1:転移した先は世紀末
※【改稿版】を投稿しています。
今日も俺はサバイバルクラフトゲーム【ワールドクラフト】をプレイしていた。
サバイバルクラフトゲームとは、一言で言えば終わりのない無限に遊べるゲームだ。
例えば木材や石を集めて道具を作ったり、集めた木材を加工してブロックや家具を作って自由に家を建てたり、動物を飼育したり畑を耕して作物を育てたり、時には採掘して鉄や鋼鉄を精錬して強力な武器や防具を作ったりすることもできる、とても自由度の高いゲームである。こういうゲームはサンドボックスゲームと呼んだりもする。
ワールドクラフトは、従来のサバイバルクラフトゲームの要素に加え、十日ごとにモンスターの群れがプレイヤーを襲撃するイベントが発生する。この襲撃から生き残る為に、迎撃用の武器や道具をクラフトしたり、モンスターをテイムして共に戦うのだ。
更にファンタジー世界でありながら近未来的なアイテムが多数実装されており、クラフトしていくことで最終的に新しい人類となる、アンドロイドやロボットなども作ることができる。それがこのゲームのゴールでもあり、スタートラインでもある。
そして俺の拠点はモンスターの襲撃の度に強化していき、今では鋼鉄の壁に囲まれた鉄壁の砦型迎撃拠点に仕上がっていた。
敵を壁に近づけさせないように、床一面に敷き詰められた高威力のトゲが設置されている鋼鉄のスパイクトラップ、射程に入った敵を自動で迎撃してくれる各種オートターレット、侵入してきた敵を切り刻む巨大刃が扇風機のように回るブレードトラップなど、他にも様々なトラップが設置してある。
必要な弾丸や素材は商人から買ったり、採掘で集めて自分で加工して用意できる程までになった。
拠点内には自給自足できるように食料畑や水源、テイムしたモンスターを飼育しているので、食料に困ることもない。一部モンスターは育成を繰り返しステータスを強化したので、このモンスター達だけでも襲撃をやり過ごせる程までに育った。
迎撃も農業も全てアンドロイドとロボットがやってくれるので、完全自動化できるまでに至った。
最初は慣れずにモンスターにやられまくったり、死んで覚えて慣れてきたと思ったらアップデートで最初からやり直すハメになったり、そのおかげで作った建物もまた一から作り直しになったりと、ここまで仕上げるのにかけた時間と労力はとてつもなく大きい。
だがそれでもここまでくるともうやることもないので、また新しいデータを作って新鮮な気持ちで最初からプレイしたくなる。サバイバルクラフトゲーマーあるあるだ。
また一から資材を集めてレベルを上げて、前回とは違うスキルを取ったり、新しいタイプの拠点を作ったり、そういうことをしていく過程が楽しいのも、サバイバルクラフトゲームの良い所だと思う。
ということでニューゲームを選んでリスタート……だ?
突然モニターの画面が白く光り目の前が見えなくなった。
「うおっ、まぶし」
◆ ◆ ◆
………………。
…………。
……。
はっ。
気がつくと俺は地面に横たわっていた。
視界には青く広がる空と、見慣れたアイコンが映っている。
さっきまで家の中にいたはずだったが、突然白くモニターが光ったと思ったら見慣れない外にいる。しかも視界にはワールドクラフトで見慣れたアイコンが見える。
それだけでも混乱しそうなのだが、起き上がって視界に映ったモノを見て更に困惑した。
マジかよ……。
遠くにある木は枯れてるように見え、地面は黒焦げている更地で所々陥没したりと荒れ果て、そこはまるで戦争で世界が終わってしまった世紀末のような場所だ。ダンブルウィード転がってないかなと冗談交じりに周囲を見渡した。
そして更に俺を混乱させるものが居た。
「に、人間!? どこから現れた!?」
長い銀髪に側頭部から捻じれた黒い角が二本生えてる、褐色肌の女の子だ。
部屋から見知らぬ外へ一瞬で移動。現代ではありえないと言ってもいい捻じれた黒い角を持つ銀髪褐色の少女。
俺は異世界にきてしまったのか……?!
状況整理よりもまず、少女の発言から少女と人間が敵対している様子が窺えたので、俺は真っ先に両手を上げた。
「て、帝国の人間か?!」
少女は素早いバックステップで下がり、武器を構えた。
「くっ、私を捕えに来たのか……!」
「お、落ち着いてください、俺の言葉は分かりますか?」
俺は角少女の言葉が聞き取れたが、角少女が俺の言葉を聞き取れるとは限らない。頼む……!
