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3話 ボス戦

 開けた場所にいたモンスターは白い毛皮を着た大きなゴリラのようなモンスターだった。目は赤色に光っていて、牙はとても鋭い。両腕が大きいような気がするけど……。


「えーい行っちゃえ!」

「うほぉ? おぼぉ!!!」


 ドン!


 私は頭から、いや、鼻からそのゴリラもどきに体当たりする。


「やば、倒せなかった」

「おぼぼぼぼおおおおおおお!!!」


 やばい。すごく怒っている。すぐ上から聞えてくるゴリラもどきの咆哮だけで既にヤバい気配しか感じない。


「逃げなきゃ!」


 私は急いで横を向いて駆け出す。


 ブオン!


 振り向くと同時くらいに、背中の毛が風で撫でられる。


「ひ!」


 私はゴリラもどきの攻撃を食らわないように逃げ出した。急げ、急げ。よし、後ろから迫ってくるような感じはない。このままここから逃げ出して……。


 バン!


「つぅ~っっっっっ!!!」


 なんだ。なんだこれ。目の前に何だか魔法陣みたいな赤い何かが出ている。何々。


「ボス戦の為途中で戦闘を放棄することは出来ません……ええ!?」


 これボス戦だったの!? 確かになんか普通よりも強そうな感じのモンスターだと思ったけど! でもまだ私キャラメイクしただけでチュートリアルすら受けてないのに!


「おぼぼぼぼぼぼぼぼぼおおおおお!!!」

「やーーー!!!」


 私は直ぐ近くで聞えたゴリラもどきの咆哮から逃げるように走り出す。


 やばいやばいやばいやばい。勝てないって絶対に勝てないって! お願い! 早くチュートリアルに行かせて!


「おぼぼぼぼぼぼおおおおおお!!!」


 ドゴン!


「ひぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」


 すぐ後ろで地面に何かが叩きつけられる音がする。ゴリラもどきの拳だろうか。怖すぎる。


 私は直ぐ傍で展開される真っ赤な魔法陣に沿うように走り回った。


 そうしてみると、この魔法陣はこの木々のない空間の部分になるように広がっている。直径は50mくらいだろうか。思ったよりも広いらしい。ただ逃げられない。


 逃げている最初こそ怖かったけれど、走っている内にちょっと落ち着いてきた。ゴリラもどきの足が遅いから、追いつかれる心配がないのもあるのかもしれない。


「おぼぼぼぼぼぼぼぼぼおおおおお!!!」

「吠えてるなー。でも私には追いつけないから怖くないもんね」


 そう思っていたら、ゴリラもどきが自分のお尻手を当て、何かやろうとしている。


 私は横目に何をするのかと見ていると、そいつは大きく振りかぶり、私の方に思いっきり投げつけてきた。


「何何何?」


 私が疑問に思っても、当然答えてくれるはずもなく何かが私の後ろの方に着弾する。


 べちゃ。


 べちゃ? べちゃ!?


 私はそのまま走り続ける。嫌な予感がする中、その何かが着弾した場所を通り過ぎようとした時に、その衝撃は訪れた。


「おええええええええええええええ」


 くっさいのだ。ものすっごく臭い。しかも人間よりも鼻がいいからかというか、一番前についていて大きいからよりきつい。走りながら意識が飛びそうになっていたほどだ。


 奴はうんこを投げつけて来たらしい。そんな所まで真似しなくていいのに……。


「くぅぅぅぅぅぅう! 我慢! それでも我慢だ!」


 私は気合で持ちこたえ、何とか足だけは動かし続ける。もしここで足を止めてしまえばゴリラもどきに狙い撃ちにされてしまうかもしれないからだ。


 ゴリラもどきの方を確認すると、奴はもう一度振りかぶっていた。


「これ以上はダメー!」


 私はもう許さない。このボスフィールドを一人で周回しているのは別にいいかなと思っていたけど、あの匂いはダメだ。もう2度と嗅ぎたくない。というか運営にふざけんなとメッセージすら送ってやりたい。


 でも、今大事なのはあのゴリラを止めること。何としてでもあのクソを起爆させないことなのだ。


「おぼぼぼぼぼおおおおお!!!」


 奴は私に向かって思いっきりその手に持つ茶色い塊を投げつけてくる。


 私は少しだけ進路を変えて、そのクソを躱す。


 クソが ちっ っと私の体を掠めるが、ぶつかってないからかダメージはない。ないったらない!


「どりゃあああああああああ!!!!!!!!」


 私は奴に向かって、その投げ切ったばかりの態勢の腹に向かって突撃を敢行する。


「風穴開けろやああああああああああああ!!!」


 ドオオオオオオオオン!!!!!


「おぼぼぼぼぼぼぼぼおおおおおおおおお!!!???」


 私は奴のどてっぱらに頭から突っ込む。流石に小さいうり坊の体からか、ごりらもどきの腹に穴を開けることは出来なかった。


 それでも、やつは反撃をして来る気配はない。


「お……ぼ……ぼ……ぼぼ」


 ドサ っと奴は仰向けに地面に倒れる。


「勝ったああああ!!!」


 やった! 勝った! 勝った!!!


 チュートリアルとか、スキルとかの説明って受けてないけど何とかなるもんなんだ! 良かった!


『ハル はレベルアップしました。Lv5→Lv8になりました。ステータスが上昇しました。スキルポイントを30取得しました』


 やっぱり、良かった。レベルアップしたみたい。と思っていたら、まだあったようだ。


『ハル はシルバーバックコングを倒しました。称号最初の森の主を取得しました』


 おお、やっぱりここは最初の森だったのか。でもまぁそうだよね。幾ら何でもそれ以外のボス相手にレベル5程度で勝てるわけないもんね。


『ハル はシルバーバックコングへの攻撃回数が5回以下で倒しました。称号バスターゴリラを取得しました』


 バスターゴリラ!? なんかすごそうな名前なんだけど!? えーっと……どうやって見るんだろう……。分かんないや。


 バスターゴリラの単語が気になるけど調べ方が分からない。


「調べたいけど、でも、今はいいか。取りあえずチュートリアルからやろうかな」


 折角あんまりこのゲームの情報を入れないようにしてやってきたんだから、それを調べるなんてことはしたくない。でも、自分の称号にバスターゴリラがつくことを考える。


「……」


 うん。可愛くないからいいか。


 私はのそのそと歩いて来た道を戻る。

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