53話 最終決戦⑦
ドオオオオン!
気が付くと、私たちは地面に叩きつけられていた。しかし、ダメージは入っていない。どういうことだろう。
「っち。炎になったせいで物理ダメージは無効か。厄介な」
私が起き上がると、トカゲサルは遠くに移動した後だった。
「逃げるな!」
「逃げるさ。近距離以外は反射される。近距離攻撃は無効化される。誰が近付くものか」
私は再び奴に向かって走り出す。ナツキが声を上げる。
「ハル! どうするのよ!」
「どうするって言っても近付かないと解決しないよ! アキとフユカの攻撃で奴がさっきの技を使えないように牽制して!」
「分かったよー! 火球よ×30! 炎の槍よ×20! イッケー!」
「私の分身も飛ばします!」
アキが魔法を使い雨の様に奴に降り注ぎ、フユカの燃えている分身も同様に飛び立っていく。
この隙に出来る! 私は思ったけど、流石に相手は格が違った。
「ワシが火を吐くのに炎の攻撃が通じるのはおかしいと思わなかったか? こういうことだ炎無効化!」
奴の体が一瞬燃え上がったかと思うと、少しだけ赤みがかる。
次の瞬間。奴の体に全ての攻撃が直撃する。
「やった!」
「まだだねー!」
私の歓声はアキに止められる。
攻撃の煙が消えた後に、奴はさっきと変わらない態勢で立っていた。
「そんな!」
「さっきのは炎攻撃を無効化するのね……。っていうことは」
「今のままだとダメだねー」
「どうしてですか?」
「今私たちは『共有』で炎になってるでしょ? これだと攻撃は全部炎属性になっちゃうのよー」
「なるほど」
ということは私たちは奴に攻撃を当てられないということだろうか。
「だから、奴に攻撃を通すために切るねー」
アキがそう言うと、私たちの体から炎が消える。
よし、これで攻撃が出来るようになった。私は奴に向かって走っていく。
「愚かな。何の為に炎になったか忘れたか! 終末咆哮」
しまった!
「攻撃って分かってりゃ問題ないわ! 『ミラーカーテン』!」
ナツキの張った緑色のカーテンに小刻みにキンキンキンキンキンキンと何かが当たるような音がする。それに、大きな音も聞えない。
「これでどうよ!」
「流石ナツキ!」
「あたしも攻撃はするよー! 熱光線×20!」
「学ばん小娘共が!」
「フユカ! 一緒に合わせて!」
「はい! 『分身』展開! イケー!」
「っく! それは!」
「さっきの奴は使うと動けないんでしょー!? なんとなく分かるよー!」
奴は後ろに飛び、攻撃を躱す。しかし、アキの攻撃速度が速かったからか数発を足に受け、穴を開けていた。
私はそんな奴に向かって『猪突猛進』を繰り出す。フユカの分身は奴の周囲に展開している。そして、私が突っ込むタイミングでフユカの分身が地面にぶつかった。フユカが叫ぶ。
「起爆!」
ドオオオオオオオオン!!!
「何だと!?」
奴が驚きから叫ぶ。
しかし、これは必要な事だった。こうしないと奴に先ほどのカウンターを食らってしまうから。私たちは『共有』で見えているので問題ない。
「いっくよー! これが最後だからね! 『猪突猛進』」
後少し、ほんの後少しで奴の腹にぶつかれる。そんな時に、奴はニヤリと笑った気がする。
「3,2,1、0。終わりだ。貴様の覚醒は限界で……」
「食らえ!」
ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!!!!!
「ぐああああああああああ!!!」
奴は私に弾かれて飛んでいくけど、これだけでは終わらせない!
「まだまだー!!!」
「『ミラーカーテン』!」
ナツキがカーテンを内向きにして張る。よって、奴がカーテンに当たると、私たちの方に返ってくる!
「な!」
「次はあたしだね! 太陽顕現!」
「ぐあああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」
至近距離の為奴が避ける暇はない。アキの全力の魔法が奴を焼き尽くそうと光を放つ。
光が終わった後は、奴の姿はボロボロだ。右足も辛うじて残っている程度で、今すぐにでも千切れ飛びそうだ。
「ぼ、僕もやります! 分身! からの一か所に起爆!」
ドゴオオオオオオオオオオオオン!!!!!
「がああああああああああああああああああ!!!」
フユカの分身が奴の背中で大爆発を起こす。そして、奴が丁度私が走る線上に飛んでくる。
「最期はもらうよ! 『疾走』!」
「っく!」
奴は必死で自身の腹を守る。残った右腕を盾にした。
「無駄だよ! 『牙で切り裂く』!」
私は奴の右腕を切り飛ばし、奴の腹に向かう。
「『猪突猛進』!」
私はがら空きの奴の腹に突進を食らわせた。
ドン!!!!!!!
次の瞬間。私たちの覚醒は時間を迎え、元のサイズに戻って行った。
「覚醒が!」
ナツキが叫ぶ。
「大丈夫だよ……。もう、終わってる」
私は目の前のトカゲサル。いや、マウンテンドラゴンコングから目を逸らさずにナツキに答える。
「え……」
ナツキが視線を上に上げた気がした。その時、奴はぐらりと後ろ向きに倒れる。奴の腹には大きな風穴が開いていた。




