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4:獣人の集落


 猫の獣人らしきリコの悲鳴で集落の住人達がその姿を現した。

 

「もうおしまいだぁ……」


「うっうっうっ……」


「なんで……どうして……」


 襲われるかと思ったが、それよりも皆絶望していた。

 

「あの、ミリアムさんこれは……」


「理由は後で話す」


 ミリアムが数歩前に出た。

 

「みんな、この人間は大丈夫だ、異世界から現れた私達を助けてくれる人間だ!」


 ミリアムが住人達に説得を試みる。


「その証拠に、私はこのモンスターから助けてもらった! そして私達を助けてくれると言ってくれた!」


「で、でも人間は、人間は信用できない……!」


「そうだ! どうせ俺達を騙して奴隷にしにきたに違いない!」


 これはダメそうだな……。

 

「…………みんなが私を信用しているならッッ!! 私が信用した彼も信用して欲しいッッ!!」


 ミリアムが胸に手を当てて叫んだ。俺、信用されてたのか。いや方便だろう。

 

「…………」


 住人達の反応は無い。やはり根が深すぎる問題なのだろう。ここは――

 

「わ、わかったにゃ!」


 ミリアムの陰にいたリコが出てきた。

 

「ミリアムがそこまで言うなら私もこの人間を信用するにゃ!!」


 リコの体は震えている。口ではそう言っても体は正直だな。

 

「り、リコやミリアムがそこまで言うなら……」


「あ、あぁ、そうだな……」


「異世界からやってきた人間か……」


 なんとかこの状況をクリアしたみたいだ。が、まだ安心するには早いだろう。これから行動で信用を勝ち取っていかなければいけない。

 

「ありがとうございます、ミリアムさん。それにリコさんも」


「……私に嘘をつかせるなよ」


 ミリアムはすれ違いざまに小声でそう言って、一人でラプターを抱えていった。

 

 一人で持てるんじゃないか!

 

「あ、あの……!」


 リコが俺の前までやってきた。

 

「ミリアムを助けてくれて、あ、ありがとうにゃ……」


 そう言ってミリアムのところまで走って行った。

 

 ……今回はたまたま上手くいっただけに過ぎない。次もまた同じようにやれるとは限らない。運が悪ければミリアムも俺も死んでいた。まぁ俺はリスポーンしていたかもしれないが。

 

 嘘をつかせるな、か。ミリアムを嘘つきにしない為にも、そして十日目の襲撃を乗り越える為にも、この集落を立て直していく必要がある。

 

 この感覚、ワクワク感、気分が高揚してくる。だがここで調子に乗ると失敗する確率も高くなる。落ち着こう。

 

 ていうか俺一人ここに取り残されてるんだけど。まぁいいか……。

 

 とりあえずまずは状況確認だ。

 

 ここはミリアムと猫の獣人達が住んでいる集落がある場所だ。

 

 周囲は枯れた雑木林で囲まれている。集落の部分だけ住むスペースを作れるくらいの広さがあったようだ。今は各々の住処が設置されているが、あまり広くはない。

 

 まずは周囲の枯れた雑木林を石斧で伐採して木材集めして、集めた木材で自分の家を作ろう。苗も取れるはずだから植林して木材供給を安定化させることも必要だ。

 

 そのためには万能ツール、石斧をクラフトする必要がある。伐採、採掘、武器としても使える便利ツールだ。採掘は特効が無いので効果はかなり薄いが……。

 

 石斧は木材三個、草三個、石二個が必要になるが、道中で既に素材は拾ってきたので問題なくクラフトできる。

 

 クラフトウィンドウを開いてポチっとな。

 

 …………石斧のクラフト完了。

 

 インベントリからツールベルト二番目のスロットに石斧をセットする。

 

 これも品質は最低の灰色で、すぐに耐久が無くなってしまう。早めに品質をあげたいところだが、スキルを上げるためのスキルポイントが無いので今は上げることができない。

 チュートリアルを終わらせれば五ポイント入るので、チュートリアルを進めつつ計画を進めていきたい。

 

 チュートリアル一つ目は寝袋のクラフト、設置。二つ目は石斧の素材集め、クラフト。ここまで完了している。次は草の服をクラフトする内容だ。因みにチュートリアルの内容は視界右上に表示されているのでいつでも確認することができる。


 草の服は後回しに、先に家を作ってしまおう。ゲームならチュートリアルを優先していたが、今は現実だ。少しでも早く落ち着ける場所が欲しい。

 

 それじゃあ石斧の用意もできたところで近場の木から伐採していこう。

 

 と何の疑問も持たずに石斧でこの大きな木を伐採しようとしているが、果たして本当にできるのだろうか?

