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AとK  作者: 東久保 亜鈴
21/29

Aの巻(その八①)

季節は巡り、高校2年生になった葵。

翔太との同居生活もしっかりと馴れ、居心地の良さを噛みしめる日々。

しかし、翔太との関係は葵が思うように進まず、不満が募ってきます。

そんな時、クラスのイケメン男子生徒が葵に目を付け、すり寄って来る。

翔太に不満を持っている葵は、徐々にその男子生徒に好意を抱き始めます。

そして、とうとう翔太のマンションを出て行くことを決断してしまいます。


季節は流れ、葵と翔太の奇妙な同居生活の1年以上経ち、葵は高校2年生に進級していた。

10代後半になり、まだまだ発育途中だが体の線が丸みを帯びてくる。

衣食住が安定しているせいか、出会った頃とは見違えるように肌や髪にも艶や張りが出てすっかりと綺麗な女の子になっていた。

「行ってきまーす」

「いってらっしゃい」

いつも決まった時間に元気に学校に行く葵を笑顔で送り出す翔太。

一時期、オンライン授業で家にいることが多かったが、2年に進級するとオンライン授業はほとんどなかった。

すっかり葵との同居生活も慣れたと思われた翔太だったが、逆に日々綺麗になっていく葵を持て余す日々に苦労を強いられていた。

ミディアムヘアより短いロブヘアの黒髪がしなやかに揺れる。

元々綺麗な顔立ちも一層綺麗になっていく。

何よりも葵から香る若い女性の芳しい香り翔太を惑わす。

まったく、日々綺麗に、可愛くなっていくこと。

葵の出て行った玄関を眺めながら翔太は頭を搔く。

元々の土台がいいのだろうけど、若々しい色気も出てきて…。

いかん、いかん。

やっぱり女性はむんむんと色気がある方がいい…。

どちらかというと狐顔、目つきはきついが、笑うと可愛いし、何よりも抱きしめると折れそうな華奢な体。

抱きしめたらいい匂いだろうな。

って、違う違う。

俺はロリコンじゃないんだぞっと。

そう思いながらも下半身がもぞもぞするのを感じ、翔太は苦笑いをする。

女性の体に何年も触れていないんだぞ。

自分史上、もっともプラトニックな生活を送っていること。

何時から俺はガンジーのような人格者になったんだ。

で、あの笑顔。

吸い込まれそうな済んだ瞳。

可愛らしい唇。

俺は人格者でも、達観論者でもないんだ。

どうしよう。

そのうち我慢ができなくなったら。

いや、そんなことはない。

俺は、保護者だ!

ふとベランダで風に気持ちよさそうにたなびく洗濯物が目に入る。

吊ってある洗濯物干しハンガーに翔太のトランクスと一緒に葵の白いスポーツブラ、白地に水玉模様のショーツ、濃紺の重ね履きがかかっていた。

洗濯物は二人で手分けをし、ブラウスなどの大物は翔太が、下着などの小物は葵が干すというのがいつのまにか二人の暗黙のルールになっていた。

大人のランジェリーしか見たことのない翔太にとってスポーツブラや可愛らしいショーツは新鮮で刺激的だった。

それに濃紺のブレザーの下に着る白いブラウスも刺激的だった。

な、何を考えているんだ、俺は。

確かに濃紺のブレザーにスカート、白いブラウスに可愛いリボン、暖かそうな紺のセーターと女子高生はそれなりに良いのだが。

それに目移りすると、本当にやばいんじゃないか…。

いかん、いかん。

本当に遺憾の意だ。

おっと、始業時間になっちまう。

コーヒーでも入れて、仕事だ、仕事。

今日の夕飯は何にしようか。

葵は好き嫌いなく、いつも食事を笑顔で美味しそうに食べる、その笑顔を見るのが翔太にとっては一番の楽しみになっていた。

コーヒーを淹れ、仕事のために部屋に行く翔太の背後でが風に揺られた二人の洗濯物が絡み合っていた。


学校の休み時間。

「えー?!

