Kの巻(その八③)
薫や仕事、すべてを失った裕樹。
酷いことを言われても裕樹を信じる薫。
しかし、悪夢が現実となって二人を襲います。
その夜、裕樹はスマホのLINEに薫からメッセージが来ないかとじっと見つめ続ける。
しかし、いつもLINEが来る時間帯に薫からのメッセージは来なかった。
それでも1時間経ち、2時間経っても裕樹はじっと見続ける。
なんでLINEメッセージくれない?
僕のこと嫌になったかな…
当たり前だよな、あんなひどいことを言って。
好きでいてくれなんて虫が良過ぎる。
…
でも、好きでいてほしい。
いつもみたいに傍に来てほしい。
裕樹は何度も自分からLINEを送ろうとしたがブロックされているのではという恐怖心から送ることはできなかった。
そして、最後は鳴き声になる。
薫ちゃん、ごめん。
もう酷いこと言わないからここに戻って来てくれ。
しかし、スマホのLINEは1回も新規メッセージを知らせることなく夜は更けていく。
それから2日後、ピカレンジャーの撮影日。
撮影所に向かう車に裕樹はいなく一美と二人、薫は心細くて仕方なかった。
いつも傍にいる裕樹がいない。
自分をなんだかんだと守っていてくれる裕樹がいない。
自分のわがままを聞いてくれる裕樹がいない。
撮影所に近づくほど心細さは膨らんでいく。。
「どうしたの?
薫ちゃん」
「え?
ううん、なんでもない」
薫の不安そうな顔を見て一美は声をかける。
「どうしたのよ。
今日は大事なシーン、ピカレッドと決別して基地を飛び出すシーンだから緊張している?
大丈夫よ。
いつも通りやればオッケーよ。
喉乾いたでしょ?
お腹が空いたかな?
向こうに付いたら私が飲み物とかお菓子を買ってあげるからね」
「う、うん」
一美は裕樹以外から飲み物や食べ物を受け取らないし、口にしないことを軽く考えていた。
裕樹がいなかったら、やっぱり怖くて何も口に入れられない…
薫の不安は膨らむだけだった。
その日の撮影は二人の心配を他所に順調に終わる。
「いやー、今日のアカルイナ姫、いや、薫ちゃんとっても良かったよ。
ピカレッドと決別した時の悲しい仕草とか、もう完璧だ!」
監督やスタッフ、また、他の共演者たちは手放しで喜ぶほどだった。
皆、高視聴率を背景にやりがいに燃えていたので尚更だった。
「薫ちゃん、お腹空いたでしょう。
美味しいお菓子が差し入れであるのよ。
食べて行かない?」
共演者で薫と仲良くなった女優が話しかける。
「ごめんなさい。
お腹空いていないし、ダイエットしているので」
薫はやんわりと断る。
「そうだったわね。
薫ちゃん、モデルもやっているんだものね。
ダイエット、大変よね。
でも、打ち上げの時は参加しようね」
皆、薫が裕樹の手からでないと何も飲み食いしないのは体形維持のダイエットからだと信じ込んでいた。
「薫ちゃん、ダイエットしているんだっけ?
高橋から何も聞いていないけど」
一美が意外そうな顔をする。
「え、ええ、まあ。
それより裕樹はどうしていますか?」
「ん?
高橋ね、昨日一昨日と部屋にこもって出てきていないわ。
余程今までのことに凝りて反省しているんじゃない?」
「そうですか…」
以前の様に戻って欲しい。
考える時間があればきっと以前の裕樹に戻ってくれる。
傍に行きたいんだけど、我慢しなくっちゃ。
薫は裕樹が以前の裕樹に戻ることを信じて、それまでは自分から会いに行かない方がいいと決めていた。
そのうち、きっと裕樹の方から声をかけてくれる日まで。
「さあ、帰りましょうか」
「はい」
立ち上がったところで一美はスタッフと思われる男から声を掛けられる。
「加藤さん、監督がお話したいことがあるそうです」
「え?
監督さんが?
なんだろう、さっき話をしたばかりなのに。
…
いいわ。
薫ちゃん、先に車に行っててくれる?
話が終わったらすぐに行くから」
「はい」
薫は一人で地下の駐車場に向かうが、その途中で呼び止められる。
「薫」
「?」
振り向いた薫は一瞬で顔を曇らす。
薫を呼び止めたのは、薫の体を自分の筆おろしに利用した福地翔馬。
その男がニヤニヤしながら立っていた。
「久しぶりだな。
加平の兄貴がいなくなってから元気そうじゃないか。」
「何か用?」
薫は周りを見回したが誰もいなかった。
「そんなに冷たいこと言うなよ。
俺とお前の仲だろう。
あの時と違ってずいぶんと女っぽくなったじゃないか」
「…」
薫は福地翔馬が何の目的で声をかけてきたのかを察し険しい顔をする。
ポケットの中を探しても何も武器になるようなものは入っていなかった。
「おいおい、そんな顔で睨むなよ。
昔の様にちょっと遊ばないか?」
「誰があなたとなんて、ごめんよ!」
薫は声を荒げる。
「そんなに大きな声を出すなよ。
昔のことがばれたらまずいんじゃないか?」
「冗談じゃないわよ。
誰があなたとなんか」
「いや、考えてもみろよ。
まさか薫がピカレンジャーに出ているとは思わなかったよ。
いま視聴率高いんだってな。
羨ましいよ。
それなのにスキャンダルが発覚したらどうなる?
あの加平の玩具がピカレンジャーに出演している、なんて」
「…」
「芸能記者が大喜びで根掘り葉掘り書き立てるぞ。
そうしたらどうなる?
