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決闘編


遠征から戻り1週間ほど経ったある日サヤが窓から入ってきた。何も頼んでないのだが。

「やっぽー!おはよー!オリくーん!朝ですよ!相手してよ!」

「うるせぇ、重要書類書いてんだよ!・・・重い退け」

「えーせっかく面白いことになってるからお知らせに来たのに!」

「は?」


いつもの感じでよしかかって来るがマジでこれは汚せない書類なんだよ!

けどそんなことどうでもいい風な感じで首に抱きつく様に乗っかる。


「実はねー勇者がねーオリ君にねー、けっ」

「語尾を伸ばすな、ウザくらしい」

「・・・決闘するんだって」

「誰が?」

「君とあの今城って勇者」

「誰から聞いた?」

「うーん、みんな知ってるよ?知らなかった?」

「初耳じゃボケェ!冗談だろ?いつものやつだろ?面倒なんだよお前の嘘は!」

「嘘じゃないもん、主に勇者側が言ってるよ?」

「あんの・・・ド阿保どもが!!」


サヤからの報告により向こうで勝手に決闘の手続きが進んでいることを知らされ、立ち上がり窓から身を乗り出し城中に響き渡るほどの怒号を発した。城どころか城下町の一部まで響いたという。


「今すぐ取りやめさせに行く!人を小馬鹿にしゃがって、まだ懲りてなかったのか!」

「無理だと思うよオリ君」

「何故だ?まだ間に合うだろう・・・」

「だってそれ今日だもん」

「・・・・ふ・・・ふ・・・ふざけるなぁぁぁ!!!」

「ちょ、落ち着いて!壁壊さないで!」



叫んだ程度では気が収まらず机と壁に額をぶつけサヤに止められ、服を整え部屋を出ようとするが決闘当日にそれを言われ今度は城内に鼓膜を劈く様な衝撃波生んだ。


「サヤお前も付いて来い・・・やり過ぎたら止めてくれ」

「えー本気でやるの?おじさんに怒られるよ?」

「エドワード様はかんけぇ無いだろう・・・付いてこないとお前も同罪に処・・・」

「行きます!御供も致します、です!」

「よろしい、久しぶりにキレちったこの代償は高くつくぞ」


サヤの襟首をつかむとジタバタ暴れるのでかーるく脅すと素直になる、そして修練場に向かった。





修練場には騎士を始め脇役の勇者に女性貴族・王妃・姫・王子が見学に訪れていた。

その目的の人物は勇者今城と騎士団長代理オリトルエによる”同意した上での決闘”これは戦に関わる者だけでなく今城の圧倒的なファンによってこの場は埋まっている。


そしてすでに修練台盤上に登っている今城は超ご機嫌だった、騎士団長代理が合意の下で参加するとなっているがそんなもん全部無視の自分らだけで占めし合わせた内容なのだから。

遠征棄権時に打たれた顎をさすりながら観客に万人受けする笑顔を振りまいて、その度に高い歓声がわっと上がる。


プライドと自尊心の高い騎士にはそんなことは出来ないしやらない、ただの堅苦しい手段に気高きバラが咲き乱れているような感じ?



開始時間は12時丁度15分前の現時刻いまだ相手は現れていないが、城門に破城槌でも打ち付けたかのような轟音が一度鳴り1分待たない中に落雷した時の様な低い衝撃が微かに感じられ、騎士の方にざわつき確認に向かおうと入り口の扉を近いたが、内側に扉が開かれ何人かがそれに弾かれた。