 テニス部のマネージャー?」

「うん。

 去年の3年生が卒業しちゃって、マネージャーが足りていないの。

 ただでさえ、ピーピー状態なのに、夏合宿なんて無理よ」

葵と仲のいい楓花が嘆いて見せる。

「テニス部って、何人いるんだっけ?」

「1年から3年まで、男女合わせて100人もいるのよ。

 それなのにマネージャーなんて、5人も卒業しちゃって今、私含めて3人。

 手広く声をかけているんだけど。。。

 ねえ、葵。

 お願い」

楓花は拝むように手を合わせる。

「無理よ。

 私、部活やっている時間なんてないのよ」

葵は、学校が終わると夕飯の買い物をしながら家に帰り、洗濯物を片付けたり、翔太のために夕飯を作ったりするので、部活は入っていなかった。

翔太からは買い物は1週間分まとめてやればいいし、洗濯物を取り込むくらいなら仕事の合間でもできる、それに夕飯も適当でいいのだし、少し遅くても一緒にやるから部活など好きなことをしていいと言われていた。

特に学生生活でしかできないことがあるのだから家事など気にしなくていいと言われていたが、葵は居候の身でもあるし、なによりも翔太の世話を焼きたかったので、特に部活をするつもりもなかった。

「それに葵は頭いいでしょ?

 今回のテストも学年トップ10だもん。

 部活やると内申もいいって噂よ」

「トップ10っていったって、たまたま10位になったくらいよ。

 それに大学進学はしないから、内申書は関係ないわ」

「そうだったわね。

 でも、勿体ないな。

 それだけ頭がいいのに。

 国立の大学に行けば授業料も安いって。

 葵なら十分、狙えるよ」

「ありがとう。

 でも、私、大学には興味ないから。

 それよりも早く社会人になって働かないと」

高校に行かせてもらっているだけで十分。

高校に通わせてもらっているのも夢のような話で、とても大学のことなど考えてもおらず、早く社会人になって、少しでも姉や翔太に恩返しをしたいという頭しかなかった。

「でも、少しは進学したいんでしょ?」

「ううん。

 全然。

 そんなことより、マネージャーの話は?」

「そうそう。

 で、引き受けてくれる?」

「うーん…。

 他になる子がいなかったら、夏合宿の時のお手伝いくらいなら考えてあげる」

「まあ、いいか。

 気が変わったら、葵ならいつでもオッケーだからね」

「はいはい」

そんな二人のやり取りを、同じクラスの男子が見ていた。

「廣瀬か?

 それとも綾瀬楓花か?」

「そうだな。

 両方ともいいが、廣瀬の方かな」

「へぇー、加山は目つきのきつい女がいいのか」

「そういう知念は綾瀬の方か?」

「そうさ。

 可愛いし、胸の大きいじゃないか」

「でも、廣瀬の方が勉強もできるし、使い道はあるぜ」

「確かに。

 じゃあ、両方とももらっちゃおうぜ。

 加山が廣瀬を落として、それで綾瀬を俺に回してもらう。

 それでいこう」

加山と知念はともに陸上部で、そこそこ美形の男子。

女子生徒からも人気がある方だった。

それをいいことに二人は高校1年から気に入った女子生徒をナンパしては遊んで、飽きたら別れるという素行に問題のある生徒だった。


放課後、帰ろうとする葵を加山が呼び止める。

「廣瀬。

 悪い。

 数学を教えてくれるか?」

「え?

 いいけど…」

「この前の中間で、数学があまり良くなかったんだ。

 期末でも悪いと、やばいんだ。

 今日習った公式なんだけど」

「ああ、あれね」

葵は男子学生から声を掛けられる、特に同じクラスの男子から声を掛けられることもほとんどなかった。

中学の時は、するどい目つきととっつきにくい雰囲気があり、また姉の影響があったせいかほとんどクラスで孤立していた。

高校生になると、いろいろな中学から入って来て姉の噂も薄まり、特に茜は中卒だったため高校には一切伝説のようなものは知られていなかったし、翔太と暮らすようになって、雰囲気も柔和になっていたが、自分から話しかけるようなことはなかった。

翔太やバイト先の大人とはよく話をするが、加山のような同学年の男子生徒の声を掛けられるのは初めてと言っていいくらいで、驚きと新鮮だった。

「なので、この公式のポイントはここ」

「へー、なるほど。

 簡単じゃないか。

 廣瀬に教わった方が、先生の授業より良くわかる。

 サンキュー!

