23話 スキルポイントは何に振る?
「ふぃ~寝る前にこんなに寝るなんて……」
私はモコモコの残骸から起き上がり呟く。
興味本位で入ってみたこのモコモコだけど、想像以上に幸せな気持ちになることが出来た。
その証拠に、ナツキとアキは未だに幸せそうにモコモコに包まれている。
「2人とも。そろそろ行こう」
「えー。私の家にこのモコモコが届くまでは聞けないわー」
「あたしもー。もうここにいるだけで幸せー」
「もう……2人して……」
私は何とか2人を起こせないか思案する。
「そうだ」
私はまずナツキに近づき、口を大きく開ける。
「ナツキー。起きないと七輪であぶり焼きにしてバター醤油をたらして食べちゃうよー? いいのー? こんがり美味しい匂いが漂って来たよー?」
私は目の前のナツキを見ながら言う。
言ってて何となく昨日の夜食を思い出してしまう。いいなぁ。これが終わったらまた食べようかな……。ナツキの姿って私の頭の上に乗ってるからあんまり姿って見ないから……。いい艶……。
「近い近い近い近い近い! 近ーい!」
「あれ? 起きた?」
「たれてる! よだれがたれてるからやめて! 美味しいバター醤油で七輪でじっくりいい色になるまで焼くとかやめて! でも高級バターと高級な醤油ならもしかしたら!」
ナツキはもだえる様な、嬉しそうな複雑な表情をしてもじもじしている。
「いいから起きて?」
「はっ! ここは……」
「ジャイアントサモンシープを倒した所だよ。そのモコモコに入っちゃって、気が付いたらもうこんな時間に……」
私はメニューを開いて今の時刻を確認する。そろそろ寝ないと明日の5キロの朝のランニングに間に合わないかもしれない。
「! ほんとだ……。寝る前にこんなに寝た気持ちになるなんて。直ぐに帰って今のベッドを注文させておかないと」
「ないから」
「そんな」
「さ、起きてアキを起こすのを手伝って」
私は頭を差し出して彼女が乗れるようにする。
「? そんなのいいからくわえて投げて頂戴?」
「いいの?」
「ええ。ちゃんと分かってるから」
「じゃあ」
かぷ。ぽいっ。ふさぁ
もう何度目かも分からない行動なのでなれたものだ。ナツキを定位置で受けとめる。
「さ、後はアキなんだけど……」
「う~ん。ここから動かす奴は火の七日間で焼き尽くしてやる……」
「なんか危ないこと言ってて触らない方がいいような気がするんだよねぇ」
7日もかけて焼き尽くすとかどう考えても弱火過ぎる。最初の方は絶対に気が付かないだろう。
それとも骨まで燃やすってことなのかな。
「確かにこれは普通に起こすとどうなるか分からないわねぇ。ちょっとアキの頭に寄せて」
「分かった」
私はアキの頭に近寄る。そして、ナツキの声が届きやすいようにする。
「アキ、ここの睡眠も気持ちいいかもしれないけど、ここから進めばもっといい場所があるかもしれないわよ?」
「う~ん。でもあたしはここで十分ー……むにゃむにゃ」
「何言ってるの。ここはまだ2つ目のフィールドでしょう? もっと進んだらもっといい羊系統の最高の寝床があるかもしれないわよ?」
「う~ん。それは……いいかも……でも、もう一声ー……」
これ寝てるんだよね?
