23:これからの指針
…………はっ!
どうやら俺はいつの間にか寝てしまっていたようだ……時間は――
2日目 04:17――朝か、だいぶ寝てしまったな……。
ワールドクラフトでも睡眠の概念はあり、寝袋やベッドで寝ると夜を朝に進めたり、体力を回復させることができた。しかし今俺は木の椅子に座っている。つまり寝ること自体はベッドの上じゃなくても問題ないらしいが、体力の回復はしないだろう。今は体力が満タンなので分からないが……。
ん? テーブルの上に、ボロボロに欠けた木の皿と、それに盛り付けられた串焼肉が三本置かれていた。誰かが置いてくれたのだろう。
仮屋の中だが早朝のせいか、少し寒いな……。風呂に入りたいが体を拭くためのタオルが無い。とりあえず顔だけでも洗ってこよう。
◆ ◆ ◆
「ふぅ……」
不承不承ながらシャツの裾で顔を拭いてしまった……まぁ他に拭く物も無かったので致し方ない。
うがいはしたが歯ブラシが欲しい。だが歯ブラシはクラフトできない道具だ。他の日用品もそうだが、やはりこの世界の道具を早急に用意する必要がある。
そのためにもドワーフの確保は必須だろう。往々にしてドワーフは鍛冶や細工が得意な種族として有名だ。この世界でも例外ではないと思いたい。
洗面を済ませ外に出た。外の肌寒い風が拭いたばかりの顔を余計に涼しく冷やす。現代世界でも朝の空気は好きだったので、少し懐かしい気分になったが――異臭のオマケ付きだ……。これさえなければな。
集落の方を見ると、ゲイルが弓を携えて歩いていた。見回りだろうか? 何をしてるのか気になるが邪魔をしては悪い。俺は俺のやれることをやろう。
ぐぅぅぅぅ……。
俺の腹が飯を寄越せと鳴いているようだ。テーブルの上に置かれた串焼肉を食べながら、今日やるべきことを考えよう。
俺は仮屋へ戻り、木の椅子へ腰を下ろした。クッションが欲しいな……。木の椅子に座りながら寝ていたせいか、尻が痛い。
動物の皮と木材があれば皮のソファーが作れるので、動物も狩りたい。ミリアムに会ったら相談してみよう。
俺は一本の串焼肉を手に取って観察してみた。
この集落ではコレが主食みたいだが、野菜とか穀物とか、栄養バランス的に大丈夫なのだろうか? 人間と違う体の構造をしているのなら問題無いかもしれないが、人間と同じ姿をしてるということは、全く必要ないということはなさそうだが……。
串に刺さっている肉ブロックを一つ、串から噛んで引き抜いた。いただきます。
そのまま口の中に運ぶが、やはり肉の味しかしない。火はしっかり通っているが、やっぱり塩か何か味付けが欲しい。現代調味料に慣れた人間には少し辛い環境だな……。
山の方にソルトリーフがあると言っていたが、鉄鉱山のある場所でも採れるのだろうか?
鉄鉱山にはドワーフがいるらしい。となるとソルトリーフとドワーフ、両方得るために鉄鉱山に行くのが一番良いルートかもしれないな。
だがその前に、集落の周りに壁とスパイクトラップを敷いて、外敵に備えてからだ。
串に刺さった肉を全て食べ終わり、串を皿の上に置いた。残りの二本は戻ってから食べよう。ごちそうさまでした。
肉を食べたからか、喉が渇いたな。インベントリには水の入った粘土バケツが二つ残っている。
川ではキャンプファイヤーのシステムを使わずに水を沸かすことができたが……できるか?
俺はキャンプファイヤーをクラフトして、仮屋の外に設置した。ゲームでは普通に家の中に設置していたが、現実だと怖いな。いくら火事のシステムが無いとはいえ、絶対は無い。今度川に行った時にでも試してみよう。
地面に設置したキャンプファイヤーを注視すると。『キャンプファイヤーを開く』という文字ウィンドウが現れたので手で触れる。
するとキャンプファイヤーのクラフトウィンドウが展開され、今まで使用していたクラフトウィンドウと同じ画面が表示されていた。
ただ違うのは、右には燃料用のスロットと調理した物がストックされるスロットがあり、左にあるクラフト一覧には、食料や飲料のアイテムが表示されている。
調理を開始するには燃料スロットに燃料となるアイテムを入れる必要があるので、木材を一つ燃料スロットに入れた。
これで調理できる料理が白文字になるのだが、左の一覧には灰色の文字しかない。ということは粘土バケツはシステムでは沸かすことができないということだ。
仕方ないので燃料スロットに木材を追加で三十個入れた。木材一個で十秒調理することが可能で、三十一個入っているので五分十秒の間調理することができる。
火を点けると炎エフェクトが発生し、ゲームでは上に乗ると確率で燃焼デバフがつくので、ここではそうならないように気をつけたい。
燃料スロットの下にオンの文字があるので、触れてみる。すると火が点きパチパチと木が燃える音がした。
手を近づけてみると確かに熱はあり、そのまま火に触れたら間違いなく火傷するだろう。
俺は火傷しないようにそっと火の上に粘土バケツを置いた。
……数メートル上からジャンプして着地しても足が折れなかったなら、この炎もシステムにより必ず燃えるとは限らないが……怖いのでやっぱりやめておこう。
水が沸騰するまで木でも切って資材集めでもしていよう。
石斧を構えて枯れた木の前までやってきた。
そういえばゲームでは木を伐採するとその木の苗が手に入るのだが、この枯れ木を伐採してもまだ苗は入手できていない。枯れた木だからだろうか? もしくはドロップする確率が低いのか……。
ワールドクラフトでは苗木、作物の種、どちらも植えてから四日で完全に成長する代物なので、この世界で作物の種が手に入れば食料問題は完全に解決すると言っても過言ではないだろう。
とはいっても、俺の身に何かあれば作物にも何か起きてしまう可能性を考えると、やはり食べ物関係もこの世界の人達に自給自足できるよう、俺抜きで頑張ってもらうのが一番良い。
農業やそういったことができる人材も欲しいなどとゲーム脳全開で考えながら、枯れた木を次々に伐採していき、木枠ブロックのクラフトも並行して行っていった。