 また、教えてな」

「うん」

葵は翔太にいつもわからないところを教えてもらい、教え方の上手い翔太のやり方がいつの間にか身についていた。

廣瀬こいつは、見っけもんだな。

間近で見ると、まあまあだし、遊ぶだけじゃなくて、上手く使えばこっちの成績も上がるな。

それに擦れていない、というか全く男に慣れていないみたいだし、簡単に落ちそうだな。

加山は、葵を手玉にできるtoiu

確信を抱いていた。

加山君かぁ。

爽やかでスポーツマンだし、何かいい感じ。

葵は葵で加山に興味が沸いていた。


「ただいまー」

葵が学校から翔太のマンションに帰ると、翔太が部屋のドアから顔を出す。

「お帰り」

「翔太さん。

 今日の夕飯、何食べたいですか?」

「ん?

 何でもいいよ。

 たいへんだったら仕事が終われば、俺が適当に作るから」

そう言うと、また、部屋の中に戻っていく。

「あ…」

仕事中なので呼び止めるわけにもいかず、葵は閉まったドアを見送るだけだった。

それから気を取り直し、部屋に戻り普段着に着替え、ベランダに干してある洗濯物を取り込み、そして畳む。

翔太のブラウスを畳みながら、葵はふと手を止める。

翔太さんの食べたいものを作りたかったのにな。

翔太さん、私のことをどう思っているのだろう。

一緒に暮らし始めて1年以上たつのに、まるで子供か、よくて妹扱いなんだから。

高校生になって少しは女らしい体つきになってきていると思うのに、全く興味がないみたい。

葵は日々綺麗になっていく自分の姿に悶々としている翔太のことが分かっていなかった。

ゲームしながらワザとくっ付いても何もしないし…。

中学3年の時、一度だけ抱いてくれたのに、あれで懲りちゃったのかな。

一瞬だったし…。

やっぱり、私のことなんか眼中にないのかな…。

今日の加山君みたいに傍によって楽しそうにしてほしいのに。

そう言えば、加山君が傍にいた時、ドキドキしたな。

いけない、いけない。

私には翔太さんがいるのに。

翔太さんだって、いつも優しく話しかけてくれるし、一緒に食事やゲームもしてくれるのに何か足りない。

いけない!

そんなことより、夕飯何にしよう。

せめてお肉が食べたいとか、お魚が食べたいとか言ってくれると作り甲斐があるのだけど。

加山君、また、話しかけてくれるかな…。


葵の期待の通り、翌日から加山は数学だけではなく、各教科について放課後に声をかけてくるようになる。

「廣瀬って、数学だけじゃなくて、英語も物理もなんでも得意なんだな」

「えー?!

 そんなことないよ。

 ちゃんと授業を聞いていればわかるよ」

「あの授業で?

 よっぽど廣瀬から教わった方がわかるって」

「そうかな」

まぁ、翔太さんの真似をしているんだけど。

葵は照れ臭そうに笑う。

雑学の塊の様は翔太は、高校程度の学科なら全教科を万遍なく教えることができたので、葵は困ることはなかった。

それに、翔太の教え方は面白く、頭にぐいぐい入って来るほどだった。

「なあ、お礼にアイスおごるから食って帰らないか?」

「アイス?

 アイスクリーム?」

「ああ。

 ほら、ちょっと離れた商店街に美味くて大きなソフトクリームを売っている店があるんだ。

この前、部活の帰りに皆で行って、美味かったんだ。

知らないだろ?」

「うん」

「だろ?

 今日、どう?

 部活ないんだ」

「今日?」

「予定あるのか?」

彼氏なんかいないって知念が言っていたよな。

知念の情報は確かなはずだが。

困った顔をする葵を見て加山は怪訝そうな顔をする。

「今日は、ちょっと都合が悪いの」

帰って家事しないと。

葵は翔太の顔を思い出すが、加山が傍にいた方が胸が高まっているのを感じる。

「いつならいい?」

「え?」

「いつなら都合がいい?」

「う、うん」

そうだ、翔太さん金曜日は会社に行くって言っていたな。

葵は翔太のスケジュールを思い出した。

「金曜日なら」

「明後日か。

 オッケー、その日は部活さぼるから、帰りに行こう」

「さぼるって、大丈夫なの?」

「ああ、大丈夫。

 たまには息抜きだよ。

 じゃあ、今度の金曜日、放課後にな」

「うん」

加山は葵にウィンクをする。


金曜日。

葵と加山は、加山のお勧めのソフトクリーム店にいた。

「ここのお勧めは、このレインボーマーブルだよ」

レインボーマーブルは、チョコにバニラ、イチゴ、バナナ、抹茶、パイナップル、マンゴー、夏みかんなどの中から4種類の味が楽しめる人気のソフトクリーム。

「すごーい」

葵は、そのカラフルさと20cmはあろうかと思える高さに目を見張る。

「4種類だけどレインボー(7色)というのは、少し胡散臭いけどな」

「あははは。

 でも、美味しそう」

「食べようぜ」

「うん」

二人は店先でソフトクリームを頬張る。

「美味しい!