「先にこちらの質問に答えろ! お前は何者で、何をしにここへ来た!?」
言葉は通じているようだ。意思疎通ができるなら……。
「お……私は自室に居たら白い光に包まれてここへ飛ばされたようです」
質問に質問で返したり、まず人に物を尋ねるときは自分から名乗るものだろ? などというキザなことはしない。少女の目つきがマジで殺る五秒前だ。
「ええと……私は恐らくここではない別の世界の人間です」
相手の求めている情報を簡潔に分かりやすく答えた。いや別の世界の住人って普通に信じられるだろうか? 俺だってまだ確信が持てている訳ではない。
「……別の世界、だと?」
少女は鋭い眼光で俺を睨む。まぁそうなるな。
「は、はい、何かに転移させられたのだと思います」
ここで被害者ぶるのはあまり得策ではないだろう。異世界転移とは言ったが、実際どうなっているのかは分からない。だがこの非現実的な状況を整理するにはそれが一番納得できる。
「だからこの世界のことも分かりませんし、貴女と敵対する理由もありません」
誠心誠意敵対する気持ちがないことを伝える。
「確かに突然光と共に目の前に現れたな……」
少女は何か考えるようにぶつぶつ言ってるがよく聞こえない。
改めて少女を見るが、動物の毛皮であしらったようなボロボロの茶色い衣服や、手入れのされてなさそうなボサボサの髪、やせ細った体を見るに、まともな生活は送れていないのだろう……。
それでも顔は綺麗に整っており、美しいその切れ目に一瞬目を奪われた。身長は百七十くらいだろうか、俺とあまり変わらないように見える。胸もそこそこに、現代世界なら十八歳前後くらいかもしれない?
そんなボロボロに痩せ細った捻じれ角の褐色少女と、ワールドクラフトと同じゲームのアイコンが、俺の視界には映っている。
「それで、お考え中のところ悪いのですが、私はどこも行くアテがないので、良ければ貴女に付いて行ってもいいですか?」
もしここでノーと言われたら物凄く面倒なことになりそうなので、どうか頼む、イエスと言ってくれ……。
「…………」
少女は品定めするように俺を見ている。
少女に付いて行くリスクがない訳でもないが、やはり一人は心細い。
「……お前は異世界転移したと言ったが、何故そんな平然としていられる? お前の意志で転移したのではないのだろう?」
「起きてしまったことは仕方ありませんし、何とかなりそうな手立てはありそうなので、思ったよりも落ち着いていられてます」
ゲームと同じクラフトができるのなら、まだ慌てるような時間じゃない。
「手立て? 何かできるのか?」
「多分、道具や武器、家を作ることができると思います」
ゲームと同じクラフトができるのであれば、の話だが。
「……」
「種があれば食料調達も難しくないかもしれません」
こんな状態の世界で食料の種を手に入れるのは難易度が高そうだな。
「それは本当か……?」
もしゲームと同じことができるのであれば、の話だが。
「かもしれないという話なので、多分できるというくらいしか……」
「何故そんなに曖昧なんだ……」
「なにぶんこの世界に来たばかりなので、私も何ができるのはまだ把握できていませんので」
俺は自分で言ったことは守る男だ。逆に言えば言わなければ守らない男でもある。だからこそ自分の発言には責任を持っている。できないことをできると言ってできなかったら大変だしな。
少女は凄く怪しむように俺を見ている。
俺だってこんなこと言う奴は怪しすぎて信用できない。
「……少しでも変な真似をしたら、分かっているな?」
「分かっています」
「いいか!? 絶対変なことをするなよ!?」
振りかな?
「わ、分かってますから落ち着いてください……」
「理解しているならいい。私はミリアムだ」
「私は……ソウセイ、です」
俺の名前は倉太創生。完全に名前負けしているからあまり名乗りたくはないが、ここは異世界だし問題ないだろう。
「ソウセイか……まだ完全に信用した訳ではないからな!」
こうして異世界に転移してしまった俺は、ミリアムという少女と出会い、彼女に付いて行くことにした。
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2019/07/10 逐一加筆修正をしているので、一度読んだ後にまた読むと違う文章になってることが全ての話で起こっていると思います。起こります。予めご了承ください。
2019/07/09 主人公の心情描写を少し加筆しました。
2019/07/09 ミリアムの衣類の色を加筆修正しました。