まず番組は打ち切りだろうな。
そうなったらせっかく脚光を浴びて大喜びの共演者たちはどうなる?」
「あなた…」
薫は共演者たちの生き生きした顔を思い出す。
今まで苦労してきて脚光を浴び始め嬉しいと言っていた女優や他の共演者の顔を思い浮べ唇をかむ。
「さて、じゃあ場所を変えて今日は楽しもうよ。
イケメンの友達もつれてきたから」
そういうと近くのワゴン車のドアが開きテレビや雑誌で見たことのある男が二人出てくる。
二人ともこれから売り出そうとしている福地と同じ年位の美形の男だった。
「翔馬、話し終わった?」
「ひゅぅ、雑誌で見たけど可愛い子じゃない。
今日は僕たちと楽しいことをしようね」
「バカ野郎、まずは俺からだ」
「翔馬、何をがっついているんだって。
ほら、この子怖がっているよ」
二人は薫が逃げないように薫の傍に挟み込むように立つ。
「さて、薫ちゃん。
まずはマネージャーさんに今日は知り合いとご飯を食べて行くから遅くなるって連絡してもらおうかぁ。
メールかLINEやっているんだろ?」
「なっ、何を…」
「ほらほら、騒がないよ。
痛い目にあいたくないでしょ」
横の男が薫に見えるようにスタンガンを取り出し、脇腹に押し付ける。
「…」
「まあ、ほら、こんなところで突っ立ってスマホいじっても仕方ないだろ。
取り合えずうちらの車に入ってやりなよ」
「薫ちゃんのところの車よりぼろいけど、それは勘弁な」
薫は押し込まれるように男たちが乗って来たワゴンの後部座席に乗り込む。
片側に福地が、もう片側にスタンガンを持った男が薫を挟むようにして座る。
もう一人の男が運転席の乗り込みエンジンを掛けた。
「さ、ちゃっちゃと連絡しなよ」
車の中に入ったせいか福地の言葉が荒々しくなる。
薫は言われた通りスマホを取り出しLINEにメッセージを書き込む。
横で福地がメッセージの内容を遠巻きにするように覗き込み頷くと送れと言うように顎で合図する。
「さ、じゃあ、楽しいことしに行こうか」
福地はそう言うと運転席のシートを小突き、車を出すように合図すると車はゆっくり駐車場を出ると夜の街に消えていく。
福地は薫の肩に手をやり抱き寄せると薫の髪を手に取り匂いを嗅ぐ。
「いい匂いだな。
香水ババアと違ってシャンプーの匂いか?」
「香水ババア?
この前相手にしたファンだろ?
確か30代だって。
ババアは悪くねえか?」
スタンガンの男はあざ笑う。
「30代って言ったらババアはババアだろ。
あーたまんねぇな、薫ちゃん」
福地は空いている片手で薫の胸を服の上から弄る。
「やめて」
薫は福地の手を払う。
「そう言えば加平が言っていたな。
薫はとことん暴力で仕込んだんで男を拒否できない体になっているって。
そして常に男に抱かれないと、体を支配されないと我慢できなくなるってさ。
しかもサディスティックに」
福地はにやにやと笑う。
「なんて言ったけな。
そうそう、マゾだ。
どうせ、今でもいろんな男とやっているんだろ?
相手探すのたいへんだろ?
これからは俺たちが相手してやるぜ」
「私はそんなのじゃない。
それに、誰があななたちと…」
薫は険しい顔で福地を睨む。
「おーおー、怖いこと。
おい」
福地がスタンガンの男に合図すると男は薫の両手首を掴み上にあげさせ、薫の自由を束縛する。
「いいなぁ、若いし可愛いし」
「おいおい、爺みたいないい癖だぜ」
「違いねぇ」
福地は薫を抱きしめ首筋に顔を埋め、片手で胸を揉む。
「いや!
離して!!」
薫は足をばたつかせるとそれを見計らったように胸を揉んでいた手をスカートの裾の中に滑り込ます。
「や、やめてぇ」
福地の手がショーツの中に強引に入り込み薫の秘部に触れる。
「いや、いやー」
「やっぱりそうだ。
濡れてやがるぜ。
犯って欲しいって体が言っているぜ」
福地は興奮して自分のズボンのベルトを外し始める。
「ちょい、マンションまで待てないのかよ」
スタンガンの男が呆れて言う。
「待てねえんだよ。
しっかり押さえとけ」
「やめて!!」
「うるせえ!」
パチンという音とともに薫の顔が横を向く。
福地に頬を張られた音だった。
そして福地が薫に覆いかぶさる。
「うっ、うっ、うっ…」
薫は顔を背けたまま嗚咽を漏らす。
スモークガラスで中の見えない車は飢えた野獣と化した男たちと薫を乗せ夜の道を走る。
裕樹は自室のベッドに仰向けで寝転びぼんやり考えごとをしていた。
すでに何日か同じようにぼんやりと過ごす。
自惚れは憑き物が落ちたようにきれいさっぱりなく、もとの穏やかな裕樹に戻っていた。
他の人は謝っても許してもらえなくてもそれでいい。
でも、薫ちゃんだけは…
薫ちゃんだけは僕のことを許して欲しい。
前みたいに笑って欲しい。
自分の薫にしたことを思い起こせば到底許してもらえないと思っている裕樹はため息をつく。
僕は何て馬鹿なことをしたんだ…。
あれだけ傷つけてしまったのに、それでも…。
後悔の連鎖に陥っていた。
その時、裕樹のスマホからLINEのメッセージ受信を知らせる音が鳴る。
薫ちゃん?
いそいそとLINE画面を見るがメッセージは裕樹と薫と一美の仕事用のグループにだった。
ただ、発信元が薫だったのでメッセージを読むと裕樹の顔が一瞬で変わり、ベッドから跳ね起きる。
そしてスマホのGPSアプリを立ち上げる。
いた!
ここは撮影所じゃないか。
すると点が動き出す。
GPSアプリは薫のスマホにも入っていて、お互いがどこにいるかを地図上で教えてくれるアプリ、それは加平の件があったあと自分に何かあったら助けてほしいとせがまれて入れたアプリだった
薫が学校に行っている以外はいつも一緒だったので存在自体も忘れかけていたアプリだった。
何があった?
いや、そんなことより早く薫ちゃんのところに行かなければ。
『お友達とばったり会ったので、ホテルで食事をして帰ります。
帰りは遅くなるけど心配しないで』
薫からのメッセージはありきたりの様だけど思いっ切り変だった。
まず一美がいるのにLINEで連絡していること。
未成年なのにホテルで食事。
決定的なのは『食事をして』というところで家族か裕樹がいないところで何かを食べたり飲んだりすることは絶対にしない薫が食事をしてなんて書くはずがなかった。
しかも加平の件では犯行現場がホテルだったので『ホテル』とは暗に危険が迫っていることを言っているに違いがなかった。
裕樹は部屋を飛び出し駐車場へ向かったが、車は一美が薫を連れて出たまま戻っていなかった。
そのまま車通りに飛び出すとまだ夕方ということもあり運よくタクシーを捕まえることが出来た。
裕樹はスマホの地図に浮かぶ薫の位置の点を見ながら的確に運転手に指示を出す。
この動きは向こうも車か。
せめて行先がわかるかと止まってくれればいいんだけど。
焦る気持ちを懸命に抑えスマホの動く点を凝視する。
それでも夕方のラッシュに掛かっているのか動きが遅くなり、確実に近づいていた。
薫を乗せたバンは夕方のラッシュの渋滞に引っかかっていた。
車内では福地が薫のショーツを剥ぎ取り、ズボンのチャックを下ろそうとしていた。
「おいおい、まさか本当にこんなところで犯るのか?」
「うるせえな。
我慢できないんだよ。
今犯って、あとでまたゆっくり犯ればいいんだって」
福地は興奮した口調でどなる。
「ちょっと待てよ。
そんなところで犯ってたら俺気になって運転できないって。
それにこの渋滞だ。
いくらスモークガラスだからって見えないことはないんじゃないか?