 冷たくて、いろいろな味が混じって、すごく美味しい!!」

葵は嬉しそうな顔をしてソフトクリームを頬張る。

へぇ、こいつ、結構可愛い笑顔じゃん。

ますます、落とし甲斐があるな。

加山は葵の可愛い笑顔を見て、自分のものにして楽しもうと邪な思いを強くしていた。

その日は、アイスを食べながら面白い話をして葵を歓ばせ、そこで別れる。

がつがつしたら、上手くいかないもんな。

徐々に雰囲気をよくして、甘い言葉を掛ければ女なんてイチコロだ。

考えることは一丁前のプレイボーイのようだった。

それからも、加山は葵にこまめに話しかけ、また、お店に誘うようになり、葵も徐々に加山に心を許すようになる。

一週間後の土曜日。

加山はファッションホテルの一室で女性もののブラシや化粧道具、スマートフォンが散乱するベッドの上に全裸でいた。

その加山の体の下には葵の学校でマドンナと呼ばれる美人の女子学生が、やはり全裸で加山を迎え入れている。

「なあ、陽子」

「よ、陽子先輩でしょ…」

「はいはい、陽子パイセン」

「もう、なによ~」

加山は腰を激しく動かしながら、息を切らせて話しかける。

陽子と呼ばれた女子学生も息を切らしながら甘えた声で答える。

「彼氏パイセンより、いい?」

「もう、何を言い出すかと思ったら…

 いいに、決まっているでしょ。

 うっ」

「くぅ…

 陽子先輩、最高。

 もう出そう」

「私もいい気持ち」

「な、中に出すよ。

 いいだろ」

「だ、だめぇ。

 ダメだったらぁ」

そういいながら陽子は両脚を加山の脚に絡める。

「あ、いく。

 いくぅ…」

加山は上半身をそるようにして、陽子の中に放出すると、くたっと陽子を上から抱きしめる。

「あとで、ピル飲もうね」

「もう、嫌な子」

そう言って加山は陽子から離れるが、陽子は余韻に慕っているようにぐったりと寝そべっていた。

「そう言えば、今日は彼氏パイセンは?」

陽子は加山の1年先輩で、同学年に彼氏がいた。

「ん?

 彼は、今日は模擬試験だって」

「彼氏先輩は医学部志望だっけ?」

「そうよ。

 お父さんがお医者様だから、あとを継ぐんだって

 終わったら電話あるわよ」

「え?

 じゃあ、第二ラウンドは彼氏と?」

「バカね。

 彼は真面目だし、帰ったら模擬試験の答え合わせよ」

「えー?!

 じゃあ、寂しいじゃないか」

「だから、こうやって無償で付き合ってあげているんでしょ」

陽子は半身を起こし、悪戯っぽい笑顔を見せる。

「あ?!

 もう、中に出すから…。

 ほら、出てきちゃったじゃない」

そう言って足を開いて加山に見せる。

陽子の中から零れ出る白い液体を見て加山は何となく優越感を覚える。

「ティッシュ、とってよ」

「はいはい」

だめだめ言いながら足を絡めて離さなかったくせに。

怒ったように言う陽子に加山笑いながらティッシュを渡しながら耳元で囁く。

「彼氏とどっちが良かった?」」

「もう。

 彼氏とは、まだ、片手よ。

 それに気持ちよくなる前に終わっちゃうし」

「そうなんだ。」

「でも、結婚するなら今の彼氏よ。

 お医者さんのお嫁さんになるんだから、変な気を起こさないでね」

「はいはい。」

玉の輿狙いか。

女は怖いな。

でも、遊ぶのにはちょうどいい。

ルックスもいいし、あれもいい。

「そうだ。

 ピルって、やっぱり病院に行かないと手に入らないの?」

「え?」

一瞬怪我んな顔をしたが、すぐにニヤニヤする。

「最近、同級生の女の子を狙っているんでしょ?」

「ど、どうして?」

「学校中、皆に知れ渡っているわよ。

 なんてね。

 嘘よ、嘘。

 知念君から聞いたわよ。

 同じクラスの女の子なんだって?

