41話 とあるモデルの話
リアル描写になります。読まなくても話は分かるようになっています。
僕はイスに座って自分の番を待つ。
「トウヤ。そろそろ出番よ」
「分かった今行くよ」
「ええ、頑張ってきなさい。男じゃないけどかっこいいわよ」
「もう……僕だって女の子みたいな格好がしたいのに」
「いいでしょう? 自分に似合った格好をしても」
「そうだけどさ。行ってくる」
「ええ」
僕はカメラマンの前に立ち、指定されたポーズを次々を行なっていく。
早く終わってくれないか。今日の9時から約束があるから。そんな事を思っていると、カメラマンに注意された。
「はーい! トウヤさん! もう少し柔らかい表情してください!」
「はい」
いけない。幾らなんでもちょっと意識が早過ぎた。今の僕の名前はトウヤ。こうやって男の様な名前にしておけば、売れやすいということでつけられた名前だ。
最初こそ普通の名前でいいのにと思わないこともない。このせいで学校でもずっとこの名前で呼ばれてしまう。
「はーい! これで終了です! ありがとうございました!」
「はい。ありがとうございました」
僕はカメラマンにお礼を言ってすぐさま着替えに行く。
(トウヤ様よ。いつ見てもかっこいいわぁ)
(本当。どうやったらあんなにかっこよくなれるのか不思議ね)
聞こえてるよ。でも、僕はわざわざそんなことは言わない。彼女たちも、そうやって話しかけて来ることを望んでいるかもしれないから。一度それで大変な目に遭った。
第一、僕にはやらなければならないことがある。これから急いで帰り、邪魔をして来る兄弟たちを躱してゲームをするのだ。
今まで自分一人だとほとんどいいように使われる事が多かった。学校でも、仕事場でも。ただ同時に、誰かが何だかんだで守ってくれることが多かった。家族だったり、先生だったり。皆いい人だった。
だけど、僕はそれで満足出来なくなった。僕一人で普通の友達を作りたい。そんな思いからゲームを始めてみた。人と協力するゲームなら、敵の居場所が分かったりする役が必要じゃないかと思ったけど、どうやらそうでも無かったらしい。
面白さから僕と少しは組んでくれる人はいたけど、直ぐに使えないと言われて一緒にやらなくなった。
金策で集めた護石もいいものだけ持って行かれて、後はもう要らないからと僕だけ捨てられもした。
続けていたのは意地だったと思う。あんな奴らに負けたままでいいのか。そんな思いだけでやっていて、正直、楽しんでいたかと言われるとちょっと怪しい。
「トウヤ。車で帰るわよ」
「母さん」
「大丈夫?」
「うん。ちょっと考え事」
「そう。悩みがあったら言いなさい」
「うん」
だけど、今度の仲間達は、今までの人とは違う。勝てない敵にも立ち向かい、打ち破る。そんなすごい人達。自分のレベルだと役に立たないと思っていたけど、すごいと言ってくれる優しい人達。そんな人達に、僕も混ざれることが嬉しかった。今日も、明日も、これからも一緒にやりたいと思う。
「母さん。9時から家でやりたいことあるから飛ばしてくれない?」
安全運転を心がける母に言う。
「いいわよ。しっかり掴まっていなさい!」
母は車を飛ばし、8時には家に着く。
邪魔をしに来る兄弟たちを押さえ、やることを出来るだけ速い速度でやり切る。
「時間は……」
8時50分。良かった間に合いそうだ。




