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7話 最初の街 ベルロンド

「ほぇ~。ここが街なのね~!」

「そんなきょろきょろしなくても……ま、最初なら仕方ないか」


 私とナツキは最初の街、ベルロンドに来ていた。


 この街は周囲を何にも囲まれおらず、外との境い目はない。ただ、そこに近づくと、『最初の街 ベルロンド』と出てくるので、きっとここがそうなんだろう。


 街は木造建築の建物がほとんどで、時々煉瓦等で作られている。そう言った程度の街だった。


 街中では様々な動物が歩いているのが見える。


 すると、どこからともなく声が聞こえてきた。


『ここが最初の街になります。まずは最初に門番に話しかけてください』


 その声は最初のキャラメイクをした時の声だ。


「声が聞こえた」

「それがアナウンスさんよ。最初はその声が聞えたと思うんだけど」

「んー。聞えなかったと思うんだけどなぁ」


 実際は彼女が叫んでいたため聞えていなかっただけである。


「それで、門番って誰?」

「あのハリネズミの兵隊よ」


 ナツキに言われて見ると、確かにハリネズミが槍を口に咥えて周囲を警戒している。


 その背中の針は飾りかな?


 私が近くに行くと、そのハリネズミはこちらを向いてくる。


「あの!」

「おお! よく来たな! 待っていた。さぁ、ついてくるがいい」


 そう言ってそのハリネズミは槍を咥えたままトコトコと歩いていく。上の方にあった黄色い矢印の近くに、ハリネズミの兵士について行けと書いてあった。


「ついて行けばいいのね?」

「そうよ。でもこんなに速く移動できるなんて……羨ましいわ」

「それが生きがいみたいな所あるし?」

「リアルでもそんなに走ってる?」

「だって楽しいんだもん」

「貴方にマグロってあだ名がつかないか心配だわ……」

「もうついてるよ」

「え?」

「あ。ついたみたいだね」


 ハリネズミの兵士は街中を真っすぐ歩いていき、とある場所に到着した。


 遠目にはいっぱい人がいたように見えたけど、ハリネズミと出会ってから誰とも出会わない。


「ここの中で登録してくれ。詳しいことは中に入ればわかる」

「分かった」

「それと、くれぐれも街中で争いごとを起こすなよ。じゃないとこの槍が貫くからな」

「はーい」


 針はファッションなんだと思うことにした。


「よし。それじゃあ達者でな」

「ありがとー。兵隊さんもお気をつけてー」


 そう言ってハリネズミは帰っていく。


「それじゃあ早速」


 私は生き物互助組合と書かれた入り口の大きな建物の中に入っていく。


「おーすごいね」

「そうでしょ? ここは生き物互助組合。英語の頭文字を取ってCMAGってと呼ばれているわ」

「CMAG……」


 ちょっと呼びにくいな。


「皆はシーマグとか、もっと縮めてシマって呼んだりしてるわよ。シマの依頼があってさーとか」

「なるほど」

「ま、他のゲームとかである冒険者ギルドみたいな物よ。だから最後のギルドって言うのだけで呼ばれるのが一番多いかな」

「へー。何が出来るの?」

「あれ? あんまりこういうゲームってやらないの?」

「うん。その間大抵走ったりしてる」

「……流石に寝てる時は止まってるよね?」

「何と勘違いしてるか分からないけど普通に横になってるよ?」

「そ、良かった」


 寝相はちょっと悪くて人からは爆心地って言われるけど。


「それで、何する場所なの?」

「そんなのはいけばわかるわ」

「それもそっか」


 私はのしのしとギルドの中に入っていく。


******


「すごーい!」


 建物の中は全て木造建築だったのだが、大小いり混じる作りになっていた。


 そのギルドの中には大きな鎧をつけたゾウや、私よりも小さいネズミ、屋上の方にはトリが羽ばたいている。


 受付の様な場所にも自身に合った場所になっているらしく、私は丁度いいサイズの受付の所に黄色い矢印が出ていた。


「説明聞きたいんだけどいい?」

「いいわよ。ここにいるのが慣れたら他の場所に行く気にならないわ」

「寄生するのはやめてね?」


 根っことか体に張られたらちょっと嫌だ。


「そんなモ〇みたいなことはしないわよ」

