35話 海底
「ギョギョギョギョギョ!!!」
叫びながら奴は現れる。その姿は……。
「マグロ!」
そう、奴はマグロ。それも全長5ⅿはあろうかという程の巨大なサイズだ。目は金色に輝いていて、遠くから見てもどこにいるのかが分かる。
マグロは私たちに近づいて来て、目の前を横切った。その時の水圧で吹き飛ばされそうになるけど、そこはイベントだからか問題なく耐えきる。
奴がどこかに行ったのか、金色の目が見えなくなった時に、体の自由が帰ってきた。
「あれがボス!?」
「追いかけましょう!」
「でもどこにいるのか分からないよー?」
「ぼ、僕が見つけますね! 『ソナー』!」
フユカがスキルを使うと、キィンと音がして、何かが私の中を通り抜けた感じがした。
「奴はすぐ目の前にいます!」
「ええ!?」
「見えないよー!?」
「『胞子シールド』!」
ナツキが何かを感じたのかスキルを展開する。次の瞬間。ガギィン! っという音と共に、奴が目の前に現れた。
「嘘! 目は光って無かったんじゃない!?」
「目を瞑ってたのかも!」
「サカナにまぶたはないんじゃなかったっけー!?」
「そこは色々あるのかもしれません! 逃げて行ってます!」
フユカの言葉通り、マグロはかなりの速度でどこかに泳いで行ってしまう。
「当て逃げとか酷いでしょ!」
私は駆け出し、奴の光る眼を追いかける。しかし少しして、
「ふご!」
思いっきり何かにぶつかった。目を凝らして見ると、それは大きく真っ黒な岩だった。
「ハル! 大丈夫!?」
「だ、大丈夫……。でも、これじゃあ追いかけられないよ……」
そもそもこのフィールドもかなり広いのか、いつもの壁が見当たらない。これだけ広いと逆に困ってしまう。
「どうしようかしら。アキの魔法でここら辺を照らす事とか出来ない?」
「出来ないかなー。火魔法って大抵攻撃の奴ばっかりだしー。『炎の絨毯よ』は明るくなるけど、設置型だからこんなに広いと使えないよー」
「うーん。もう、岩とかもぶっ壊せるくらいの突進が出来れば……」
岩であろうが関係なく突き進む。そんなイノシシもかっこいいと思う。
「流石にそれはもうボスモンスターとかになっちゃうんじゃないの?」
「そうだねー。どっちが敵か味方か分からなくなっちゃう」
そんな話をしてマグロをどうやって倒すか考えていると、フユカが話出す。
「あ、あの!」
「?」
「ぼ、僕が何とかスキルを使って岩を見つけますから、だからそれで避けて行きませんか……? あ、でも信頼出来ないですかね……」
「そんなこと出来るの!?」
「え……。は、はい……。多分大丈夫だと……」
「なら信じるよ! フユカ。貴方の指示はとっても為になる。だから、教えて! 私が走るから!」
私は彼女にそう言って駆け出す。といっても岩にぶつかったせいでマグロがどこにいるかも分からない。
でも、取りあえず走り出す。
「え、えっと、左です!」
「これくらい!? ふごっ!?」
またしても岩にぶつかってしまった。しかも、さっきよりも大きい岩だ。
「ああ! ご、ごめんなさ……」
「ギョギョギョギョギョ!!!」
「『胞子シールド』!」
そんなことをしていたら、奴が再び体当たりを仕掛けて来た。ナツキはしっかりと守ってくれる。
「フユカ! 私が守ってあげるから、しっかりとハルに説明しなさい!」
「は、はい! さっきは左に岩があるって言おうとしたんですが……」
「それだと間に合わないから、行く方向を言ってくれると助かる!」
「い、いいんですか? 僕が決めちゃっても……」
「いいよ! 信じるって言ったんだから! だから示して!」
「わ、分かりました! ぼ、僕がいう方向に進んでください!」
「おっけー! いっくよー!」
「わあ!」
私は走り出し、金色に光るマグロの目を追いかける。
「右です!」
「こっちだね!」
「次も右!」
「ほい!」
「次はちょっとジャンプして左です!」
「こ、こう!?」
私はフユカの言うままに従い走り続ける。信じると言ったのだ。それに恥じない走りを見せ無ければ。
私は走ることに集中していたけど、ナツキが様子を見て居たのか声を上げる。
「いいわよハル! フユカ! だんだん奴との距離が詰まってる! もう少しよ!」
「これならあたしも魔法を使えるかもー。っていう訳で『炎の槍よ』!」
アキが魔法を唱え、発射する。
ドオオオオオン!!!
