さ」
「ありがとうございます」
茜の夫の辰吉が茜と一緒に翔太のところへ飲みに来るようになったのは今年の正月からだった。
それまでは豹変した葵の件があり、葵を避けていたのだが茜に葵が世話になっているんだから自分の連れ合いとして挨拶してくれとせがまれやっと重い腰を上げた次第だった。
しかし、蓋を開ければ綺麗に可愛らしくなった葵から豹変した時の片りんも見れなかったこと、それよりも翔太とドンピシャ気が合いすぐに打ち解けていた。
その日も賑やかな宴会が始まる
「なあ、この前も言ったけどこれから翔太さんのことを“兄貴”と呼ばせてくれ」
酒の回った辰吉を茜が笑い飛ばす。
「ばかね。
何度も同じことを。
だから翔太が葵と結婚したら年下のあんたがお兄さんよ。
わかる?」
「へ?
俺が兄貴のお兄さん?
ええ?
なんかめんどうだな」
酔っぱらった頭で考えこむ辰吉を尻目に真っ赤な顔をした葵が茜に食って掛かる。
「お、お姉ちゃん。
結婚なんて…」
「え?
結婚したくないの?」
「そ、そんなことないけど」
翔太さんはどう思っているんだろう。
私と結婚したいかなぁ。
いつも同じベッドで私を…。
だから、きっと私と同じ思いよね…きっと。
「ねえ、葵」
「え?」
「今も毎晩あいつが求めてくるの?」
「え?」
茜が指で葵の胸を突っつく。
「うん…」
葵はもじもじしながら返事をする。
でも、半分は自分からだけど…
「毎日かぁ。
あいつも相当好きもんだね」
茜が辰吉とじゃれ合っている翔太を見て笑う。
「好きもんじゃなければ、よっぽどあんたの体が気持ちいいんだね」
「お、お姉ちゃんたら」
「あははは。
悪い悪い。
でも、気を付けなよ。
体だけが目当てだと、飽きたら“ポイッ”されるからね。
テクニックを身につけて逃げられないようにしなよ」
「お姉ちゃん!!」
真赤になって抗議する葵を茜は笑ってなだめる。
葵、大丈夫よ。
お前ほどいい子はいないよ。
あいつもそう思っているからずっとお前をここに置いているんだから。
しかし、この茜の一言が真面目な葵の心配事を一つ増やした。
体が目当て?
でも、私の体ってまだまだ子供っぽいし。
だからかな。
翔太さんにとっては珍しいからずっと抱いてくれる?
でも、そのうち飽きたら…
1年以上も毎日だったからそろそろ飽きちゃうかな?
私、全然飽きないけどな。
優しくしてくれるのは体目当て?
それはそれでいいけど、私の人格も好きでいてくれるかな。
私の全部が好きでいてくれたらいいんだけど…
考え事をしながらぼんやりと翔太を見ている葵を見て茜は笑いを噛み堪えていた。
だけど面白いと言えばうちの旦那も葵といまだに目を合わせようとしないし。
まあぎこちないけど少しは話すようになったか…。
あの葵は本当におっかないからな。
それなりに喧嘩や乱闘の場数を踏んでいる私たちでさえ、あの葵を思い出しただけで鳥肌が立つ。
あいつもあの葵を見たって言っていたけど全く動じていないし、うちらとは器の大きさが違うのか。
ま、葵を預けて大正解ってとこね。
葵も落ち着いているし、それに順調に可愛く、また女らしくなってきたし、このまま幸せでいてくれたら申し分ないな。
茜たちが上機嫌で帰り、後片付けなどで落ち着いたのは午前零時近くになってから。
「遅くなっちゃったね」
シャワーを浴びパジャマ姿の葵が翔太の部屋に入って来る。
「ごめんなさい。
お姉ちゃんたち、あれでも気を使って早めに切り上げたんですけど。
もう少し早く引き揚げるように言っておきますね」
葵はそう言いながらベッドに上がり当たり前のように自分と翔太の枕、タオルケットを整える。
うーん、可愛いお尻だこと。
デリシャス!