「〇ス?」

「有名な狩りゲームの話よ。いいから話を聞いてきなさい」

「はーい」


 私は黄色い矢印の出ている受付に行く。そこには小さな黄色いベストを来たシマリスが出迎えてくれた。


「ようこそ生き物互助組合へ。どういったご用件でしょうか?」

「ハリネズミの兵士さんに中で話を聞けって言われたんですけど」

「なるほど、ではまずは生き物互助組合への登録からお願いしてもいいでしょうか?」

「はい!」

「では、こちらにお名前等の情報を記入していってください。分からないことがあればヘルプで説明を読むことが出来ます」


 受付のシマリスさんがそう言うと、私の前にはステータスボードの様な半透明の記入欄が出てくる。


 私はそこに様々な情報を記入していく。


「ねぇナツキ」

「……」

「ナツキ?」

「……」


 あれ? 返事がない。


 私は少し頭を揺すって反応を見る。


「うわ! ど、どうしたの?」

「どうしたのって反応が全然ないから心配になって」

「ごめんごめん。ちょっと調べ物してて」

「調べ物?」

「うん。キノコってなる人があんまりいなくてさ。でも情報は欲しいから調べてるの」

「そうだったんだ。私は全然調べないから」

「そういう楽しみ方もあるのは知ってるから邪魔はしないわよ。それで、どうしたの?」

「称号ってあるんだけど、これって効果あるの? というか切れたりするの?」

「称号もパッシブスキルと同じ扱いで操作しないと基本発動してるはずよ。最初から切るとかも設定で出来るけど、基本的にはメリットが多いからあんまりやらないことの方が多いわね」

「でも、ゴリラゴリラゴリラの天敵は切って置いた方がいいのかな?」

「どうして? って、ちょっと見るわね」


 ナツキが称号を確認し始めたので、私もう一度取得した称号を確認する。


 最初の森の主……シルバーバックコングを倒した者に与えられる称号。この称号を所持していると『最初の森』でのモンスターとの戦闘時、攻撃力が少し上がり、逃走時、少し逃げやすくなる。


 バスターゴリラ……シルバーバックコングを5発以内で倒した者に与えられる称号。この称号を所持している者はゴリラ系統のモンスターへの与ダメージ上昇。ゴリラ系統のユニークモンスターへのエンカウント率上昇。


 最初の森の真の主……ダークアームゴリラを倒した者に与えられる称号。この称号を所持している『最初の森』でのモンスターとの戦闘時、攻撃力が上がり、逃走時、確定で逃走出来る。


 ゴリラゴリラゴリラの天敵……ダークアームゴリラを5発以内で倒した者に与えられる称号。この称号を所持している者はゴリラ系統のモンスターへの与ダメージがかなり上昇。ゴリラ系統のユニークモンスターへのエンカウント率がかなり上昇。ゴリラ系統の敵に狙われやすくなる。


「そ、そうね……。狙われやすくなるのは良くないかしら? でもそんなにゴリラっているのかしらね」

「どうなんだろう。なら切らなくてもいいかな」

「それでいいんじゃないかしら。必要そうになったら切ればいいんじゃない?」

「分かった」


 それからシマリスさんに言われた所を全て埋めていく。


「これでいい?」

「確認させていただきます……はい。これで問題ありません」

「後は何をすればいいのかな?」

「それでは説明させて頂きますね。『デモムービーを見ながら聞きますか?』」

「ナツキ、デモムービー見てくるね」

「んー」


 ナツキは調べ物に夢中らしい。折角なので見てみようかな。


「<はい>っと」


 私がはいを選択すると、視界が吸い込まれていく感覚に陥った。


 それからはこのゲームの設定というか、成り立ちを見た。大体ざっくりと説明すると、昔は仲良く暮していた生き物達だったけれど、竜や麒麟等の幻獣と呼ばれる生物が突如としてどこから攻めてきた。何とかこの世界の生き物達は力を合わせて倒せたのだけれど、かなりの被害が出てしまった。そして、その時の影響でこちらの生き物と幻獣の姿が混じったような生き物が生まれた。そいつらは敵で、基本的に仲良くすることは出来ない。なので、見かけ次第倒せるようなら倒してほしい。そして、最近そういった奴らの動きが活発になってきているので、色々な生き物に声をかけている最中だということ。主人公である私もその一人。ということだった。


