47話 最終決戦①
『ハルはログインしました』
時間は8時50分。いつもの時間よりも早く来る。
私がログインをすると、皆が揃っていた。流石皆。私も少しずつログインする時間を早くしているけど皆いつもいる。
「皆早いよー」
「いいじゃない。皆それだけ楽しみなのよ」
「そうだよー。辛い世を生きる女の子の楽しみよ」
「僕も今はこの時間の為に生きている様な気がします」
「私もだよ!」
皆と軽口を交わしながら私の定位置につく。
「最後の確認だけど、問題ないよね?」
「ええ! 遂にこの時が来たわ!」
「あたしの魔法で永遠の眠りに送って上げるー!」
「ぼ、僕も何とかします!」
「よーし! それじゃあしゅっぱーつ!」
私はトカゲサルが待つ。『最初の台地』へと向かう。
「ここらへんだよね」
「そうね。マーカーもここら辺に出ているわ」
最初の街から少し離れた場所。草原に囲まれた中の少し小高い丘。遠くには高い山々が連なり、天気も雲一つなくとても美しい。
そんな景色の中、奴の反応がある丘を登り切る。私たちが丘の頂上に到着すると、奴は仁王立ちで待ち構えていた。但し、その姿は以前見たような竜の姿ではなく、ただのゴリラの姿だ。
奴は、私たちの姿を見ると口を開く。
「やっと来たか。首を長くして待っていたのだぞ?」
「私達にも準備があるからね」
「最初にここに来た時の事を思い出すわ。いきなり石を投げつけてくれちゃって」
「ふん。挨拶の様なものだ。それくらいならば良いだろう? 当てなかったのだしな」
「まぁね。でも、貴方がいてくれて良かったよ。私たちとしてもとっても楽しいものになった」
「そうか。話はこれくらいにしておこう。ワシは強い。それに、今までと違って力の出せる限りを出させてもらう」
奴はそう言ってこちらに半身を向けるようにして、構える。
「勿論だよ。でも、開戦の合図は……」
「炎の槍よ×5!」
「何!?」
アキが叫ぶと私の周囲に炎の槍が5本浮かぶ。そして、すぐさま飛んでいく。
私はそれに合わせて右側に走り出す。
「『ソナー』!」
「守れ! 抗え! 炎の加護よ!」
「クソ! 貴様ら! これでも食らえ!」
私たちの攻撃に怒った奴が炎のブレスを吐いてくる。
ボアアアアアアアアア!!!
「聞かないわよ! 『胞子シールド』!
ナツキのシールドが広がり、私たちを半円で囲むように展開される。
「何!?」
「この程度で私のシールドが破れると思ったのかしら!?」
「ハルさん! 奴の弱点は腹です! それに、今の奴の属性は炎属性だけです!」
「オッケー! それじゃあ問題なく突撃出来るね! 『疾走』!」
私はスキルを使って奴に向かい突撃をする。
「うほお!? 正面からとは! 愚かな!」
奴は左腕を振り上げ私に向かって振り下ろす。
ガイン!!!
「うほおお!!!???」
奴の拳はナツキのシールドによって阻まれる。
私は驚いて動けない奴の腹目掛けて狙いを定める!
「『ぶちかまし』!」
「うほおおおおおお!!!???」
ドゴオオオオオン!!!
奴は吹き飛び、私たちも同様に吹き飛ぶ。しかし、これまでに何度も吹き飛んでいるため皆悲鳴を上げるような事すらない。それどころか。
「風よ吹け!」
フワッ スクッ
アキの魔法で私の体は浮かび、転がるようなことはない。
「アイツは!」
「上よ!」
ナツキの声で上を見ると、奴は黄土色の羽を生やして滞空している。
「火球よ×10!」
「『ソナー』! アキさん! 今の弱点は羽です!」
「オッケー! いっけー!」
ビュンビュンビュン
「ふん! そのような初級魔法。食らう訳がなかろう」
奴はそう言って器用にアキの魔法を躱す。しかし、
「火球よ爆ぜよ!」
「な!」
ドオオオオオオオン!!!
奴の周囲を通りかかった火球よが全て爆ぜ、奴に爆風ダメージを与える。
「うほおおお!!!???」
しかし、それだけでは奴は地上に降りてこない。ただ、羽自体はかなり消耗しているらしく、所々穴が開いている。
「『胞子シールド』!」
「いっくよー!」
「風の弾よ×10!」
「僕も援護します! 『ピンポイントショット』!」
「ぬう!」
フユカが奴に牽制を入れてくれる。奴はかなり羽が消耗しているのか滞空しているのもかなりきつそうだ。
私は奴に向かって走る。
「何!? ここは空の上のはず!」
「シールドを伸ばしてそこを走ってんのよ!」
「『牙で切り裂く』!」
「うほおおおおおおおおおおお!!!」
私は奴の羽を狙い片方の羽を完全に切り飛ばす。
「『胞子シールド』!」
ナツキの作ってくれる道を使って地上に向かって走る。私達が地上に戻った時には、奴は土の中に潜り込んでいてしまった。
「ハルさん! 下!」
「分かった! 切り返しも覚えたんだよ!」
私は急激に左に曲がり、今まで進もうとしていた所とは違った道を進む。
「うほおおお!!! 何!? 何処に行った!」
「風の槍よ×5!」
「ん? ぐああああああ!!!」
アキの風の槍が奴の体に刺さり、奴は逃げるようにして地面の中に潜っていった。
私は今のうちに周囲の確認をする為にこの周辺、というか行動出来る範囲目指して走るけど、海底でジャイアントサイクロンマグロを倒した時のように広い。
最初ここに来た時はそんなことは無かったけど、多分、奴との戦闘が始まってから広がった気がする。
「ハルさん! 後ろ!」
「後ろ!?」
私は後ろと言われて慌てて速度を上げる。しかし、
「うほおおおお!!! 食らえ!」
「『胞子シールド』!」
「小癪なぁ!」
ガィン! とナツキが守ってくれる。
「こんなに近くていいのー? 炎の槍よ×5!」
「ぐうううううう!!!」
奴は両腕を交差させ、アキの魔法を耐えきる。
私たちはその間に距離を取った。
「逃げるのか!」
「土の中に逃げるアンタに言われたくないわ!」
「そうだよ! それに!」
私は少しだけ距離を取ったけど、直ぐに奴に向かって切り返す!
「うほ!?」
奴が驚いている内に!
「『牙で突く』!」
「うほおおおおお!!!???」
「口を動かす前に体を動かしなー!」
やつはまたしても地中に潜っていく。
「フユカ!」
「はい! 『ソナー』! 以前のあれです!」
「オッケー! 全力で逃げるよー!」
私は速度を出来るだけだし、奴から離れる。
それから数秒ほどした時、背後で爆発が聞えた。
「『胞子シールド』!」
今回はナツキのお陰で一切の影響を受けなかった。でも、これはきっと序章。奴の本気は少しも見せていないと思う。
「奴が上がってきます!」
「この前のが来るかも! 気を付けて!」
私たちが警戒する中、奴は地上からゆっくりと姿を表す。その姿はゴリラ要素はほとんどなくなっており、ほとんど全身が黄土色の2足歩行する竜へと転じていた。
「くははははは、これまではお遊びとはいえここまで簡単にいなされるとはな。だが、ここからが本番だ! 焼却光線!」
奴の口が光、視界が白に染められる。