四つん這いになってお尻を翔太に向けながらベッドを整えている葵を見ながら目尻を下げる。
「いや、いいよ。
茜たちなら楽しいし、大歓迎だよ」
葵は手を止めて翔太の方に振り向く。
「翔太さん、ありがとうございます。
お姉ちゃんたちも大事にしてくれて」
「どういたしまして。
そうだ、楓花ちゃんも遊びに来るんだっけ?」
「はい。
ごめんなさい。
迷惑だったら断るので言ってください」
葵は顔を曇らす。
楓花は葵の唯一中学時代からの仲の良い友達で、高校の入学式の時に翔太を見て一目でファンになり翔太目当てで遊びに来たいとせがんでいた。
その熱意に負けてたまにマンションに呼ぶようになっていた。
楓花はロングの黒髪、丸顔だがなかなかの美人。
小柄だが女性らしく丸みを帯びた体つきでまんざらではなかった。
「いや、全然。
楓花ちゃんも可愛い良し、目の保養…」
「え?」
思わず口を滑らしそうになって翔太は慌てる。
やばい、やばい。
思わず本音が出そうになった。
でも、楓花ちゃんの方が葵ちゃんより肉付きが良くて成熟してっぽいしなぁ。
ん?
俺はどうしたんだ。
いつからガキの趣味になったんだ…。
でも、なかなかだしな…
いかんいかん、葵ちゃんが変な目で見ている。
「ほら、お茶菓子は何がいいかなって思って。
この前来たときは豆大福に水羊羹だったじゃない?
やっぱり若いからケーキのほうがいいかな。
駅前にケーキ屋があるじゃん。
何がいいかなって思ってさ」
「えー、そんなに気を使わないでください。
私の友達なんだし、適当にお菓子を買っておきますから」
「いや、葵ちゃんの大切な友達じゃないか。
きちんとおもてなししないと」
葵は顔を輝かす。
「私の友達まで嫌な顔もしないで、それよりもちゃんと考えてくれて、本当にありがとうございます」
「いやいや、いいんだよ」
本当、若い子はいいよな。
いるだけでぱぁっと明るくなるし、大人にない危うい色気もあるし。
あんな娘ならもっと大勢連れて来てもいいのにな。
そうすればハーレムじゃあ。
へへへ。
翔太は心の中で涎を垂らす。
実際楓花が来てもほとんど葵の部屋だし、翔太も気を使って部屋に籠るので特に何があるというわけでもないが、翔太にとっては葵のような若い子が来るのはわくわくするものだった。
「さてと、用意できました」
ベッドを整え終えると葵はいそいそと自分の位置に横になりタオルケットにくるまる。
「そう言えば、翔太さん、足の親指の爪、どうなりましたか?
良くなりました?」
「いや、全然だめだ。
どこかにぶつけたと思うんだけど痛くもないし。
まあ、そのうち治るんじゃないかな」
翔太の片側の足の親指の爪は数週間くらい前から黒く変色していた。
痛くもないし、そのうち治るだろうと放置していたが最初は筋程度だったのだがどんどん広がり今では半分ほど真っ黒に変色し葵も気にするほどだった。
「一度、病院に行ったらどうですか?」
心配そうな顔をする葵。
「そうだな。
これ以上酷くなったらそうするわ」
そう言いながら裕樹は椅子から立ち上がり葵の整えたベッドに入って行く。
葵は翔太が横になるのを待っていたようににじり寄る。
うーん。
今日も可愛いし、いい匂いだ。
翔太は自由にできる手で葵を抱き寄せ、唇を重ねる。
体が目当て…
茜の言葉を思い出す。
今はどうでもいいわ。
考えるのはまた明日にしよう。
葵は喜んで翔太に噛り付き、翔太のすべてを受け入れる。
だって、今、この時が幸せなんだもん。
今の葵にとって翔太に抱かれている時間が何にも代えられない幸せな時間だった。
何事もなく過ぎて行く時。
10月に入ったある日。
「翔太さん、この前はありがとうございました」
「え?
なんのこと?]
