33話 コバンザメの理由
彼女、フユカは私のお腹にぴったりと小判を貼り付けていた。
「ここがとっても落ち着いて好きです」
「狭くない?」
「狭さがいいんです」
「暗くない?」
「暗さも最高です」
「目に土とか入るかもよ?」
「探知スキルで見えてるのでお構いなく」
「そう……」
そこまで言われたら仕方ない。それに彼女がそこがいいと言っているのだ。好きにさせるべきかもしれない。
「それじゃあ行く?」
「私はいいわよ!」
「あたしも大丈夫ー」
「僕も問題ありません」
「行こー!」
私はある場所に向かって走り出す。水の抵抗はあるけれど、陸上より少し遅いくらいで走れる。
フユカはその速度に驚いていた。
「すごいです! 僕サカナ何ですけど、探知スキルとかに振りすぎてるせいであんまり速度が出なくって」
「どっかで聞いた話だねー」
「どこかの誰かさんみたいねー」
私とナツキは後ろの方を向く。
「いい考えだと思うよー。自分の強みをガンガン伸ばすべきだと私も思うものー」
「そうですよね……。僕もそうだと思うんですけど、他の人はそうじゃないみたいで……」
「そうなの? 私、今までナツキとアキとしかパーティ組んだことないから分からないんだ」
「私もよ! ハルの上に根を張ったらここから動けなくなったわ!」
「ほじり返して食べるよ?」
「じょ、冗談に決まってるじゃない」
「分かってるよ」
「いざとなったらあたしが防御魔法も覚えてナツキの代わりになるからねー」
「それは酷いんじゃない!?」
「アハハ」
いつもの軽口で話していると、フユカが笑う。
「皆さん。とっても仲がいいんですね。今までの人達とは大違いです」
「そんな怖い人達だったの?」
「怖いと言いますか……。その、すごく効率を求める方達が多かったです。『新しいスキルを取ってみたけどいまいちだからリセットだ』や『ここのボスを効率的に倒すのはこうするのがいい』って言ったような人達ばっかりでした」
「そうだったんだ」
「まぁ、ゲームの楽しみ方は人それぞれだからねぇ」
「あうあわないはどこにでもあるよねー」
「はい。僕も効率的な所は否定しないんですが、それでも、何かに特化するって面白そうだなと思って」
「それで、何で探知系に特化したの?」
「お金が欲しいからです!」
「へ?」
「ん?」
「ほ?」
フユカのいきなりの発言に、ちょっと驚かされてしまった。
「お、お金?」
「はい! このゲームってなんだかんだお金が必要じゃないですか」
「う、うん。そうかもね?」
今日初めてゴールドを使ったなんて言えない。
「護石の購入、精錬、スキル強化、いいクエストの受注だったり、どうしてこんなにかかるんですかね? って言うくらいかかるんですよ」
「うん」
「だから僕は一番金を稼ぐのに効率的な探知系のスキルを伸ばしていいるんですよ!」
「もしかしてコバンザメなのって」
「ゲン担ぎです! この姿なら一杯お金が入って来るかなって思いまして!」
「すごいね。なら一杯稼がないといけないね」
「そうなんです。だから護石とかレアアイテムを集めて売ったりしてるんです」
「ちょっと聞いていいー?」
「はい? 何でしょう?」
「ここで宝箱とかを開けるよりもー。もっと先に進んじゃった方が稼げる効率とかもいいと思うんだけどー。どうしてしないのー?」
「……。それは、僕が探知系のスキルしか伸ばしていないので、そんなやつとは組めないって……。最初の頃こそ色んな人が組んでくれたんですけど、結構レベルが上がってしまうと……」
そう言ってフユカの声が沈む。
「ならスキルリセットしたらいいんじゃないのー?」
「それが、僕は探知スキルを伸ばすって決めてしまって……。その為にかなりのゴールドを払ってしまったので引くに引けなくて……」
「さっき言ってたスキルの強化にお金がかかるって本当?」
私はちょっと大事な事かなと思ったので聞く。
「はい。スキルはⅦ以上にしようとすると、ちょっと目が出るくらいお金が必要になってくるんです。しかもスキルリセットは全部のスキルを元に戻してしまうので、困っているんです」
なるほど。探知系統のスキルだけだと他のパーティはそんな奴は要らないって一緒に組んではくれない。じゃあスキルをリセットしようかって話になると、スキルを強化する為に使ったゴールドが無駄になる気がして気が進まないと。そう言うことかな。
ナツキが参加してくる。
「それなら一緒に私達と行く? 私たちも正直皆尖った振り方しかしてないわよ。『胞子シールド』」
ガイン! ナツキの張ったシールドに何かが当たる。
今度はアキが
「そうだよー。私もトリなのに魔法しか使えないからねー。『風の弾よ』×4! 『風の槍よ』!」
「そうそう! だから気にしないでー『突進』!」
パアン!
私はスキルを使って目の前にいたウツボみたいなサカナを消し飛ばす。
「あ……あの……。普通のフィールドにしては敵が多過ぎませんか?」
「そう? 気にしないで」
パアン!
「ぎょぎょぎょ~!!!」
バチバチと電気を放つサカナが現れる。
「『胞子シールド』! そうよ。ちょっと何か不具合が起こってるだけなんじゃないかな?」
「炎の槍よ! ちょっとサカナって数が多いから仕方ないよねー」
「いえ……でも、これって明らかにダンジョンに入っているんじゃ……」
「大丈夫大丈夫! 気にしないで!」
「いえ、気にするとかそういう問題じゃ」
「いいからいいから! 今は探知とかいいから私の姿でも見てなさい? この艶、水に濡れてもう堪らないでしょう?」
「僕は干しシイタケの方が好きなので。いえ、そういう話ではなくダンジョンだと宝箱ってボスぐらいしか……」
「まぁまぁ、細かい話は後にしましょうー? 今はあたしと一緒に軽く寝ようよー『風の弾よ』×3!」
「そんなバリバリ攻撃魔法使ってるのに寝れる訳ないじゃないですか……」
「アキなら寝れるよね」
「そうね。前にも寝てたし」
「本当ですか……?」
「まぁねー」
ふふん。とアキは自信を持って胸を張っている。
「あの、やっぱり聞いてもいいですか?」
「どうしたの?」
フユカが聞いてくるけど、その声はちょっと怖そうで、守って上げたくなる何かがあった。
「今戦ってるのって中ボスですよね!? どう考えても宝探す気ないんじゃないですか!?」
「グーラグラグラグラグラ!!!」