 この前まで付き合っていた子、あっさり捨てちゃって。

 今度は、どんな子なの?」

「上手くいったら教えてあげるよ」

「何言っているのよ。

 薬のことまで気にするってことは、十分、脈ありなんでしょ。

 きっと、ねんねの子ね」

ちっ。

勘だけは鋭いな。

「いいわよ、教えてあげる。

 今どきはネットで買えるのよ。

 知り合いがいるから買ってあげようか?」

「ああ、是非頼む。

 お金は払うから」

「当然よ。

 それとここのホテル代も、今日はおごりね」

「はいはい」

しっかりしてやがる。

しかし、彼氏がいるのに初めての男が俺なんだから、大した女だ。

加山は陽子を見ながら苦笑いした。


一方、葵は土曜日の夜、裕樹はいつものようにゲーム機をモニターにつなげゲームの準備をしてた。

「葵ちゃん、今日はどのゲームをする?」

夕飯の片づけ後、お風呂に入り終わると、眠るまでの少しの間、二人はゲームを楽しむのがほぼ日課になっていた。

「うーん。

 今日は止めておきます。

 何か疲れちゃったみたいで。

 ごめんなさい」

意味ありげのような顔で答える葵。

何かあったかな?

もしかして、学校で好きな男ができたかな。

翔太の勘は鋭かったが、そんなことはおくびにも出さなかった。

「大丈夫?

 体調が悪いのか?

 バイトがきついんじゃないか?」

ワザと違う話で誤魔化す。

「ううん。

 大丈夫です」

「学校でなにかあった?」

「大丈夫ですって」

あっ。

心配してくれる。

少し嬉しくなった葵は、はにかむ様に笑う。

でも、一緒にいるんだから普通かな…

「心配掛けてごめんなさい。

 本当に大丈夫です。

 横になって休めば、良くなります」

「そうか。

 例のウィルスの変異株も流行っているし、具合が悪くなったら遠慮なく言いなさい。

 熱冷ましだとかある程度薬は常備しているし、いざとなれば救急外来に連れて行くから」

「救急外来?!

 そんな大げさな。

 大丈夫ですって。

 でも、心配してくれて、ありがとうございます。

 じゃあ、部屋に戻りますね。

 お休みなさい」

すこし憂いのある顔をして葵はぺこりと頭を下げるとリビングを出て行く。

「お休み。

 何かあったら、遠慮なく言ってね」

「はーい」

葵の背中に声を掛けると、振り向いて笑顔を見せ返事をすると自分の部屋に戻っていく。

あれは男についての悩みだな。

まったく、ますます可愛くなっちゃって。

そうでなくても若い男、高校生の男が放っておくかないか。

翔太の欲目ではなく、葵は日に日に綺麗に、また可愛くなっていた。

でも、心配していたことが現実になるとはな。

彼氏ができたらどうするかな。

やっぱり、ここを出て行くだろうな。

違う男とイチャイチャしている葵ちゃんを想像しただけで、面白くなくなる。

やっぱり、同居はこちらから願い下げだな。

そうすれば、また、昔のような生活に戻れるな。

最近、ウィルスも前ほど恐れるものでもなくなってきて、皆、ぼちぼち外に出始めているしな。

新しい大人の女を探さないと。

そうそう、今年入った新人の中に滅茶可愛い女の子がいるって言っていたっけ。

今度の会議に出てくるって言っていたから楽しみだな

そう思いながら急に見知らぬ男に抱かれている葵を想像し、翔太は舌打ちする。

止め、止め。

俺も焼きが回ったか。

酒でも飲んで寝よう。

出したゲーム機を片付け、翔太はウィスキーの瓶とコップを片手に自分の部屋に戻っていった。


ドサッ

部屋の戻った葵は、ベッドの上に身を投げ出すようにして寝そべる。

それから仰向けになると天井を見上げる。

加山君…。

陸上部の選手で、カッコいいし、優しいし、面白い。

同い年なのに頼りがいもある。

いっぱい、いっぱい話しかけてくれるし、二人でソフトを食べに行ったり。

私のこと、好きなのかな。

そうじゃないと二人っきりでソフトを食べに行ったりしないよなぁ。

もし好きって言われたら…

付き合ってって言われたら私どうしよう。

私の心の中でも、加山君の存在は大きくなるばかり。

言われたら、喜んで付き合う?