それに声が漏れたりしたらどうするんだよ」
運転席の男が不満げに声をかける。
「大丈夫だって。
見えやしねえよ。
声だってカーステの音量を大きくすれば聞こえやしねえよ」
手首を掴まれ抵抗できない薫は目に涙をためながら険しい目つきで男たちを睨む。
「ともかく後ろでおっぱじめたら俺は下りるからな。
そんなもん見ながら運転なんかできるか」
運転席の男は本気だった。
「わかったよ。
仕方ねえな。
マンションまで我慢するよ」
福地は名残惜しそうに薫の秘部を撫でまわしてから体を離す。
「そういえばコンドーさんあったっけ?」
スタンガンの男が福地に尋ねる。
「コンドームか?
この前使いきったな。
マネージャーに買わせておけばよかった」
「おいおい、マネージャーってあの女の方か?
あっ、お前、手を出したのか?!」
「当たり前だろ。
暇つぶしだよ」
福地は悪びれることなく答える。
「呆れた奴だな。
まあ、いいや。
で、どっかで買って行くか」
「いいんじゃない?
外出しすれば」
「やだぜ、妊娠でもされたらあとが面倒だ」
「しょうがねえな。
どこかドラストに寄って行こう。
ついでに栄養ドリンクとかいろいろ買いこんでいくか」
「いいね。
ゼリーもいるだろうし」
「少し先に大きなドラッグストアあるからそこに寄ろう」
運転席の男がカーナビを見ながら答える。
「ドリンク、高いのにしようぜ。
この前買ったやつ、ほら300円位のドリンク、全然効かなかったじゃないか」
「ドリンクじゃなくてドラッグは?
いいのあるぜ。
朝までギンギンになる奴」
「いいねぇ~。
なあ、それ女に飲ませたらどうなる?
やっぱ、ギンギンになるかな」
「試してみるか」
男たちはニヤニヤしながら薫を見る。
薫は『薬を飲まされる』と聞きいきなりパニックに襲われる。
薬を飲まされる?
『どうだ?
薬で身動きできず、俺に犯られて。
俺に体を支配されるのはいい気持だろう?
痛めつけられるのも快感だろう。
お前はもう俺なしでは我慢できない体になったんだ』
自分の上に乗り、激しく腰を動かし悦に入った顔をしていた加平を思い出す。
いやだ、いやだ。
また、あの時の様なことはいやだ。
そして薫は自分の中の殻に閉じこもり身を固くする。
「ともかくコンドーさんを買うからストアに寄ってくれ」
「あいよ」
バンはドラッグストアの広い駐車場に入り、隅の薄暗いスペースに駐車する。
「じゃあ、買ってくる」
「俺たちがいない間に勝手に犯ったりすんなよ」
「わかってるって。
薫と一緒に大人しく待っているって」
男たちはパニック症状で金縛りにあったように固まった状態の薫を大人しく観念したものと勘違いし、福地と薫を車に残したまま買い物に行く。
「何で体を固くしているんだよ」
二人が出て行くとすぐに福地は薫を抱き寄せ、胸を揉みながら耳元で囁く。
「初めて会った時よりも随分と女っぽい体になったじゃないか。
ん?
緊張しているのか?
3人も相手ができるのかって?
大丈夫だよ、俺たちやさしいから。
あっそうだ。
薫ちゃんは激しいのが良かったんだっけ」
ベロっと福地は薫の頬を舐め上げる。
しかし薫は瞬き一つせずにじっと前を見たまま体を硬直させている。
「ちっ、恐怖からぶっ壊れたかぁ?」
薫の反応のなさに思わず舌打ちするがすぐに気を取り直し、胸を揉んでいた手をスカートの中に滑り込ます。
先ほどと違い福地の手はすんなりとショーツの中の温かい所に入って行く。
そこでかき回すように薫の秘部を触ると薫は眉間にしわを寄せる。
「楽しもうぜ」
福地は薫が感じているのを我慢していると勝手に勘違いしていた。
そしてその手の指が薫の秘部の中に狙いを付けて入り込もうとした時、急に福地と薫を挟んで反対側の後部座席ドアが開く。
「薫!!」
ドアを開けたのは裕樹で薫の名を叫ぶ。
「だ、誰だ!?」
慌てて薫のスカートの中から手を抜くと険しい顔で裕樹を睨む。
「お前、子役上がりの福地…」
そうか。
薫ちゃんが言っていた加平の弟分はこいつで、こいつも無理やり抱いたやつだな。
「ちっ」
福地は邪魔をされあからさまに不機嫌になった。
「薫を返してもらう。
薫、行こう!」
手を伸ばして薫の腕を掴むが薫は動かず全く反応がなかった。
「お前、薫に何をした?」
「何もしていねぇよ。
こいつ、俺らと遊びたいんだとよ」
福地はせせら笑う。
「なんだって!!」
薫を引っ張り出そうと力を込めた時、“バチバチ”という音とともに背中に激痛が走る。
振り向くとスタンガンをもってニヤニヤ笑っている男が立っていた。
そして体の力が抜けていく。
「誰だ、こいつ?」
スタンガンを持った男が聞く。
「わかんねぇ。
いきなりドアを開けて“薫”って騒いだから、こいつの知り合いじゃないか?」
顎で薫の方をしゃくると、座ったまま身動き一つしていない薫がいた。
「ん?
こいつ、なんか変じゃねぇ?」
「ああ?
ああ、薫か?
怖がって壊れたみたいだ」
「大丈夫なのかよ」
「犯っていればその内、正気に戻んじゃねえか。
戻んなかったらその時はその時だ」
「で、こっちはどうする?」
「顔も見られたし連れて行って、薫とやっている写真でも撮って脅すか」
「わかった、そうしよう」
裕樹はぼんやりした頭で聞いていた。
薫ちゃんがこんなになるように怖がらせたのか。
なんて酷いことをするんだ。
そして、この前見た悪夢を思い出す。
薫と二人で拉致されて、目の前で薫が犯されていく。
その男の顔と福地の顔が重なる。
畜生!