学校から帰ってきて制服のブレザーを脱ぎ可愛いリボンに真っ白なブラウスだけになった葵が話し出す。
「楓花ちゃん、大喜びでしたよ。
楽しかったって。
また、遊びに来たいっていってました」
眩しいくらいの白いブラウスと胸の辺りの膨らみに翔太は目線のやり場に困る。
「そうか。
いつでも歓迎するって言っておいて」
「はい。
でも、そんなこと言うとすぐに来たいって言ってきますよ」
直前の休日に遊びに来た楓花のことで、葵は嫌な顔一つしないで自分の友達を歓迎していた翔太に笑顔を見せる。
やっぱり10代後半はいいよな。
特に楓花ちゃんはふっくらしているし、美人で可愛いし。
女の子の匂い?
デオドラントだろうけどほんのり甘くていい匂いだしな。
葵ちゃんと揃うとすっかり目の保養になる。
すっかり嗜好が少女に変わってきているのに翔太は自覚していなかった。
「楓花ちゃん、可愛いでしょう」
「そうだね。
色白でルックスもいいし、あの子ならモデルでも十分やっていけるよな。
学校でもモテモテだろうに」
遊びに来た楓花は飾りのついた白っぽいワンピースに水色のカーディガンを羽織り長い黒髪を可愛らしいリボンで後ろに結わき、薄いピンクのリップクリームをつけ見た限り精一杯お洒落をしていたのが見え見えだった。
「それが不思議なんですよね。
同年配の男の子には興味ないそうで、彼氏もいないんですよ。
で、もっぱら翔太さんの…」
翔太の熱烈なファンだということを言おうとしたが言葉を飲み込む。
楓花が事あるごとに葵に「翔太様、翔太様」と言っていることをいつも一緒のベッドに入っている自分が言うことは何か筋違いのきがしてならなかった。
流石に翔太との関係までいくら仲がいい楓花にしても言えないが、薄々感じている楓花も敢えて聞こうとはしていなかった。
楓花にとって翔太は恋愛対象ではなく憧れであり、将来自分も翔太のような彼氏ができることを夢見させてくれる存在のようなもの。
マンションに遊びに来て翔太と挨拶する時は顔を輝かすが、すぐに葵と部屋に籠り女子会が始まることで物語っていた。
「葵ちゃんと楓花ちゃんは本当に仲良しだよね」
「え?
えへへへ」
仲良しと言われ葵は顔を綻ばす。
「中学からの友達だよね」
「はい。
中一の時、初めての教室で席が隣通しになったんです。
いろいろ話していたら意気投合しちゃって。
お姉ちゃんの噂が回って皆私を避けていたのに、楓花ちゃんだけは変わらなかった。
ある時、私聞いたんです。
私のお姉ちゃんのこと聞いているよね。
怖くない?
って。
そうしたら『私の友達は葵ちゃんで、他の誰でもないよ』って笑って言ってくれたんです。
私嬉しくてその場で泣き出しちゃった」
思い出したのか顔を赤らめる。
「それからはいつも一緒。
席が変わったりクラスが変わったりしてもなんだかんだでいつも一緒。
たまにお姉ちゃんと鉢合わせしても楓花ちゃん、全然動じないしお姉ちゃんも『この子本当に葵のことが好きなんだ』って楓花ちゃんのことを信頼してくれているんですよ。」
葵は本当に嬉しそうだった。
「この前本人が言っていたけど、進学しないんだって?」
「ええ。
卒業したら芸能事務所に入るんですって。
去年、町中でスカウトされたって言ってました。
その時はお母さんの猛反対でできなかったらしいんですけど、高校卒業したら良いって言われたって」
「ありゃりゃ。
楓花ちゃんもトップガンだよね。
トップガンの二人が進学しないって事件じゃないの?」
「そんな大げさな」
葵はコロコロと笑う。
葵の成績の良いのは翔太が教えているのが影響している。
楓花の成績がいいのは、その葵から勉強を教わっているから。
ちなみにテニス部の生徒たちも葵に休み時間などで教わりに来ているせいで、皆、成績はいい方だった。
「でも楓花ちゃんならモデルでもアイドルでもすぐにデビューできるだろう」
「翔太さん、楓花ちゃんの方が良かった?」
葵が拗ねたような顔をする。
「ふっ」
翔太は葵の背後に回り込み、後ろから抱きしめる。
「翔太さん?」
「俺は葵ちゃんの方がいい」
それは翔太の本音だった。
葵は嬉しそうな顔をしたがすぐに困った顔になる。
「翔太さん…」
翔太の手が白いブラウスの上から葵の胸を弄る。
ブラウス越しの葵の胸の感触がたまらない。
そして首筋に顔を埋める。
「しょ、翔太さん…
まだ、お仕事の最中じゃないですか?」
「あ!