激昂している聖白のマントを纏った男と直立したままの女

「貴様・・・お前やってくれたなぁ!!」

「お・・・時間どおりですねww」


「何が、時間どおりですね。だ!自分が何をしたか分かっているのか!!」

「ええ、決闘ですよね。時間も場所もキッチリお知らせしましたし、別にいいじゃないですかww」


合ってそうそうヘラヘラしだす勇者の顔がムカつき怒鳴り散らすが、真向かいに王子達の姿が見え込みあがってくる罵声を寸前で抑え込み試合盤に近く。



「テメェ・・・おい、サヤ他に条件はなんか無かったか」

「いえ・・・あるんですけど。」


「そこの綺麗なお嬢さん今度僕とデートでも」

「すいません、私はオリ君のですので」

「騎士団長代理様は武器の使用禁止、今城 誠様は武器魔法アリと聞いております」


サヤに決闘当日でしかも時間まで15分もないことを知らされ急いで正装に着替え上だけでもマントを羽織って来て正解だった。

まさか王妃様方を騙し引き込んでいたとは・・・。

そして今城がサヤに粉砕されていたのを横目で見て審判らしき貴族に戦闘条件を聞かされた。


「武器無し・・・それじゃ決闘も何もねぇじゃねぇか!?」

「私達騎士団は剣と盾を旗印に結成された、模擬とはいえ武器もなし。副団長殿は盾も持っていない・・・」

「本当に同意の上での決闘なのだろうか?考えたくないが勇者殿が独断で・・・」


だがその条件が聞こえた騎士の集団にもこの決闘に不信感を抱くものが何人か要る様だ。

反対にファン集団からは熱い声援が送られ不審に思っている者達の会話を打ち消し、次に発せられる言葉によって静まった。


「オリトルエさん言いましたよね?僕なんか”武器を使わずとも軽くいなしてみせる”とその言葉通りの条件なのですが何かご不満でも?」

「俺はそんなこと言った覚えないぞ!」


「いえいえこの耳ではっきり聞きましたし他にも証言者は居ます、もしかして?いや・・まさか騎士団長代理ともあろうお方が見苦しい言い訳で”自ら言い出したこの決闘を逃れようとしていません?”」


「ふはははは・・・嵌めやがって、サヤ下がっていろ。そうだな王妃様のお世話でもしていろ」

「え!?無理無理無理!え・・ついて来たから罰は無いんじゃ?」

「お前が要らん事言ったせいでこんな状況になったんだ、責任とれ」



完全に向こうの独断でこの決闘を作り出したこちらに拒否権は無い、嘘でも勇者の発言力はそれなりにある。騎士団長と同じくらいに、ったく貴族も王族も馬鹿ばかりなんだから。


何故に民を守るために作られた誇り高き我々がその逆のことをしなければならない。


「騎士団長代理オリトルエさんこの決闘は貴方も同意した上で行われるものでは無いのですか?」

「はぁ・・恐れながら王妃様、私はこんなくだらない決闘など行う利益も理由がありません、一体何を掛けているのですか?」

「え?掛け事なのですか?親善試合の延長ではないのですか?」


「・・・決闘とは本来その者の命または全ての財産・権力を掛けて行う言わば儀式に近いモノです。命の駆け引きをするのですからいくら相手が弱くても武器を使用しないなどと愚かな驕りは死を招きます、親善試合でも模擬の武器を使います。遊びでする分にはどんな条件でも良いのですが、先方が決闘に拘っていますので私が武器を使用しないとなるとかなり間抜けな絵になりますよ?」



なにやら話のかみ合っていない状況に王妃が説明を求めたが、どうも娯楽の1つ位にか思っていなかったようだ。昔は殺し合いで酒や食事を盛り上げていたこともあった時代も国もあったようなので呆れると言うか”王族とはこんなものか”とたまに思う。


「決闘という儀式を軽く見過ぎですね、少なくともどちらかが瀕死になるまでは審判であっても止めに入ることは出来ません。なんでもありのなんです・・・それを武器の使用が禁止?決闘の由来を知らない者は今すぐ書庫に行って辞書を繰って来てください。今城 誠、貴方もだそちらの世界の決闘というものもこちらのものとそんなに意味は違わないはず、もし違うなら今この場で説明してもらいたいのですが?」


「けっ、決闘も試合みたいなものだろが?似たようなもんだろ!何でそんな説教を聞かなきゃ・・」


「試合は模擬で遊びの延長ですが決闘は形式的な殺し合いです、審判が居るか居ないか又は命を賭けなければ決闘は成立しません。今言ったように命を賭けるのでしたらその条件は飲みましよう。特別ハンデです」


「え?オリ君・・・嘘でしょ?」

「お?言ったな!今のは聞いたぞ!武器を使ったら切腹だぞ!異論はないな!?」



ぐだぐだと辞書に書いてあったであろうことを並べ、いかに自分達が軽い人間だったことを思い知ったとだろうと思ったが結論だけ言い、幼馴染の声と目の前の勇者の声が重なった。

新兵の数人が外に駆け分厚い本を持って戻り頷きながら見開いたページを眺めていた。


「僕は命を賭ける!お前もそれでいいな?武器は使えないぞ!?」

「しつこいな武器は使わないが、おい!審判、魔法の使用は反則かそうではないか?」


「え?えっと・・・魔法の使用自体は違反ではありません。場外からの援護や支援系の魔法が確認されれば両者とも一発反則負けですが。」


「天才の僕に呪文で挑むのかwww無駄無駄www」

「それだけ聞ければ十分だ、どこからでも掛かって来るがいい。特別に4割の力で相手をしてやる」



一向に盤に上る気配がないことに痺れを切らした勇者がそれを宣言、それを聞いたうえで段を上がる。

それと審判に1つだけ質問し袖を捲り手を前に出し構える。



「それでは時刻になりましたので勇者代表 今城 誠様VS王国騎士団副団長 オリトルエ殿の公式決闘試合を開始いたします。両者一礼!・・構え!始め!」



中央の大時計が12時を指しその数だけ鐘を鳴らす、始めの合図で最後の鐘が鳴り終わり勇者が剣を振りかざし駆けてくる。

俺に圧倒的ハンデがあるからって無防備すぎるだろ。


「おらぁ!死ねや!」

「・・・・・」

「死ね死ね死ね死ね!あの女は僕が貰う!」

「・・・・・サヤは渡さん!」


剣を振るうと言うより暴れまわっているという方が正しい気がする。防具も付けずその連撃を躱し続けることは至難の業であったが、勇者の口から出た名前によって真っ直ぐ向かって来たそれを真剣白刃取りし腹に膝蹴り、頭に頭突きを食らわしフラフラと後退した。