やらせてたまるか。
薫ちゃんを踏みにじられてたまるか。
僕の大事な薫ちゃんだ!!
「きさまら…
大事な…薫に手を触れるな」
裕樹は歯を食いしばり立ち上がる。
その時裕樹の声が届いたのか薫の目に生気が蘇る。
「なんだ、こいつ。
このスタンガンを食らえば熊だって気絶するって買ったサイトに書いてあったのに」
「がぁ」
もう一度スタンガンを撃とうとした手を裕樹が吠えながら振り払う。
「あっ」
裕樹の手が当たり持っていたスタンガンが遠く飛んでいき、男は慌てて取りに行く。
「裕樹?」
「薫ちゃん?!」
薫の声で振り向いた裕樹の後頭部にもう一人の男が握った両手を振り下ろす。
がつっ!!
鈍い音とともに裕樹は目の前がちかちかし、腰砕けとなる。
「ひ、裕樹―!!」
しゃがみ込んだ裕樹の背中を男が容赦なく蹴る。
いつの間にか福地も加わり、二人がかりで裕樹を踏んだり蹴ったりを繰り返す。
畜生…。
負けてたまるか。
薫ちゃんを手放さないぞ。
この、この命かけても!!
裕樹は懸命に立ち上がろうとする。
「なんだこいつ」
「倒れないぞ」
二人は息を切らせ、蹴る力も弱くなってくる。
「もうやめて!
裕樹が死んじゃう。
私…」
「薫!
余計なことは言うな!!」
薫が福地達に何でも言うことを聞くから裕樹を助けてと言おうとしたところを裕樹が大声で命令するように制する。
「は、はい」
薫は裕樹の声に身がすくみ逆らえなかった。
でも、このままじゃ裕樹が本当に死んじゃう。
そんなの嫌だ!
他に私にできることは…
裕樹に覆いかぶさって守ろうと決め、バンから一歩出た時、福地と一緒に裕樹を蹴っていた男が頭を押さえてしゃがみ込む。
その横にカランという音とともにスタンガンが転がる。
「なんだ?
どうした?」
福地が男の方を見るが男は頭を抑えたままうめき声をあげて蹲る。
少し離れたところではスタンガンを拾いに行った男がヤジ馬ともめていた。
そのやじ馬は正義感からかスタンガンを取り上げ放り投げたところ偶然に福地のもう一人の男の頭に当たった。
「何が起こたんだ。
?!」
そんなことを知らない福地は狼狽したところに恐ろしいほどの殺気を感じ、恐る恐る裕樹の方を振り返ると頬や額をすりむき口の端から血をたらし憤怒の形相で福地を睨んでいる裕樹が立っていた。
ともかく一人だ。
こいつだけでも地獄に連れて行く。
裕樹は福地を道連れにすることだけを考えていた。
「ひっ、ひぃ」
そのあまりの殺気に恐怖を感じ膝が震えだしたが、力を振り絞って裕樹に殴りかかる。
しかし裕樹のパンチが先に福地の顔の中心にめり込むように当たると福地は糸の切れた操り人形の様にくるくると回って尻もちをつく。
そしていつの間にか騒ぎを聞きつけ遠巻きに人が集まっていた。
「やだ、喧嘩?
しかも一人に三人がかりで」
「おい、こいつスタンガンもってたよ」
「それって犯罪じゃない?
警察に連絡しないと」
「あれ?
あいつらどこかで見たことあるよ」
ざわざわと話す声が聞こえる。
あるものはスマホで警察に電話をかけている、あるものはスマホのカメラで福地達を映している。
「まずい…」
スタンガンを持っていた男がやじ馬を振り払うと、頭を押さえてしゃがみ込んでいる男の肩を掴んで立ち上がらせる。
「頭から血が出ているよ~。
医者に連れて行って」
「あとでだ。
ともかくここを立ち去ろう」
泣き出している男を立ち上がらせると、次に鼻血を出し呆然と座り込んでいる福地の肩を掴んで立ち上がらせる。
福地のズボンの前は失禁のあとのようにぐっしょり濡れていた。
「早く行くぞ」
福地は操り人形のようによろよろと立ち上がりスタンガンの男に支えられながら車に向かって歩き出す。
三人は薫のことを気にする余裕もなかった。
「に、逃がすか…」
裕樹は気丈に男たちに立ち向かおうとしたが足が縺れバランスを崩す。
「危ない!」
薫は咄嗟に裕樹に抱きつき、その拍子で二人ともしゃがみ込んだ。
「裕樹、もういい。
もう、大丈夫。
それより大怪我している。
お医者さんに行こう」
泣きながら裕樹に抱き着く。
「薫…ちゃん…」
「な、なに?」
「済まなかった…」
「え?」
「ひどいことを言って…ごめん…」
力尽きたのか項垂れ切れ切れの声で薫に謝る。
「何を言っているの。
もういいよ。
こうして助けに来てくれただけで、もういいの。
それより死んじゃ嫌だからね。
病院に行こうね」
「…」
いつの間にか福地達はバンに乗り込みその場から逃げ出していた。
遠巻きにしていたやじ馬もちらほらといなくなっていく。
やじ馬の中の一人の男が薫たちに近づき、裕樹の様子を伺う。
「これは早く病院に行った方がいいな」
「あなたは?
あなたが助けてくれたんですか?」
薫は目の前の男がスタンガンを投げつけた本人だと確信した。
「それより彼氏怪我している。
俺の乗って来たタクシーを待たせてあるから、それで病院に連れて行こう。
歩けるか?」
裕樹は頷くとよろよろと立ち上がり、薫が支えるように裕樹を抱きしめる。
「ほう、あれだけ蹴られても起き上がれるか。
すごいな」
「…」
裕樹は頷くしか力が残っていなかった、
そして男の乗って来たタクシーに乗り込むとそこで意識が無くなる。
気が付いたのは病院のベッドの上だった。
「あれ?
ここは?」
起き上がろうとして体中に痛みが走る。
「気が付きましたか?」
白いナースウェアを来た看護婦が覗き込む。
「病院ですよ。
昨晩運び込まれて」
「今は?」
「朝の10時です。
先生をお呼びしますね」
医者から打撲だけで骨折や臓器の損傷はないと告げられる。
ただ頭を打っているのでもう一日入院することになった。
お昼を過ぎて面会の時間になると一美がやってくる。
「ずいぶんやられちゃったね。
でも、お姫様は無事よ」
思い出し薫のことを尋ねようとしたが先に一美が答える。
「薫ちゃん、ケガはなく大丈夫。
怖い思いをしたけれどあなたが助けてくれたので落ち着いているわ」
「あいつらは?」
「すぐにマネージャーと会社の役員が来て、謝罪と二度と薫ちゃんに近づけさせないから内密にしてほしいと懇願に来たわ。
でも、警察が危険ドラッグを所持しているって捜査に入ってそのまま御用!