そうだった」
翔太の手が止まると、葵は翔太の手を握り、そっと自分の胸から離す。
「続きは仕事が終わってから…」
顔を赤らめながら恥ずかしそうな声を出す。
「わかった。
じゃあ、またあとで」
翔太は残念そうに葵を自由にすると、部屋に戻っていく。
まったく、もう!
着替える前にシャワーを浴びておかなくっちゃ。
本当に私の体が目当てなんだから。
文句を言いつつ、鼻歌を歌いながら葵は着替えのために自分の部屋に入って行った。
やれやれ。
翔太はパソコンを操作して仕事を再開するが、手に残った葵の胸の感触に仕事が手に付かない。
うーん。
いつも触っているんだけど、やっぱり制服のブラウスの上からというプレミアムが付いているからかな。
真っ白なブラウス、いいよなぁ。
翔太は葵の制服がくたびれたと感じたら新しいのを買って渡していた。
当然、葵は恐縮するが翔太に押し切られ、でも喜んで着ていた。
それに膨らみを帯びてきた胸とお尻。
毎日毎日、何て幸せなんだろう。
葵ちゃんさえよければ、高校卒業したら結婚するかな。
いや、やっぱり二十歳になってからか。
いやいや、やっぱり十代かな。
…
結婚かぁ。
あんなにいい子は絶対にいないもんな。
翔太はしっかりと結婚を意識していた。
夜、ベッドの上で翔太は葵をうつ伏せにさせ、背中からお尻のラインを眺めていた。
この子は背中も綺麗だし、お尻の形もいいし、なんて可愛いんだ。
翔太にとって葵はどこをとっても可愛くて仕方なかった。
うつ伏せの葵を包み込むように覆いかぶさっていく。
「翔太さん…バックは…」
「わかっているよ。
ちょっとだけ。
葵ちゃんの綺麗な背中とお尻が見たくて」
「もう…」
葵は目の前に翔太のいない後背位があまり好きじゃなく、翔太の顔がいつでも見え、手を伸ばせばしがみ付けるという安心感のある正常位がお気に入りだった。
でも、それはそれで気持ちは良かったので強く拒絶するものではなかった。
それに翔太は葵が嫌がることをいつまでもせずに、楽しんだらさっと葵の好きな体位に変えていたので葵は安心して翔太の腕の中で甘えることが出来た。
翔太にしっかり抱きしめられ、体の奥深くまで熱いモノを挿入され、体中温かくそれに震える程、気が遠くなるほど気持ちよく幸せな気持ちになる。
ふと茜との会話を思い出す。
「大丈夫かい?
荒っぽく扱われていないかい?」
「え?」
「たいていの男はアダルトビデオをSEXの手本としているんだよ。
まねすれば女は歓ぶって勘違いしていてさ、ウチの旦那も最初は滅茶苦茶。
すぐに指を突っ込んできたりしてさ、もう滅茶苦茶怒って私がどうやれば歓ぶかを徹底的に教え込んだんだよ」
「そ、そうなんだ。
翔太さんは優しいし、大事にしてくれるよ」
「まあ、あいつならそうか…」
(経験豊富だからな)
「でも、嫌なことはちゃんと言わないとだめだよ」
「はーい」
大きな波に飲み込まれるような快感に葵は翔太に抱き着く手の力を入れる。
大丈夫だよ、お姉ちゃん。
翔太さん、こんなに優しく、大事にしてくれるのよ。
私、凄く幸せ。。。
葵は身も心も翔太の中に飲み込まれていく。
前回の投稿からなんと1年も空けてしまいました。
昨年、Kを投稿した後、2度目の手術。
寛解に至らず、悶々とながらAの続きを書いてはいたのですが一気に書くことが出来ませんでした。が、やっと投稿できるまでにたどり着きました。
ファイト!
やっぱり物語は楽しいです。
さて、順調かと思っていた葵に翔太ですが、翔太に暗い影が…。
次回もお楽しみに。