翔太さんも好きだけど、私のことなんか眼中にないし。

特に一緒に暮らし始めてから、私のことを女性として見てくれていないしな。

最初から好きだって言って、抱きしめてくれた方が、こんなに悩まないし、嬉しかったなぁ。

もし、私が加山君とお付き合いしたら、ここにはいられない?

そうよね…。

折角、居心地の良い場所を見つけたのに。

こんなに暖かくて気持ちのいい所、心が落ち着く場所なのに。

血のつながっていない翔太さんと別の男の人と付き合っている私が同じ屋根の下にいるなんて、もし、加山君に知れたら何て思うだろう。

もし、知らない男のこと付き合っていると翔太さんが知ったらどう思うだろう。

それを考えると、ここには居られなくなる。

どうしたらいいの?

お母さん、お姉ちゃん。

一粒の涙が葵の頬を濡らす。

暖かで柔らかい布団の中で、いつしか葵は眠りについていった。


「寝られん!」

ウィスキーの瓶を半分空にして翔太はつぶやく。

だめだ。

あんなに可愛くなった葵ちゃん。

ノックして部屋に入って来てくれないかな。

そうしたら、全身全霊を掛けて抱くのに。

「来ないかな」

つい声に出す。

「こっちの部屋に入って来いよ~」

少し大きめの声を出すが、廊下は静まり返っていた。

まぁ、当たり前だよな。

翔太は、また、ウィスキーを口に含む。

ふと、見知らぬ男の腕の中で快楽におぼれた顔をする葵を想像する。

いかん、いかん。

俺以外に気持ち良くさせる男なんて他にいないぞ。

酔いは結構回っていて、頭の中は訳の分からぬ良からぬ思考が渦を巻く。

折角大事に育ててきているのに、他に持っていかれるだって?!

とんでもない。

あれは俺のだ!

何を考えているんだ?

俺は一体…。

いきなり眠気に襲われ、翔太は布団に横になると、眠りに落ちて行った。


ゴソゴソ。

葵は布団の中に何か違和感を感じて目を覚ます。

体は布団の中で誰かに押さえつけられていて動かせなかった。

「?!」

ゴソゴソ

男の指が乳房に触れる。

気が付くとパジャマの前ボタンは全部外され、左右に開かれ胸があらわになる。

下半身は、パジャマのズボンとショーツが脱がされ何も身に着けていない状態だった。

「翔太さん?

 何をするの?

 やめてください。

 うっ…」

男の唇が葵の乳首を口に含み吸う。

「うう…」

さんざん舐られていくうちに、恐怖以外に気持ちよさが葵を襲う。

違う…

翔太さんじゃない…

男が葵の上半身から離れ、顔を葵の前にさらけ出す。

「き、加山君?!」

驚いて声を上げようとするその口を加山の口が塞ぐ。

そして、加山のねっとりした熱い舌が葵の舌を探し出し、絡めてくる。

「ん…ん…」

加山の右手が葵の内腿の間に割り込んでくる。

ひっ!

驚く頭とは裏腹に、葵の両脚は加山の手に促されるように自ら左右に開いて行く。

加山は体制を整え、改めて葵の上に覆いかぶさる。

葵は頭を左右に振るが、拒む言葉が出てこない。

それどころか、体が勝手に加山を待ちわびているようだった。

加山の両腕が葵の両膝を内側から持ち上げ、腰を寄せてくる。

そして、熱い肉の棒が葵の秘部に触れると、一気に葵の中に入って来る。

(くぅぅ)

痛みよりも今まで感じたことのなかったぞくぞくした快感が葵を襲う。

(だ、だめぇ~)

体が痙攣したところで、目が覚ました。

え?

夢?

ベッドの上で半身を起こし、葵は頭を押さえる。

なんていう夢を見たの?