目を付けられていたのね。
まあ、しばらくは出てこないだろうし、叩けばいろいろと埃も出そうだし、終わっちゃうかなというところかしら」
一美は自業自得だと言わんばかりの顔をする。
「薫ちゃん、本当は一晩中付き添いたいって言っていたけど、まだ病院では例の感染症のせいで面会時間に身内の者が一人だけっていう制約があるし、それに未成年だしね。
今日も来るって言っていたけど大丈夫だからって皆で押しとどめて家にいるわ」
無事だったんだ。
裕樹はホッとする。
でも、あの時、車内にいた薫ちゃんは抜け殻の様だったな。
何があったんだろうか。
自分のことより薫のことが心配だった。
「で、あなたたちってそういう関係だったんだ」
「え?」
「ううん、何でもないわ。
ただ、二人はお互いが掛け替えのない存在だってこと。
裕樹さんも憑き物が落ちたみたいに以前のような優しい顔に戻っているし、薫ちゃんは裕樹、裕樹って騒いでいるし。
戻ったら優しくしてあげてね」
「…」
裕樹は薫が怒っているのではと心配で仕方なかった。
翌日、退院して一美が運転する車で社宅に戻ると薫や加津江が待っていた。
「高橋君、この度は薫のことで面倒を掛けました。
すみません」
加津江が頭を下げる。
「とんでもない。
当たり前のことをしただけです」
「…
裕樹君…」
加津江も裕樹の表情や雰囲気を感じ、以前の裕樹に戻ったことを確信したのか笑みを漏らす。
「大事なご子息に怪我をさせてしまってとご両親に連絡しようとしたの。
でも…」
口籠る加津江に裕樹が笑みを浮かべる。
「いいんです。
大丈夫ですよ」
加津江は安堵の顔をする。
「裕樹君。
これからも薫のことをお願いしますね」
「え?」
予想をしていなかった答えに裕樹は目を白黒させる。
「ほら、薫もちゃんと挨拶しなさい。
危ない所を助けてくれてありがとうございましたって」
加津江に背中を押された薫は俯いていてその表情は伺い知れなかった。
「薫ちゃん?」
裕樹も恐る恐る声をかけると、それを待っていたかのように薫は顔を上げる。
その顔は涙でぐしょぐしょだった。
そして1歩2歩とゆっくりとした足並みで裕樹に近づくとその後は飛ぶように裕樹に抱きつく。
「裕樹、裕樹、大丈夫?
ひろきぃ~」
裕樹の胸に顔を埋めて堰を切ったように泣きながら名前を呼ぶ。
「薫ちゃん、そんなにきつく抱きついたら裕樹さん痛いんじゃない?」
一美が笑う。
「大丈夫ですよ」
まだ、痛みは残っているがそれよりも薫の温もり、柔らかな体の感触が嬉しかった。
「さて、私は仕事に戻りますね。」
「一美さん、ごめんなさいね。
いろいろお願いしちゃって」
「大丈夫ですよ。
相棒が復帰してくれるから。
ね、加津江さん」
「そうね。
また、前と同じね」
「そうと決まれば明日からお詫び巡業だからね、裕樹さん」
「加津江さん、一美さん…」
裕樹が見ると二人は笑って頷き、自分のやったことが許されたことを実感する。
「さ、裕樹君は部屋で休んで。
薫は裕樹君の看病するんでしょ?
ちゃんと付き添って面倒見てあげなさいよ」
「うん。
裕樹、大丈夫?
歩ける?」
「大丈夫だよ」
寄り添うように歩いて行く二人の後姿を見送りながら加津江と一美は顔を見合わせ笑いあう。
部屋に戻ると裕樹はシャワーを浴びる。
その間薫は甲斐甲斐しく裕樹の脱いだ服を洗濯ネットにいれ洗濯機に入れる。
一息ついたところでベッドに座りぼーっと考え事をしながら裕樹が出てくるのを待っていた。
私どうしたんだろう。
あの日途中の記憶がない。
何かを言われてから裕樹が助けに来てくれた間の記憶が曖昧…。
何だか怖い。
…
何か言われていた。
確か加平に仕込まれて男を拒否できない体になっているとか、暴力で支配されないと不安になるとか。
これって病気のこと?
…
思い出した。
薬を飲ますって言われたんだ。
薬を飲まされ身動きできなくなってまるで操り人形の様に体を触られ脚を広げられ…。
拒否できない?
そんなの嫌に決まっている。
でも実は私、薬を飲まされ無理やりSEXさせられるのが好き?
誰でもいいから身動き取れないように押さえつけられ強引にされることを望んでいる?
病気?
私気が狂っているんじゃないの?
意識のない時、何をしていたんだろう
怖い、自分が…
私、気が狂っている…
裕樹のベッドの腰掛け絶望感に襲われると勝手に涙がこぼれてくる。
「薫ちゃん?」
いつの間にかシャワーを済ませて出てきた裕樹は薫の涙を見て心配そうに声をかける。
「あ、裕樹?