「じゃあ、このモコモコを回収して、最高の場所まで運んであげるって言ったら?」
「行こうかー!」
「わ」
アキが勢いよく起き上がり、翼を広げる。
私はその様子を冷たい目で見つめた。
「アキ、もしかして起きてた?」
「そんなことないよー。夢の様な話が聞えたからつい起きちゃったんだよー」
アキはそんなことを言っている間に、ナツキがモコモコを回収していた。そして、ナツキがアキに言う。
「そうなのね。でもそれは夢よ。さ、街に戻りましょう」
「そんなー! 超素敵な夢が見れると思ったから起きたのに! って! もうモコモコが最高のベッドがないー!」
アキはナツキがしまったベッドの跡地を見て泣き叫ぶ。そこまでだったのか……。
「さ、早くハルの上に乗りなさい。もういい時間よ。ハルも寝ないといけないんだから」
「うー。分かったー……」
3人で一緒に元の街まで戻る。
街へ戻る途中のこと。小高い丘が続く草原で、アキが雑談ついでに話しかけて来た。
「結構レベル上がったねー。スキルとかは何に振るー?」
「私はどうしようかな。走る速度をあげるか……。『突進』を強化してもいいかなぁ」
「私も『胞子シールド』か『回復魔法』ね。でも折角だしシールドにしようかしら?」
「2人とも自分の道を進むのねー。何か理由でもあるのー?」
「イノシシは突進しないと」
「キノコは胞子を撒かないと」
「ちょっとおかしいかなぁー?」
「いいじゃない。ゲームは楽しむもの。好きにやれるのがこのゲームのいい所だよ!」
「そうよ。自分の好きな様に強くなる。それが出来てこそよ!」
「まー。あたしも人のこと言えないからねー」
「じゃあアキはもう振ったの?」
「うん。『火魔法』と『風魔法』をそれぞれⅤにしたよー」
「おー。いいね。私もそろそろ振らないと……。なんか敵が出まくって全然振れてないんだよね」
「私もよ」
「いくつくらい溜まってるのー?」
「300」
「260」
「溜め過ぎじゃないー!? っていうかそんなスキルない状態でさっきの敵と戦ってたのー? それだけあるならもっとスキル振ったら楽に倒せていたんじゃー」
「そうだったかもしれないけど」
「折角ならしっかりとスキルを選びたいじゃない」
「そうかもしれないけどー。流石にそれは敵を舐めすぎてるよー」
アキの声が困った様な感じになってきている。
ただ、彼女の言う通りであるため正直今から振ってもいいかもしれない。
「ステータス」
私は自分のステータスを確認する。
名前:ハル
種族:イノシシ
レベル:30
ステータス
HP:160/160
MP:0/0
STR:148
VIT:62
INT:7
DEX:9
AGI:195
スキルポイント:300
スキル:突進Ⅲ、ぶちかまし、疾走、嗅覚強化、悪路走行、バランス感覚、走行強化Ⅳ、水走
魔法:
うーん。ステータスは伸びているけど、スキルが正直心もとない。他に何か突撃系統のスキルってないのかな。
私は検索をかけて突撃するスキルを探す。
『突撃』『体当たり』『牙で突く』『牙で切り裂く』……等々結構な数のスキルが出て来た。
「これだ!」
「わ、ハル……どうしたの?」
「私! 牙生えたのすっかり忘れてたの! 『牙で突く』と『牙で切り裂く』なんていうスキルが覚えられるようになってた!」
「いいじゃない。『突進』と『ぶちかまし』だけだと確かに攻撃の攻め手が少なくなっちゃうのよね」
「うん! 早速取って……」
私は『牙で突く』『牙で切り裂く』を取得する。
『ハルはスキルを取得しました』
おお……。やった。これで私はイノシシらしく牙による攻撃を覚えられたのだ。いいじゃないか。
でも、スキルポイントはまだ280もあるのだ。それぞれのレベルを……どうしようかな。あんまりポイントをばらけさせるのって良くないんだろうか。それともばらけさせて色んなスキルを習得した方がいいのか……。どっちだろう?
……。暫く一人で悩んだけど、後ろにいる2人に聞いてみよう。
「ねぇ」
「んー?」
「何ー?」
「スキルって色んなのをまんべんなく取った方がいいの? それとも1つに絞った方がいいの?」
「私は絞るわ。そういう戦い方にしたいし」
「私も絞るかなー。魔法を伸ばせば対応力は上がっていくからー。好きに振るのがいいと思うよー?」
「なるほど。ありがと」
頼りになる仲間だ。そうと決まったら私が選ぶ選択肢は1つだ。
「『突進』のレベルをあげてっと」
私は『突進』レベルをあげる。
『突進のスキルレベルがⅥになりました』
よし。これでダメージもかなり伸ばせるだろう。良かった。イノシシなのに突進のレベルが低いなんて耐えられない。
一応もう一回強化自体は出来るけど、いざという時の為に残しておかなければ、具体的に言うとトカゲサルが来た時の為だ。
「よし、私は取りあえずこれでいいかな。ナツキは何を取ったの?」
「ふふふ、私は気が付いてしまった」
「?」
「キノコは魔法適性が高いって言うことにね!」
「最初から言われて無かった? っていうか自分で言ってたじゃない」
「いいのよ! それなら魔法で私が使えるのはないのかな? って思って調べたら意外と出てくるのよ! それを取ったわ」
「へー。見せて見せて」
「いいわよ、わた……」
ズン!
「しのステータス……」
何かが直ぐ近くに落ちて来た。私はそれを見ると、いつぞやに飛んできていた物に似ている気がする。ハッキリ言って、トカゲサルの投げて来た岩に似ている気がする!




