51話 最終決戦⑤
私は奴に向かって一歩踏み出した時、体中が光に包まれた。
「え? 何!?」
「貴様! それは!」
奴が驚いているけど、驚きたいのは私の方だ。光りながら体がどんどんと大きくなっていく。気が付くと私は高さ10m程もある巨大なイノシシになっていた。牙も天を突き刺すほど長く太く力強い。
「これは……」
私が自分の体を見回していると、キングモグーラが教えてくれる。
「それが……覚醒や……。お前はんが技の極致に到達し、覚悟を見せた。せやから発揮することが出来たんや。それが使える時間は短い。やってもうたれ!」
「分かった!」
私は地面を、マグマさえ避けることはせずに走り出す。この程度のマグマなら、今の私なら行けると思ったから。そして、その考えは正しく、マグマを踏んでしまっても一切影響はない。
何でそんなことをしたのか。頭の中にこの体の使い方が流れ込んできた。まるで最初から使い方が分かっていたかのように。
「!」
「おっとぉ!」
私は奴の側を通り過ぎる。奴が私の接近を躱した。私もあまりの速度に対応できなかった。といっても自分の速度が速すぎたというのが正しく。制御するのに手間取りそうだった。でも、
「『猪突猛進』!」
ドカアアアアアアアアアアアアン!!!!!!
「ぬぐわあああああああああああ!!!」
私は奴に『猪突猛進』をお見舞いする。これは『突進』の代わりに得ていたスキルだ。奴は両腕で防ごうとするけれど、それでも私の『猪突猛進』の方が威力が高かった様だ。
「まだまだいっくよー!」
「たった一体が覚醒したから何だというのだ! 近づかせなければいいだけだろう! 焼却光線×3!」
「!!??」
やばい! あの攻撃は! そんな時、上から声が聞える。
「ハル。貴方って人は。本当にすごいわ。皆が諦めても、戦う意思を見せて、覚醒までするなんて……。私も覚悟を決めない訳にはいかないわね!」
頭の上で強烈な光が巻き起こり、私の上に頭にずっしりとした重みを感じる。
そちらを見ると、ナツキが3mはあろうかという巨大なキノコになっていた。食べ応えありそう……。じゃない。すごく凛々しくなっている。
「『ミラーカーテン』!!!」
ナツキが聞いたことのないスキルを唱えると、私の前に緑色のカーテンの様な物が一瞬にして広がった。
そして、奴の光線がそれに当たると、方向を変えて奴の方に飛んでいく。
「バカな!?」
ドオオオオオオオオオン!!!
奴の攻撃が反射され、奴自身に返っていった。
「ナツキ! すごい!」
「ハル! あんた程じゃないわ! 行くわよ!」
「うん!」
「でもその前に! アキ! フユカ! 諦めてないで目を覚ましなさい!」
ナツキがアキとフユカに叫ぶ。
「私たちが先に行って待ってるからね! ゆっくりしてていいよ!」
私はそう残して奴に向かって『猪突猛進』を繰り出す。
「っく!」
「ああ! 空に!」
奴は逃げるように飛び上がり、空に登る。
「これじゃあ攻撃出来ないよ!」
「私の『ミラーカーテン』って行けたかしら!?」
空に上がった奴に、私たちはどうしようかと話していると、
「ごめんね。わたしのううん。あたしが勝手に諦めたりして。最初に決めてた役割はちゃんと守るからー!」
アキの声が聞えたと思ったら、そちらの方でも光る。ただし、その光は大きくなるようなことはなかった。ただし、その姿は燃えている、火の鳥の様になっていた。
「これがわたしの覚醒かー! ちょっと上にお邪魔するねー!」
「燃えないかな?」
「燃えても回復してあげるわ!」
「解決してない!」
「行くわよー! 火球よ×50! 炎の槍よ×30! 炎よ巻き起これ×20! 熱光線×10! 火球よ爆ぜよ! もおまけでやってあげるー!」
ドドドドドドドドドドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンンンンン!!!!!!