なんでも…」
何でもないと言おうとしたが言葉が続かなかった。
「ううん。
裕樹、ごめんなさい。
こんな私のために怪我をさせちゃって」
「え?」
「私ね、頭がおかしいの」
「な、なにをいきなり」
「私、無理やりSEXさせられるのが好きなんだって。
マゾヒストって福地が言っていたけど、暴力で支配されないと我慢できない体なの?」
「…」
裕樹は薫の横に腰を下ろす。
「何があったか、話してくれる?」
「あの人たちが言っていたの。
私の体って加平に仕込まれたんだって。
薬を飲まされ自由が利かなくなったところを強引に犯されるのを喜んでいる…
自分では気が付かなかったんだけど、体が勝手にそうなってるんだって。
自由が利かない状況で無理やりSEXされるのが好きで、そうされたくて街に出て、してくれそうな人を選んで…。
まるで怪物。
こんな怪物のために怪我をさせてごめんなさい。
私樹に不快な思いをさせるだけ…。
裕樹の傍にいる資格なんて…ない…」
薫は声を震わせ、涙を流しながら告白する。
そう言うことか。
SEX依存症について調べていたけど、何かの抑圧のはけ口を求めて症状が出るっていう記事もあったな。
加平に薬を飲まされ無理やり力ずくで体を支配され続けて、それが引き金になっただろうとは思っていたけど、身も心もここまで追い詰められていたんだ。
裕樹はすべてが明確になった気がした。
しかし、目の前で肩を震わせて涙を流している薫は高校生の女の子。
過酷な十字架を背負わせたらいけないという思いが強くなる。
「じゃあ、僕のこともそうしてくれる男と思って声をかけた?」
薫はビクッとして顔を上げる。
「わからない…。
わからないの。
でも、でもね、実はね、裕樹が図書館で働いているのを知っていた。
そして、いつか裕樹とお話がしたい、お友達になりたい、ううん恋人になれたらいいなって思っていたの。
それは信じて」
「ああ、信じるよ」
裕樹は薫の腰に手を回し、自分に引き寄せる。
薫は一瞬体を固くしたがすぐに腰を浮かせて裕樹の方に体を密着させる。
「裕樹…」
「僕は今までわかっていたつもりで、実はわかっていなかったと思う」
「?」
「薫ちゃんは病気だから優しくしないといけない。
薫ちゃんと一緒にいて楽しいけど、病気が治ったら僕のこと見向きもしなくなるって思っていた」
「そ、そんな…」
裕樹は人差し指を薫の口に当て黙らせる。
「でも、それは僕の勝手な考えで、本当の薫ちゃんを見ていなかった。
薫ちゃんがどれだけ苦しんでいるのか、どれだけ僕に救いを求めているのかきちんと考えていなかったのではないかって」
「裕樹…」
薫はじっと裕樹を見つめ、裕樹の言葉を真剣に聞いていた。
「僕のことを好きだって言ってくれたことを信じる」
「裕樹」
「僕が薫ちゃんの居場所になる。
遠慮することなく僕に甘えればいい。
どんな薫ちゃんもしっかり受け止めるから何も怖がらず安心すればいい」
「ひろきぃ」
薫の顔は興奮したように上気し朱に染まる。
「私でいいの?
こんな怪物の私でも」
「僕の目に映るのは怪物でも何でもない。
可愛い普通の女の子の薫ちゃんだ」
「う、嬉しい!!
…
でも、嫌だ…」
「え?」
「一方的なのは嫌!」
そうだった。
今まで薫ちゃんは一方的に暴力で支配されることで悩んでいたんだ。
僕としたことが。
「薫…」
「私は裕樹だけしか見ない。
ううん、見えない。
だから私も裕樹の居場所になる!」
「へ?」
「私頑張って、もっともっと綺麗になるから。
私だけを見てもらえるようないい女になるから、」
真剣なまなざしで見つめてくる薫を裕樹は愛おしくてしかたなかった。
「薫ちゃん。
薫、嬉しいな」
裕樹はお互いの息がかかるほど薫の顔のすぐそばまで近づく。
「約束する」
「うん。
私も約束する」
そう言うとどちらからともなくそっと唇を重ねる。
薫、いい香りがする。
帰ってくる前にシャワーでも浴びていたのかな。
そっと唇を離すと薫は嬉しそうな顔をしていた。
その顔は無垢な天使の様で、裕樹に頼り切り心配など何もなくなったようだった。
可愛いなぁ、まるで天使だ。
この子が傍にいる。
何て幸せなんだ。
誰にも触らせない。
頭のてっぺんから足の先まで全て、全て、僕のものだ!
ぱっちりした目。
形が良く整った鼻、ぽっちゃりした可愛い口。
ストレートの長い黒髪。
すべて僕好みだ!
何て幸せなんだ!!
裕樹は女の子を好きになり告白した時の様に胸のときめきが止まらなかった。
それは薫も同じだった。
まるで初めて好きな男に話しかけられた時の様にドキドキして心臓が口から飛び出すんじゃないかと思えるほどだった。
そう言えば、私裕樹から『好き』って言われたことあったかなぁ。
聞きたい、今聞きたい!!
薫は欲求が抑えられなかった。
「ねぇ…
あの…裕樹…」
顔を真っ赤に染め上げ、もじもじしながら薫が口を開く。
「ん?
なに?」
「えっと…
あのね…」
面と向かうと恥ずかしさが倍増しもじもじする薫。
「なんだよ」
言葉とは裏腹にやさしい笑みを見せる裕樹に薫は安堵する。
「裕樹…。
私のこと好き?」
答えはわかっていても聞かないわけにはいかなかった。
裕樹はくすっと笑うと薫を抱きしめ耳元で囁く。
「好きに決まっているだろ。
薫のこと、大好きだよ」
その一言は薫が一番欲しかった言葉。
大好きな人から『好きだ』と言われ恋人同士になる瞬間の一言。
今まで裕樹から何度か聞いたがそれは恋人という意味からは遠い言葉だった。
薫は嬉しさのあまり涙を流す。
「薫?」
「嬉しいの!
私も裕樹のこと大好きよ」
薫は裕樹に抱き着き二人はベッドの上に寝転ろがる。
「痛!」
裕樹は思わず顔をしかめる。
「ご、ごめんなさい。
体痛いんだよね」
「大丈夫」
薫を抱きしめるとシャンプーか石鹸か、甘いいい香りがする。
あらためて薫を見ると、お気に入りの明るい色のブラウスにプリーツの入ったスカート。
ブラウスは胸の膨らみをスカートは丸い可愛いお尻のラインを出していて裕樹の興奮のボルテージは一気に上がり、体の痛みを完全に忘れることが出来た。
「薫、好きだよ」
耳元で囁き、唇を重ねる。
今度はディープなキス。
なんて柔らかくて可愛い舌なんだろう。
裕樹は夢中で舌を絡め、薫も同じように夢中で絡める。
キスしながら服の上から薫の胸や腰を撫でまわす
薫も喜んで裕樹にしがみ付くように抱きつく。
二人はしばらく服のまま楽しんだ後、裕樹は薫の服を脱がしにかかる。
ブラウスを脱がすと膨らんだ乳房を懸命に隠すプラが現れる。
そっとその上からキスをするとブラを外す。
色白の肌に形のいい乳房、触れるとマシュマロのように柔らかいことが手に取るようにわかる。
毎週スポーツジムに通っているせいか腰はくびれ申し分のないプロポーション、脚は細くて長い、ヒップラインも十分丸みを帯びている。
「綺麗だ。
なんて素敵なんだ」
思わず薫の綺麗な裸体に見惚れ心の中で思ったことが言葉が口に出ていることに気が付いていなかった。
裕樹、声が出ている…
でも裕樹の言葉を聞くだけでも薫は嬉しくて仕方なかった。
そしてショーツを脱がせ、自分も裸になると裕樹は薫の覆いかぶさる。
温かく弾力のある体。
力を入れて抱きしめると折れてしまうのではないかと思うくらい線は細い
柔らかい乳房を触ると乳首は固くなっていた。
キスをしてそのまま首筋、胸へと唇を這わせ、そして乳首を口に含み、手を薫の太ももの間に滑り込ます。
「ん、んん…」
思わず声を漏らし、薫は一瞬強張ったように脚に力を入れたが、すぐに力を抜く。
薫の秘部は触れるとすでにぐっしょりだった。
薫自身まるで初めて裕樹に触れられているような気がして快感が体を突き抜ける。
裕樹とSEXをする時もいつも感じていたのだが今日は特別のような気がする。
今までどんな異性に触れられてもこんな感じになることはなかった。
しかもすべてを受け入れてくれる言われたので尚更、体の芯がマグマのように熱くなる。
これが普通の恋人同士?