「そんな設定だったのね」

「それでは登録はこれで終了になります。早速で申し訳ないんですが。一つ依頼を受けて頂けないでしょうか?」

「はい。なんでしょう」


 私がそう言うと目の前に半透明の依頼内容が浮かび上がる。


『門番の兵士と模擬戦を行え』というものだった。これも戦闘のチュートリアルみたいなものかな。


「<はい>っと」

「それではギルドの奥にいますので待っている者に話しかけてください」

「はい」


 私はナツキを連れてチュートリアルに向った。


 それからはスキルの使い方とか、スキルポイントの振り方、スキルリセットなど様々な事を教えて貰った。半分くらいしか分からなかったけど大丈夫だろう。何とかなる。


 そして、その説明が終わった後に、色々な初心者用のクエストが出てくる。


『スライムを10体倒せ』『ゴブリンを5体倒せ』『シルバーバックコングを1体倒せ』『ポーションを5個納品しろ』『道路工事の手伝いをしろ』『料理を作り依頼者に届けろ』等々


「こんなにやらないといけないんだね」

「そうよ。と言っても全部やる必要なんてないわ」

「そうなんだ」

「ええ、折角だから一緒にやりましょう?」

「いいけど……乗ってるの大変じゃない?」

「……慣れるとここって居心地が結構いいのよね。という訳で行きましょう?」

「タクシーにしてるとかってないよね?」

「そ、そそ、そんなことないわよ?」

「いいんだけど……。一人より2人の方が楽しいからね」

「そういうことよ。何か興味ある依頼あった?」

「そうだね……道路工事とか?」

「それが気になるの?」

「うん。だって、道路工事して走りやすくなったら嬉しいじゃん。もっと速度出せるし」

「そう、なら行きましょうか」

「うん! シマリスのおねぇさん」


 私は受付のシマリスに話しかける。


「なんでしょうか?」

「道路工事の依頼を受けたいんですけど」

「はい。では目の前の依頼を確認して承認してください」


 私はさっと依頼内容に目を通す。


 道路工事はそれに必要な物を取って来る。そして、取ってきた物を加工して業者に納品する。最後にそれを使って道を綺麗にするといったことが必要らしい。


「結構長いんだね」

「そうね。ただ、他の依頼とかと一緒に受けることもできるから、同時に受けると楽でいいわよ」

「なるほど」


 私はその依頼を受けて、最初の目的地、『最初の沼地』に行って『粘着質の粘土』を取って来いと言われた。


「なになに、ああ、『最初の沼地』か……」


 ナツキの声音はかなり良くなさそうだ。


「行った事あるの?」

「ないわ!」

「ならなんでそんな嫌そうなの?」

「だって、綺麗なお肌が汚れちゃうかもしれないし」

「ああ、そういう……」


 彼女は艶を大事にするキノコ。それだけは忘れてはいけない。


「でも泥パックとかあるし意外といいかもしれないよ?」

「確かに! 盲点だったわ。それじゃあすぐにに行きましょうか。えっと、沼地だと何が出るのかしらね?」

「モンスターの事? このマッドフッドとかはそうじゃない?」


 名前からして如何にもだと思う。


「そうね、その依頼も一緒に受けて行きましょう。たしか、依頼は5個までは受けられるはずよ」

「なるほど。分かった」


 私は沼地に関係ありそうな依頼を受けると頭の上でピコンという音がなった。


『依頼が受諾されました。方向はこちらです』


 おお、ちゃんと教えてくれるのはありがたい。これが最初に起きてくれれば。(※起きていました)


「それじゃあ行く?」

「ええ」

「それじゃあごー!」

「そんなに急ぐの!? きゃああああああ!!!」

「やっぱりたのしー!」

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