私、加山君のことが…好きなんだ…欲しているんだ。

改めて驚愕の事実を認め、喜びと絶望に身を震わす。

ここには、翔太さんの家にはいられない…


いろいろなことが頭の中を駆け巡り悶々とした葵は、朝、言葉少なげに学校に行くため家を出る。

それを見送り、翔太は頭をかく。

昨日の夜中に騒いだのが聞こえたかな。

いや、違う。

いよいよ、学校の男の子が本気で好きになったか。

まぁ、年も近いし、当たり前だのクラッカーだな。

葵ちゃんの性格上、ここを出て行くか。

随分、葵ちゃんがいる生活も馴染んできたし寂しくなるな。

だったら、とっとと手を出しておけばよかった。

いや、それはだめだ。

はぁ。

何て真面目な俺なんだろう。

でも、寂しくなるな…

翔太はため息をつきながら仕事のために部屋に入って行った。

それから葵の心の動きは行動に顕著に表れてくる。

学校では加山と一緒にいるときは楽しそうに良く笑い、良く喋る。

逆に家に帰って来ると、翔太を避けるように、また、会話もほとんどなくなっていた。

翔太は、そんな葵を問い詰めたりはせずに自分から言い出すのを待つことに決め、優しく見守っていた。


そういう日々が続き、その週末の金曜日。

いつものように放課後、教室に加山と二人きりで授業のポイントを教えていた。

「え?

 今日は、これから部活なの?」

「ああ。

 ごめん、大会が近くてさ。

 だから、アイスを食べに行く約束はまた今度にして」

「うん。

 いいよ。

 大会、頑張ってね」

「ああ、頑張るさ。

 そうだ。

 日曜日なんだけど、家に遊びに来ない?

 両親出かけていて、暇なんだ。

 ゲームをあるし、良いだろ?

 それに今日の続きも教えてもらいたいし。

 ね、いいだろ?」

「え?

 日曜日は…」

日曜日はアルバイトだと言おうとした葵は口ごもる。

そうだ。

たまには用事があるって言って、アルバイト休んじゃおう。

今まで休んだことなかったし、いいよね。

明日、バイトに行ったらお休みをいただきますって、店長にお願いしよう。

「都合悪いの?」

「ううん。

 大丈夫。」

「本当?」

「うん」

嬉しそうな顔をする加山を見て、葵も嬉しくなる。

すると加山はきょろきょろと教室にほかの生徒がいないことを確認するように見まわす。

「?」

そして誰もいないことを確認すると、何だろうと思っている葵の肩を抱くようにして引き寄せ唇を重ねる。

「!!」

最初は驚いた葵だったが、すぐに目を閉じ、加山を迎え入れていた。

実際にはほんの数秒だったが、葵には何分にも思えるくらい唇を重ね合わせていた。

「俺、廣瀬のことが好きだ。

 何があってもお前のことを守るから。

 本気だから。」

合わせた唇を離すと加山は葵の耳元で囁く。

「うん」

葵にとっては初めて異性に告白され、夢心地だった。

「じゃあ、日曜日。

 駅で待ち合わせしよう。

 駅まで迎えに行くから」

「うん」

嬉しさから天にも昇る気分で、涙を目にいっぱいためながら教室から笑顔で出て行く加山の姿を見送っていた。

やった。

落ちたぞ。

これで、5人目。

高校生活の目標10人切りに一歩近づいたぞ。

明日、押し倒して1発やりゃー、俺の女だ。

遊ぶだけ遊んだらポイッだし。

そうだ、陽子先輩からもらったピル使おう。

やっぱ、生の方が気持ちいいしな。

意気揚々と部活に行く加山。

あっ…。

いよいよだ…。

どうしたらいい?

そうだ、お姉ちゃんに電話しよう。

現実に戻って、自分の身の振り方を真剣に考える。

翔太の家に居られなくなったら、後は姉に頼るしかない。

葵は寂しい気持ちを抑えつつ、茜に電話する。


その夜、駅近くのファミリーレストランに茜と葵の姿があった。

「どうしたの?

 いきなり電話かけてきて。

 あいつになにか嫌な事されたの?」

葵は首を横に振る。

「もしかして、体を奪われた?」

「違うよ~。

 翔太さんは、何もしないよ~。

 私になんて、興味ないよ」

「何泣きそうな顔をしているのよ。

 そうじゃないとしたら、一体、何があったの?

