19話 起きて
「……はっ!」
あれ? 今って私……ボスと戦っていたと思うんだけど……。
周囲には少し広い大地が広がっていて、先ほど大きな羊のモンスターと戦った場所に似ている。
「そうだ、ナツキ! アキ!」
私は周囲を見回して、仲間がどこに行ったのかを確認する。すると、2人は私がいた直ぐ近くでぐっすりと眠っていた。
「エリ〇ギ……マ〇タケ……ブ〇……シ〇ジ……」
「もうこれ以上眠れないよー……」
「起きて! キノコはナツキしかいないよ! アキはゲームの中でも寝ないで!」
「き〇こ……のこ……げ〇き? のこ?」
「来世はコアラがいい……」
「どうしよう……。2人とも起きないよ……」
私は周囲から敵が来ないか心配になる。そう思っていたら、前方で何かがポップした。
「めえええええええええ!!!」
「嘘!」
先ほどボスの目前で倒した大きな羊のモンスターだ。
「起きて! 2人とも! 起きてってば!」
「こ〇こ〇……は〇たえ……」
「ええー、キリンさんはダメだよ……20分しか寝ないとか死んじゃうー……」
「もう! いい加減にして!」
カプカプ
私は2人を咥えて、走り出す。
「おひぃふぇよふふぁりふぉも~!(起きてよ二人とも~!)」
「めええええええええええ!!!!!」
ビシャビシャビシャビシャ!!!
「ひええええええええええ!!!!」
私のすぐ後ろで水が弾ける。
「めええええええええええ!!!」
「やめふぇやめふぇ!(やめてやめて!)」
私は必死に声をあげるが相手はモンスター。やめてくれる気配は一切ない。どころか水を飛ばして来るのを、このフィールドの範囲ギリギリで走り回り回避に専念する。
それから1分程走り回った時だろうか、2人が遂に目を覚ます。
「ん……。あれ? なんだか温かいような」
「ふぅ……いい夢だったー……まるでコタツの中みたいなー」
「ふひゃふぃふぉも! ふぁふぁかっふぇ!(二人とも! 戦って!)」
良かった! 2人共目を覚ましたみたいだ。
2人は周囲を見回して、一拍置いた後に気付く。
「食べられるうううううう!!!!」
「こんな場所があったなんて! じゃあおやすみー……」
「ふぁんふぇ!? いいふぁらふぁふぁかって!(何で!? いいから戦って!?)」
私は動かせない口を何とか動かして、彼らに意思を伝えようとする。
「食べられる……。食べられる……」
「ここいい感じ……。でも首以外も温かくならないかな……」
どうしよう。2人ともマイペース過ぎる。
「めええええええええええええええええ!!!!!!」
「やっふぁい!(やっばい!)」
大きな羊が目を血走らせ、体の周りにさっきから飛んでくる量の倍以上の水が浮かんでいた。
そして、その水が私たちの方に飛んでくる。
「ひぃっほう!(疾走!)」
ギュン!
と私の足が速くなって何とかその攻撃を躱す。
「きゃ! 何々!? 食べる際中じゃないの!? もしかしてもう胃袋の中なの!?」
「引っ張られるー」
もうだめだ。私は色々と諦める。きっと2人をこのままにしていてもどうせ目を覚まさない。そこで、私は思い切った手に出る。
ポイッ
「え?」
「ふぇ?」
「捕まって!」
「!?」
「んー?」
ナツキは何とかいつもの様に私の頭に捕まり、アキも何とか私の背中を掴んだ。
「起きた!?」
「え? 何々? 私たちさっきまでボスと戦ってたような……」
「最高の睡眠がー……あたしの理想郷がそこにはあったのにー……」
「起きたみたいだね! 説明は後! 今はあの羊を倒すことが肝心だよ!」
私がそう叫ぶと、ナツキもアキも私が示した方を見てくれる。
「あれ? あの羊はさっき倒さなかった?」
「燃やしたりしたはずだと思うけどー」
「いいから戦って! 説明は後でするから!」
「わ、分かったわ」
「分かったー」
良かった。これでいつもの戦いが出来る!
「めえええええええええええええ!!!!!!」
「やっばい!」
大型の羊モンスターは自身の周りに水の玉を浮かべている。ただ、
「さっきまでよりも多くない!?」
「きっと周囲に散らばってる水とかも使ってるんだよー」
「っていうことは時間が経てば経つほどアイツの有利になるのね!」
「それじゃあ突っ込もうか!」
「今はだめ! 『胞子シールド』!」
ダンダンダンダンダン!!!
さっきまでの水とは思えないくらいのすさまじい音がナツキのシールドから聞えてくる。
しかし、流石ナツキのシールドだ。しっかりとその攻撃を受け止めてくれた。
「めえええええええええ!!!」
「連続!? 私のシールドを舐めるんじゃないわよ!」
ダンダンダンダンダン!!!
ナツキのシールドと奴の水弾の勝負に決着がつく。
「何とか凌ぎ切ったわ……」
「流石ナツキ!」
「すごいねー。あれを凌ぎ切れるってヤバくないー?」
「当たる角度とか調整すれば結構シールドへのダメージとか押さえられるって事を気付いたからね。意外と固くなんのよ……」
「すごいね! それは知らなかった!」
「いいから! 奴から注意を逸らさないで」
「うん!」
私がそう言った時には、もう手遅れになっていた。
「めえええええええええ!」
「そんな!」
水の玉に気を取られていたら、奴自体が突撃してきていた。突撃するのは私の専売特許なのに!
「『疾走』!」
「くうううううう」
「うひいいいいー」
私はスキルを使って加速するけど、それでも奴の突進を回避することは出来そうにない。ヤバい。このままだと横からやられる!
「アタシの出番だねー! 『風よ吹け』!」
アキがそう何かを唱えると、私の少し上から轟音と共に物凄い風圧が私に来るのが分かった。
「今のうちに避けてー」
「分かった!」
私は気合を入れて走り、更に距離を稼ぐ。
「めええええええええええええ!!!」
アキのお陰で奴の速度が少し下がり、私達が駆け抜けるわずかな時間が生まれた。
「よーし! 『風の弾よ』!」
「めええええええええええ!!!???」
「更に『突進』! からの、ぶちかまし!」
私はアキが切り裂いてくれた奴の綿の内側に向かう。そこは奴の無防備な肉体がある。ここで決めるつもりでスキルを使った。
「めえええええええええええ!!!???」
「きゃあああああああ!!!」
「やああああああああ!!!」
「あたしもおおおおお!!?」
私たちはそれぞれ吹っ飛び、暫しの静寂が訪れる。
「どう……?」




