14:リコから見たソウセイ
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ミリアムは大丈夫かにゃ?
仕留めたもーふぁー?とかいうモンスターをみんなで分けるために、ミリアムがみんなを呼びに一人で戻ってるにゃ。リコはもーふぁーを見張るために残ったけど……。
ミリアムはリコより足も速いし強いし、グレイヴウルフが現れてもきっと大丈夫だと思うけど、やっぱりちょっと不安にゃ……。
らぷたー?っていう聞いたことないモンスターに襲われたって言ってたし、ミリアムがまた知らないモンスターに襲われたら――
「とりあえず今準備しているので、リコさん周囲の警戒をお願いします」
ソウセイに警戒を頼まれたにゃ!
「任せるにゃ!」
ソウセイはミリアムが戻るまでなんとかするって言ってたけど、どうみてもソウセイは弱っちいにゃ。だからリコがソウセイを守ってあげないといけないにゃ。
ソウセイはミリアムを助けてくれたみたいだし、今度はリコがソウセイを守ってあげるにゃ。
ソウセイを見ると凄い汗だにゃ、やっぱり辛いのかにゃ……?
「ソウセイ? 凄い汗にゃ。大丈夫かにゃ?」
「大丈夫です、ちょっと考え事をしていただけなので」
ソウセイは笑いながら返事したけど、やっぱり辛そうだったにゃ。ミリアム、早くみんなを連れて戻ってきて欲しいにゃ……。
にゃにゃにゃ? ポンって聞こえたと思ったら、ソウセイがリコともーふぁーを囲むように木の枠をどんどん設置していってるにゃ!
「おおおお、どんどん木の枠が積みあがっていくにゃー!」
凄いにゃ凄いにゃ! 家を作ってるときもそうだったけど、やっぱりソウセイは凄いにゃ! どうやってあんなに沢山の木の枠を持ってるにゃ? やっぱり魔法使いなのかにゃ!?
あっという間に周囲に木の枠を置き終わったにゃ!
……んんん?
「あれ、でもこれどうやって外に出るにゃ?」
出口がないにゃ! 閉じ込められてるにゃ!!
「あとで正面にドアを設置するから大丈夫ですよ」
「なるほどにゃ」
びっくりしたにゃ。ソウセイが失敗したかと思ったけど、計算通りだったみたいにゃ。
それからソウセイは木の枠を叩いて木の板を張り付けていったにゃ。
木の枠を叩く音と川の流れる音で寝ちゃいそうになったけど、しっかりそれ以外の音に注意してるにゃ。決して寝てないにゃ。
……ソウセイ、人間だって言ってたけど、どうして人間のソウセイがここまでリコ達のためにしてくれるにゃ? 今までリコの見てきた人間達は獣人のリコ達を奴隷のように扱うことしかしてこなかったにゃ。でもソウセイはその逆だったにゃ。
ミリアムを助けて、リコ達のために今こうして頑張ってくれてるにゃ。
「ソウセイって本当に人間なのかにゃ?」
実はソウセイは神様なのかにゃ?
「人間ですよ。いや……人間のはずです」
ソウセイは人間って言ってるけど、リコにはそう思えないにゃ。
「……人間は獣人をただの道具としか思ってないにゃ。でもソウセイはそんなことするようには思えないにゃ」
「私の居た世界では、人間が人間を道具のように、使い捨てるように扱っていましたからね。よく分かりますよ」
にゃんと! そうだったのかにゃ……。
「ソウセイの世界も似たようなものかにゃ……」
「だから私は人間は嫌いです」
「でもソウセイも人間にゃ」
「はは、そうなんですよね」
ソウセイは困った顔をしてたにゃ。人間が同じ人間を嫌って獣人の味方するなんて、今まで聞いたこともないにゃ。
やっぱりソウセイは変わって――
!?
――突然目の前に何か現れたにゃ!
「にゃ!?」
ビックリして後ろに下がったにゃ。一体なんだったにゃ??
落ち着いて見てみると、高価そうな木の椅子だったにゃ。
「あぁ、すみません。これは木の椅子ですので、良かったら座って待っていてください」
「びっくりしたにゃ……」
「驚かせてしまってすみません。座り心地はあまり良くないかもしれませんが、立っているよりかはマシだと思いますので、どうぞ使ってください」
なんとソウセイはこんな高価そうな椅子をリコに使わせてくれると言ったにゃ。
傷一つ付いていないまだ綺麗な椅子にゃ。しかも背中のところには綺麗な細工がされているにゃ。こんな綺麗な細工、凄腕の職人じゃなきゃ絶対作れないにゃ。そんな凄い椅子をリコに座らせてくれると言ってるにゃ。
「……分かったにゃ」
リコが座っても汚れないようにお尻を叩いてから座るにゃ。
よっこいしょにゃ。
むむ、この椅子だと地面に足がつかないにゃ……。でも背中の細工部分には隙間が空いてるから、尻尾も通せて楽にゃ。それにこんな立派な椅子に座ったのは初めてだから凄く嬉しいにゃ。
「どうですか?」
「ま、まぁまぁにゃ」
なんだか恥ずかしくてまぁまぁとか言っちゃったけど、本当は凄い嬉しいにゃ……。
もっと早くソウセイと――
何か音がするにゃ……椅子から降りて音を探るにゃ。
……ソウセイが木の枠を取り外そうとしてるけど、今そこを外すのは危険にゃ!