 

「おいお前、何をしてるんだ?」


 木の前で考えている後ろから声をかけられた。

 

 振り向くと尖った獣の耳とボサボサの尻尾を生やした男がいた。

 

 顔は口が突出している獣のそれで、犬か狼といったところだろうか。手や足は人間と変わっていないようだが、全身に体毛が生えており、毛色は黒く、そして……獣臭い。


 手には弓を持っていた。弓が彼の武器だろうか。

 

「うっ、ゴホッゴホッ……」


 それにしても匂いが酷い。まるで風呂に入っていない人間の汗クサい臭いがする。風呂の設置は急務だな。

 

「し、失礼を……」


「お前は何をしてるんだ?」


「木を切ろうかと」


「そうじゃない、人間のお前が何故獣人に手を貸す?」


「あぁ、そういうことですか」


 最もな疑問だろう。今まで虐げてきた人間が手を貸すと言っている。絶対に怪しい。

 

「私がこの世界の人間ではないということは、ミリアムさんが説明してくれたと思います」


「だからオレ達を助けるのか?」


「困ってる人がいれば、助けられるなら助けますよ」


 打算的な部分も間違いなくあるが、特に助けない理由もなければ助けるのが道理だろう。嫌いな人間達と同じことはしたくない。それが俺の行動原理だ。

 

「フンッ……口だけならなんとでも言える。少しでもおかしな真似をすればその首を掻っ切ってやるからな。覚えておけ」


 そう言って獣姿の男は踵を返した。

 

 まぁ当然の態度だな。この世界の人間がしてきたであろうことを考えれば、今ここで攻撃されなかっただけでもマシだ。ていうか猫の獣人以外にもいたんだな……。

 

「ふぅ……」


 持っていた石斧を振りかぶり目の前の木を叩いた。

 

 ガッ

 

 すると視界に木の耐久が表示された。90/100と数字が見える。右下には取得した木材のログが流れていた。

 

 次はインベントリを確認する。インベントリに木材が五個追加されていた。これなら問題なく資材集めができそうだ。

 

 特に強い力で叩く必要も無いので、スタミナが切れるまで叩き続けよう。

 

 視界左下には体力ゲージとスタミナゲージがある。このスタミナゲージがゼロになると走れなくなったり動きが鈍くなるので効率が落ちる。スタミナ管理は重要だ。

 

 そして木を叩き続け耐久値を0にした。

 

 木はギギギと音を立てて反対側へ倒れ、そのまま消失する。


 石斧の耐久値ゲージが三分の一ほど減っていた。クラフトウィンドウを開いて石斧を確認すると、耐久値には20/30と表示されていた。一回攻撃するごとに一ずつ減っていく仕様なので、あと二十回使うことができるな。

 

 インベントリには百個の木材が収納されていた。叩いた分の五十個と、破壊によるボーナスの五十個だ。

 

 この木材を使ってさっそく木枠をクラフトしてみる。木枠ブロックは木材を十個消費してクラフトする基本のブロックだ。とりあえず五個のクラフトを開始した。

 

 カコンカコンカコンという軽快な音とともに木枠ブロックがクラフトされていき、インベントリに次々と収納されていく。

 

 木枠ブロック五個のクラフトが終わり、ツールベルト一番端の八番目のスロットに木枠ブロックをセット。意識を八番目のスロットに移し、寝袋の時と同様緑色のシルエットが現れる。

 

 試しに目の前に設置してみた。すると目の前に一メートル四方の木枠ブロックが現れた。

 

「なかなかデカイな……」


 ゲームでもたまに思っていたが、やはり一メートル四方のブロックは現実で見るとなかなかシュールである。

 

 ……そういえば強化ってどうやるんだ?

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