こんなに気持ちいいものなの?
嬉しいなぁ。
ずっと想像していた以上…。
薫は自分の過去から普通の恋愛は夢でしかないと諦めていたが、それでもずっと憧れ、想像を膨らませていた。
それが今現実になった。
うれしい!
もう、思い残すことないくらいに気持ちいい。
「薫、いいか?」
上になった裕樹が声をかける。
「うん」
ちらりと薫は裕樹の股間を見る。
そこにはまるで別の生き物のように大きくそそり立っている裕樹の一物が写った。
私を見てあんなに…
自分の体に欲情しているのが嬉しくて裕樹に見られないように笑みを漏らす
裕樹は体制を立て直し薫の両脚を広げさせ、腰を密着させて来る。
その一挙一動が薫にはいつもより力強く感じ、守られているんだという気持ちが強くなっていく。
僕の薫…
裕樹も誰もが憧れる可愛い薫が自分の恋人だという喜びで興奮していた。
その目に映る薫はいつもとは全く別人、恥ずかしがり屋で無垢な心の持ち主、裕樹にはこの薫こそが本来の薫だと確信した。
そして自分の物の先端を薫の秘部に触れさせる。
薫は目を閉じ、緊張したように横を向いている。
裕樹は薫の両ひざ広げさせ腰を上げさすと、そのまま中に挿入していく。
いつもより猛々しい裕樹に本能的に恐怖を覚える。
ひ、裕樹、優しくして…
しかし、荒々しくされると思ったのは最初だけで奥深くまで優しく挿入され、感触を感じるかのように動きが止まる。
薫ちゃんの中は温かいし、なんて柔らかなんだ。
裕樹は感動に似た感情に襲われる。
優しい、怖くない。
裕樹が中まで。
こんな奥まで来るの?
裕樹の…熱い…
でもとってもいい気持…
薫も裕樹のすべてを感じ幸せな気持になる。
そして裕樹が動き始める。
ゆっくりと力強く。
濡れた薫の中を擦っていくたびにどんどん薫は気持ちよくなってくる。
な、なに、この感触…
熱くて大きなやんちゃ坊主が私の中で暴れているみたい。
こんなの初めて!!
いや、だめ、気持ちいい。
「あっ、あっ、あぁー」
薫は震えるほどの気持ちよさに息を切らしながら声を漏らす。
「気持ちいい…。
なんて気持ちいいんだ」
裕樹も額に汗をかきながら薫を堪能する。
ふと自分の一物を見ると薫の愛液で濡れて光っているのが見える。
「だれにも薫に触れさせない。
薫は僕のものだ!」
夢中で裕樹はまた無意識に言葉を漏らす。
それに頷いて反応する薫。
「い、いい。
ひろきぃ」
うれしい、うれしい。
私は裕樹のパートナー
裕樹のもの…
いつしか裕樹の腰の動きに合わせ薫自身も腰を動かし、息を切らせ眉間に皺を寄せながら幸せの絶頂に登り詰めて行く。
裕樹の腕をぎゅっと掴み、顔をのけ反らせたり横を向いたり乱れて行く。
「ひろき…
恥ずかしいから…見ないで…」
自分が乱れているのを感じた薫が小さな声で言う。
「可愛い顔を見せて」
薫の肩を抑えるように顔を近づけ唇を探しキスをする。
そして抱きしめるようにして腰を動かし続けると、薫の手が裕樹の背中に回り抱きつく。
それを感じながら裕樹は絶頂を迎える。
「薫」
「うん、大丈夫だからそのまま来て…。
お願い」
息を切らせながら哀願するように答える薫。
「うっ」
裕樹は体を突っ張ると堪らず薫の中へ全てを放出する。
「あ、あ…ん」
薫は裕樹の肩に手を置き仰け反るようにしてから再び抱きつき、裕樹のすべてを受け入れると体をぶるぶると痙攣させる。。
二人ともしばらく息を切らせて抱き合っていた後、裕樹が薫の顔を覗き込む。
「こんなの初めてだ。」
「え?」
「SEXがこんなに気持ちいいものと思ったのは。
薫だからそう感じたんだ。
好きだ」
「嬉しい!
