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新たなる日常

 はぁ…これからどうしよう?


 耀の家に着いた僕達は、耀のお母さんと思われる人物からお茶をもらっていた。

 

 耀のお母さんと思われる人物は、賽銭箱の修理費の請求書を作成するために何処かへ行ってしまった。


 耀のお母さんと思われる人物が帰ってきたら、僕は借金地獄という名の地獄に落ちてしまう。

 

 何とかして逃げなくては…

 逃げる?そうだ!逃げればいいんだ!(いにしえ)より世界各地で『逃げるが勝ち』と言われているじゃないか!


「じゃ、耀。バイバ~イ」

「待って。逃げちゃダメ」


 逃げ帰ろうとする僕に、耀は非情にも声をかけた。声のした方を見ると、畳の上に座っている耀の姿があった。


 この八畳の畳の部屋は元々耀の部屋だったらしいが、耀はほとんど入院生活だったので家具は特に何もない。

 季節ごとの服なども、全て押入れに入れていたので家具らしい家具もない。唯一ある物と言えば、天井の隅に取り付けられている神棚だけだ。

 祀られているのは―姉ちゃん(アマテラス)!?

 いいな。僕も皆から祀られたいな。


 最近は学問の神が人気らしいから、いっその事転職しようかなぁ。

 あれ?神って転職できるのかなぁ?


「何ブツブツ言ってるの?お金払うまでは逃げちゃだめよ。お母さん怒ると怖いんだから」


 納得。あの横にも縦にも大きい大女は、何をしいても恐ろしい何かがある。

 何でアレから耀という人間が生まれてきたのだろう。お父さんがよほどの美男子なのかなぁ?


「はい君!請求書だよ。サインしな」


 後ろから今最も聞きたくない声が聞こえた。それと同時に僕の肩に大きくて分厚い手が乗っかってくる。

 今の、人間なら脱臼していると思う。


「僕子供だよ。子供からお金取るの?」


 僕は出来るだけ可愛く見えるように言った。


 自分で言うのも悲しいが、正直僕は小さい。一言で言うと見た目が幼くて可愛い(らしい)。

 人間は小さくてかわいい物に弱いと聞く。僕の小ささをもってすれば、きっとこの大女も僕に甘くなるはず。

 そう!僕の小ささをもってすれば!


 なんだか自分の言葉で僕の心が傷付いていってるような気がした。


「それもそうだねぇ。保護者の方はどこにいるの?」


 ホラ!僕の予想通り。


 でも保護者って親の事だよねぇ。お母さんのイザナミ様は僕が生まれる前に死んでるし、お父さんのイザナギ様は行方知れずだ。



「僕、保護者いないよ」

「じゃあ家は?」

「無い!」

「困った子だねえ。どうだい?うちの子にならないかい?衣食住はしっかりそろえてあげるよ。」


 ラッキー弁償取り消しのみならず、衣食住まで提供してもらえるなんて――


「でも、賽銭箱の買い替えにかかる代金分は働いてもらうよ。」


 なんだ。そこは変わらないのか。


「君、家無いの?でも大丈夫。これからはここが君の家だよ」


 どうやら耀も歓迎してくれるようだ。断る理由はどこにもなかったので――――――――いや、一つしかなかったのでこの人間達の言葉に甘える事にした。


 無論、その一つの理由は熊女(くまおんな)の存在だが、数ヶ月たてば、なれるだろうと思った。


「じゃ、これからよろしく!」

「こちらこそよろしく。あ、まだ名前聞いてなかったね。名前は何?」

「僕は――――――――――――」


 何と名乗ろう?ごく普通の人間として生活してみたいから、本名を使うわけにもいかないし…………………………………困ったなぁ………………………………。


「ねえ、名前は何?」




 こうして僕達の(あら)たな日常が始まった。一つの難題を残して――

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