鬼隠し 3日目 雄一郎
雄一郎は楓を見つけるため廊下を走っていた。
今楓に会うことは無謀だと自分でもわかっているだろうに・・・。
だが雄一郎には楓と接触しておく必要があるようだった。
タッタッタッタッタ・・・
足音が廊下に響く。
薄暗闇を雄一郎は必死になって走る。
だが雄一郎は体力があまりないようだ・・・。
「はぁ・・・はぁ・・・」
途中から肺がものすごく酸素を欲している。
だがしばらく雄一郎はがんばってがんばって走っていた。
だがそのそれも時間とともに燃焼された。
体力0の雄一郎は立ち止まって両手をひざにおいた。
体勢的に目線が自然と床へといく。
雄一郎の息は少しずつ落ち着いていった。
タッタッタッタッタッタッタ・・・・
突然雄一郎の耳に自分の周りを遠くで走り回っているかのような音が聞こえてきた。
それに気づいた雄一郎は、視線をあげずに目をまるめた。
雄一郎はこの感じを前に体育倉庫で体感していた。
すこしずつ、ゆっくりと足音は音量を増し、こちらに近づいてきているようだ。
まるで狙いを徐々にさだめていくかのようだ。
タッタッタッタッタッタ・・・
気づくと音はもう3mもないんじゃないかというくらい近くなっていた。
雄一郎は目がおよぎ、恐怖心により足がすくんで動けないようだ。
もはや顔をあげるのも恐怖でできないだろう。
少しずつ雄一郎の呼吸があらくなる。
まるでなにかを楽しんでいるかのような足音・・・。
雄一郎は恐怖が絶頂まで達し、左足をけって前へ進んだ。
だが、右足をついたちょうどだった。
グサッ・・・
突然雄一郎の視界に誰かの胴体がうつった。
ゆっくりと首をさげお腹あたりを見ると黒い学生服の上からなにかが刺さっている。
おそらく雄一郎は前の者に腹部にナイフかなにかで刺されたようだ。
「ゲホッ!」
雄一郎の口から何かが吐き出された。
その「何か」は床につくと薄くひろがり角のない面をつくりだした。
・・・・血だ。
暗闇のなかで雄一郎はそれに勘付いた。
次第に視界がぼやけていき、抵抗する気力が失せていく・・・。
そして雄一郎は目をつむり、眠るように気を失った。
ナイフはさほど深く刺さってはおらず、殺傷までにはいたらないようだ。
弱々しい呼吸を雄一郎がしている。
雄一郎はそのまま謎の人物の肩にのせられ、どこかの教室へ連れて行かれた。
・・・・・・・・。
歩いているはずなのに足音が廊下に響かない。
これはまったくもって不思議だ。
まるで音を消されているかのよう・・・。
不思議といえばもしかすると雄一郎もなのかもしれない。
なぜ雄一郎は眠ることを嫌がったのだろう?
だが、雄一郎の体の中で、何か決定的な存在が生まれようとしていた。
雄一郎の中にあるもの・・・それは・・・
―――――――善か悪か………