私もこんなSEXは初めて。
怒らないでね…」
「ん?」
「私も初めてなの。
初めてSEXがこんなに気持ちいいものだなんて思ったの。
本当よ。
いつも裕樹は優しく抱いてくれていい気持にさせてくれる。
でも、今日の裕樹は優しいだけじゃなくて…その…優しさだけじゃなくて逞しくて。
訳が分からなくなるほど、今までにないくらい気持ちよくて。
私ね、この数か月裕樹が相手してくれなくてもずっと裕樹のことだけ考えていた。
相手してくれなくて寂しかったけど、他の人なんて、病気なんてでなかった。
裕樹は私が初めて一緒に居たいと思った人。
その裕樹がいてくれる、私を守ってくれる、そして抱いてくれる。
そう思っただけで夢がかなったみたい」
「夢?」
「うん。
普通の恋愛、普通の恋人。
私には無理だと諦めていたんだけど…」
薫の声は涙声になっていた。
「ばか。
これからはいつも一緒だ」
「うん!!」
今まで誰にも見せたことのない、また本人も気が付かないほどの飛び切りの笑顔を見せ、薫は裕樹の腕の中に顔を埋める。
この子は僕で満足してくれる。
依存症も吹き飛んで僕じゃないと満足できないと言ってくれる。
女性の経験の少なさなんて関係なかったんだ。
何を悩んだいたんだ。
僕は僕の想う通りにこの子を大事にすればいい。
まずかったらこの子はきっと言ってくれる。
ならば修正するだけだ。
嬉しそうに抱き着いてくる薫を抱きしめながら裕樹は薫の温もりに心が満たされていくようだった。
翌日から二人の世界は一変する。
仕事は一美と薫が裕樹と一緒になって迷惑をかけた監督や現場スタッフ、劇団関係に謝って回り、特に薫の熱意と裕樹の真剣さから元の鞘に収まることが出来た。
薫は何かが吹っ切れたように一段と明るく、また健康的で綺麗に女らしくなり好感度が爆発的に上がっていく。
それに比例して脇役だったかモデルの格付けが主役級になっていき、各現場でも好評で薫を指名した仕事も増えて行く。
そして一番の転機となったのはピカレンジャーだった。
通常戦隊ものは1年を通して放映するものだが薫が出演したピカレンジャーは特別編で3か月全15話完結編でその最終話。
悪者に捕らわれた薫が演じるアカルイナ姫をピカレンジャー達は満身創痍になりながら奪回に成功する。
それによりピカレンジャーとアカルイナ姫の結束はより強いものになっていく。
一方アカルイナ姫は悪者がいなくなった自分の星に帰ることになり、いよいよ別れの時、被っていた面が、実は悪者の呪いのために外せなかった面が取れて中から素顔の薫が現れる。
面の下から現れた薫の可愛さはオタクたちが歓喜の極みとなる超美少女級で視聴者は騒然となり一気に話題の中心となった。
それからはモデルだけでなくドラマやバラエティーに声がかかるようになっていき、道を歩いても声がかかるほどで、学校に行くのも裕樹が運転する車でないとファンで通えなくなるほどだった。
プライベートでは一美に気兼ねなく二人っきりの時間を作るため社宅から出て近くにマンションを借りて住もうかと考えていた裕樹だったが、あまりの人気のために薫がマンションに通うとゴシップ記事の餌食になるか熱狂的なファンに囲まれる恐れもあったので断念する。
その代わり裕樹と薫の仲を知った一美が一歩譲る感じで2階に移り1階を二人が好きに使っていいと提案する。
「あなたたち、いつからそんな関係だったの?
信じられない。
いくら親の承諾があればOKだという高校生だからって」
呆れる一美を尻目に裕樹は苦笑いする。
実は薫が中学生の時からなんだ。
ばれたら完璧な犯罪なんだなぁ。
「でも、まあ、二人とも真剣なようだし、特に何もいわないけど!!
もし薫を泣かすようなことをしたら私も許さないからね」
真顔で言う一美に裕樹も真剣に頷く。
薫はというと自分の部屋から荷物を裕樹の部屋に運び込んで敷地内だが半同棲生活を送るようになった。
父親は当初さびしそうな顔をしていたが加津江の出産で子育てにのめり込み、加津江は薫と裕樹の同棲に諸手を上げて賛成する。
食事は大抵一美も交え母屋で加津江たちと一緒に食べるが、それ以外はばらばらでお互い干渉しない。
部屋では裕樹の近くで薫は勉強したり雑誌を読んだり、決して裕樹の邪魔はしないけど必ず傍にいる。
つかず離れずの距離感を大事にする薫が裕樹にはとても居心地のいいものだった。
一応シングルベッドは二つ並べておいてあるが、いつも薫は裕樹の中に潜り込んでくる。
それも裕樹にはたまらなく嬉しかった。
「でも、勿体ないわ。
あちこちから引く手あまたじゃない。
稼げるし、これからもっともっと人気が出るのに。
会社にとってはドル箱よ。
ド・ル・バ・コ!!」
一美が片肘をついて残念そうに言う。
ピカレンジャーの一件もあり薫への各テレビ局からの出演オファーは多かった。
しかし、まだ高校生だからと言うのと大学を卒業することを盾に加津江は仕事をセーブする。
薫も裕樹と二人っきりの時間が減るといって、仕事を増やすのは反対だった。
仕事場での二人の関係も変化なく、
「裕樹、飲み物欲しい、喉が渇いたぁ~」
「裕樹、お腹空いた」
と裕樹に指図する薫に『また薫ちゃんの“裕樹”が始まった』と周りのスタッフたちは笑顔を見せる。
「薫、持ってきたよ」
今まで通り裕樹が持ってきたもの以外は口にしない、唯一変わったのは外での薫の呼び方が以前の『薫ちゃん』から『薫』と呼び捨てに変わったことぐらいだった。
ある土曜日の夜。
「ねぇ、裕樹」
ベッドの中で裕樹の腕を抱きしめながら薫が天使のような笑顔で甘えた声を出す。
1回戦が終わりシャワーでクールダウンした後、薫は白地に可愛らしいアニマル柄のパジャマを着ていた。
パジャマの下は何もつけていないので胸の感触が直接裕樹の腕に伝わる。
「なに?」
「ねえ、明日はお仕事ないでしょ」
「ああ」
「動物園行こうよ~。
カバが見たい」
「え?
ダメだろ。
この前みたいにサインをせがまれ人だかりが出来るところだったんだよ」
「この前は何もしなかったからで、今度は変装するわ。
帽子とメガネ買ったの。
それにマスクすれば大丈夫でしょ?」
「用意いいこと」
「ねえ、いいでしょ~」
薫は抱きしめている腕に力を籠める。
薫の胸の突起が裕樹の腕に当たる。
その感触と薫の温かさ、シャンプーや石鹸の香りが再び裕樹を興奮させる。
それを敏感に感じ取った薫は顔を上気させながら腕に力を入れる。
「そうだ、裕樹。
いくらたまっている?」
「え?」
「1回、5千円。
忘れたの?
1年365日としてそれを4年間」
薫は暗算しているようだった。
「あれ?
思ったよりも少ないなぁ。
値上げしちゃおうかな」
「薫~」
「うそ、うそ。
据え置きで~す。
それより、ねえ、カバに会いたい~」
「据え置き…
まあ、いいか。
わかった。
じゃあ、もう1回!!」
「やったー!!」
万歳した薫を裕樹は抱きしめ、その胸に顔を埋める。
薫は二兎を得て笑顔を見せていた。
パソコンが壊れて大騒ぎしてしまいました。
本当は間髪入れずに③まで一気にと思っていたのです。
パソコンを新しくしたのですが、お店で何が主流のパソコンなのかわからず右往左往。
結局、使っていたパソコンに一番近いものにしました。
ディスクトップ→ノート→タブレット→?
時代の流れについて行っていないと、ちょっとショックでしたが負けませんでぇ。
次回はAの巻の最終話の予定です。
翔太によってセックスの奴隷にさせられた葵。
しかし、その翔太は葵の前から立ち去って行きます。
何が起こったのか、二人の関係は?結末は?
乞うご期待ください。