 私に言ってごらんなさい」

「うん」

葵は俯きながら、加山を好きになったこと、翔太の家にはいられないことを、包み隠さず話した。

「ふーん。

 じゃあ、その同級生の男の子のことが好きになってしまって告られたから、付き合いたいって?

 それで、そんなのにあいつ(翔太)のところにはいられないって?」

葵は涙を流しながら頷く。

その葵に茜はテーブルの上のキッチンペーパーを渡す。

「ほら、涙を拭きなさいよ」

「うん。

 でも、ハンカチがあるから」

葵はポケットからハンカチを取り出し、涙をふく。

あ~あ。

まったく、あの唐変木は、葵を大事にし過ぎだよ。

だから、違う男に惚れちまって。

自業自得だね。

私が言うのもなんだけど、こんないい子、他にどこを探してもいないよ。

勿体ないこと。

あいつだったら、私はいいと思っていたのにな。

どこのどいつに引っかかったことやら。

「お姉ちゃん?」

「ん?

 ああ、話は分かった。

 高校卒業するまでは狭いけどなんとか家においてあげる。」

本当に狭いんだけど。

まあ、居間で寝てもらうか。

茜の住んでいるところもアパートで、間取り的にも葵に一部屋与える余裕はなかった。。

「本当?

 ありがとう。

 高校出たら働いて自立するから」

「あれ?

 その男の子と一緒になるんじゃないの?」

「え?」

葵は顔を真っ赤にする。

「まだ、一緒に暮らすなんて…」

嬉しそうな葵を見て茜は心の中でため息をつく。

やれやれ、あんた(翔太)、もう出番ないよ。

「で、あいつに話をしなくちゃいけないんだろ」

「う、うん

 でも、どう話したらいいか…」

「私が話してあげるよ」

「え?

 お姉ちゃん?

 いいの?」

「ああ。

 葵が話すより、私がビシッと言った方があとくされないわよ。

 明日の夕方くらいに行くから。

 そうね、6時ごろかな。

 その頃には、葵も帰ってきているでしょ?

 それともいない時がいいかな?」

「ううん。

 私も一緒に翔太さんに話すから。

 それまでには帰って来るわ」

やれやれ。

男が家に誘うとしたら、あれしかないよ。

半分はわかってそうだね。

あいつ以外の男にパンパンと穴をあけられ、耕され、種まかれ…

避妊の知識は大丈夫かな?

まあ、それはあとでといいわ…

男とやった後、どんな顔であいつの前に顔を出すのやら。

まあ、いいか…

「じゃあ、あいつに伝えておいて。」

「うん。

 お姉ちゃん、ありがとう」

葵は心が軽くなった気がしたが、反面、少し寂しい気分になった。

レストランを出たところで二人は別れる。

あーあ、肩の荷が下りたような顔をして。

茜は自分が話すと言った時の葵の顔を思い出していた。

まったく、あいつが葵の旦那になっていれば、どんなに安心で、良かったことやら。

しかも、恰好の飲み相手になったものを。

茜は翔太のことが好きだった。

腕っぷしも強いし、何よりも葵のことを考えてくれるし、大事にしてくれる。

普通だったら若い子が「自分を買って」と言って来たら金を出して、パンパンやってポイのところを、身の上話まで聞いて、しかも手を出さない…。

少し出したか。

まあ、同じ屋根の下で暮らしていて一切手を出していないのだから、くそ真面目な奴。

旦那がいなかったら、私が嫁になっていたんだけどな。

あ~あ、残念。

折角、良い飲み友達…良い兄貴…親父ができたと思ったんだけど…。

ほろ苦い思いがこみ上げてくるのを感じながら、後ろに手を組みながら夜空を見上げていた。


年が明け新年おめでとうどころか、まさかのウィルス感染。

折角、その時に執筆をと思っていたのですが。

結局、仕事もたまり、1月中にアップできませんでした。

やれやれ、波乱の年明けです。

思い起こせば昨年の後半から入院したり、結構、ハードな日々を過ごしてきました。

これから福が来ますように。


さて、翔太のマンションを出て行く決心をした葵。

翔太ではなく、陸上イケメン男子生徒を選択してしまった葵。

翔太が、なぜ葵に手を出せなかったのか。

翔太になら葵を任せられると思っていた茜の落胆。

三者三様の葛藤が、後半に続きます。


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