強烈な爆風が私たちの元に吹き付けるけど、高さ10mもある私からすれば問題ない。
「ぬううううううううわああああああああああ!!!!!」
「そんな! 無事なの!?」
ナツキの悲鳴が響き渡る。でも、
「大丈夫! ちゃんと効いてるよ!」
私は奴の様子を見てそう判断した。所々ボロボロだし、顔には怒りの為か真っ赤になるくらい紅潮している。
奴は負け惜しみか言葉を放ってくる。
「っち! 貴様ら。よくも3人も同時に……! しかし、その弱点は知っているぞ」
「何だと!」
弱点? 何だろうと思っていると、奴は攻撃を放ってくる。
「焼却光線!」
「効かないっての! 『ミラーカーテン』!」
私たちの目の前に緑色のカーテンが生まれる。しかし、奴の攻撃目標は私たちでは無かった。
奴の攻撃は私たちの目の前、地面に直撃し、土を捲り上げる。
「前が!」
「注意して!」
「意味あるか分からないけど! 炎の絨毯よ×10!」
当たり一面がアキの魔法で敷き詰められる。空を飛んでいるアイツに効くのかは分からないけどやらないよりはましだ。
「ふっ 小娘では勝負をした経験値が足らんのだ」
奴の声が聞えたと思ったら、奴の姿が見えなくなった。
ナツキが周囲を探しながら声を上げる。
「何処に行ったの!?」
「なんか……下から匂いがする」
私は鼻を引くつかせ奴の匂いを追う。でも、下にいるとなると少し厄介だ。というよりも、時間を稼いで覚醒の時間を終わらせるつもりだろう。でも、
「フユカ! お願い! 手伝って!」
私は近くで呆然と私たちを見て居る彼女に助けを乞う。この状況を打開できるのは彼女しかいない!
「ぼ、僕ですか……?」
「うん! お願い! フユカの力が必要なの!」
「ふ、ふふふ。ハルさんが……僕の力を必要。……そうですか。そうですか! なら、僕もハルさんの、皆さんの為に応えない訳には行きません!」
フユカがそう叫んだ瞬間。彼女もまた光り輝きだす。
「フユカ!」
「お待たせしてすいません! でも! 今からでも奴を炙り出します!」
彼女がそう言って輝きが収まった時に彼女自身には一切の変化が無かった。そう、彼女の数が2つに増えていたこと以外は。
「フユカが2人になった!?」
「ええ!?」
「実は双子だったりするー!?」
「違いますよ! でもこれは! こうやって使えるんです! 使い方は念じるだけでいい!」
フユカ2が地面すれすれを走り、どこかを目指して進んでいく。
「そこですね!」
フユカが叫んだ途端、フユカ2が跳ね、爆発した。
「え?」
いや、違った。爆発したと思っただけで、実際はフユカ2が何体にも分身して、100体ものフユカになる。
「101匹フユカちゃん!」
「可愛いわ! 家で一匹飼いたい!」
「あたしの家でも欲しいかなー!」
「日替わりで行きますね! 『オールフィールドサーチ』! そして、ピンポイントショット! あ、何が起きるか『共有』しておきますね」
私の視界がフユカの見ている視界になる。その視界では、何体ものフユカが、地面の中にいるトカゲサルに向かって突撃を繰り出していた。
「ぬぅ! 何だこ奴らは!」
フユカの分身が奴の周囲を取り囲み、泳ぎ回る。しかし、奴は地面の中にいると攻撃は出来ないのか手で振り払うことしかできない。
「やっぱり攻撃出来ないんですね! 『起爆』!」
「え?」
ドオオオオオン!!!
奴のいた辺りから爆音が聞えた。
それから数秒で奴が地面から出てくる。
「ぬわああああああ!!! たまらん! しかしもう許さん。覚醒したから何だというのだ。ワシが葬ってやるわ!」
「ここからが本番だよ! 行くよ!」
「ええ!」
「うんー!」
「はい!」
私は皆を乗せて奴に向かって走り出す。