「ギョギョギョギョギョ!!!???」
アキの魔法は奴に当たった様で、奴は驚きの悲鳴を上げる。
ただし、金色の目がぎょろりと私たちに向いた。
「いいよ! ナイスアキ!」
「そこ左です!」
「おっと!」
私は言われた方に進み、直ぐ傍を岩が通り抜ける。すごい。フユカの指示は的確だ。
「ギョギョギョギョ!!!」
「これは!?」
マグロが何か叫んだと思ったら、フユカが驚いた。
「何か攻撃が来ます! 注意して!」
「分かったわ! 『胞子シールド』!」
ドガガガガガガガガガガ!!!
ナツキの張ったシールドに白くてキラキラした何かが思いっきりぶつかってくる。
「これは鱗かなー!?」
「そんな攻撃が!?」
「サカナだしやってみてもおかしくはないわね!」
「ならこっちもやり返さないとね! 『風の槍よ』×3!」
シュオオオオオ!!!
「ギョギョギョギョギョ!!!???」
アキの魔法で奴にダメージが通るが、直ぐに奴の反撃が来る。
「ギョギョギョギョギョ!!!」
「うわ! さっきの3倍位の量の攻撃が来てますよー!」
「3倍!? 私のシールドで防ぎきれるか分からないわ!」
「じゃああたしも手伝うよー! 『火球よ』×6!」
ドドドドドドドドドド!!!
「大分減ったんじゃないかなー!」
「そうね! 助かったわ! 寝ているだけが取柄じゃないものね!」
「……ふふ。酷いなー! あたしだって頑張ってるんだよー!」
軽口をいう2人は楽し気だ。こうやって楽しく戦えることになるなんて思わなかった。
「そこは真っすぐです!」
「分かった! それで、どうしたらアイツに勝てるかな!?」
奴との距離は結構縮まっているけど、奴は結構速度が早いので中々追いつくことが出来ない。
「一回攻撃を止めて見てはいかがですか?」
「えー? 折角上手くいってるのにー?」
「そうよ。この調子で行けば倒せるんじゃないの?」
「そうかもしれないんですけど、一回追いついて大きな一撃を叩き込んだ方がいいと思うんです。奴は結構防御力も高いみたいで、さっきの攻撃もあんまりダメージが入ってないです……」
「えー! 結構刺さったと思うんだけどな……」
「5%も減っていません……」
「本当に? それは不味いわね……」
「でも、近づいてどうやって大ダメージを与えるの? 『突進』当てれば食らうかな?」
相手が止まっているとか、向かって来ているならそう言った事も出来るかもしれないけど、逃げている最中だからあんまり追いかけられない気がする。
「そこは僕がアイツの弱点を示します! だからそこ目掛けて攻撃を集中させてください!」
「そんなことできるの!?」
「? はい。それくらいは見抜けますよ?」
「そんなに出来るのに足でまといって言われたの? 見る目ないわね」
「色々聞かれて答えを返すのが遅れてそれで……」
「話を聞かない奴らが悪いよー! それよりも、フユカの作戦で行こうー!」
「おっけー! じゃあ私ももっと走ろうかな! 『疾走』!」
私はもっと速度をあげ、奴に追いすがる。といってももう少しで追いつける。
「ここです! 『ピンポイントショット』!」
フユカがスキルを使うと、10cm位の針が生み出され、それがマグロに向かって飛んでいく。
プス。
その針が刺さったのは左側のヒレ? の少し後ろ辺りだった。
「今針が刺さった辺りがねらい目です!」
「分かったよー! あたしから行くねー! 『炎の槍よ』!」
「私も突っ込むよ!」
私は秋の魔法を追いかける。
ドオオオオオオオオン!!!
目の前で奴の体に爆発が起き目の前が見えなくなるけど大丈夫!
「『突進』!」
ガアアアアン!!!
私は狙い通り、フユカの示した場所に思いっきり当たる。
「ギョギョギョギョギョ!!!???」
奴はそのまま吹き飛んでいき、泳ぐ事も出来ないのかビチビチしていた。
「すごいです! HPが半分以上も減りました!」
「まだまだ倒せないか!」
「上出来よ! 動けない内に追撃しましょう!」
「ごめんねー。あたしMP無くなったから回復するねー」
「このタイミングで!?」
そんな、後少しという所なのに。