「待つにゃ!!」
油断したにゃ、まさかこんなに近づかれるまで気づかなかったなんて……!
「そこから離れるにゃ!」
木の枠に何かが凄い勢いでぶつかったにゃ!
この感じ、奴にゃ!
「グレイヴウルフにゃ!!」
グレイヴウルフは獲物を狩るとき、音を立てないように近づくことができるにゃ。川の流れる音もあってリコの耳で気づくことができなかったにゃ……!
腰に携えてた骨のナイフを構えるにゃ。
「グルルルルルルルルル……」
木の枠の隙間からグレイヴウルフが見えたにゃ。グレイヴウルフの大きさなら木の枠の隙間を通り抜けられそうだけど、何故か通り抜けてこないにゃ。それなら好都合にゃ!
――え!?
一匹だけじゃないにゃ、この音はもう一匹いるにゃ!!
一匹だけならリコだけもなんとか倒せると思うけど、二匹は無理にゃ……。グレイヴウルフは連携して襲ってくるモンスターにゃ。ミリアムがいてもグレイヴウルフの二匹は危険にゃ……。
「血の匂いに釣られたか……!」
「ま、まずいにゃ……ソウセイ……」
このままだとリコもソウセイもグレイヴウルフに食べられちゃうにゃ……!
ど、どうすればいいにゃ……ミリアム……!
……あれは、なんにゃ?
ソウセイがヒビの入った木の枠の前に木の棘を置いたけど、あんなのじゃすぐに突破されちゃう――と思ったら、今度は木の棘の上と横に、木の枠で天井と壁を作って、短い一本道のトンネルを作ったにゃ!
でも木の棘と木の枠の天井の間に大きな空間があるにゃ! グレイヴウルフなら木の棘を飛び越えてその空間を飛んでくるにゃ! ソウセイ、本当に大丈夫にゃ……?
「バウッバウッバウッ!!」
グレイヴウルフが木の枠に体当たりしてるにゃ、ヒビが更に広がっていくにゃ……!
バカン!!
あああ、木の枠が壊されたにゃ! グレイヴウルフが中に入ってくるにゃ!
でもまだ一匹だけしか入ってきてないなら今の内に倒すにゃ!
「ソウセイ!!」
ソウセイを下がらせてリコが前に出るにゃ!
「リコは下がって!!」
にゃっ!? ソウセイに手で塞がれて前に出れないにゃ!
「バウッ!!」
グレイヴウルフは木の枠を壊した勢いで中に入ってきてるにゃ、木の枠を飛び越えようとジャンプ――
「キャインッ!」
にゃにゃにゃにゃ?! グレイヴウルフが木の棘に引っかかってるにゃ!
少し触れるくらいで簡単に飛び越されると思ったにゃ、でもグレイヴウルフは木の枠の隣にあった木の棘に引っかかってもがいてるにゃ!
「……恨むなよッ!!」
ソウセイがいつの間にか木の槍を持ってグレイヴウルフに攻撃してるにゃ!
「キャインキャイィン!」
木の槍はグレイヴウルフのお腹に刺さって効いてるにゃ、木の棘で動けてないし、このままならグレイヴウルフを倒せそうにゃ!
ソウセイの連続攻撃でグレイヴウルフは動かなくなったにゃ、ソウセイ強いにゃ!
でも――
「ソウセイ、まだくるにゃ!」
二匹目のグレイヴウルフが二段目の木の枠を壊して入ってきたにゃ!
でも二匹目も木の棘を飛び越えようとして引っかかって棘に吸い込まれるように刺さったにゃ!
「キャイン?!」
「くそがあああああああ!!」
ソウセイが突然叫びだしたにゃ! ビックリしたにゃ……。
あんなに落ち着いてたソウセイがこんなに叫ぶなんて、一体どうしたにゃ……?
それになんだかグレイヴウルフを攻撃してる様子がおかしいにゃ。
「キューン……クゥーン……」
グレイヴウルフが弱ってきてるにゃ! もう一息で倒せそうにゃ!
二匹やってきたときはもうダメかと思ったけど、ソウセイが二匹とも倒しちゃったにゃ、一人でグレイヴウルフを二匹倒せるなんて凄いにゃ!
でも木の棘は二つとも壊れちゃったにゃ。壊れても大丈夫なのかにゃ? 木の棘も気になるけど、それよりもソウセイにゃ。
ソウセイに声をかけようとしたけど、ソウセイが凄い震えてるにゃ。もしかして怖かったのかにゃ? それにしては凄い震えにゃ。まだ戦うことに慣れてないなら仕方ないにゃ。
「……ソウセイ、大丈夫にゃ?」
ソウセイの背中を撫でてあげるにゃ。リコもミリアムによくやってもらったことがあるにゃ。これは凄く落ち着くからソウセイにもやってあげるにゃ。
「大丈夫、大丈夫ですから……これで危機は――」
――殺気!?
「――まだにゃ!!」
木の棘が無くなって何も無い道をグレイヴウルフが走ってきて、リコに飛びかかってきたにゃ!
持っていた骨のナイフをグレイヴウルフに――
ソウセイがリコの前に飛び込んできたにゃ。
リコ視点を書いてみました。
唐突な視点移動なので戸惑われる読者もいるかもしれません。
今回の別視点での話について良かった点や悪かった点、気になった点があれば遠慮なく感想に書いてもらえると助かります。
2019/07/13 加筆修正しました。




