鬼隠し 3日目の朝
「死んじゃえばいいのに・・・」
雄一郎は自分に何かつぶやかれたと思ったら目を覚ました。
気づくと保健室にいるようだ。
おそらくあのあと気づかぬうちに気絶してしまったのだろう。
ふと右を振り向いて窓のほうを見た。
窓の外では何組かはわからないが1年が保健体育をやっていた。
雄一郎は少しそれを憂鬱そうに見つめるとサッと体を起き上がらせる。
そしてふとよみがえってきた、二日目の記憶・・・。
雄一郎は少し恐れながら毛布の中で腰の近くにおいてあった両手をゆっくりと引いていった。
毛布から少しずつ腕が見え始める。
気づくともう手首が毛布からでようとしていた。
雄一郎は右手寄りに両手を見て息をのんで覚悟を決める。
そしてバッと両手を毛布から出した。
勢いよく出したせいか両手は耳の延長線上に雄一郎の視界にはいらない状態で停止していた。
覚悟を決めた雄一郎だったが少しあせりが見える。
雄一郎はゆっくりとその手を甲だけ見えるように視界の中心にもっていく。
ためしに握り拳をつくった。
不思議な感覚はない、それから雄一郎は若干の安心感がわく。
目をとじ、息をふぅーー、と吐くとパッと手をひっくりかえした。
手のひらには肌色の皮膚と頭脳線や生命線やらが見える。
手の中をながれている血液以外は手のひらには確認されなかった。
雄一郎はそれで安心したのか腕の力を抜く。
それにより手は力をなくしてパラリと下がった。
ほんの少しの安心感と過去の疑惑に雄一郎は頭を悩ませた。
キーンコーンカーンコーン
鐘の音が鳴り響く。
雄一郎はふと保健室の机においてあった小型のデジタル時計を見た。
デジタル時計は8と20を映していた。
たった今授業が開始されたようだ。
雄一郎はゆっくりと前を向くと顔を下げた。
すると今度はまるでフラッシュバックのような何かが雄一郎の視界に映った。
今までの自分にない記憶のようだ。
だが雄一郎はそれに激しく動揺しているようで息が荒く目をとても大きく開けていた。
鬼隠し二日目が終わりまだ生き残っているのは極少数である。
雄一郎は一瞬明美と夜魅を思い出した。
2人はまだ生き残っているのだろうか・・・。
心に動揺と疑惑と心配の思いが交差して雄一郎はとたんに泣き出しそうになる。
自分が楓のところまで行ってあげられなかったことにひどく後悔しているようだ。
鬼隠し三日目は鬼は学校には来ない。
始まるまでは自宅待機だそうだ。
雄一郎はただ自分で下を噛んで死んでしまいたい気持ちをおさえて下唇を噛んでいる。
夜は太陽に焼き尽くされた。
雄一郎は三日目生き残れるのだろうか・・・。
だが雄一郎は今自分が生き残るよりもっと大事なことを思っていた。
―――――三日目の朝がやってきた。