「次はこっちの番だ」


掌を胸の位置で合わせ1つしか使えない魔法属性を引っ張り出し、それを自分と盤の4辺に出現させる。


「俺はお前らと違い風魔法しか才が無かった。一時期は3つも4つも扱えるお前らを羨ましく・・そして憎く思った。が、これを極めていく過程で他の全属性にはない特徴を見出した、その一端を見せてやろう」


「ただの竜巻だろ?ww数は確かに多いがそれくらいなら僕にだって出来る」

「俺の力とお前の力どちらが勝っているかの勝負だ、この魔法に全て魔力を注ぎ込んだ1つでも破壊できればお前の勝ちだが、時間が経てば経つほど巨大化し中央に近づいてくる魔力切れを祈っても無駄だ」


「ふん、凡人はいくら頑張っても凡人だ!そんなもんすべて打ち消してくれる!!」


余裕たらたらの相手に対し息も絶え絶えで汗を滝のように流している自分、一見しただけではどちらが優勢なのか一目瞭然なのだが勇者が俺の生み出した竜巻に何かの魔法を撃ちこんだ。


「・・・んなっ!アイスエッジ!ファイアボール!ライトニング!ウェイク!」

「・・・どうだ?唯一使える俺の属性の出来は!」


勇者を取り囲む竜巻がじりじりと空白を縮める中勇者が放つ魔法はどれも掻き消され、そればかりか掻き消した残留魔力を吸収して更に威力を高めていった。


「クソがぁ!!ホーリーランス!ダークアロー!」

「何属性であってもこの竜巻は打ち消せない!」


悪態吐く勇者に竜巻が切り刻む寸前まで距離を縮め、残り数秒もすれば奴の悲鳴が聞こえるはずだった。


「やめなさい!今すぐ”試合”を中止しなさい!貴方達!アレを無効化して!」

「はっ!」


若い女の声と複数の男の声が聞こえ、黒いフードを被った者達が竜巻に向かって無属性の魔法を放った。

単純に力の差で10人の魔導士の魔力に竜巻が耐えられるわけはなく俺の渾身の魔法は止められたのだった。

そしてこの男達に命令を下した者こそ、この国の王女・・だ。

だが国に王に仕えるものとしてという建前を除いた場合、俺はこの女が世界で一番嫌いだ。


「副騎士団長!貴方!自分がとんでもないことをしでかしているという認識はないのかしら!?平民の分際で騎士に成り上がりいい気になっているのかもしれませんが、今城様は勇者様なのですよ!この国を!この世界を救っていただけなければならないお方にお怪我の1つでも負わせてしまってはどう責任取るつもりでしたのかしら?たかが親善試合で何をムキになっているのですか?貴方が勇者様に勝てるはずないことくらいは分かっているでしょうに、わが国の騎士として恥ずかしくないのですか?」

「・・・・・・・・・・・・申し訳御座いません」


どれだけ嫌いでも俺はこの女に頭を下げなければならない。

今これに反抗してしまうと俺を見込んでくださったエドワード殿や前の副騎士団長殿に申し訳が立たない。

未だ収まらない罵声を全身で受け止め頭を下げ続けると、蔑んだ瞳が恋焦がれたものへと変化し勇者筆頭こと疫病神の今城 誠の元へと駆け寄っていった。

そして今観戦していた王妃を交えて俺への懲罰を考えてるところだろう。

王女は彼等が召喚された際、その責務を告げるために同席しある勇者に一目ぼれをした。

それから2人は恋仲と公表され、金・権力と地位をその勇者は手に入れたのだった。


「副騎士団長オリトルエ、試合と言えど今城様を傷を負わせようとしたその魂胆、母上には隠し通せても許嫁であるこの私には通じませんよ?いかなる理由があるとしても許されることではありません。よって今この時を持って貴方を副騎士団長の任を解き一介の騎士に降格させます。ふっふふ、今頃自分の行いを悔いても遅いですわよ、さぁお返事は?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「返事はどうです、と聞いてるのですわ?早急に答えなさい」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・謹んで承ります」

「そう、よかったわ。当然よね?なら早く行って、貴方の顔なんて金輪際っ見たくないわ」

「・・・・・・・・・・失礼致しました」



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